2014年12月18日木曜日

3ヶ月で作るノイバラ台木 秋の挿し木

バラの接ぎ木に使う台木を作ろうとノイバラの秋挿しをしました。120本の台木を狭い面積で効率的に挿すために「どこでもグリーン」という植栽器を使います。10月7日に挿し木して、2ヶ月後には「デービッド接ぎ」の台木に使える程に成長しました。挿し木から3ヶ月後の1月に予定している接ぎ木作業までには、さらに充実すると思われます。

どこでもグリーン」(DG)は「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」で使用したものと同じです。
「バッグフィルター」(BF)とセットで、1平米の面積で70本程度のノイバラ台木を作ることができます。
「どこでもグリーン」製造元:(株)福瑛舎

昨年のノイバラ台木の秋挿しの結果から判断して、今年は11日前倒しの10月7日に挿し木作業をしました。

バッグフィルターに挿し木したノイバラ

挿し穂を採るノイバラ母木は畑の中に数品種を計10株ほど植えており、その中から充実度が適当と思われる枝を切って、その場で挿しました。
参照:「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」から「そら流 台木用母木の育て方

今回選んだ母木は純粋なノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)ではなく、台木用に育種された原種系の品種です。節間がやや長くトゲは少なめです。

この品種は枝の伸びがよく、挿し穂に適した枝の中間部分はすでに葉が落ちているものが多いです。挿し穂の長さは15cm程度で、基部は「片クサビ型」に調整しました。

それとは別にノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)を20本ほど挿しました。トゲの形や表皮の色、根の張り具合が異なる3種類のノイバラの中から、気に入ったものを選んでノイバラの母木を更新するためです。何本かは「デービッド接ぎ」の際に比較対象にするつもりです。

オーキシンとサイトカイニン

挿し木の発根や発芽に関係する植物ホルモンはオーキシンサイトカイニンです。これらと類似の働きをする製剤がありますので、ついでに使ってみました。

今回の希釈率:オキシベロン液剤250倍 ビーエー液剤2000倍
挿し穂基部を5〜30分浸漬。

ノイバラの挿し木に、外から与える植物ホルモン製剤は不要』 (多すぎれば逆効果)と思っているので、希釈倍率も浸漬時間も適当です。「適当」では試す意味が無いんだけど、『科学的』にアプローチするのはどうも苦手(面倒くさい)です。

今回使用した挿し木用土は、赤玉土:鹿沼土:バーミキュライト=6:2:2の割合です。 気層の確保に留意すれば、用土も「適当」で良さそうに思えます。

DGには「バッファ層」があるので挿し木用土の保水性に配慮する必要はなく、市販の挿し木用土に多いピートモスは使いません。発根を促すのは水よりも空気(酸素)ですね。

BFに挿し木用土を詰め込みます。昨年は「あらかじめ湿らせた用土」を使いましたが、この時点では乾いた用土とBFを使うのが作業が早いです。

このトロ箱にはBFが35個並びました。口径90cmのDGにはこの倍の70個のBFを入れることができます。
トロ箱には水が入れてあり、用土全体が水を含むまで待ちながら、その間に挿し穂の調整をしました。

これら一連の作業は、昨年の「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」で説明していますので、ここでは省略します。昨年の挿し木から変更したことは、挿し穂が短くなったので挿す深さも5〜7cm程度と浅くして、ちょっとだけBF内部の根域が大きくなりました。

どこでもグリーンとアクアリフト どこでもグリーンとバッグフィルターのセット どこでもグリーンにボラ土を詰める

DGのセット方法も昨年の記事を見てください。変更したのは、DGの底に断熱材として厚手の発泡スチロールのパネルを敷いたことです。

DGのバッファ層にボラの中粒を入れ、その上から珪酸塩白土の「ミリオンA」と微生物製剤の「アクアリフト 300LN」を撒きました。これらを使わなくてもバッファ層の水分が腐敗しないことは昨年の結果でわかっているのですが、手持ちがあったので『気休め』です。

「アクアリフト300LN」は畑の潅水用タンクで常用しています。メインの菌種は「放線菌」なのだそうですが、水がきれいに澄んでくるのが見た目でもわかり、これの水質浄化効果は信頼しています。

挿し穂をセットしたBFを、DGの周辺部から並べていきます。スペースに余裕がある場合は中心部にもボラを入れておきます。

バッファ層から水分が、ボラからは空気がBFに届きますので、挿し木にはとても良い状態になっているだろうと思います。事実、これまで良い結果が出ています。

このDGには計55個のBFを入れました。挿し穂にあまり葉が付いていないのがわかるかと思います。このノイバラ品種は枝が充実すると葉が落ちます。

並べ終えたら隙間にボラを詰めます。全部のBFの水分を均一にするため大きな隙間ができないよう丁寧に入れました。

この後たっぷり潅水し、DGのサイドから水が滲み出してくるのを確認します。今回は口径90cmのDGを2個、75cmを1個を使い、「芽接ぎ挿し」のテストや栽培品種の挿し木を含めて、計150本の挿し木をしました。

保湿と防風のために、DG付属のリングを利用して 210cmの"ダンポール"4本でドームを作り、ビニールを被せて挿し木作業は終了です。

11月7日。挿し木から1ヶ月が経過しました。11月なると冷え込むようになり、保湿と防風のためのビニールの内部が朝には結露しています。さらに寒くなった下旬には、ビニールを梱包用の「プチプチ」に替えました。

天気のよい午後には、内部の気温が24℃を超えないように開口部を開けます。この24℃はたんなる "目安" で根拠はありません。何回か閉め忘れたこともありましたが、挿し穂は低温には耐えるようです。

どこでもグリーンの防寒
ノイバラ挿し木の新葉 ノイバラ挿し木の発根

  • 挿し木から2週間 毎日1回 天気の良い日は2回
  • その後2週間 ほぼ毎日1回 ボラの湿り具合で判断

すべての挿し穂から新芽(新葉)が出ていますが、発芽は挿し穂に葉が残っていたものが遅れます。その葉も1〜2週間程度で枯れて落葉します。その様子を観察していると、挿し穂の水分が足りないから枯れるのではなく、挿し穂は葉に含まれる養分を(タンパク質をアミノ酸に分解し)積極的に回収してそれを発根や発芽に提供しているのではないか?と思われるような枯れ方をします。

葉が残っている挿し穂の発芽が遅れる理由は、葉柄の付け根にある芽の原基の充実度が低いからだと思います。芽の原基が充実し発芽の準備が整えば自然に落葉するのでしょう。

ただしこれは私が選んだノイバラ品種の場合で、純粋なノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)は遅くまで葉を残す傾向があります。新葉が展開しても元の葉が残っている場合がありますが、これは枝の充実度には関係ないと思われます。

ノイバラの挿し穂はおよそ1ヶ月で発根し始めるのでそれを確認してみました。

予想どおりの根量・根長で、新葉の展開とうまくバランスがとれていると思います。ノイバラの水挿しをするとわかりますが、発芽と発根は必ずしも一致しません。挿し木でありがちな失敗は、先に新葉が展開し、発根していないので水分が不足して新葉が枯れるケースです。でも、これは良い状態ですね。

これは「オキシベロン液剤」と「ビーエー液剤」を使用した効果でしょうか、それとも単なる偶然?

迂闊なことに比較対象の挿し穂を準備するのを忘れたので判断できませんが、たぶん 偶然 でしょう。・・と言うか、これが "普通" なんでしょうね。たぶん「オキシベロン液剤」も「ビーエー液剤」も、そのような使い方ではほとんど効果はなかったでしょう。でも、ひとまず嬉しい結果で、この根量があれば新葉が枯れることはないはずです。

12月8日。挿し木から2ヶ月が経過しました。この1ヶ月間は4回ほど潅水に混ぜて液肥をやりましたが、それ以外は何もすることがありません。ボラの表面が乾いて白くなったら水をやり、天気の良い午後は「プチプチ」を少し開けるだけ。まったくの手間要らずです。もちろん病虫害の発生はありません。

バッグフィルターに挿したノイバラ台木

発根を確認した挿し木1ヶ月後から、液肥を与え始めました。今回使用したのは、住友化学園芸(株)の「マイローズばらの液体肥料」です。規定の倍に薄めて潅水時に行いました。週1回程度で、この1ヶ月間で4回です。

ふだん、液肥は神協産業(株)の「ベストⅡ」か、金澤バイオ研究所の「土と植物の薬膳」(有機100%)の水溶きを使用しているのですが、あいにく手持ちが底をついたのでこれを試用してみました。短期間でもあるし、肥効の違いは特に感じませんでした。

挿し木2ヶ月後の12月8日に6株を鉢上げすることにしました。液肥の効果が出ているようで、1ヶ月前と較べると新葉の色が良くなり、枝葉はまだ小さいものの、しっかりした印象です。

秋挿しのノイバラ台木

写真では見えづらいかもしれませんが、BFの底から根がはみ出しています。やむなく、根が切れるのを承知でムリに取り出しましたが、根鉢は崩れるし、これは楽しくない作業でした。根が切れる『プチッ』という音は 痛い です。

切れた根の量は多くはありません。挿し木から2ヶ月でこの根量なら上出来だと思います。この時点で既に昨年のノイバラ秋挿し4ヶ月と同程度の根量になっていて、 デービッド接ぎの台木として使える状態 です。枝の伸びが短いですが、それは必須条件ではありません。
ただしそのためには15cm程度の挿し穂の長さが必要で、「短い挿し穂に短い新梢」では作業が難しくなります。ここは「切接ぎ」の場合とは異なります。

挿し木作業を昨年より11日前倒しして10月7日にしたことと、発根確認後に数回液肥をやったのは正解だったようです。

接ぎ木作業を予定しているのは1ヶ月後の1月中旬。その時までにはさらに充実するでしょう。

ノイバラの秋挿し

同じ条件で挿し木したノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)の2ヶ月後の状況です。これも根がBFを突き抜けていたので、取り出す際に2〜3割の根を失いました。

相違点

  1. 新葉の展開が劣る。写真ではよく見えませんが、葉の半分は元から挿し穂に付いていた古葉です。(前述のように)ノイバラは新葉が出ても、古葉が落ちない場合が多々あります。
  2. 根量(根の本数と長さ)が少ない。根の太さは同程度か、こちらがやや太い。

上と比較すれば、この時点では見劣りがしますが、3ヶ月後、1年後の状況はわかりませんね。台木としての性能をこれで判断することはもちろん できません。

そうなんですが、でも、上はさすがに台木用として育種された品種("くくり"としてはこれもノイバラ)ですね。この台木品種を作出した人に敬意。

これは10号駄温鉢に挿し木したノイバラの2ヶ月後の状況です。上と同じ用土に挿しました。この挿し穂は比較するためのものではなく、「T芽接ぎ挿し」の練習台です。挿し穂の中間部分に接ぎ木テープと小さな芽が見えています。挿し穂(のオーキシン)はこの「傷」にも対応するので同列の比較はできませんが、ほぼ似たような結果になっています。

相違点

  1. 新葉の展開がかなり劣る。挿し穂の上部にある葉は古葉で、中間部分(芽接ぎ部分の下)にある小さな葉が新葉。
    新葉の展開が貧弱なのはT芽接ぎの影響かも?
  2. 根量(根の本数と長さ)は、上のノイバラと同程度。

この「 ノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)を駄温鉢に挿す」というのが一般的な台木作りの方法でしょうね。これは現時点ではまだ断定することはできませんが、1ヶ月後には台木としてなんとか使用可能な状態になるでしょう。接ぎ木後の活性が高い「デービッド接ぎ」の台木になることは間違いないと思います。

2015年1月11日 追記

挿し木してから3ヶ月が経過しました。12月から正月にかけて寒い日が続きましたが、その間もノイバラの根は成長を続けたようです。BFの外からも根が伸びているのがわかるほどになりました。

ロウバイが咲き、畑の数カ所に植えている「日本スイセン」が甘い香りを漂わせ始めると、接ぎ木シーズンの到来です。接ぎ穂に予定している品種の芽も程度な大きさになっています。

数日後に始める接ぎ木作業の後には、できるだけ根を切らないでその長さに合ったポットに植えるため、10cm(3.5号)角と15cm(5号)ロングを準備しました。これで5月(いわゆる「新苗」の段階)まで育て、その後は地に降ろす予定です。

この1ヶ月、たぶん低温と低日照のせいだと思いますが、枝葉はあまり大きくはなりませんでした。これはこのノイバラ品種の特性でもあるように思われます。寒さに遭うと紅葉する性質があり、それはロサ・ムルティフローラとは異なります。『根も伸びてはいないかも?』という一抹の不安があったので10cmポットも準備したのですが、嬉しいことに根はかなり成長していました。15cm(5号)ロングポットのサイズですね。

ノイバラの秋挿し3ヶ月後の状態

挿し木2ヶ月後に比較対象としたノイバラ(2ヶ月後の写真の水色のバット)の、挿し木3ヶ月後の状況です。

BFから取り出して、その後はプラ鉢に移しました。寒いこの時期にカバーも無い状態だったので、さすがに枝葉はほんの僅かしか成長していませんが、根はそれなりに伸びているのがわかります。

この程度の根量でも「デービッド接ぎ」の台木として使うことができます。

DG+BFを使った2種類のノイバラの秋挿しは、台木として問題なく使えることは昨年の結果からみて間違いありません。

台木としての性能は、ノイバラの品種ごとに穂木との親和性や耐病性など幾つかのことがらで評価する必要がありますが、同一品種の挿し木時期による充実度の差も重要な検討課題だろうと思われます。休眠枝挿しや緑枝挿しと較べて秋挿しは「手間要らず」ですが、接ぎ木の成功率の比較データはまだ不充分です。

ノイバラ台木の秋挿し 挿し木時期

ノイバラの品種やDG・駄温鉢を問わず、1月中旬以降の接ぎ木に間にあうように挿し木台木を育てるには、挿し木の時期は今年よりさらに1週間前倒しの10月1日が良さそうに思えます。10月1日というのはこの地域の冬野菜(ダイコンなど)の標準的な種まき日です。秋の播種時期というのは微妙で、もし種まきが1週間遅れると収穫は2週間以上も遅くなります。ノイバラの秋挿しもそれに似ているのかも・・と思っています。

ノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)を駄温鉢に挿す方法で台木を作るなら、もう少し前の9月20日前後かもしれません。でも別の見方をすれば、発根してれば台木に使えるのだから、時期にあまり神経質になる必要もないでしょうね。早いと雑菌の繁殖など挿し木を失敗させるリスクも増えます。挿し木時期を決めるのは「穂木の充実度」でしょうか。

狭い面積でも数多くの台木を手軽に作れる「DG+BF」は優れものですが、これをどう解決するか、私には難題です。「台木の根は切っても良い」あるいは「根は切った方が良い」と考えを変えれば、問題はないのですが。。

バラの接ぎ木を教えてくれたデービッドさんは台木の根を切りません。『 根を切り詰めるのは培養土の量や輸送コストなど生産者の都合に過ぎず、バラのためには良くない』という考えです。

挿し木数ヶ月の幼株の根は切らないのがいい、というか、理屈抜きで 切りたくない ですよね。老化した黒い根とは違います。

BFを突き抜けた根がまだ少なく短い今の段階で鉢上げするという方法もあるのでしょうが、1ヶ月後の接ぎ木作業を考えるとそれも億劫に思えます。根鉢も崩れるのでまだ休眠していない(成長途上の)挿し穂に与えるストレスも大きいでしょうし、この段階で一時的にでも生育が停滞するのは好ましくありません。

『DG+BFに拘らなければいいじゃないか』とも自問しますが、これの優れた機能(発想)は魅力的です。『高品質のノイバラ台木を一度に100本程度、できるだけ手間をかけずに作る』という、挿し木方法の模索はまだまだ長い道のりのようです。

2014年11月19日水曜日

穂木と台木の充実度がポイント バラの接ぎ木 

バラの接ぎ木(接木)用の穂木とノイバラ台木の準備について。デービッド接ぎだけではなく芽接ぎも視野に入れ、併せて実生台木の作り方と芽接ぎの具体例についても触れています。それぞれの特徴をつかみ、自分の目的や環境に合ったバラの増やし方を模索する試行錯誤(右往左往)の途中経過です。

Last update : 03/16/2015 23:39:25

この記事のオリジナルは2013年2月7日の「バラの接ぎ木」の後半に追記されていたものですが、そのページが大きくなりすぎたので、ここに移動し加筆しました。

バラの接ぎ木」から続く

デービッドさんによれば『バラの接ぎ木で最も重要なポイントは穂木の熟度の選択 』なんだそうです。
バラ苗生産農家は穂木を採取するための母木を育てていますが、私が何回か見学したそれは、何も特別な栽培方法ではなく、露地(畑の畝)でふつうに肥培管理してあるようでした。このあたりはそれぞれの生産者のノウハウに関することですから、圃場に立ち入ったり具体的な質問をすることは憚られ、詳しいことはわかりません。

1-1 ベーサルシュートを穂木に プロの場合

2015年2月追記:15年1月に、あるHT品種の大苗24株が急遽必要になり、福岡県田主丸のバラ苗生産者2カ所から「母木」を譲り受けました。1月のことで大苗は既に出荷済で、その数量を市場で確保することが難しかったからです。接ぎ木作業は既に終わった時期です。いずれも枝や根を切らない「素堀り」のままで入手しました。

挿し木の場合も同じですが、母木は若い株がよいので、更新のために母木を手放すのに躊躇は無いようでした。入手した母木はすべて接ぎ木後1年の若い株で、そこから出た太いベーサルシュート2〜3本を穂木に採った切り痕がありました。
株元から30〜50cm程度は残したままです。残念ながらベーサルシュートの上部をどう処理したかは不明。24株すべてでベーサルシュート以外の枝はまったく切られていませんでした。残っている枝はいずれも細く短く、穂木に使われた枝とは太さが極端に違うのが印象的でしたが、どのような肥培管理なんでしょうね。

後日、入手先とは別のバラ苗生産者に穂木の採り方を質問する機会があって、『穂木はベーサルシュートから採るんですね?』と尋ねると、にっこり笑って頷かれました。

シュート更新しない品種の場合、プロはどうするのか? 残念ながら詳しいことはわかりませんが、デービッドさんが用意した穂木などから推測すれば、『主枝を株元近くから惜しげもなく切る』と思われます。したがって母木は短命で2〜3年ごとに更新するのだそうです。

1-2 充実した枝を作る 私の場合

私の場合は1品種3本程度接げればいいので、母木専用の株は必要ありませんし、ベーサルシュートを穂木に使うこともしません。ベーサルシュートはふつうにピンチをくり返し来年以降の主枝にします。主枝候補にならない(ちょっと遅く出た)ベーサルシュートを穂木に試したこともありますが、充実度が低くて柔らかく、使えませんでした。

これまでデービッドさんやバラ苗生産農家に教えて頂いたことを参考にして、私は次のように穂木を準備しています。要点はデービッドさんのアドバイスのように「 充実した枝を作る」ということです。『剪定クズを穂木にする』という考えは捨てて、増やしたい株は(プロがするように)穂木にすることを意識した管理 が必要だと思っています。

「接ぎ木講習会」でいつも問題になるのは、受講者が用意した穂木が「接ぎ穂」にするには未熟 ということです。それはなぜでしょう?

一般的に、秋の花のための夏剪定は春に咲いた2番花の枝の中間で切りますね。そこから新芽が出て、秋の1番花(から2番花)へと続きますが、その枝は接ぎ穂としては「未熟」です。充実した接ぎ穂を確保するためには、夏剪定で深く切り戻さず(と言うか、「夏剪定」という考えを捨てて)、ふつうに花がらを切る作業を続ければ良さそうです。

また花後の肥培管理(肥料を多めに与えて枝を伸ばす)も重要なポイントのようです。

その結果、春から数えて3番花が咲いた枝(やや遅れて出た枝は2番花が咲いた枝)が、この時期には太さや芽の大きさからして、穂木に適した充実した枝になるように思われます。

B 充実度を見る

それはもちろん品種や生育状況によっても異なるでしょう。簡単な確認方法は枝の両端を持って撓めてみることです。ふにゃっと柔らかく曲がる枝は未熟です。秋の1番花や2番花が咲いた枝はそうなります。もし「夏剪定」で深く切り戻せば、穂木に適した枝がありません。同様に、夏以降に伸びたベーサルシュートも穂木に使うには未熟です。

)芽接ぎの場合は「開花枝」を使います。プロの方法 → 「いぶし銀のバラ屋/芽接ぎに使う穂木とは

穂木の充実度のもうひとつの確認方法は、穂木の切断面を見ることです。未熟な枝は、薄い表皮と内側の白いスポンジ状の「髄」の部分が多く、「木質化」した部分がほとんど見えません。そのような枝は、基部を斜め切りしたときにスポンジ状の「髄」が捲れたようになりがちです。慣れれば枝を切る剪定鋏の感触で充実度がわかります。

C 穂木の冷蔵保存

冬1月の大剪定で切った枝を接ぎ穂に使うのも可能ですが、その場合はまず枝の熟度をチェックします。品種によっては枝の色など見た目でも判断できますね。剪定で迷うこと無く切り捨てるような弱い枝や老化枝は穂木には向きません。穂木にする枝の切断面の木質部の厚みと、芽の脹らみ具合を確かめて、濡れ新聞紙にくるんで「ジップロック」などのビニール袋に入れ、6℃程度(冷蔵庫の野菜室)で保管します。でも、剪定と接ぎ木作業が1ヶ月以上もズレる場合(1月剪定/2月接ぎ木)は冷蔵していた穂木がちょっと弱っているような気がします。根拠はありません。穂木を手にして、色具合などからなんとなくそう思います。この時期の冷蔵保存は30日程度が限界でしょうか。可能ならば、穂木の採取は接ぎ木作業の当日の朝に切るのが良さそうに思えます。

私が見たバラ苗生産農家はそのようにしてありましたが、上記"いぶし銀のバラ屋"さん(芽接ぎ)は違う方法のようですね。たぶんそれは、穂木を採取する母木が植えてある場所と接ぎ木作業場所の位置関係や、作業手順や量などでも違うのかもしれません。私の2015年のシーズンは、挿し木で作った台木を常時手元に準備しておき、穂木は「当日の朝に切る」方法でやろうと思っています。

ただし。早春のバラの芽の動きは品種によってかなり差がありますね。穂木取りの時期は「芽の膨らみ具合」を基準にしますが、接ぎ木作業は台木が休眠から目覚める時期が好機のように思います。これは(私の環境では)1ヶ月程度のズレが生じる場合があります。したがって、「穂木は接ぎ木作業当日の朝に切る」というのは、厳寒期の台木が休眠(またはそれに近い)状態の場合は、それを打破するなんらかの対策が必要かもしれません。

2 台木の準備

バラの接ぎ木には、一般的にはノイバラを台木として使います。ノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)はいくつかの(固有の名称が無い/知らない)亜種があり、それぞれ生育や特に根の形状と発根量が異なります。バラ苗生産農家は幾つかの亜種と台木専用のハイブリッド種(原種系をベースに、耐病性や生産性など台木としての特性を高めた交配種)を、接ぎ木する栽培品種によって使い分けるのだそうです。

私にはそのようなノウハウはありませんから、幾つかのノイバラを集めて挿し木苗を作り、その生育を(特に根を)観察することを試みています。2013年1月27日の記事「バラの接ぎ木 台木の準備」で紹介している台木は、畑の近辺に自生していたノイバラ数種類を挿し木で育て、その中から最も旺盛に生育したものを母木としたのですが、これが栽培品種の接ぎ木台として最適なのか疑問が残ります。このノイバラは太根の生育が極めて旺盛で、露地植えの場合1年で1メートル以上も伸びるのですが、それよりも細根が密に出る種類が好ましいのかもしれません。国内のバラ苗生産農家はそのような台木を使用する場合が多いようです。地植えすると根が伸びすぎるノイバラは、根域を制限する栽培をするか(下記2−3「ノイバラ台木の根域制限栽培」参照)、接ぎ木の際に太根を切り取りその後に細根の発生を促すような処置が必要でしょう。

台木と穂木の親和性や、根頭癌腫病への耐病性の問題、台木としての耐用年数(寿命)もありますので、私のようなアマチュアは、入手できた台木を育て接ぎ木の経験を重ねてその特徴を学んでいくしか方法はないのでしょうね。バラ苗生産農家もそのようにして独自のノウハウを確立したと聞いたことがあります。

2-1 母木(ノイバラ株)の入手

ノイバラ台木

私の周辺では野生のノイバラが自生していますが、自然の株は根の状態など、台木や母木として使うのに状態の良いものはそう簡単には見つかりません。良い台木を入手する簡単で確実な(?)方法は、「台芽が出て接ぎ木した部分が枯れてしまった(けど、台木は生きている)」という株を貰い受けることです。そんなに都合のいいことがあるのか怪しいですが、私がバラの栽培に関心を持った時期に、我家には3株もありました(笑)。台芽を伸ばし、それを母木にしました。あるいは意図的に、栽培品種の不要な株(接ぎ木株)を首の部分で切断すれば、台芽が出る可能性があると思います。

良い台木を入手する簡単で確実な方法は、「バラの接ぎ木講座」に参加する機会があれば、そこで提供される台木を1株「母木」として植えればいいのではないでしょうか。もしその台木の「品種名」がわかり、それが根頭癌腫病に強いとされる選抜種だったらラッキーなんですけどね。

これは2013年2月にかのやばら園で開催された "Gardening with David"(デービッドさんのガーデニングセミナー)で提供された台木です。福岡県田主丸(たぬしまる)のI農園で生産されたものだそうですが、根量も多く理想的な台木ですね。

2-2 実生台木

実生苗作り

私の場合は、12月頃にノイバラのローズヒップを採取し冷蔵保存して1月に播種します。または12月か1月に「採り蒔き」します。2013年1月21日の記事「バラの実生苗を作る

バラのタネ播きをするために、バラの実(ローズヒップ)からタネを取り出す

タネの準備

果肉に含まれる「発芽抑制物質」(ABA=アブシシン酸)を洗い流すことがコツです。プロが準備した10Lバケツいっぱいのタネの写真をデービッドさんに見せてもらったことがありますが、真っ白になるほどきれいに洗われていました。

『休眠を打破し発芽させるためには寒さに遭わせることが必要』
だそうですが、そうでない事例も知っていますので、詳しいことはわかりません。私の場合、昨年までは1ヶ月以上(6週間)6℃で冷蔵保存してから露地に播種しました。今年は「採り蒔き」を試しています。土の中で寒さに遭わせるという方法です。

播種は、大量の場合は露地(畝)に、少量ならプラグトレイを使う場合が多いようです。ノイバラの発芽率はかなり高率ですから、あまり密に播くと後で間引きがタイヘンになります。

タネ播きから約80日後のバラの幼苗

播種後約80日の実生苗

バラ苗生産農家は 実生苗 です。1シーズンに数万から数十万本の台木が必要なのですから、挿し木で台木を生産するのは無理な話です。
アマチュアでも実生苗を作っている方を知っていますが、1年で台木に使えるような太さ=鉛筆程度に育てるのは簡単ではなく、間引きや定植を含めしっかり肥培管理する必要がありそうです。

上2本はプロ、下2本が私の播種後約80日の実生苗です。プロの苗は無理に引き抜いて根が切れていますので根の長さや量は無視して、バッドユニオン(初生葉の位置)から根の間に注目。ここが長くて真っすぐなのが良苗。写真で違いが見えるでしょうか? これを「浅植え」するのも良苗を作るコツのひとつだそうです。

プロの台木作りの一部を紹介した記事: 2012年4月29日「ノイバラ台木の実生苗作り(プロの場合)−2

実生台木への芽接ぎ

2012年2月9日「バラの種ばら播き」で播種し発芽した実生苗を、高畝に定植して「F芽接ぎ」の地植え台木として使いました。播種から8ヶ月半後、10月29日の芽接ぎ作業の様子です。

ノイバラの地植え台木に芽接ぎをする 芽接ぎをする地植えのノイバラ台木

株間15cm X2条の密植ですがこの程度に生育しました(作業の邪魔になる枝を少し切り捨ててあります)。肥料不足だったのか「T芽接ぎ」用の台木としてはやや細いと思われたので「F芽接ぎ」に変更しました。
このまま1月まで育てれば、(もちろん)デービッド接ぎや切り接ぎの台木として使えます。

写真右上:芽接ぎをやりやすくするため、直管で手前側の枝を起こし株元の土(畝の肩)を削っています。苗の植付けがやや深すぎたようで、数本の枝が出ているバッドユニオンから根が出ている部分ギリギリまでは地上にあるべきですね。こういう細かな(だけど重要な)ことは『やってみなけりゃわからない』という貴重な経験でした。

この株間は、私が話を聞いたプロの場合は 12cm だそうです。プロの掘り上げは「機械掘り」ですから問題にはならないのかもしれませんが、手作業で掘る私の場合は絡み合った細根の切断が気になります。根の絡み合いを防ぐことが「どこでもグリーン」という植栽器と根域制限をする「バッグフィルター」のセット開発のきっかけになりました。

また、台木用のノイバラを育てる場合は株間12cmの2条植えという密植でもだいじょうぶなんだということも知りました。根だけではなく枝も絡み合うのですが、光合成を大きく妨げるほどではなさそうです。でもこのノイバラ株の枝の伸び具合をプロが育てたものと比較すれば、肥料(特に窒素)不足は否めないようです。

参考事例:いぶし銀のバラ屋:「ようやく芽接ぎが半分終わりました!!」

さすがにブロの仕事ですね、台木の枝が素直に伸びています。この台木は枝葉の状態から見てふつうのノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)ではなさそうですね。ご本人は『ノイバラ』と言ってありますがそれは厳密な区分ではなく、たぶん台木用に育種された品種なんだろうと思います。

「胴長美人」の台木

実生と挿し木の区別なく、台木の最も重要なポイントは枝が出るバッドユニオンの間の状態です。この部分が素直に長く伸びている台木が、デービッド接ぎでも切接ぎでも、あるいは芽接ぎでも作業がしやすいです。

芽接ぎしたバラがノイバラ台木で芽吹き直前

そのような実生台木(喩えて言えば "たおやかな胴長美人")を作るには幾つかの「コツ」があるようです。このページの冒頭で紹介したプロが作った実生台木。まるで挿し木苗のように主茎が切れて枝が出ていますよね。これはどうしているのだと思いますか?

左の写真(実生の地植え台木にF芽接ぎ)で、多くの枝(芽=bud)が集中して出ている部分がバッドユニオンです。

この台木もまるで挿し木のように主茎が切れていますね。そうなんです、定植時に「茎を切る」のです

参照:

写真左:2012年10月23日 F芽接ぎ、13年2月9日の状況。赤い小さな芽が接ぎ木テープを突き抜けて芽吹こうとしています。バッドユニオンの下がこの長さだと接ぎ木作業が楽です。

2-3 挿し木台木

台木にするノイバラの挿し木は、栽培品種と同じように年間3回ほど作業のチャンスがあります。私が選んだノイバラの場合、「休眠枝挿し」は生育期間中に(プロが使う実生苗と比較して)大きく硬くなり過ぎる傾向があります。「緑枝挿し」は挿し穂の活着率は僅かに落ちるものの、7ヶ月後の接ぎ木シーズンには適度な大きさに成長します。
「秋挿し」の場合、10月中旬に挿し木して3〜4ヶ月後には台木として使用するのですが、生育期間が冬ですから茎はほとんど太くなりません。なので、あらかじめ「台木に適した太さの挿し穂」を用意します。接ぎ穂の茎の太さはマチマチですから、いろんな太さの台木を準備できる挿し木による台木作りは優れた方法ですね。デービッドさんにもほめてもらいました(嬉)。

挿し木で「胴長美人」を作るには、穂木の節間の長い部分を選んで挿し穂にします。この部分の節を無視して接ぎ木をすると、台芽の発生に悩まされます。特に、長い挿し穂を使う場合は注意が必要で、枝を出す節と根を出させたい節をはっきり区別してから穂木を切ります。ただしそれでも 台芽の発生は挿し木台木の欠点 です。

*註:茎が太くなるHT品種と比較して、人気のある最新品種の接ぎ穂に適した枝は細いことが多いようです。その多くがオールドローズやイングリッシュローズ(シュラブ系)の系統を色濃く反映しているからでしょう。そのような細い接ぎ穂には細めの台木が接ぎやすいと私は思います。プロは実生台木ですからその太さはほぼ一定です。それにいろんな太さの枝を接ぐのですからさすがですね。

ノイバラ台木の緑枝挿し

ノイバラ台木の「根域制限栽培」

2013年は緑枝挿しと秋挿しを、畑ではなく「どこでもグリーン」という植栽器と「バッグフィルター」を使って計100本ほど挿しました。この写真がその結果(緑枝挿し)です。畝に挿し木した台木とは根の様子が大きく異なります。

ノイバラ台木の秋挿し

秋挿し台木の例

秋挿しでは「冬のこの期間でどの程度の発根量があるか」ということが気になりますが、これは 秋に挿し木して作った台木です。
デービッドさんご本人によるデービッド接ぎのデモ。2014年2月。

上の写真の青いバッドに入っているのは7月上旬に挿したものですが、比較すれば根量の違いが一目でわかります。また、秋挿しは新梢も若く短いのですが、このような秋挿し台木でも使用できます。

この台木の生育期間は冬の4ヶ月間でした。ハウス栽培ではなく簡易なビニール被覆で防寒しただけ(無加温)です。しかも午前中3〜4時間ほどしか陽が当たらない場所にあったのですが、ノイバラは強いですね、それなりに根を伸ばし新梢を展開しています。日当りの良い環境で上手に肥培管理すればもう少しは根量も増えるだろうと思います。この作業は前述の「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」で報告しています。

スタンダード台木の秋挿し

スタンダード仕立てを作るための台木は、私はすべて秋挿しです。その方法は、2014年11月13日の「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」の後半で紹介しています。

台木用ノイバラの挿し木 過去ログ(日付は投稿日)
挿し木内容 投稿日 記事タイトル(リンク)
休眠枝挿し(畝) 2012年2月1日 台木用ノイバラの挿し木
休眠枝挿し(畝/3ヶ月後) 2011年5月1日 台木用ノイバラの挿し木(2011年春)
緑枝挿し(畝) 2011年6月24日 台木用ノイバラの緑枝挿し
緑枝挿し(植栽器/2013年) 2014年11月9日 成功率100% 台木用ノイバラの緑枝挿し
長尺秋挿し(ポット) 2011年10月5日 ミニバラ用スタンダード台木の挿し木
秋挿し(植栽器/2013年) 2014年11月13日 台木用ノイバラの秋挿し

緑枝挿し/秋挿し どちらがベター?

2014年12月追記:今年の秋挿しは10月7日に「どこでもグリーン」に挿しました。1ヶ月後には発根し、2ヶ月後には上の写真とほぼ同じ根量になっているのを確認しました。既に台木として使用可能な状態で、根も前年の秋挿しよりもやや太いようです。予定している接ぎ木作業まで後1ヶ月ありますので、さらに充実すると思われます。

この2ヶ月の栽培期間はまったく手間入らずで、もちろん病虫害もなく、ほぼ100%の成功率(途中経過)です。
夏越しさせる「緑枝挿し」よりも栽培が楽なのは間違いありません。

この結果から、来年の台木作りは、10月1日にしようかと思います。10月1日というのは私が住んでいる地域では標準的なダイコンのタネ播き時期です。これは単なる偶然ではないような。。

台木作りの実生と挿し木、接ぎ木方法の切接ぎ(デービッド接ぎ)と芽接ぎ。これは時期を合わせれば組み合わせが可能です。プロ(バラ苗生産者)の台木は「実生」です。実生台木に切接ぎが一般的ですが、芽接ぎに自信を持っている生産者もあります。

T芽接ぎ(T-budding)の誘惑

このページはデービッド接ぎのための穂木と台木の準備について書き進めてきたのですが、次第にテーマがズレてきました。デービッド接ぎではそれなりの成果が出し始めたのに対し、芽接ぎ、特にT芽接ぎはまだ失敗も多い状態です。

『スタートダッシュの良い芽接ぎ苗』

愛媛県の相原バラ園さんの「私たちのバラ苗づくり」というページを読むと、芽接ぎもぜひ習得したいという気持ちが膨らんできます。10月という良い季節に作業できるのも魅力ですし。

今年は秋挿しでノイバラを150本ほど挿しています。ローズヒップも(これが台木になるのは1年後ですが)採取して冷蔵保存しています。「T芽接ぎ」も優れた接ぎ木方法だと思うのですが、自分でもちょっと気が重いのは、栽培が長期間で手間がかかるから。・・と言うのは嘘で、私の「T芽接ぎ」の成功率が「デービッド接ぎ」よりも低いからでしょう。

実生の地植え台木にT芽接ぎ 作業時期と内容/福岡県基準

  • 11月下旬  ローズヒップの採取 冷蔵保存6週間
  • 1月上旬  播種(畝またはトレー)
  • 5月6月  定植 播種後4〜5ヶ月で茎の太さが爪楊枝程度になったら、茎を切り高畝に定植
  • 10月中旬  T 芽接ぎ(適期は11月中旬頃まで。寒くなると表皮が剥がしにくくT芽接ぎは難しい)
  • 2月中旬  台木カットと鉢上げ(プロ:1月上旬に掘り上げ2月上旬まで冷蔵保存。その後温室)

挿し木台木 T芽接ぎ」という方法もあるのですが、これまで何度か参照した久留米市田主丸のバラ栽培農家・バラ息さんのブログ「いぶし銀のバラ屋」という具体的で参考になるページ(2009年前後の記事)があるのでそれを参考に「 実生台木 T芽接ぎ」も楽しめそうな気がします。

補記:この「いぶし銀のバラ屋」というブログはバラ息さんの日記で、栽培ガイドの類ではありません。でも、芽接ぎに興味がある私には、そこに掲載されているバラ関連の作業の写真がとても参考になりました。「日記」なので芽接ぎ関連の情報を丹念に探す必要がありますが、例えば前述の、芽接ぎをしやすくするために直管を利用した枝の始末や、畝の手前側の肩を削るというのは、バラ息さんに教えていただいたテクですし、「パワフルアミノ」というプロが使う肥料を知ったのもバラ息さんのおかげです。ありがとう。

4 バラの接ぎ木 アマチュアの楽しみ 「プロに学ぶ プロの真似をしない」

"Commercial rose budding grafting" という YouTubeビデオ を見て驚きました。米国では一般的な台木の"dr. huey"(ドクターヒューイ)のスタンダード台木にT芽接ぎをする接ぎ木職人Stuart Taylorさんの手さばきを紹介しています。彼は(パッチャーと組んで)1日 3,000本を接ぐのだそうです。私の地元・福岡の接ぎ木職人さんご夫婦は切接ぎで1日1,000本程度だそうですから(この数にも驚きますが)、3,000本というそのスピードは、あまりにも速すぎて何をしているのかよく見えませんね。

この作業スピードは「台木の表皮の剥がしやすさ」がポイントなのだろうと思います。私がやってもこのように簡単にきれいには剥がせません。たぶん台木の品種と接ぎ木の時期がポイントなんでしょうね。欧州の接ぎ木職人さんのビデオ(台木はたぶん別品種)も見たことがありますが同様の速度だったので、台木の品種よりも時期やテクニック、あるいはもしかして良く切れる「芽接ぎナイフ」ゆえなのでしょうか?(笑)

『1本接ぐのにどれくらい時間がかかりますか?』とデービッドさんに質問したことがありますが、これは全くの愚問でした。私のようなアマチュアのバラ栽培者にとって、作業に要する時間なんか問題ではありません。重要なのは、安全に接ぎ木作業を楽しむことです。いや、接ぎ木作業そのものだけではなく、例えば接ぎ穂の新芽がテープを突き抜けて成長する様子など、自分で台木を準備してそれに接ぎ木したバラを育てる、その全行程を楽しむことだろうと思っています。私が準備すべきは穂木や台木だけではなく、そのような「余裕のある心構え」のようです。この「余裕」は、アマチュアの特権 でしょうね。

2014年11月13日木曜日

バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し

バラの接木に使う台木をノイバラの秋挿しで作ります。栽培期間は4か月。翌年2月には台木として使用できます。緑枝挿しとの生育差を比較しノイバラ台木の挿し木時期を考えます。併せて、台木用のノイバラ母木とスタンダード仕立ての台木を育てる方法を紹介します。

2013年のシーズンは「環境に優しいオーガニックバラ栽培講座」の準備や運営に多忙で、休眠枝挿しや緑枝挿しでは大量の台木を作ることができませんでした。接ぎ木講座で使用する台木の不足が心配されたので、急遽「秋挿し」をして追加することにしました。この記事は「高品質で手間のかからない台木作り」の試行錯誤の一環です。

挿し木の方法は、「台木用ノイバラの緑枝挿し」や「栽培品種の秋挿し」と同じで、「どこでもグリーン(DG)」と「バッグフィルター(BF)」のセットを使用しました。DGとBFについてはこれらのページで説明していますので、ここでは省略します。この記事のトピックスは以下の4点です。

  1. プラ鉢での挿し木と比較
  2. 緑枝挿しとの比較
  3. 挿し木の適期と台木用母木の育て方
  4. スタンダード台木用ノイバラの秋挿し

挿し木作業は2013年10月18日でした。20日後には挿し穂に小さな芽が出ています。でも発芽と発根の関係は単純ではなく、芽の大きさと根の長さは必ずしも比例しません。挿し木20日後の今は、まだほとんど発根していないでしょう。

どこでもグリーンにセットしたノイバラの秋挿し バラの接木の台木になるノイバラの挿し穂

発根確認 挿し木30日後 11月19日

ノイバラの場合、およそ1ヶ月で発根し始めますから、その状態を確かめてみようと思います。

プラ鉢の場合

10月18日の挿し木作業時に、BFだけでなく5号プラ鉢(スリット鉢)にも6本挿しておきました。生育の程度を比較してみようと考えたからです。

挿し木用土が白いのはパーライトが表面を覆っているからです。パーライトに挿したのではなく、用土に含まれている細粒のパーライトが潅水の度に浮き上がってこのような状態になりました。比較テストですから用土はBFと同じ赤玉土がメインで、気層の確保のために3割程度のパーライトを入れているわけです。BFでは土が動きませんからこうはなりません。

スリット鉢に挿し木したノイバラ 挿し木から1ヶ月ノイバラの発根

その発根状態ですが、2cmほどのかわいい白根が出ていました。
根が出ている部分も注目。挿し穂の基部のカットした部分ではなく「茎の節」(芽の原基があった部分)ですね。通常ならばここから芽が出てくのですが、「分化全能性」を持つ植物細胞はすごいですね。
写真ではよく見えませんが、先端部分のカルスはまだできていないようです。しかし切断部分付近がわずかに膨らんでいます。カルスができる前にはこの部分が膨らむので、やがてここからも根が出てくるでしょう。

ノイバラの「水挿し」で挿し穂のカルス生成を日を追って観察すると、基部のカットした部分に近い位置に芽(の原基)がある場合は、挿し穂はまずそこから発根するべくエネルギーを集中するようです。そのほうが有利なんでしょうね。ただし、カルスの生成や発根・発芽には植物ホルモン(オーキシンやサイトカイニン)が密接に関与しており、その濃度によって様々な変化を示すようですから、少ないテスト数で断定することはできません。

挿し穂の芽はまだほとんど動きが見えません。写真に写っている葉は元から挿し穂にあったものです。現段階は「新葉が展開される前に発根している」という好ましい状態です。

DG+BFの場合

プラ鉢への挿し木と大きな差は無さそうですが、よく見るとより多くの白根が出ているようです。新芽も伸び始めています。この挿し穂は引き続き育てたいので、根鉢は崩さず(根量を確認しないまま)元のBFに戻しました。

バッグフィルターに挿し木したノイバラ
バッグフィルターに挿し木したノイバラの発根

栽培終了 挿し木4ヶ月後 2014年2月14日

ビニールを被せただけの簡易な防寒で冬を越して、デービッドさんによる接ぎ木講座の前日、準備のために台木を取り出しました。ノイバラは冬の間も少しずつ根量を増やしていたようです。

プラ鉢とDGの比較

スリット鉢とバッグフィルターに挿した台木用ノイバラの挿し穂 スリット鉢とバッグフィルターの根量の比較

右の写真の左2本がプラ鉢(スリット鉢)に挿したもの、右2本がDG+BFに挿したものです。根長はDG+BFが2倍ほど長く、根量(発根本数)はプラ鉢が僅かに多いようです。プラ鉢の根長が短いのは「スリット鉢」ゆえでしょう。短いけど根の状態は良さそうです。

プラ鉢はやっと新葉が出始めたという状況です。春まだ浅い2月14日ですからこんなものでしょうが、鉢の置き場を選べばDG+BFと同じ程度には育ったでしょう。

このプラ鉢に挿した結果を見ると、挿し木時期の選択や、ポットの種類と大きさ、その後の管理に留意すれば、デービッド接ぎの台木として充分使えるように育つと思います。予定している接ぎ木の本数が少ないなら、「秋の初め頃に駄温鉢にちょっと挿しておく」というので台木ができるでしょうね。

DG+BFは『小さな面積でも大量の挿し木ができる』というコンセプトで開発されています。もし畑の畝や一般的なプタンターでこれだけ密に挿せば、根が絡み合って厄介なことになるでしょう。

緑枝挿しと秋挿しの比較

緑枝挿しで作ったノイバラ台木 秋挿しで作ったノイバラ台木 秋挿しで作ったノイバラ台木も接木の台木として使える

緑枝挿し(上左/デービッド接ぎに不要な枝とBFからはみ出した根は既に切断してある)との差は歴然としています。しかし、比較すれば貧弱な秋挿しのこの程度の根量でも、デービッド接ぎの台木として使うことができます。(写真右/2014年2月15日/デービッドさんご本人による「デービッド接ぎ」のデモ)

それは私の接ぎ木の結果からもわかります。2014年の私のデービッド接ぎ43本は、緑枝挿しと秋挿しの両方の台木を使って失敗はありませんでした。

でも、このように並べて緑枝挿しと秋挿しを較べれば、台木用の秋挿しがこのままの方法で良いのか疑問が湧いてきます。もし1月に接ぎ木をしたい場合、これでは心許ないですね。

これをちょっと意識して今年のノイバラ台木の秋挿しは10月7日に(去年より12日間前倒しして)挿しました。挿してそう間もなく新葉が展開し始め、1ヶ月後には発根していることも確認しました。

今このようなページを作り台木の挿し木から接ぎ木作業、そしてその後の生育をあらためて振り返ってみると、やはり緑枝挿しの台木がより良い結果になっているようです。デービッド接ぎのページで紹介している茶色の6号プラ鉢の接ぎ木は、すべて緑枝挿しの台木に接いだものです。秋挿し台木でももちろん使えますが、その栽培は挿し木時期を含めもう少し工夫する必要がありそうです。

私の目的は「高品質で手間のかからないノイバラ台木作り」なので、緑枝挿しでは夏越しさせる手間がかかり、BFを突き抜けて根が伸びるという問題があります。2014年11月9日「バラの挿し木 台木用ノイバラの緑枝挿し」参照
DG+BFを使用し、福岡県という私の環境で、私が選んだノイバラ品種の場合では 9月初旬が挿し木適期かも しれないと、今は考えています。

2014年12月追記:今年の秋挿しは、1ヶ月後には発根し、2ヶ月後には前年の秋挿し4ヶ月後とほぼ同じ根量になっているのを確認しました。挿し木作業を去年より12日間前倒ししたのと、発根確認後の1ヶ月間に数回液肥をやった効果は大きいようで、既に台木として使用可能な状態です。予定している接ぎ木作業時期までは後1ヶ月ありますので、さらに充実すると思われます。

秋挿しのこの2ヶ月の栽培期間は、潅水以外はまったくの手間入らずで、もちろん病虫害もなく、ほぼ100%の成功率(途中経過)です。夏越しさせる「緑枝挿し」よりも栽培が楽なのは間違いありません。来年はさらに前倒しして9月が挿し木の適期かどうか試してみたいと考えています。

BFからは既に根が突き抜け始めています。テスト用に6本を鉢上げしましたが、BFから取り出す際に成長途中の根が切れるのは我が身を引きちぎられるようにつらいです。挿し木時期や管理を含めて、何かいい方法を考えねば。。

スタンダード台木用ノイバラの秋挿し

添え木が不要な大型のスタンダード仕立てではなく、イングリッシュローズなど比較的小型の品種に適したスタンダード仕立ての台木作りの話です。

10月に挿して4ヶ月後の2月に接ぎ木します。栽培期間は冬ですから、枝は長くも太くもなりません。発根させるのが目的です。

スタンダード仕立ての台木を作るためのノイバラの長尺枝は、過去3年間で、バラサークルでの共同作業分を含め 計120本程度を挿しました。すべて秋挿しです。最初のチャレンジは2011年でした。その様子を記録しています。

2011年10月5日:「ミニバラ用スタンダード台木の挿し木

記憶が曖昧ですが、この年の協同作業で数本失敗したかも。。たしか、採穂後の水切れと、「まず乾いた用土に挿して、後から水をやる」という間違った方法が原因でした。

スタンダード仕立てのイバラ台木を秋の挿し木で作る

このようなミスを防げば、長尺挿し木は意外に容易です。
その方法は;

  1. 10月のノイバラは蒸散量が多いので、採穂後の「水切れ」に注意
  2. 挿し木用土や挿し穂基部の調整は、ふつうの挿し木と同じ
  3. 挿し穂(長尺枝)の先端30cm程度は葉を残しておく
  4. ポットはやや大型のものを使う。私の場合は4号か5号のロング
  5. 空のポットを予定の位置に置き、3本の支柱を "横に" セットする
  6. 挿し穂の基部がポットの上部から1/3程度の位置になるよう、支柱に挿し穂を素早く(3カ所で)固定する
  7. 湿らせておいた挿し木用土をポットに入れ、充分に潅水する(6〜7は、挿し穂の切り口が乾燥しないよう手早く作業)
  8. 冬期はポットを寒さから守る処置をして根の伸びを促す

*註:先端の葉を残す理由には確たる根拠がありません。葉があれば光合成をするし水分の蒸散も多いので、挿し穂の活性が高いのではと思うのです。切れば挿し穂はその傷の対応もしなければならないし、もしかしたら新芽を出そうとするかもしれません。この場合必要なのは「発根」ですから、先端の葉を切る理由もないですね。・・と思います。

長尺挿し木の成功率が高いのは、その長い枝の内部に多くの養分を溜め込んでいるからでしょう。そのための穂木は、上記の2番の枝を真っすぐ上に伸びるように(必要な場合は支柱をそえて)育てるのがポイントです。撓むと枝の伸びが止まり途中から3番の枝が発生します。

スタンダード台木に限らず、台木にするノイバラはのびのびと大きく育てるのが良さそうです。節間が短いと接ぎ木がやり難いので、ノイバラとは言えど放任ではなくある程度は肥料を与え、枝の整理をします。長く伸びた2番の枝全体が充実するのはやはり10月になるのかもしれません。開花後に株元から伸びてくるベーサルシュートをそのまま真っすぐ育てて長尺の穂木にすることもありますが、これも充実するのは10月のようです。

スタンダード仕立ての挿し木でおもしろいと思うのは、芽接ぎと挿し木を同時におこなう「芽接ぎ挿し」です。伝聞ですが、スタンダード仕立ての大手生産者はこの「芽接ぎ挿し」なんだそうです。これには幾つかのバリエーションが考えられるので、現在何株か私なりのテストをしています。結果が出たらその方法をレポートしようと思っていますが、それは数年後の話ですね(笑)。

2014年11月12日水曜日

秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し

バラの栽培品種の挿し木を、秋に挿し木する「秋挿し」の例で紹介します。バラは厳寒期や梅雨時だけでなく、秋にも挿し木が可能です。接ぎ木バラに遜色がない生育を示す品種が幾つもあり、簡単な作業で高品質な "Own Root Roses"(挿し木バラ)栽培が楽しめます。今回は「どこでもグリーン」という植栽器を使用した挿し木です。

私が最初に購入したバラ栽培のガイドブックには、『バラの挿し木はやってできないことはないが・・物好きならやってみるのもいいでしょう』という意味のことが書いてありました。たぶん筆者はHT品種を意識していたのだろうと思います。たしかにHTの挿し木苗の生育は接ぎ木に較べると見劣りすることが多いようです。
しかし挿し木苗の樹勢の中庸さは場合によっては良いことでもあって、例えば樹高が2メートルにもなる直立性の「クイーン・エリザベス」は、挿し木で育てると程よい高さ(近寄って鑑賞するのに適した目の高さ)で花を咲かせます。

『バラの挿し木なんて簡単。剪定クズを庭の隅にちょっと挿しておけばいい』という話もよく耳にします。これもまた事実ですね。品種と挿し木の時期を選べば、バラの挿し木は難しいことではありません。
(でもそう言う人に限って発芽した挿し木苗のその後に興味を失い、大きく育った株は皆無というのも事実です)

市販されているバラ苗の大部分は接ぎ木苗ですよね。これはなぜでしょう、挿し木苗は商品価値が低いからですか?
もしそうだとしたら、その理由は「育ちが遅い、花が少なく小さい、耐病性が弱い」などが理由でしょうか。
でも、「育ちが早い、花が多くて大きい、耐病性が強い」というバラを生産する切り花栽培農家は、すべてが接ぎ木苗ではありません。品種によっては挿し木苗も使います。

私は樹勢が強く豪華な花を咲かせるHT系よりも、風にそよぐオールドローズやイングリッシュローズが好きなのですが、それらの多くは挿し木でも増やすことができます。品種によっては接ぎ木と較べても遜色がありません。
接ぎ木と挿し木、樹勢の比較だけではなく、それぞれが持つ雰囲気も含めて、私にあった栽培方法の模索は続きます。

Own Root Roses(挿し木バラ)栽培をエンジョイする

この写真は 2014年5月22日に撮影したものです。
左から 挿し木苗(7ヶ月)、デービッド接ぎ(3ヶ月)、そして右は購入新苗(芽接ぎ/たぶん7ヶ月)です。

以前にも紹介したことのあるPaul Zimmermanさん(Paul Zimmerman Roses)のYouTubeビデオ(英語);

"The Difference Between Own Root and Grafted Roses"

このビデオでは、自根(own root/挿し木)苗と接ぎ木(grafted/欧米ではT芽接ぎが一般的)苗の違いの説明した後に、自根バラの利点を述べています。HTや切り花品種,展示会に出すバラを除く、ガーデンローズ(シュラブやクライマーやランブラーなど)には自根バラを薦めています。その理由は、自根だから次々に新しい cane (茎/シュート)が出てみごとなブッシュを作ることと、寒さに強いことなどを挙げています。

誤訳混じりの超意訳;

『接ぎ木の方が初期生育が早い』というが必ずしもそうではないんだよ。なぜなら、接ぎ木苗は購入する時点で既に2歳半なんだ。台木の育成に半年、接ぎ木後の育成に2年。それを2歳半の挿し木株と較べたら、どちらが初期生育が早いか一目瞭然だろ。
「我田引水」というか、なぜか笑ってしまうほど強引な比較ですが、妙に納得するところがあります。
ちなみに日本では台木の育成に1年、接ぎ木後に1年で、計2年です。大苗の出荷時は満2歳ですね。
上の3株をポールさんのような言い方をすれば;
左の挿し木苗は7ヶ月、中央のデービッド接ぎは11ヶ月、そして右の購入新苗は推定1年4ヶ月になります。

この7ヶ月の挿し木苗が右の芽接ぎ苗と同じ満1年4ヶ月になる9ヶ月後は、芽接ぎ苗の現状よりかなり大きくなっていることでしょうね(品種が異なりますから単純な比較はできませんが、ポールさん並の強引な比較です/笑)。

"Your Own Root Roses' First Season" というタイトルのビデオでは、"less" をキーワードに自根バラ1年目の育て方を説明して、

挿し木バラの栽培で最も重要なことは patience(我慢・忍耐)
と言っています。例えば、早く大きくしたい欲求にかられて肥料をどんどんやりたくなるのを『我慢』するとか。

  私のこのでかい手のひらも赤ん坊のときは小さかった。赤ん坊のバラが育っていく、その過程を見守ることをエンジョイしてください。

10月30日 秋挿し

そうですね。では -Own Root Roses- 挿し木バラの栽培をエンジョイしましょう。まずは挿し木作業です。

1)「どこでもグリーン」の準備

2013年の挿し木は、前年までの露地(畝挿し)とは異なり、「どこでもグリーン」(以下 "DG" と略)という植栽器と「バッグフィルター」(同 "BF" )の組み合わせで挿し木をしました。この濃緑色の容器がDGです。(これは新品ではなく外側が汚れています)
どこでもグリーン」については製造元の(株)福瑛舎のページをご覧ください。同じようなことを「バラの挿し木 台木用ノイバラの緑枝挿し」でも説明していますから、併せて参照してください。

まずDGを水平な場所に置き、その底に防水シートを敷きます。その上に「日向ボラ土」を乗せます。私は「中粒」を使いました。厚さは3〜4cmほどです。この段階でDGに水を張り、ボラ土の表面が水平になっているか確認します。底の防水シートの側面への立ち上がり具合や、入れたボラ土の量で水平を微調整します。

このときはDGをパレットの上に直置きしましたが、今年14年はパレットとDGの間に発泡スチロールの厚い板を置いて断熱性を高めています。秋挿しの栽培期間は冬なので、この期間に発根させることが最も重要ですから、屋外で栽培する私の場合は挿し木用土の温度が気になります。

2)「バッグフィルター」と挿し木用土

下の写真は挿し木作業のようすです。左に調整済の挿し穂があります。長さが約20cmで、基部は「片クサビ型」です。「片クサビ型」というのは斜め切りの先端を逆側から軽く切り戻した形です。

挿し木の重要なポイントは、接ぎ木と同様に「穂木の充実度」でしょう。栽培品種の秋挿しの場合、私は3番花が咲いた枝を穂木として使うことが多いのですが、今回は4番花の「開花枝」も挿してみました。

中央は挿し木用土で、赤玉土を主体にバーミキュライトと細粒のパーライトが混ぜてあります。挿し木用土は保水性もさることながら、気層の確保が重要です。市販の挿し木用土は保水性を上げるためにピートモスを混ぜてあるものが多いようですが、「バッファ層」を備えたDGにはピートモスは不要です。「緑枝挿し」のような長期間の栽培では、ピートモスは分解されて最終的に泥状になりBFに絡み付いて空気の流れを妨げるので、BFには向かないと思います。

手順

  1. あらかじめ湿らせておいた用土をBFの上部まで(紐を通す穴の高さまで)しっかり詰め込みます。これには約1.2リットル入りますから、挿し穂の数がわかっていれば必要な用土量が計算できますね。
  2. 棒を使って、用土の中央に直径1cm、深さ5〜7cmほどの挿し穴を作ります。挿す深さは挿し穂の長さの1/2以下にします。BFは20cmほどの高さがあるので、発根した状態を考えれば、挿す深さは7cm程度が適当でしょうか。
  3. 挿し穂をそっと差し込んだら、挿し穂の先端に土になじませるつもりで土をギュッと押し込みます。
  4. 附属の紐を通して、挿し穂の首を絞めるように、きつめに結びます。BFに用土を充分入れてあるので、実際には紐が首を締めることはありません。下右の写真を拡大すれば、それがわかります。

TIP:あらかじめDGに用土をしっかり詰めておけば、この紐を結ぶときに全体が締まります。これで挿し穂の基部に空隙ができたり、あるいは挿し穂がぐらつく心配がなくなります。

品種名を書いたラベルを付け仮置きしておきます。写真では見えづらいですが箱の中には水が入れてあり、この段階でしっかり吸水させます。

3)セッティング

全部の挿し穂を挿し終えたら、それをDGにセットしていきます。このときは周辺部分から並べ始めました。

並べ終えてから、『周辺部は乾きすぎるのではないか?防寒のビニールをかけたときに邪魔になるのではないか?』と思ってやり直しました。

でもこれは結果的に不正解でした。下の写真のように並べられたBFで生育が良かったものは、周辺部と中央部のどちらだと思いますか?
答えは「周辺部」です。この結果から、挿し穂の成長にはより多くの酸素が必要なんだと再認識しました。DGにスペースの余裕があるなら、写真上右のように中央部に空きを作り、そこにボラの中粒を入れて空気が出入りしやすくするほうが好結果になります。これは他の事例でも同様でした。

並べ終えたBFの隙間にボラ土を詰めていきますが、濡れたボラどうしがくっついて、けっこう手間のかかる作業です。乾燥した小粒あるいは細粒のボラを流し込むのがいいかもしれません。

たっぷりと潅水するとDGの側面から水が滲み出てきます。それを確認したら挿し木作業は終了です。

この後、下の写真にあるように、DGに備わっているリングを利用してドームを作ります。210cmのポール4本と園芸用の不織布を使いました。目的は「風よけ」です。秋挿しといっても葉がついているので挿し穂は盛んに蒸散しています。風があたるとそれが過度になるのを防ぐためです。不織布は薄くてスカスカですが、それでもけっこう効果があります。これで温度の過上昇もある程度防げますし。

11月7日 水は上がっているか 挿し木1週間後

挿し木初期の失敗は水が上がらず枯れることです。挿し木後1週間ではその兆候は見えません。まず一安心です。

潅水は、挿し木後1〜2週間はほぼ毎日、その後はボラの乾き具合を見て行いました。初期の潅水は多めに、温度は高くならないようにを心がけています。

11月19日 「プチプチ」で冬対策

11月中旬には寒くなってきたので、カバーを寒冷紗から梱包用の「プチプチ」に変更しました。DGの胴の部分は2重に巻いています。上部の白いものは「換気用」のプラ鉢です。

ドームの内部には温度計が入れてあり、内部の気温が24℃を超えると「プチプチ」を開口します。プロの大型ハウスではコンピュータを使った自動制御ですが、私のは手動です(笑)。この私の手動装置は極めていい加減なものなので、放置による気温の過上昇を避けるために「換気用」のプラ鉢が必要なんです。これはいちおう「自動」ですね。効果の程はよくわかりませんが。

このような状態で冬を過ごしました。12月になっても挿し穂は休眠していないようです。この頃から挿し穂の一部に枯れるものが出始めました。

台木用ノイバラの秋挿しの場合、挿し穂は1ヶ月を経過した頃から発根し始めるようです。栽培品種はノイバラよりもおとなしいので、発根の時期はやや遅いと思われます。厳寒期でもあるしこの期間は肥料をやりませんでした。寒さのピークが過ぎた2月中旬頃から3月中にかけて、標準よりも倍に薄めた液肥を潅水代わりに2〜3回やりました。

2014年12月追記
栽培品種の秋挿しの場合、挿してから6週間(発根時期の目安)が過ぎたら薄い液肥をやり始めていいと思います。このような環境下での挿し穂は、厳寒期でも休眠していないと思われます。

3月21日 サクラ咲く

庭のサクラがほころび始める頃には、挿し穂は急速に成長していきます。左の写真に見える「葉」は挿し穂に元から付いていたものではなく、春になって展開した「新葉」です。
よく見ると既に蕾がついています。秋の挿し木は2月から3月に蕾をつけることが多いようですが、これはもちろん摘蕾します。

4月6日 散りゆくサクラの下で 鉢上げ

栽培品種の秋挿しでは鉢上げの適期がいつ頃なのかよくわかりませんが、やってみることにしました。

作業途中の写真で、手前側はすでに鉢上げを終えた空きスペースです。ボラの上にBFの中身(挿し木用土)を出しています。これは畑に撒いて野菜の栽培などに再利用します。

DGの両サイド側にある挿し穂が見えないBFは、失敗して枯れてしまった穂木を取り除いています。この時点で枯れてしまったものは、記録を残している品種計50本のうち半数の24本でした。

失敗した数の多さに驚かれるかもしれませんが、これらの50本はいずれも挿し木は難しいという品種だったり、またはそのような状態の穂木でしたから、私としては20本以上も残ったと納得しています。

この秋挿しではそれらの他に、既にテスト済の品種を20本ほど挿しています。D.オースチンとデルバールですが、その失敗数(この時点までに枯れた数)は僅かに1本だけでした。

挿し木した10月30日から今日4月6日までの約5ヶ月間に、栽培品種では根がどの程度伸びたのか、最も気になるところです。 「 台木用ノイバラの緑枝挿し」の事例とは異なり、こちらは根の動きがおとなしいようで、BFから大きくはみ出した根はありません。

根の伸び具合からみれば「鉢上げが遅れた」ということはありませんが、株の生育を考慮すれば蕾ができる前の2月下旬頃に鉢上げしたほうが良かったのかも。

根鉢を崩さないように注意して、生育の良いものは5号ロングスリット鉢に鉢上げしました。計35鉢あります。

右奥のコンテナには、枯れてはいないけど動きが鈍いという株が10鉢ほど入っています。その多くはその後も成長が芳しくなく廃棄しました。
したがって最終的には、2013 年の栽培品種の秋挿しは約50%の成功率となりました。

4月14日 鉢上げ1週間後

根鉢を崩していないし、季節も良いので順調に育っています。

緑枝挿しと較べたら

左の2株は、同一品種の4月14日現在の「挿し木時期による比較」です。

左:「緑枝挿し」(約10ヶ月)
右:「秋挿し」(4ヶ月半)

至極当然の結果で、あたりまえすぎて特に書くことは無し。

それでもあえて書くとすれば、『品種を選べば、バラの挿し木は秋でも可能なんですよ』ということぐらいでしょうか。

他のシーズンと較べて秋挿しのメリットは何なのか、これは難問です(笑)。

5月22日 挿し木後 約7ヶ月

5月になって、苗はさらに成長しました。既にピンチや摘蕾も終えています

ただし、この株は挿し木苗全体の中から生育の良いものを選んで撮っています。前述のように、すべての挿し木苗がこのように育ったわけではありません。大雑把に言えば、冒頭のポールさんが言うように「ガーデンローズ」は良好に育つことが多いようです。

現在、これらの秋挿しは畑の養生畝で育てていますが、その成長の程度は様々です。幾つかの品種は接ぎ木苗とまったく遜色無いし、幾つかはおちびさんのままで花だけ豪華に咲かせたりして、バーバラさんを驚かせています。

再度 Paul Zimmermanさん;

私のこのでかい手のひらも赤ん坊のときは小さかった。赤ん坊のバラが育っていく、その過程を見守ることをエンジョイしてください。