このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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2023年1月9日月曜日

バラのスタンダード仕立てを作る ④ 台木の鉢上げ

昨秋10月18日に挿木したスタンダード仕立てのための長尺台木を、およそ80日後の1月7日に鉢上げしました。
台木になる長尺枝の挿木は、10月22日の「バラのスタンダード仕立てを作る ① 台木の秋挿し」に記録しています。

予想以上に根が張っていて、ビニールポットを切り開いて根鉢を取り出しました。根鉢の下部1/3が水苔です。 その中のわずかに緑色がかっている部分は(台木ではなく)スリット部分に藻類が発生した痕跡です。スリット鉢なので、伸びた根はトグロを巻かず上方向に伸びています。

同じ品種の長尺台木2本もほぼ同程度の根量です。この結果から見れば、10月10日頃に挿木して年末(75日後)に鉢上げするのが最適だったかも。しかしその辺は適当でいいのでしょう。根鉢が膨らみ過ぎて取り出せない(無理をすれば根が切れそう)ということを除けば、上々の出来です。

いかがです? 難しいと言われる長尺挿木も水苔と底面給水でこのとおり。まさに『水苔には不思議な力がある』の実例です。基部に割れ目を入れることやオキシベロンの使用など、私なりの小さな工夫はあるのですが・・と自画自賛:p

クリスマス寒波とその強風でハウスのビニールが破れて慌てましたが、幸い被害は少なく、台木の葉もまだかなり残っています。無加温ハウス内の気温は0℃〜26℃(晴天/サイド半開)の範囲内なので、これだけ葉があれば少しは光合成や蒸散も行われ、長尺台木を養分を含む水が揚がっていくと思われます。

鉢上げに使用したのはリッチェルのバラ鉢10号です。鉢は "宙吊り式" になっていて、水受け皿の排水でECとpHを計測し肥培管理の目安にしています。鉢上げ直後はバーク堆肥に含まれる牛糞の影響を受けて高EC値を示しますが、たっぷりの灌水と排水を数回繰り返すことで徐々に安定します。

培養土の組成は以下のようなもので、今回は "元肥入り" です。

培土
資材容量(㍑)
無機物(鉱物)赤玉土(中粒)14
赤玉土(小粒)14
鹿沼土(普通品)7
軽石(小粒)8
くみあい ゼオライト(小粒)7
Sub Total50㍑(50%)
有機物バーク堆肥「コンパ」
多木化学㈱
10
バーク堆肥「グリーンソイル」
九州バーク㈱
20
籾殻燻炭10
ピートモス5
水苔(AAクラス 鉄力あくあF10 含浸)5
Sub Total50㍑(50%)
Total100㍑(約6鉢分)

バーク堆肥が2種類なのは在庫の都合で、意図したものではありません。ほぼ同様のバーク堆肥(樹皮+牛糞)ですが、「グリーンソイル」の方が「コンパ」よりも分解が進んでいる(分解し過ぎている)ように見えます。これは在庫期間の影響なのかも? 備考:バーク堆肥は、微生物の働きで分解が進むように風袋に空気が通る小穴が開けてあります。

乾燥・圧縮された水苔(200㌘)を戻す際に、鉄力あくあF10(愛知製鋼㈱)を標準濃度で希釈した水を使用。水苔にどれほどの保肥力があるかは不明だけれど:p
保肥力(塩基置換容量=CEC)の大きいゼオライトは、重量比ではなく容量比で7%にしました。かなり大量です。

肥料・土壌改良材
資材 重量(㌘)備考
土の薬膳(ペレット)30水溶性・緩効性の有機肥料
金澤バイオ
アルギット®ぼかし30海藻入り特殊肥料
神協産業㈱
ニュートリスマート30酵母入り土壌改良資材
住商アグリビジネス㈱
くみあい セルカ(粉体)50牡蠣殻有機石灰(含・微量要素)
卜部産業㈱/(JA)
マグホス50苦土過燐酸石灰(+微量要素)
多木化学㈱
Total190㌘/15㍑(10号鉢)EC=1240㎲/㎝(実測値)

この培養土は、スタンダード仕立ての株だけではなく今シーズンの鉢植え全株に共通したものです。排水が EC=1240㎲/㎝ になるのは私の栽培環境では平均的な数値で、これは培養土の肥料濃度をほぼ反映していると見ています。バラの切り花栽培(溶液耕の "給液")では EC=800㎲/㎝ 程度が標準でしょうか、私の設定はそれよりは高めです。品種によって吸肥力(肥効)が異なるので、鉢土の交換時に元肥の量を200%〜50%の範囲で増減し、時期および生育程度を観察して、ECが 800㎲/㎝〜1500㎲/㎝ になるように、灌水(用水に2%クエン酸水溶液を少量加えpH=6.0前後にすることで、過剰な肥料分を溶脱させる)または追肥でコントロールします。

バラ会で語られる鉢植えの施肥は「月1回の置き肥、週1回の液肥」、または「マグァンプKの混和」です。長い歴史の中で示されている方法なのでそれが "正解" なんでしょうが、それではへそ曲がりの私には面白くない:p
土の薬膳」はバラ栽培を始めた頃から使っていますが、「アルギット®ぼかし」と「ニュートリスマート」は今回が初めて。それがどのような結果を示すのか興味津々。しかしこれらの配合量では少な過ぎてその効果についてはわからないかも。これらは通常の鉢植え株で比較検証する準備ができていますが、テーマが異なるので別記事で。

栽培品種を使った長尺台木も順調

今シーズンはノイバラ系の長尺台木がわずか3本しか準備できず、それでは物足りなくて、妻が庭で栽培している デルバールの "ギー・サヴォア" のシュートも数日遅れで挿木しました。ノイバラ系と比較するとやや根の伸びが遅いようですが、逞しい新根が出ています。葉も残っているので、スタンダード仕立てにするのに問題はなさそうです。

これで台木の準備が整ったので、今週は接木作業に取り掛かります。楽しみです。

秋の挿木 雑感

10月18日に挿木したノイバラ系と、それから3日遅れで挿した "ギー・サヴォア" の根の伸張を見較べて、秋の挿木は10月10日頃がベストだと再認識しました。私が住んでいる福岡市近郊では、10月10日というのは栽培上の "ターニング・ポイント" だと思います。このように挿木が3日遅れれば、根の伸張は1週間遅れますが、これは「秋剪定が適期より3日遅れれば、開花は1週間遅れる」のと同様ですね。

"ギー・サヴォア" の 根の逞しさ にも注目。ノイバラ系の根よりも力強く伸びようとしているのがわかります。この種の苗を作るのに、わざわざノイバラ台木に接木するのはなぜでしょうね? :p


1月11日追記:今朝、これらの長尺台木に接ぐ栽培品種(4品種)を採穂しました。接木作業は15日の予定なので、穂木の両端を「ニューメデール」でカバーして冷蔵保存。

それとは別に、バラ仲間がノイバラ系の長尺枝を提供してくれるようなので、「接ぎ挿し」(芽接ぎかデービッド接ぎをした長尺枝を挿木する=接木と挿木が同時進行)を仲間3人で一緒に試そうと準備中です。「接ぎ挿し」は今シーズンは諦めていたのですが、ありがたいことに、これでまた楽しみが増えます。

1 件のコメント:

そら みたか さんのコメント...

記事本文中の「肥料・土壌改良材」の "Total" 欄に誤記がありましたので修整しました。

私が使用している10号プラ鉢の容量は約15㍑。それに計190㌘の肥料・土壌改良材を入れました。昨年までは鉢土には少量の牡蠣殻有機石灰しか入れていなかったので、それと比べると『とんでもなく多量の肥料』という感じはします。でも「マグァンプK」を大量に投入する猛者と較べれば、土壌改良材も含めての190㌘なので、たかが知れてますけどね。

肥料分が一気に溶け出さないような配合をしていて、EC=1240㎲/㎝ という実測値は間違いありません。この配合が適切であるのかはバラが教えてくれます。楽しみです。