このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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2014年11月19日水曜日

穂木と台木の充実度がポイント バラの接ぎ木 

バラの接ぎ木(接木)用の穂木とノイバラ台木の準備について。デービッド接ぎだけではなく芽接ぎも視野に入れ、併せて実生台木の作り方と芽接ぎの具体例についても触れています。それぞれの特徴をつかみ、自分の目的や環境に合ったバラの増やし方を模索する試行錯誤(右往左往)の途中経過です。

Last update : 03/16/2015 23:39:25

この記事のオリジナルは2013年2月7日の「バラの接ぎ木」の後半に追記されていたものですが、そのページが大きくなりすぎたので、ここに移動し加筆しました。

バラの接ぎ木」から続く

デービッドさんによれば『バラの接ぎ木で最も重要なポイントは穂木の熟度の選択 』なんだそうです。
バラ苗生産農家は穂木を採取するための母木を育てていますが、私が何回か見学したそれは、何も特別な栽培方法ではなく、露地(畑の畝)でふつうに肥培管理してあるようでした。このあたりはそれぞれの生産者のノウハウに関することですから、圃場に立ち入ったり具体的な質問をすることは憚られ、詳しいことはわかりません。

1-1 ベーサルシュートを穂木に プロの場合

2015年2月追記:15年1月に、あるHT品種の大苗24株が急遽必要になり、福岡県田主丸のバラ苗生産者2カ所から「母木」を譲り受けました。1月のことで大苗は既に出荷済で、その数量を市場で確保することが難しかったからです。接ぎ木作業は既に終わった時期です。いずれも枝や根を切らない「素堀り」のままで入手しました。

挿し木の場合も同じですが、母木は若い株がよいので、更新のために母木を手放すのに躊躇は無いようでした。入手した母木はすべて接ぎ木後1年の若い株で、そこから出た太いベーサルシュート2〜3本を穂木に採った切り痕がありました。
株元から30〜50cm程度は残したままです。残念ながらベーサルシュートの上部をどう処理したかは不明。24株すべてでベーサルシュート以外の枝はまったく切られていませんでした。残っている枝はいずれも細く短く、穂木に使われた枝とは太さが極端に違うのが印象的でしたが、どのような肥培管理なんでしょうね。

後日、入手先とは別のバラ苗生産者に穂木の採り方を質問する機会があって、『穂木はベーサルシュートから採るんですね?』と尋ねると、にっこり笑って頷かれました。

シュート更新しない品種の場合、プロはどうするのか? 残念ながら詳しいことはわかりませんが、デービッドさんが用意した穂木などから推測すれば、『主枝を株元近くから惜しげもなく切る』と思われます。したがって母木は短命で2〜3年ごとに更新するのだそうです。

1-2 充実した枝を作る 私の場合

私の場合は1品種3本程度接げればいいので、母木専用の株は必要ありませんし、ベーサルシュートを穂木に使うこともしません。ベーサルシュートはふつうにピンチをくり返し来年以降の主枝にします。主枝候補にならない(ちょっと遅く出た)ベーサルシュートを穂木に試したこともありますが、充実度が低くて柔らかく、使えませんでした。

これまでデービッドさんやバラ苗生産農家に教えて頂いたことを参考にして、私は次のように穂木を準備しています。要点はデービッドさんのアドバイスのように「 充実した枝を作る」ということです。『剪定クズを穂木にする』という考えは捨てて、増やしたい株は(プロがするように)穂木にすることを意識した管理 が必要だと思っています。

「接ぎ木講習会」でいつも問題になるのは、受講者が用意した穂木が「接ぎ穂」にするには未熟 ということです。それはなぜでしょう?

一般的に、秋の花のための夏剪定は春に咲いた2番花の枝の中間で切りますね。そこから新芽が出て、秋の1番花(から2番花)へと続きますが、その枝は接ぎ穂としては「未熟」です。充実した接ぎ穂を確保するためには、夏剪定で深く切り戻さず(と言うか、「夏剪定」という考えを捨てて)、ふつうに花がらを切る作業を続ければ良さそうです。

また花後の肥培管理(肥料を多めに与えて枝を伸ばす)も重要なポイントのようです。

その結果、春から数えて3番花が咲いた枝(やや遅れて出た枝は2番花が咲いた枝)が、この時期には太さや芽の大きさからして、穂木に適した充実した枝になるように思われます。

B 充実度を見る

それはもちろん品種や生育状況によっても異なるでしょう。簡単な確認方法は枝の両端を持って撓めてみることです。ふにゃっと柔らかく曲がる枝は未熟です。秋の1番花や2番花が咲いた枝はそうなります。もし「夏剪定」で深く切り戻せば、穂木に適した枝がありません。同様に、夏以降に伸びたベーサルシュートも穂木に使うには未熟です。

)芽接ぎの場合は「開花枝」を使います。プロの方法 → 「いぶし銀のバラ屋/芽接ぎに使う穂木とは

穂木の充実度のもうひとつの確認方法は、穂木の切断面を見ることです。未熟な枝は、薄い表皮と内側の白いスポンジ状の「髄」の部分が多く、「木質化」した部分がほとんど見えません。そのような枝は、基部を斜め切りしたときにスポンジ状の「髄」が捲れたようになりがちです。慣れれば枝を切る剪定鋏の感触で充実度がわかります。

C 穂木の冷蔵保存

冬1月の大剪定で切った枝を接ぎ穂に使うのも可能ですが、その場合はまず枝の熟度をチェックします。品種によっては枝の色など見た目でも判断できますね。剪定で迷うこと無く切り捨てるような弱い枝や老化枝は穂木には向きません。穂木にする枝の切断面の木質部の厚みと、芽の脹らみ具合を確かめて、濡れ新聞紙にくるんで「ジップロック」などのビニール袋に入れ、6℃程度(冷蔵庫の野菜室)で保管します。でも、剪定と接ぎ木作業が1ヶ月以上もズレる場合(1月剪定/2月接ぎ木)は冷蔵していた穂木がちょっと弱っているような気がします。根拠はありません。穂木を手にして、色具合などからなんとなくそう思います。この時期の冷蔵保存は30日程度が限界でしょうか。可能ならば、穂木の採取は接ぎ木作業の当日の朝に切るのが良さそうに思えます。

私が見たバラ苗生産農家はそのようにしてありましたが、上記"いぶし銀のバラ屋"さん(芽接ぎ)は違う方法のようですね。たぶんそれは、穂木を採取する母木が植えてある場所と接ぎ木作業場所の位置関係や、作業手順や量などでも違うのかもしれません。私の2015年のシーズンは、挿し木で作った台木を常時手元に準備しておき、穂木は「当日の朝に切る」方法でやろうと思っています。

ただし。早春のバラの芽の動きは品種によってかなり差がありますね。穂木取りの時期は「芽の膨らみ具合」を基準にしますが、接ぎ木作業は台木が休眠から目覚める時期が好機のように思います。これは(私の環境では)1ヶ月程度のズレが生じる場合があります。したがって、「穂木は接ぎ木作業当日の朝に切る」というのは、厳寒期の台木が休眠(またはそれに近い)状態の場合は、それを打破するなんらかの対策が必要かもしれません。

2 台木の準備

バラの接ぎ木には、一般的にはノイバラを台木として使います。ノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)はいくつかの(固有の名称が無い/知らない)亜種があり、それぞれ生育や特に根の形状と発根量が異なります。バラ苗生産農家は幾つかの亜種と台木専用のハイブリッド種(原種系をベースに、耐病性や生産性など台木としての特性を高めた交配種)を、接ぎ木する栽培品種によって使い分けるのだそうです。

私にはそのようなノウハウはありませんから、幾つかのノイバラを集めて挿し木苗を作り、その生育を(特に根を)観察することを試みています。2013年1月27日の記事「バラの接ぎ木 台木の準備」で紹介している台木は、畑の近辺に自生していたノイバラ数種類を挿し木で育て、その中から最も旺盛に生育したものを母木としたのですが、これが栽培品種の接ぎ木台として最適なのか疑問が残ります。このノイバラは太根の生育が極めて旺盛で、露地植えの場合1年で1メートル以上も伸びるのですが、それよりも細根が密に出る種類が好ましいのかもしれません。国内のバラ苗生産農家はそのような台木を使用する場合が多いようです。地植えすると根が伸びすぎるノイバラは、根域を制限する栽培をするか(下記2−3「ノイバラ台木の根域制限栽培」参照)、接ぎ木の際に太根を切り取りその後に細根の発生を促すような処置が必要でしょう。

台木と穂木の親和性や、根頭癌腫病への耐病性の問題、台木としての耐用年数(寿命)もありますので、私のようなアマチュアは、入手できた台木を育て接ぎ木の経験を重ねてその特徴を学んでいくしか方法はないのでしょうね。バラ苗生産農家もそのようにして独自のノウハウを確立したと聞いたことがあります。

2-1 母木(ノイバラ株)の入手

ノイバラ台木

私の周辺では野生のノイバラが自生していますが、自然の株は根の状態など、台木や母木として使うのに状態の良いものはそう簡単には見つかりません。良い台木を入手する簡単で確実な(?)方法は、「台芽が出て接ぎ木した部分が枯れてしまった(けど、台木は生きている)」という株を貰い受けることです。そんなに都合のいいことがあるのか怪しいですが、私がバラの栽培に関心を持った時期に、我家には3株もありました(笑)。台芽を伸ばし、それを母木にしました。あるいは意図的に、栽培品種の不要な株(接ぎ木株)を首の部分で切断すれば、台芽が出る可能性があると思います。

良い台木を入手する簡単で確実な方法は、「バラの接ぎ木講座」に参加する機会があれば、そこで提供される台木を1株「母木」として植えればいいのではないでしょうか。もしその台木の「品種名」がわかり、それが根頭癌腫病に強いとされる選抜種だったらラッキーなんですけどね。

これは2013年2月にかのやばら園で開催された "Gardening with David"(デービッドさんのガーデニングセミナー)で提供された台木です。福岡県田主丸(たぬしまる)のI農園で生産されたものだそうですが、根量も多く理想的な台木ですね。

2-2 実生台木

実生苗作り

私の場合は、12月頃にノイバラのローズヒップを採取し冷蔵保存して1月に播種します。または12月か1月に「採り蒔き」します。2013年1月21日の記事「バラの実生苗を作る

バラのタネ播きをするために、バラの実(ローズヒップ)からタネを取り出す

タネの準備

果肉に含まれる「発芽抑制物質」(ABA=アブシシン酸)を洗い流すことがコツです。プロが準備した10Lバケツいっぱいのタネの写真をデービッドさんに見せてもらったことがありますが、真っ白になるほどきれいに洗われていました。

『休眠を打破し発芽させるためには寒さに遭わせることが必要』
だそうですが、そうでない事例も知っていますので、詳しいことはわかりません。私の場合、昨年までは1ヶ月以上(6週間)6℃で冷蔵保存してから露地に播種しました。今年は「採り蒔き」を試しています。土の中で寒さに遭わせるという方法です。

播種は、大量の場合は露地(畝)に、少量ならプラグトレイを使う場合が多いようです。ノイバラの発芽率はかなり高率ですから、あまり密に播くと後で間引きがタイヘンになります。

タネ播きから約80日後のバラの幼苗

播種後約80日の実生苗

バラ苗生産農家は 実生苗 です。1シーズンに数万から数十万本の台木が必要なのですから、挿し木で台木を生産するのは無理な話です。
アマチュアでも実生苗を作っている方を知っていますが、1年で台木に使えるような太さ=鉛筆程度に育てるのは簡単ではなく、間引きや定植を含めしっかり肥培管理する必要がありそうです。

上2本はプロ、下2本が私の播種後約80日の実生苗です。プロの苗は無理に引き抜いて根が切れていますので根の長さや量は無視して、バッドユニオン(初生葉の位置)から根の間に注目。ここが長くて真っすぐなのが良苗。写真で違いが見えるでしょうか? これを「浅植え」するのも良苗を作るコツのひとつだそうです。

プロの台木作りの一部を紹介した記事: 2012年4月29日「ノイバラ台木の実生苗作り(プロの場合)−2

実生台木への芽接ぎ

2012年2月9日「バラの種ばら播き」で播種し発芽した実生苗を、高畝に定植して「F芽接ぎ」の地植え台木として使いました。播種から8ヶ月半後、10月29日の芽接ぎ作業の様子です。

ノイバラの地植え台木に芽接ぎをする 芽接ぎをする地植えのノイバラ台木

株間15cm X2条の密植ですがこの程度に生育しました(作業の邪魔になる枝を少し切り捨ててあります)。肥料不足だったのか「T芽接ぎ」用の台木としてはやや細いと思われたので「F芽接ぎ」に変更しました。
このまま1月まで育てれば、(もちろん)デービッド接ぎや切り接ぎの台木として使えます。

写真右上:芽接ぎをやりやすくするため、直管で手前側の枝を起こし株元の土(畝の肩)を削っています。苗の植付けがやや深すぎたようで、数本の枝が出ているバッドユニオンから根が出ている部分ギリギリまでは地上にあるべきですね。こういう細かな(だけど重要な)ことは『やってみなけりゃわからない』という貴重な経験でした。

この株間は、私が話を聞いたプロの場合は 12cm だそうです。プロの掘り上げは「機械掘り」ですから問題にはならないのかもしれませんが、手作業で掘る私の場合は絡み合った細根の切断が気になります。根の絡み合いを防ぐことが「どこでもグリーン」という植栽器と根域制限をする「バッグフィルター」のセット開発のきっかけになりました。

また、台木用のノイバラを育てる場合は株間12cmの2条植えという密植でもだいじょうぶなんだということも知りました。根だけではなく枝も絡み合うのですが、光合成を大きく妨げるほどではなさそうです。でもこのノイバラ株の枝の伸び具合をプロが育てたものと比較すれば、肥料(特に窒素)不足は否めないようです。

参考事例:いぶし銀のバラ屋:「ようやく芽接ぎが半分終わりました!!」

さすがにブロの仕事ですね、台木の枝が素直に伸びています。この台木は枝葉の状態から見てふつうのノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)ではなさそうですね。ご本人は『ノイバラ』と言ってありますがそれは厳密な区分ではなく、たぶん台木用に育種された品種なんだろうと思います。

「胴長美人」の台木

実生と挿し木の区別なく、台木の最も重要なポイントは枝が出るバッドユニオンの間の状態です。この部分が素直に長く伸びている台木が、デービッド接ぎでも切接ぎでも、あるいは芽接ぎでも作業がしやすいです。

芽接ぎしたバラがノイバラ台木で芽吹き直前

そのような実生台木(喩えて言えば "たおやかな胴長美人")を作るには幾つかの「コツ」があるようです。このページの冒頭で紹介したプロが作った実生台木。まるで挿し木苗のように主茎が切れて枝が出ていますよね。これはどうしているのだと思いますか?

左の写真(実生の地植え台木にF芽接ぎ)で、多くの枝(芽=bud)が集中して出ている部分がバッドユニオンです。

この台木もまるで挿し木のように主茎が切れていますね。そうなんです、定植時に「茎を切る」のです

参照:

写真左:2012年10月23日 F芽接ぎ、13年2月9日の状況。赤い小さな芽が接ぎ木テープを突き抜けて芽吹こうとしています。バッドユニオンの下がこの長さだと接ぎ木作業が楽です。

2-3 挿し木台木

台木にするノイバラの挿し木は、栽培品種と同じように年間3回ほど作業のチャンスがあります。私が選んだノイバラの場合、「休眠枝挿し」は生育期間中に(プロが使う実生苗と比較して)大きく硬くなり過ぎる傾向があります。「緑枝挿し」は挿し穂の活着率は僅かに落ちるものの、7ヶ月後の接ぎ木シーズンには適度な大きさに成長します。
「秋挿し」の場合、10月中旬に挿し木して3〜4ヶ月後には台木として使用するのですが、生育期間が冬ですから茎はほとんど太くなりません。なので、あらかじめ「台木に適した太さの挿し穂」を用意します。接ぎ穂の茎の太さはマチマチですから、いろんな太さの台木を準備できる挿し木による台木作りは優れた方法ですね。デービッドさんにもほめてもらいました(嬉)。

挿し木で「胴長美人」を作るには、穂木の節間の長い部分を選んで挿し穂にします。この部分の節を無視して接ぎ木をすると、台芽の発生に悩まされます。特に、長い挿し穂を使う場合は注意が必要で、枝を出す節と根を出させたい節をはっきり区別してから穂木を切ります。ただしそれでも 台芽の発生は挿し木台木の欠点 です。

*註:茎が太くなるHT品種と比較して、人気のある最新品種の接ぎ穂に適した枝は細いことが多いようです。その多くがオールドローズやイングリッシュローズ(シュラブ系)の系統を色濃く反映しているからでしょう。そのような細い接ぎ穂には細めの台木が接ぎやすいと私は思います。プロは実生台木ですからその太さはほぼ一定です。それにいろんな太さの枝を接ぐのですからさすがですね。

ノイバラ台木の緑枝挿し

ノイバラ台木の「根域制限栽培」

2013年は緑枝挿しと秋挿しを、畑ではなく「どこでもグリーン」という植栽器と「バッグフィルター」を使って計100本ほど挿しました。この写真がその結果(緑枝挿し)です。畝に挿し木した台木とは根の様子が大きく異なります。

ノイバラ台木の秋挿し

秋挿し台木の例

秋挿しでは「冬のこの期間でどの程度の発根量があるか」ということが気になりますが、これは 秋に挿し木して作った台木です。
デービッドさんご本人によるデービッド接ぎのデモ。2014年2月。

上の写真の青いバッドに入っているのは7月上旬に挿したものですが、比較すれば根量の違いが一目でわかります。また、秋挿しは新梢も若く短いのですが、このような秋挿し台木でも使用できます。

この台木の生育期間は冬の4ヶ月間でした。ハウス栽培ではなく簡易なビニール被覆で防寒しただけ(無加温)です。しかも午前中3〜4時間ほどしか陽が当たらない場所にあったのですが、ノイバラは強いですね、それなりに根を伸ばし新梢を展開しています。日当りの良い環境で上手に肥培管理すればもう少しは根量も増えるだろうと思います。この作業は前述の「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」で報告しています。

スタンダード台木の秋挿し

スタンダード仕立てを作るための台木は、私はすべて秋挿しです。その方法は、2014年11月13日の「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」の後半で紹介しています。

台木用ノイバラの挿し木 過去ログ(日付は投稿日)
挿し木内容 投稿日 記事タイトル(リンク)
休眠枝挿し(畝) 2012年2月1日 台木用ノイバラの挿し木
休眠枝挿し(畝/3ヶ月後) 2011年5月1日 台木用ノイバラの挿し木(2011年春)
緑枝挿し(畝) 2011年6月24日 台木用ノイバラの緑枝挿し
緑枝挿し(植栽器/2013年) 2014年11月9日 成功率100% 台木用ノイバラの緑枝挿し
長尺秋挿し(ポット) 2011年10月5日 ミニバラ用スタンダード台木の挿し木
秋挿し(植栽器/2013年) 2014年11月13日 台木用ノイバラの秋挿し

緑枝挿し/秋挿し どちらがベター?

2014年12月追記:今年の秋挿しは10月7日に「どこでもグリーン」に挿しました。1ヶ月後には発根し、2ヶ月後には上の写真とほぼ同じ根量になっているのを確認しました。既に台木として使用可能な状態で、根も前年の秋挿しよりもやや太いようです。予定している接ぎ木作業まで後1ヶ月ありますので、さらに充実すると思われます。

この2ヶ月の栽培期間はまったく手間入らずで、もちろん病虫害もなく、ほぼ100%の成功率(途中経過)です。
夏越しさせる「緑枝挿し」よりも栽培が楽なのは間違いありません。

この結果から、来年の台木作りは、10月1日にしようかと思います。10月1日というのは私が住んでいる地域では標準的なダイコンのタネ播き時期です。これは単なる偶然ではないような。。

台木作りの実生と挿し木、接ぎ木方法の切接ぎ(デービッド接ぎ)と芽接ぎ。これは時期を合わせれば組み合わせが可能です。プロ(バラ苗生産者)の台木は「実生」です。実生台木に切接ぎが一般的ですが、芽接ぎに自信を持っている生産者もあります。

T芽接ぎ(T-budding)の誘惑

このページはデービッド接ぎのための穂木と台木の準備について書き進めてきたのですが、次第にテーマがズレてきました。デービッド接ぎではそれなりの成果が出し始めたのに対し、芽接ぎ、特にT芽接ぎはまだ失敗も多い状態です。

『スタートダッシュの良い芽接ぎ苗』

愛媛県の相原バラ園さんの「私たちのバラ苗づくり」というページを読むと、芽接ぎもぜひ習得したいという気持ちが膨らんできます。10月という良い季節に作業できるのも魅力ですし。

今年は秋挿しでノイバラを150本ほど挿しています。ローズヒップも(これが台木になるのは1年後ですが)採取して冷蔵保存しています。「T芽接ぎ」も優れた接ぎ木方法だと思うのですが、自分でもちょっと気が重いのは、栽培が長期間で手間がかかるから。・・と言うのは嘘で、私の「T芽接ぎ」の成功率が「デービッド接ぎ」よりも低いからでしょう。

実生の地植え台木にT芽接ぎ 作業時期と内容/福岡県基準

  • 11月下旬  ローズヒップの採取 冷蔵保存6週間
  • 1月上旬  播種(畝またはトレー)
  • 5月6月  定植 播種後4〜5ヶ月で茎の太さが爪楊枝程度になったら、茎を切り高畝に定植
  • 10月中旬  T 芽接ぎ(適期は11月中旬頃まで。寒くなると表皮が剥がしにくくT芽接ぎは難しい)
  • 2月中旬  台木カットと鉢上げ(プロ:1月上旬に掘り上げ2月上旬まで冷蔵保存。その後温室)

挿し木台木 T芽接ぎ」という方法もあるのですが、これまで何度か参照した久留米市田主丸のバラ栽培農家・バラ息さんのブログ「いぶし銀のバラ屋」という具体的で参考になるページ(2009年前後の記事)があるのでそれを参考に「 実生台木 T芽接ぎ」も楽しめそうな気がします。

補記:この「いぶし銀のバラ屋」というブログはバラ息さんの日記で、栽培ガイドの類ではありません。でも、芽接ぎに興味がある私には、そこに掲載されているバラ関連の作業の写真がとても参考になりました。「日記」なので芽接ぎ関連の情報を丹念に探す必要がありますが、例えば前述の、芽接ぎをしやすくするために直管を利用した枝の始末や、畝の手前側の肩を削るというのは、バラ息さんに教えていただいたテクですし、「パワフルアミノ」というプロが使う肥料を知ったのもバラ息さんのおかげです。ありがとう。

4 バラの接ぎ木 アマチュアの楽しみ 「プロに学ぶ プロの真似をしない」

"Commercial rose budding grafting" という YouTubeビデオ を見て驚きました。米国では一般的な台木の"dr. huey"(ドクターヒューイ)のスタンダード台木にT芽接ぎをする接ぎ木職人Stuart Taylorさんの手さばきを紹介しています。彼は(パッチャーと組んで)1日 3,000本を接ぐのだそうです。私の地元・福岡の接ぎ木職人さんご夫婦は切接ぎで1日1,000本程度だそうですから(この数にも驚きますが)、3,000本というそのスピードは、あまりにも速すぎて何をしているのかよく見えませんね。

この作業スピードは「台木の表皮の剥がしやすさ」がポイントなのだろうと思います。私がやってもこのように簡単にきれいには剥がせません。たぶん台木の品種と接ぎ木の時期がポイントなんでしょうね。欧州の接ぎ木職人さんのビデオ(台木はたぶん別品種)も見たことがありますが同様の速度だったので、台木の品種よりも時期やテクニック、あるいはもしかして良く切れる「芽接ぎナイフ」ゆえなのでしょうか?(笑)

『1本接ぐのにどれくらい時間がかかりますか?』とデービッドさんに質問したことがありますが、これは全くの愚問でした。私のようなアマチュアのバラ栽培者にとって、作業に要する時間なんか問題ではありません。重要なのは、安全に接ぎ木作業を楽しむことです。いや、接ぎ木作業そのものだけではなく、例えば接ぎ穂の新芽がテープを突き抜けて成長する様子など、自分で台木を準備してそれに接ぎ木したバラを育てる、その全行程を楽しむことだろうと思っています。私が準備すべきは穂木や台木だけではなく、そのような「余裕のある心構え」のようです。この「余裕」は、アマチュアの特権 でしょうね。

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