2014年12月18日木曜日

3ヶ月で作るノイバラ台木 秋の挿し木

バラの接ぎ木に使う台木を作ろうとノイバラの秋挿しをしました。120本の台木を狭い面積で効率的に挿すために「どこでもグリーン」という植栽器を使います。10月7日に挿し木して、2ヶ月後には「デービッド接ぎ」の台木に使える程に成長しました。挿し木から3ヶ月後の1月に予定している接ぎ木作業までには、さらに充実すると思われます。

どこでもグリーン」(DG)は「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」で使用したものと同じです。
「バッグフィルター」(BF)とセットで、1平米の面積で70本程度のノイバラ台木を作ることができます。
「どこでもグリーン」製造元:(株)福瑛舎

昨年のノイバラ台木の秋挿しの結果から判断して、今年は11日前倒しの10月7日に挿し木作業をしました。

バッグフィルターに挿し木したノイバラ

挿し穂を採るノイバラ母木は畑の中に数品種を計10株ほど植えており、その中から充実度が適当と思われる枝を切って、その場で挿しました。
参照:「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」から「そら流 台木用母木の育て方

今回選んだ母木は純粋なノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)ではなく、台木用に育種された原種系の品種です。節間がやや長くトゲは少なめです。

この品種は枝の伸びがよく、挿し穂に適した枝の中間部分はすでに葉が落ちているものが多いです。挿し穂の長さは15cm程度で、基部は「片クサビ型」に調整しました。

それとは別にノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)を20本ほど挿しました。トゲの形や表皮の色、根の張り具合が異なる3種類のノイバラの中から、気に入ったものを選んでノイバラの母木を更新するためです。何本かは「デービッド接ぎ」の際に比較対象にするつもりです。

オーキシンとサイトカイニン

挿し木の発根や発芽に関係する植物ホルモンはオーキシンサイトカイニンです。これらと類似の働きをする製剤がありますので、ついでに使ってみました。

今回の希釈率:オキシベロン液剤250倍 ビーエー液剤2000倍
挿し穂基部を5〜30分浸漬。

ノイバラの挿し木に、外から与える植物ホルモン製剤は不要』 (多すぎれば逆効果)と思っているので、希釈倍率も浸漬時間も適当です。「適当」では試す意味が無いんだけど、『科学的』にアプローチするのはどうも苦手(面倒くさい)です。

今回使用した挿し木用土は、赤玉土:鹿沼土:バーミキュライト=6:2:2の割合です。 気層の確保に留意すれば、用土も「適当」で良さそうに思えます。

DGには「バッファ層」があるので挿し木用土の保水性に配慮する必要はなく、市販の挿し木用土に多いピートモスは使いません。発根を促すのは水よりも空気(酸素)ですね。

BFに挿し木用土を詰め込みます。昨年は「あらかじめ湿らせた用土」を使いましたが、この時点では乾いた用土とBFを使うのが作業が早いです。

このトロ箱にはBFが35個並びました。口径90cmのDGにはこの倍の70個のBFを入れることができます。
トロ箱には水が入れてあり、用土全体が水を含むまで待ちながら、その間に挿し穂の調整をしました。

これら一連の作業は、昨年の「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」で説明していますので、ここでは省略します。昨年の挿し木から変更したことは、挿し穂が短くなったので挿す深さも5〜7cm程度と浅くして、ちょっとだけBF内部の根域が大きくなりました。

どこでもグリーンとアクアリフト どこでもグリーンとバッグフィルターのセット どこでもグリーンにボラ土を詰める

DGのセット方法も昨年の記事を見てください。変更したのは、DGの底に断熱材として厚手の発泡スチロールのパネルを敷いたことです。

DGのバッファ層にボラの中粒を入れ、その上から珪酸塩白土の「ミリオンA」と微生物製剤の「アクアリフト 300LN」を撒きました。これらを使わなくてもバッファ層の水分が腐敗しないことは昨年の結果でわかっているのですが、手持ちがあったので『気休め』です。

「アクアリフト300LN」は畑の潅水用タンクで常用しています。メインの菌種は「放線菌」なのだそうですが、水がきれいに澄んでくるのが見た目でもわかり、これの水質浄化効果は信頼しています。

挿し穂をセットしたBFを、DGの周辺部から並べていきます。スペースに余裕がある場合は中心部にもボラを入れておきます。

バッファ層から水分が、ボラからは空気がBFに届きますので、挿し木にはとても良い状態になっているだろうと思います。事実、これまで良い結果が出ています。

このDGには計55個のBFを入れました。挿し穂にあまり葉が付いていないのがわかるかと思います。このノイバラ品種は枝が充実すると葉が落ちます。

並べ終えたら隙間にボラを詰めます。全部のBFの水分を均一にするため大きな隙間ができないよう丁寧に入れました。

この後たっぷり潅水し、DGのサイドから水が滲み出してくるのを確認します。今回は口径90cmのDGを2個、75cmを1個を使い、「芽接ぎ挿し」のテストや栽培品種の挿し木を含めて、計150本の挿し木をしました。

保湿と防風のために、DG付属のリングを利用して 210cmの"ダンポール"4本でドームを作り、ビニールを被せて挿し木作業は終了です。

11月7日。挿し木から1ヶ月が経過しました。11月なると冷え込むようになり、保湿と防風のためのビニールの内部が朝には結露しています。さらに寒くなった下旬には、ビニールを梱包用の「プチプチ」に替えました。

天気のよい午後には、内部の気温が24℃を超えないように開口部を開けます。この24℃はたんなる "目安" で根拠はありません。何回か閉め忘れたこともありましたが、挿し穂は低温には耐えるようです。

どこでもグリーンの防寒
ノイバラ挿し木の新葉 ノイバラ挿し木の発根

  • 挿し木から2週間 毎日1回 天気の良い日は2回
  • その後2週間 ほぼ毎日1回 ボラの湿り具合で判断

すべての挿し穂から新芽(新葉)が出ていますが、発芽は挿し穂に葉が残っていたものが遅れます。その葉も1〜2週間程度で枯れて落葉します。その様子を観察していると、挿し穂の水分が足りないから枯れるのではなく、挿し穂は葉に含まれる養分を(タンパク質をアミノ酸に分解し)積極的に回収してそれを発根や発芽に提供しているのではないか?と思われるような枯れ方をします。

葉が残っている挿し穂の発芽が遅れる理由は、葉柄の付け根にある芽の原基の充実度が低いからだと思います。芽の原基が充実し発芽の準備が整えば自然に落葉するのでしょう。

ただしこれは私が選んだノイバラ品種の場合で、純粋なノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)は遅くまで葉を残す傾向があります。新葉が展開しても元の葉が残っている場合がありますが、これは枝の充実度には関係ないと思われます。

ノイバラの挿し穂はおよそ1ヶ月で発根し始めるのでそれを確認してみました。

予想どおりの根量・根長で、新葉の展開とうまくバランスがとれていると思います。ノイバラの水挿しをするとわかりますが、発芽と発根は必ずしも一致しません。挿し木でありがちな失敗は、先に新葉が展開し、発根していないので水分が不足して新葉が枯れるケースです。でも、これは良い状態ですね。

これは「オキシベロン液剤」と「ビーエー液剤」を使用した効果でしょうか、それとも単なる偶然?

迂闊なことに比較対象の挿し穂を準備するのを忘れたので判断できませんが、たぶん 偶然 でしょう。・・と言うか、これが "普通" なんでしょうね。たぶん「オキシベロン液剤」も「ビーエー液剤」も、そのような使い方ではほとんど効果はなかったでしょう。でも、ひとまず嬉しい結果で、この根量があれば新葉が枯れることはないはずです。

12月8日。挿し木から2ヶ月が経過しました。この1ヶ月間は4回ほど潅水に混ぜて液肥をやりましたが、それ以外は何もすることがありません。ボラの表面が乾いて白くなったら水をやり、天気の良い午後は「プチプチ」を少し開けるだけ。まったくの手間要らずです。もちろん病虫害の発生はありません。

バッグフィルターに挿したノイバラ台木

発根を確認した挿し木1ヶ月後から、液肥を与え始めました。今回使用したのは、住友化学園芸(株)の「マイローズばらの液体肥料」です。規定の倍に薄めて潅水時に行いました。週1回程度で、この1ヶ月間で4回です。

ふだん、液肥は神協産業(株)の「ベストⅡ」か、金澤バイオ研究所の「土と植物の薬膳」(有機100%)の水溶きを使用しているのですが、あいにく手持ちが底をついたのでこれを試用してみました。短期間でもあるし、肥効の違いは特に感じませんでした。

挿し木2ヶ月後の12月8日に6株を鉢上げすることにしました。液肥の効果が出ているようで、1ヶ月前と較べると新葉の色が良くなり、枝葉はまだ小さいものの、しっかりした印象です。

秋挿しのノイバラ台木

写真では見えづらいかもしれませんが、BFの底から根がはみ出しています。やむなく、根が切れるのを承知でムリに取り出しましたが、根鉢は崩れるし、これは楽しくない作業でした。根が切れる『プチッ』という音は 痛い です。

切れた根の量は多くはありません。挿し木から2ヶ月でこの根量なら上出来だと思います。この時点で既に昨年のノイバラ秋挿し4ヶ月と同程度の根量になっていて、 デービッド接ぎの台木として使える状態 です。枝の伸びが短いですが、それは必須条件ではありません。
ただしそのためには15cm程度の挿し穂の長さが必要で、「短い挿し穂に短い新梢」では作業が難しくなります。ここは「切接ぎ」の場合とは異なります。

挿し木作業を昨年より11日前倒しして10月7日にしたことと、発根確認後に数回液肥をやったのは正解だったようです。

接ぎ木作業を予定しているのは1ヶ月後の1月中旬。その時までにはさらに充実するでしょう。

ノイバラの秋挿し

同じ条件で挿し木したノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)の2ヶ月後の状況です。これも根がBFを突き抜けていたので、取り出す際に2〜3割の根を失いました。

相違点

  1. 新葉の展開が劣る。写真ではよく見えませんが、葉の半分は元から挿し穂に付いていた古葉です。(前述のように)ノイバラは新葉が出ても、古葉が落ちない場合が多々あります。
  2. 根量(根の本数と長さ)が少ない。根の太さは同程度か、こちらがやや太い。

上と比較すれば、この時点では見劣りがしますが、3ヶ月後、1年後の状況はわかりませんね。台木としての性能をこれで判断することはもちろん できません。

そうなんですが、でも、上はさすがに台木用として育種された品種("くくり"としてはこれもノイバラ)ですね。この台木品種を作出した人に敬意。

これは10号駄温鉢に挿し木したノイバラの2ヶ月後の状況です。上と同じ用土に挿しました。この挿し穂は比較するためのものではなく、「T芽接ぎ挿し」の練習台です。挿し穂の中間部分に接ぎ木テープと小さな芽が見えています。挿し穂(のオーキシン)はこの「傷」にも対応するので同列の比較はできませんが、ほぼ似たような結果になっています。

相違点

  1. 新葉の展開がかなり劣る。挿し穂の上部にある葉は古葉で、中間部分(芽接ぎ部分の下)にある小さな葉が新葉。
    新葉の展開が貧弱なのはT芽接ぎの影響かも?
  2. 根量(根の本数と長さ)は、上のノイバラと同程度。

この「 ノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)を駄温鉢に挿す」というのが一般的な台木作りの方法でしょうね。これは現時点ではまだ断定することはできませんが、1ヶ月後には台木としてなんとか使用可能な状態になるでしょう。接ぎ木後の活性が高い「デービッド接ぎ」の台木になることは間違いないと思います。

2015年1月11日 追記

挿し木してから3ヶ月が経過しました。12月から正月にかけて寒い日が続きましたが、その間もノイバラの根は成長を続けたようです。BFの外からも根が伸びているのがわかるほどになりました。

ロウバイが咲き、畑の数カ所に植えている「日本スイセン」が甘い香りを漂わせ始めると、接ぎ木シーズンの到来です。接ぎ穂に予定している品種の芽も程度な大きさになっています。

数日後に始める接ぎ木作業の後には、できるだけ根を切らないでその長さに合ったポットに植えるため、10cm(3.5号)角と15cm(5号)ロングを準備しました。これで5月(いわゆる「新苗」の段階)まで育て、その後は地に降ろす予定です。

この1ヶ月、たぶん低温と低日照のせいだと思いますが、枝葉はあまり大きくはなりませんでした。これはこのノイバラ品種の特性でもあるように思われます。寒さに遭うと紅葉する性質があり、それはロサ・ムルティフローラとは異なります。『根も伸びてはいないかも?』という一抹の不安があったので10cmポットも準備したのですが、嬉しいことに根はかなり成長していました。15cm(5号)ロングポットのサイズですね。

ノイバラの秋挿し3ヶ月後の状態

挿し木2ヶ月後に比較対象としたノイバラ(2ヶ月後の写真の水色のバット)の、挿し木3ヶ月後の状況です。

BFから取り出して、その後はプラ鉢に移しました。寒いこの時期にカバーも無い状態だったので、さすがに枝葉はほんの僅かしか成長していませんが、根はそれなりに伸びているのがわかります。

この程度の根量でも「デービッド接ぎ」の台木として使うことができます。

DG+BFを使った2種類のノイバラの秋挿しは、台木として問題なく使えることは昨年の結果からみて間違いありません。

台木としての性能は、ノイバラの品種ごとに穂木との親和性や耐病性など幾つかのことがらで評価する必要がありますが、同一品種の挿し木時期による充実度の差も重要な検討課題だろうと思われます。休眠枝挿しや緑枝挿しと較べて秋挿しは「手間要らず」ですが、接ぎ木の成功率の比較データはまだ不充分です。

ノイバラ台木の秋挿し 挿し木時期

ノイバラの品種やDG・駄温鉢を問わず、1月中旬以降の接ぎ木に間にあうように挿し木台木を育てるには、挿し木の時期は今年よりさらに1週間前倒しの10月1日が良さそうに思えます。10月1日というのはこの地域の冬野菜(ダイコンなど)の標準的な種まき日です。秋の播種時期というのは微妙で、もし種まきが1週間遅れると収穫は2週間以上も遅くなります。ノイバラの秋挿しもそれに似ているのかも・・と思っています。

ノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)を駄温鉢に挿す方法で台木を作るなら、もう少し前の9月20日前後かもしれません。でも別の見方をすれば、発根してれば台木に使えるのだから、時期にあまり神経質になる必要もないでしょうね。早いと雑菌の繁殖など挿し木を失敗させるリスクも増えます。挿し木時期を決めるのは「穂木の充実度」でしょうか。

狭い面積でも数多くの台木を手軽に作れる「DG+BF」は優れものですが、これをどう解決するか、私には難題です。「台木の根は切っても良い」あるいは「根は切った方が良い」と考えを変えれば、問題はないのですが。。

バラの接ぎ木を教えてくれたデービッドさんは台木の根を切りません。『 根を切り詰めるのは培養土の量や輸送コストなど生産者の都合に過ぎず、バラのためには良くない』という考えです。

挿し木数ヶ月の幼株の根は切らないのがいい、というか、理屈抜きで 切りたくない ですよね。老化した黒い根とは違います。

BFを突き抜けた根がまだ少なく短い今の段階で鉢上げするという方法もあるのでしょうが、1ヶ月後の接ぎ木作業を考えるとそれも億劫に思えます。根鉢も崩れるのでまだ休眠していない(成長途上の)挿し穂に与えるストレスも大きいでしょうし、この段階で一時的にでも生育が停滞するのは好ましくありません。

『DG+BFに拘らなければいいじゃないか』とも自問しますが、これの優れた機能(発想)は魅力的です。『高品質のノイバラ台木を一度に100本程度、できるだけ手間をかけずに作る』という、挿し木方法の模索はまだまだ長い道のりのようです。