このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2021年4月30日金曜日

バラの交配・1

バラ栽培を始めた頃に、師匠のデービッドさんに「バラの栽培で一番楽しいことは?」と尋ねたら、

『新品種の作出。交配した種が芽生えてくるときのワクワク感!』

それから10年。新品種の作出は単に交配すれば済むものではなく、バラ栽培の全般にわたる知識と技術が必要に思えて、ずいぶん時間がかかってしまいました。

バラの交配に関しては日本ばら会に優れた先達が何人もいて、「ばらだより」にはガイドも掲載されていますが、私はあえてそれを読まないでチャレンジしてみようと思っています。

染色体の倍数性やゲノムなど私にとっては未知の領域ですが、学ぶことがいっぱいありそうで、ときめいています。

最初の難関 「三倍体」

3月の講習会、福岡県農林業総合試験場・巣山講師のお話の中に「三倍体植物は不稔性」というのがありましたね。ご存知のようにバラは複雑な交配を繰り返していて、栽培品種の繁殖は実生ではなく接木や挿木といったクローンなので、どの品種が不稔性であるのかは調べてみないとわかりません。DNAも細切れでグチャグチャになっているんだそうです。

不稔性かどうかはその品種が過去に「交配親」になっているかどうかを調べれば見当がつきますが、私は多品種のバラを持っているのではないので、とりあえず手持ちの品種を試してみようと思っています。

ロージー クリスタル

満開を過ぎた(いわゆるパンクした)状態の花弁を取り除いて、蕊(しべ)の様子を見る。
花粉が入っている「葯」がわずかに茶色がかっている。もう少し濃くなると開裂し、花粉が出る。

ロイヤル ハイネス

花糸が赤いのが印象的。この葯は上のロージー クリスタルより2日ほど若い。

雄蕊(ゆうずい/おしべ)をピンセットで採り、シャーレに入れて2日後。
「葯」が褐変して開裂し、花粉が出ている。

花粉はとても微粒子。量は品種によって異なるようで、全く出ないものもある。それが「三倍体」なんだろうか。

この花粉を綿棒で雌蕊(しずい/めしべ)の柱頭に着ける。
柱頭はわずかに湿り気があって、花粉が着いたのが肉眼でもわかるが、花粉の量は多いほうが安心感がある。

空気が乾燥しているのでハトロン紙の袋をかけた。花粉管が伸び胚珠に到達すると子房が大きくなり始める。受粉に失敗するとやがて子房は枯れる。



2021年4月28日水曜日

Royal Highness

「春のばら展のコンテストに出品する本命」と密かに当て込んでいた Royal Highness が2週間も早く咲いてしまいました。

しょうがないから「ひとりばらまつり」で、せっせと写真撮影とバラの交配をしています。

多肥栽培の悪癖のある私でも「ロイヤルハイネス」はステムの伸びや葉の大きさと花のバランスが良く、そして照り葉もきれいです。映画「ローマの休日」のラストシーンで、"Her Royal Highness" と紹介される「王女様の尊称」が品種名になっているように、気品のあるバラです。

私にとっては「交配親」としても最高の品種。交配は「種子親」(母)の影響をより強く受けるそうなので、これを「種子親」にするなら「花粉親」(父)には何を選びましょう?

私が選んだ「花粉親」は ㊙ ですが、何種類か交配した後に、秋の花を咲かせる枝が残っていない のに気づきました😨



2021年4月23日金曜日

さくらんぼの季節

サクランボ(暖地桜桃)が可愛い実をつけています。

山形の「佐藤錦」などとは比べものにならないけれど、これはこれで美味しいです。バラの管理作業に飽きて、10粒ほどを口いっぱいに頬張り、プッとタネを吐き出すのは、なんか童心に返ったみたいで。

今年は豊作でとても食べきれませんが、小鳥が手伝ってくれます。昨年は椋鳥の大群が来て、あっという間に食べ尽くしてしまいました。
今年は季節がずれているのか、今のところ椋鳥の群は来ません。

今年はバラの開花が早いだけでなく、いつもの年は土手の「カラスノエンドウ」にビッシリつくアブラムシが皆無。なんか季節がヘンですね。



「デービッド接ぎ」の活着力

新苗がグングン成長しています。下の2枚の写真は同じ株です。

 写真左:4月15日撮影
 写真右:1週間後の4月22日撮影

1週間前には全く見えていなかったベーサルシュートが6cmほどに伸びました。

バラの接木(切接ぎ)をご存知の方は、この穂木と台木の角度が普通とは違うことに気づかれると思います。これが「デービッド接ぎ」の特徴のひとつです。

4月22日に撮影した写真の、接ぎ穂の基部の拡大。 よく見ると2つ目のベーサルシュートの赤い小さな芽が出始めています。

この旺盛な成長力に驚いているのですが、これは「デービッド接ぎ」の優れた活着力を示すほかに、私が今年モニターしている「金澤バイオ」の製品「土の薬膳 オーガニック培養土」の効果なのかも。

「お手本は森の土。」というこの培養土を、新苗だけでなく成株でも栽培試験をしていますが、良好な生育です。

ちなみにこの「金澤バイオ」のサイトの商品写真やイメージ写真の多くは私が撮影したものです(ちょっと自己PR/笑)。工場は福岡県糸島市にあります。



2021年4月21日水曜日

光過剰の対策・2

赤バラの日焼けを防ぐ「ハトロン紙の袋」は、開花状況を見るのも面倒だし(見る楽しみが妨げられるし)、掛け方次第ではバラに「接触ストレス」を与えているようで、どうも苦手です。
何かいい方法はないものか。

晴天の日は遮光率50%のネットを展開しているので、昼間の最も光が強い時だけ花に当たる光を和らげるサンバイザーをセットしました。ネットだけではまだ日焼けすることがあるからです。

植物組織を老化させる活性酸素に侵されていないバラの「赤」は、例えようもないほどきれい。でも遮光が過ぎるとその深みが出ない。そのための「秘策」がある(去年見つけた)ので、今年はそれを検証するつもりです。こんなバラ栽培の楽しみ方もあってもいいかと。

サンバイザーは自在クリップで支柱に取り付け、開花状況に応じて支柱が移動できるように、基部はブロックの重石です。



2021年4月20日火曜日

光過剰の対策・1

バラの光飽和点

今日のような晴天では午前9時を過ぎると太陽光の照度は バラの光飽和点とされる5万ルクスを超える。
今日の実測値は、南中する午後0時半で67000 lux、午後2時で71000 luxだった。この50000 luxを超える強光線は午後5時過ぎまで続く。

照度5万ルクスというのは、「ちょっと眩しい」「帽子か日傘がほしい」と思うような強さの日差し。

強過ぎる光線は植物に悪影響

「過剰な光エネルギーで起こる光阻害とその防御について」
高橋 俊一 光合成研究 23 (2) 2013

基礎知識がないと難解だけど、アマチュアといえども栽培者ならなんとか理解できるようになりたいと思っている。

私の対策

晴天の日は午前10時から午後5時頃まで、写真のように遮光率50%の白の遮光ネットを展開するとともに、赤花系のバラには更にハトロン紙の袋を糸目が見え始めた時期からかける。

遮光の効果

私のバラは葉っぱが大きいと揶揄されるが、これは窒素過多とドーピングが原因(笑)。
でも、『葉っぱが若々しくてキレイ』と褒めてもらうこともあって、最初それは「農薬を使わないからだろう」と思っていたが、そうではなく、この遮光の効果で活性酸素の発生が抑制されているからなんだろうと考えている。

遮光の逆効果

私のハウス内のバラは「うどんこ病」に悩まされ続けている。妻も自宅の庭の一隅に20株程のバラを育てているが、それらがうどんこ病に罹患したのを見たことがない。この「差」はなぜなのか?

原因は過度の「遮光」にあることに気づいた。うどんこ病菌は強光線の下では生きられないようだ。詳細は「うどんこ病」関連の記事で述べる。



2021年4月17日土曜日

「新苗で秋に勝負」

1月に接木をしてその年の秋のコンテストに出品することを「新苗で秋に勝負」と呼んでいます。
これは、Boketanさんが日本ばら会会報「ばらだより」の2011年に連載された「新苗で秋に勝負」に因んでいます。

今年の接木苗

毎年いろんな接木方法を試して、だんだん下手に(成功率が低く)なっている。今年は最悪/笑。
その中で「デービッド接ぎ」が好結果を示し、その優れた方法を再認識した。

 左:配布苗「フロージン82」 中央:自作苗「ロイヤルハイネス」右:同「コンフィダンス」

挿木台木 に「デービッド接ぎ

デービッド接ぎは台木の枝葉を残す。接木は2月上旬。五枚葉5節で台木の枝葉をカット。
結蕾を確認後に五枚葉5節まで下げてカット。リッチェルのバラ用10号鉢に植え替え。スペーサーに割り竹を使用。徒長していない がっしりした新苗 に育っている。

元気の良い新梢だが、これの役割はベーサルシュートを出すための同化枝で、ベーサルシュートが2本出たら基部から切除する。残しても良い花は咲かない。苗はベーサルシュートが出やすいように、あらかじめ傾けて植え付けている。

「新苗で秋に勝負」のつもりだけれど、勝負は良いベーサルシュートが出るかどうかにかかっている。



2021年4月14日水曜日

この春最初に咲いたのは

私のハウスでこの春に最初に咲いたのは「ローズ・ポンパドゥール」(デルバール)です。
ショートクライマーですが、この艶やかなポンパドゥールピンクに魅せられて、10号鉢で小ぶりに仕立ててハウスの中に置いています。

4/16追記:上の写真(4月13日)から2日後の15日に満開になりました。横の蕾に押されて変形気味なのが残念。