このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2022年10月27日木曜日

開花し始めた秋のバラ 10月27日

秋のバラが咲き始めました。

今夏はうどんこ病の発生を抑えることができたので、良い秋の花が咲きそうです。バラ会を退会したのでコンテストには参加できずちょっと寂しい気はしますが、咲いてくれたバラに感謝しながら、「ひとりバラ祭り」:p をします。

これまでは、開花がコンテストの期日に合うかどうか気を揉んだりしていましたが、今年はその制約からは解放されて、『秋の花が最も美しく咲くのは11月かも』と、意図的に剪定日をずらしました。今後毎日少しずつ開花が楽しめます。

密かに期待しているのは『花の中に御坐す(おわします) "ほとけ" との出会い』。さて、どうなることか。夏の炎天下、灌水に頑張った自分へのご褒美として、これからしばらくの間は、ゆっくりとバラの美しさを愛でたいと思います。

 ロイヤルハイネス

祭の後の「直会」は、花が終わってから。


翌日 10月28日     2022年 秋のバラ まとめページ

2022年10月25日火曜日

秋晴れ 百壷百花 バラ展

10月23日 快晴。熊本の民窯 小代焼 ふもと窯 のギャラリーを訪ねました。そこで開催されている「百壷百花 バラ展」を拝見するためです。このバラ展は 唐杉純夫 さんの個展。
唐杉さんは「小代焼 ふもと窯」に近い熊本県南関町にお住まいで、福岡バラ会の大先輩です。

穏やかな秋の日。小代(しょうだい)焼きの里山は「窯元めぐり」が行われていました。

バラ展は、ふもと窯のギャラリーを利用して、百壷に数百花のバラという、個人のバラ展としては大規模なものです。

秋の光を受けて輝く "ノービー" の美しい花弁。

唐杉さんの愛培花 "メルヘン ケーネギン" 

 メルヘン ケーネギン
 コンフィダンス
 フロージン'82
 ブランデンブルグ ゲート
 ディム和子
 プリンセス・ドゥ・モナコ
 グリーンライム
 ノービー
 卑弥呼
 パパ メイアン
 プリンセス・ドゥ・モナコ
 真珠
 ノービー
 マダム サチ 衣通姫
 香具山
 ゴールデン ハート
 南の関
 レディ ラック

私が福岡バラ会に入会したのは2015年の秋ですが、唐杉さんはすでに福岡バラ会を退会されていました。唐杉さんが退会後もバラ栽培を続けてあることやバラの個展をされていることは、バラ苗を購入するために何度か訪れた熊本・南関の福島園芸さんから聞き及んでいました。
その後、福岡バラ会の会報「ローズ・ふくおか」のウェブページを制作する機会に、唐杉さんが書かれたいくつかの文章を読んでそのお人柄にとても興味を持ち、個人的に連絡をとって初めてお目にかかることができました。今年の夏のことです。

唐杉さんの文章は、「ローズ・ふくおか アーカイブス」 に、以下の5篇が掲載されています。

  • 平成元年/1989 No.5 「1988年秋 ことしの決算」
  • 平成3年/1991 No.6 「バラ随想」 「1990年秋の全国展に参加して」
  • 平成5年/1993 No.7 「フンイキ時間とフンムキ時間」 「コルデス パーフェクタ」

これとは別に、日本ばら会の会報「ばらだより」の2001年版には「バラと遊ぶ12ヶ月」という連載が掲載されています。ユニークな内容の力作ですが、残念ながらこれはネット上には公開されていません。

夏に訪問したのは土用の丑の日。案内していただいた大型ハウス3棟の中は目眩がするほどの灼熱でしたが、お昼には、涼しい御座敷で「天然うなぎ」をはじめ奥様のお料理をいただき、帰りには切りバラをたくさん頂くなどの、恐縮するほどのご接待を受けました。唐杉さんにお目にかかるのは今回が2回目になります。

バラを拝見し、唐杉さんのお話を聞き、バラの写真を撮る。
圧倒され会場を出て、何を思うでもなし、蒼穹を見上げる。

バラの栽培を学ぶというのは、栽培技術だけではなく、バラとともに生きるその喜びを学ぶことだろうと思います。二度お目にかかった程度では、唐杉さんのバラの世界を知ることはできません。
"南の関" (みなみのせき)は唐杉さんが見出した "フロージン'82" の枝変わりですが、その接ぎ穂をいただけることになったので、接木シーズンに再訪問して、できればご一緒に作業をしながらと思っています。

 南の関

2022年10月22日土曜日

バラのスタンダード仕立てを作る ① 台木の秋挿し

スタンダード仕立てのバラを作るための台木を「秋挿し」で作る作業記録。長尺台木の作り方はいくつもの方法がある と思います。これは私なりの方法です。

長尺台木の挿木については、このブログでも過去に何回か書いていますが、方法は少しずつ変化してきました。最も結果が良かったのはバラ栽培を始めた頃で、気持ちも元気で怖いもの知らず。オキシベロン®液剤もクリザールフラワーフードも使わずに(そんなものは知らなかった)、多い年はバラ友の分まで4〜50本ほどの長尺台木を挿して、ほぼ全部が成功していました。今使っているビニールポットも当時のものです。

でもいろんな失敗を重ねるうちに、慎重に(気弱に)なってしまった自分に気づきます:p 今年は台木にする長尺枝を育てるための畝作りが整わず、準備できた長尺枝はわずか3本だけ。スタンダード仕立て作りに成功するかどうかわからないけど、今回の作業内容をできるだけ正確に記録して、より確実に長尺台木が作れるようになるための検討材料にしたいと思います。


 ハウス内に設置した状況
 長尺枝挿木と底面給水の概念図

手順

  1. 長尺枝の採取 ノイバラ系ハイブリッド種(生育が旺盛で、トゲが少なく、樹肌が綺麗) 
    春に出て夏の間に伸びたベーサルシュート(当年枝)、または前年枝を使う。古すぎる枝は不可。
    つるバラ系の長尺枝も台木として利用できる。

    今年の長尺枝はやや小さくて、枝の直径 10㎜ 栽培品種を接木する部分までの長さ 145㎝ 150㎝ 155㎝

    重要:カット直後に水切りし、その後は切り口を(できるだけ)水から出さない。「寒挿し」とは違って、10月でもバラは盛んに水を吸い揚げている。一時的にでも水が途切れると道管に空気が入り、それによって水の流れが遮断されて(水の "凝集力|日本植物生理学会" が切れて)、その後の水揚げがうまくいかない。これが原因の長尺挿木の失敗例は多いのだが、それに気づかない人が多い。

  2. 長尺枝の秋挿しの時期
    使用する品種や枝の成長程度によって一概には言えないだろうが、私が住む福岡では秋の挿木は10月になってからが好機。早すぎると枝の充実度が低く、雑菌も繁殖しやすい。長尺台木には1月末に栽培品種を接ぐので、3ヶ月の時間がある。慌てる必要はないが、11月になって挿木すると、接木するまでに根の発育が十分ではない。

  3. 長尺枝の上部30㎝ほどの健康な葉を残し、その下の小枝は切除する。枝の先端部は成長点で、ここは発根を促す植物ホルモンの "オーキシン" (インドール酢酸/IAA)を生合成する重要な部分なので、成長点は必ず残しておく

  4. 深水(30㎝)で吸水させる 48時間(24時間でも十分)
    この水に「クリザールフラワーフード」を規定濃度の1/2程度で使用。その特徴は(同ページから引用);
    • 花を大きく咲かせ、萎凋や変色を抑制します。
    • 水のみと比べると、切り花の日持ちが大幅に長くなります。
    • pHを下げ、水揚げを促進します。
    「クリザールフラワーフード」のような切り花延命剤(活性剤)の成分は、植物のエネルギー源になるグルコースやスクロースなどの "糖" と、雑菌の繁殖を抑える制菌剤(強い殺菌剤ではない)。もちろん、使わなくても挿木は可能なんだけど。

    考察:10月12日の記事:「バラの育種 2022  5. 色づき始めたローズヒップ」で紹介した、岐阜大学 応用生物科学部 園芸学研究室・福井博一教授の「挿し木の基本」に以下のような記述がある。一部引用(傍線そら);
    挿し穂の採取後の管理方法として、乾燥を防ぐ目的で水に浸漬することが奨励されている。しかし、軟弱な若葉を付けており蒸散が著しく高い場合や水揚げの特に悪い樹種、発根を阻害する有害物質を含んでいる場合、あるいは酸化酵素の活性が高く褐変が著しい場合には、穂木を採取後速やかに水に浸漬する必要があるが、それ以外では水に浸漬する処理は病害の蔓延を助長し、カルスの形成を阻害する場合があることから、水に浸漬しない方が良好な結果が得られる。また、過度の水の浸漬は有用物質の流失や樹皮の剥離が起こる場合がある。
    福井教授の「挿し木の基本」は、挿木一般について述べたもので、バラの長尺挿木に限定した場合、私の経験では挿し穂の基部(葉は含まない)を深水に数時間以上は浸漬する方が結果が良い。"有用物質の流失" とは何を指しているのかわからないが、スクロースやオーキシンのことかもしれない。もしそうだとしたら、私がクリザールやオキシベロンを使っていることと(たまたま)符合する。

    長尺枝ではなく普通の挿木の場合でカルスが形成されない事例は何度か見たが、それが穂木を水に浸漬することに起因するのか、わからない(そのようには思えないけど)。「病害の蔓延を助長」という事例は見たことがない。

    挿木する前の穂木が「酸化酵素の活性が高く褐変が著しい」というのも思い当たることがない。 挿木後数週間経過して "挿し穂基部の褐変が著しい" という事例は何度も経験した。この場合に特徴的なのはカルスが形成されていない。私の場合、これが挿木失敗の深刻な症状なんだが、原因は水不足ではなく、逆に給水過剰によるバクテリアの繁殖なのかも。

    水に浸漬しないなら、雨後または前日にたっぷり灌水し、水を蓄えている状態で枝を切り出すのが好ましいだろうと思う。

  5. ポットと挿木用土
    • ポットは5号ロング(口径15㎝ 深さ30㎝)のビニールポット。底から8㎝の長さのスリットを4本切り開ける。必須ではないが、底面給水の場合、鉢底穴からの空気の出入りがないので、スリットがあれば空気の入れ替えが進みやすく、やがて根の伸びも見えるようになる。
    • 用土は、底から10㎝まで「水苔」、その上20㎝は鹿沼土細粒(さし芽用土)。その境目あたりは水苔と鹿沼土が混在。鹿沼土や赤玉土は気相を確保するために微塵(意外に多い)を抜く。
    • 安価なバーミキュライトは "薄片"(箔片)になっていて、これは木口を塞ぐので水が揚がり難くNG。
      良質のもの(例:サカタのタネのバーミキュライト)は "粒状" なのでOK。籾殻燻炭も使える。

何度も書いていますが、このブログは "栽培ガイド" ではありません。ポットや挿木用土など、これまでの経験から『これがいい』と思っているだけのことで、端的に言えば、用土は保水性と通気性があり無菌であればなんでもいいのです。使用するポットも然り。なので、『自分ならこうする』と "批評的に" 読んでくださるようお願いします。

そして、みなさんのコメントをいただけるならありがたい。お互いに情報を共有できれば、自分の方法を見直すことで、より安定した結果につなぐことができるだろうと思います。

私の場合、例えば「底面吸水」は2014年11月12日の記事「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」にローゼスペコさんが12月25日に投稿されたコメントにヒントを頂きました。(ローゼスペコさん、その節はありがとう。その後いかがお過ごしでしょうか?)

『水苔には不思議な力が秘められていますよ』と久留米緑化センター・「大洋グリーン」の馬場店長からヒントをいただき、挿し穂基部に "割れ目" を入れることや「切り花延命剤」の使用は、生花作家のみなさんの手法から学びました。「オキシベロン®液剤」は、苗木生産者の方法を参考にしたものです。 長尺台木の先端に葉を残すことの重要性 は 大野耕生さん に教えてもらいました。

バラのスタンダード仕立ては栽培者に根強い人気があるのですが、バラ苗流通関係者から聞いた話では、九州ではそれを生産するナーセリーは消えてしまいました。7〜8年前のことです。『ならば、自分で作る』ということになれば、楽しいだろうと思います。
  1. 設置場所と支柱の準備 
    • 置き場所は強い風が当たらない半日陰。これからの季節の「乾いた寒風」は大敵だが、加温は不要。
    • 発根を促すには、穂木が固定されグラつかないことが重要。長尺枝なので、写真のように横にした支柱で2箇所を固定する。私は横支柱に鉄パイプを使用しているので、枝を保護するカバーをしている。
    • 添木はぐらつき防止ではなく、長尺枝の曲がりを補正するためのもの。したがって、添木をポットに深く挿す必要はない。

  2. ポットの底から10㎝まで、あらかじめ十分に濡らしておいた水苔を強く押し込む。水苔はAAランクの普通品でOK。この時点では鹿沼土は入れない。

  3. 植物ホルモン・オーキシンの製剤である「オキシベロン®液剤」(成分:インドール酪酸…0.40%)の2倍希釈液を準備。木口を浸すだけなので少量でいい。
  1. 準備ができたら、長尺枝の基部を「片クサビ」になるようカットする。私は1刀目で鋭角になるよう斜め切りし、2刀目で先端部を逆側から少し切るが、基部先端の切り方はどのようにでもOK。昔、バラ仲間と先端部の切り方による発根率のテストをしたことがあるが、発根率が劣る "水平切り"(枝に対し直角に切る)以外は、どれも同じような結果だった。

    Tips:次に、剪定鋏を使って、基部に縦方向の「割れ目」を入れる。その長さは節の位置までの3㎝ 程度(逆に言えば、節の下側3㎝ 程度の位置で斜め切りする)。

    これは発根を促す重要なテクニック。オーキシンは茎頂で生合成され、形成層より表皮側の細胞の "シンプラスト経路" (Wiki)で "極性移動" (Wiki)し、挿し穂の基部に到達する。オーキシンは成長を促すと同時に "癒傷" ホルモンでもあるので「割れ目」の表皮側の細胞に集中し、その結果(カルスが生成されて)発根量が大幅に増える。

     基部の調整
     「割れ目」を入れた基部の発根例

  2. 上右:22年1月6日に挿木した穂木の3月2日の根の状態。発根している部位に注目。クサビ形に斜め切りした先端部ではなく、「割れ目」から大量に発根している。厳寒期2ヶ月間の根の伸びはこの程度だが、秋挿しはもう少し早く、1ヶ月程度で底面給水(下記)は不要になる。

  3. 調整した基部を、オキシベロン®液剤2倍希釈液に5秒間浸漬 する。注意:過剰なオーキシンは逆効果 になる。
    ちなみに、園芸が盛んな福岡県・田主丸の植木(苗木)生産農家は『原液に一瞬』なんだそうな。オキシベロン®液剤の取説にそのような方法は記載されていないが、いかにもプロらしい方法だ。

    オーキシンはバラ自体が生合成する。よってオキシベロン®液剤も、クリザールフラワーフードと同様に、充実した穂木であれば必須ではない。ただし「割れ目」を入れた場合は、より多くのオーキシンがある方がベターだろうと思う。

  4. 基部をポット内の水苔の上に置き、その周りに(あらかじめ微塵を抜いて湿らせておいた)鹿沼土を流し込む。

    重要:「鹿沼土をまずポットに入れて、それに枝を挿し込む」のではない。
    絶対に避けるべきは、乾燥した用土をポットに入れ、それに穂木を挿し込むやり方。これだと穂木基部の水分が土に吸われてしまい、基部の中の水に替わって空気が入るので、水揚げに失敗する。

  5. 長尺枝を横支柱に手早く仮固定し、鹿沼土の上から多めの水を注いで「水極め」(みずぎめ)する=水流とともに鹿沼土が下に動き、これによって土が締まり、ポット内の挿し穂基部に無用な(有害な)隙間ができない。バラ苗を鉢植えするときのような「突き固め」などは必要ない。

  6. 底面給水
    「水受け皿」の深さは4㎝。ポットに開けたスリットの長さ8㎝の半分。挿木後はこの深さまで清潔な水があるように留意する。水分過剰だと発根が遅れるが、挿木1ヶ月後までは、水分過剰よりもむしろ水分不足が怖い。
    水受け皿には「珪酸塩白土・ミリオンA」を20㌘入れた。この目的は(同ページから引用);
    不純物を吸いつけて水を清潔に保ちます。
    水栽培やハイドロカルチャー・テラリウムなどの底穴のない容器での栽培で根腐れを防ぎ、水替えの回数を減らせます。
    写真上右の水受け皿にはまだミリオンAを入れていない。ミリオンAを入れてもそれに頼らず、できるだけ頻繁に水を交換するのが良い。その理由は、水の "溶存酸素量" が多い方が好ましいから。ただし、水の交換時に挿し穂がグラつかないように注意。私の方法では長尺枝を横支柱に固定しているのでポットや水受け皿を動かせず、排水は(灯油用の)ポンプを使用している。面倒だし、これが欠点なんだけど、良い解決方法を思いつかないまま何年も過ぎてしまった。

  7. 添木で長尺枝の曲がりを直しながら、添木を横支柱に固定。あとは祈るだけ:p

挿木4日後

10月16日に長尺枝を切り出し、48時間クリザールを吸わせて18日に挿木した3株の4日後(21日)の枝先の状態。
枝先が萎れず上を向いているのは水が揚がっている証拠。ちょっとだけ安心だが、敵は "雑菌" なので 気が抜けない。

水が揚がらない原因

  • 枝の切り口(木口)を水から出して空気に曝したことで、道管に気泡が入った
    「水切り」と、何より「手早い作業」がポイント。
  • 枝の基部に雑菌が繁殖し道管を塞いだ
    これを避けるには、①道具(ナイフ)や用土は清潔なものを使用 ②ポットは洗浄 ③用水は水道水を使用し(溜水はNG)、水受け皿の水が僅かでも濁ったらすぐに交換、水が濁りやすいようならミリオンAも交換 などに留意する。

枝先に残した葉の量が適切かどうかはわからない。『ま、こんなもんだろ』という適当さ。でもこの葉はとても重要で、水の凝集力をベースに、葉からの蒸散(負圧)と根圧が駆動力になって、長尺枝の道管を水が揚がっていく。

参考: 植物Q&A|みんなのひろば | 日本植物生理学会

逆に、葉が多すぎるとどうなるのか? 吸水量に見合わない蒸散を避けるために葉は気孔を閉じる。その結果、光合成の「カルビン・ベンソン回路」が停止し、葉緑体の電子伝達系が過還元状態になり、活性酸素種 が発生する。活性酸素種の怖さは「バラのうどんこ病についての考察」でも触れているが、多すぎる葉は挿し穂全体にゆっくりながらも深刻なダメージを与える危険性がある。挿木したポットを半日陰に置くのも、光過剰による活性酸素種の発生を避けるのが目的。

参照:光阻害 - 光合成事典

「先端が萎れていないか」も重要なチェックポイントだが、吸水不足になったら下側の葉から萎れ始める。その "兆候" がわずかでも見えたら葉の数を少し減らす。ただし、枝先の葉はポンプの役割とオーキシンの供給源として、この後の接木でも極めて重要な役割を果たすことになるので大切に扱い、むやみに摘葉しない。言うまでもないことだが、葉の萎れの原因が雑菌が繁殖したことによる "道管の詰まり" なら、葉をむしっても対策にはならない。挿し穂の基部や道管内に繁殖してしまった雑菌(ヌメリになる)を取り除く方法はわからない。「クリザールを継続して使用」という方法を、以前に一度試したことがあるけど、そのときは効果がなかった。

10月18日に挿木したので、11月中頃までの3週間ほどは底面給水の水位をやや高く保つ。その後徐々に水を減らして(水受け皿の水位を意図的に下げるのではなく、自然に水位が下がるのに任せる)根の発育を促し、およそ1ヶ月後に発根、そこから2ヶ月後の1月末に接木という予定。

スタンダード台木への接木は、1月下旬にデービッド接ぎ(枝残しバージョン)でウイーピング品種を接ぐ予定。その品種も順調に育っているので楽しみ。この長尺挿木がうまくいけばの話だけど:p


追記

11月27日の記事「バラのスタンダード仕立てを作る ② 台木の秋挿しが発根」に続く。
この挿木の結果は、2023年1月9日の「バラのスタンダード仕立てを作る ④ 台木の鉢上げ」に記録。

2022年10月15日土曜日

バラの病虫害 防除記録 2022 秋

このページは、7月24日の記事:「バラの病虫害 防除記録 2022 夏」 の続きです。「農薬使用回数の削減(カウント数)」や「発生程度」など、表の内容についての説明はそちらを見てください。

病虫害防除についての私の基本的な考えは、6月28日の記事:「バラのうどんこ病対策」 に書いています。

秋の防除実績は、栽培の場所(2棟のハウスで栽培内容が異なる)で区分し、病害と虫害の防除を同時に記録します。

FRACコード表日本版(2023年8月)pdfファイル  IRACコード表 国内向け(2021年9月版 Ver10.1)pdfファイル

「特別栽培農産物表示ガイドライン」において節減対象とならない農薬pdfファイル


1 ハウスA(ハイブリッド ティ)
散布日散布前
発生程度
殺菌剤散布7日後
状況
作用機作
グループ名/主剤
FRAC
IRAC
展着剤 倍率
種類
カウント数
累計
備考
1 9/2 0 パンチョTF顆粒水和剤 0 フェニルアセトアミド
作用機構不明U 6
U6 まくぴか 5000倍
シリコン系
9 1
観察 スリップス 15頭/200花 2
2 9/16 オルトランDX粒剤 有機リン系 アセフェート
ネオニコチノイド系 クロチアニジン
1B
4A
10
11
3
3 9/21 0 パレード20フロアブル 0 SDHI殺菌剤/ピラジフルミド
病原菌の呼吸を阻害
C 7 ドライバー 3000倍
高濡れ性・アジュバント
12 4
スピノエース顆粒水和剤 スピノシン系/スピノサド 5 5
4 9/30 珪酸塩白土 ミリオン 珪酸(SiO₂) 72.96%
細胞壁(パピラ)の強化
6
510/3オルトランDX粒剤有機リン系 アセフェート
ネオニコチノイド系 クロチアニジン
1B
4A
13
14
610/4ホリバー(ブルー)スリップス 粘着トラップ7
710/60アグロケア水和剤0バチルス ズブチリス HAI-0404株
複数の作用機構 微生物製剤
BM 2ドライバー 3000倍
高濡れ性・アジュバント
8
810/8珪酸塩白土 ミリオン珪酸(SiO2) 72.96%
910/100アグロケア水和剤0バチルス ズブチリス HAI-0404株BM 2アプローチBI 1000倍
スプレー・アジュバント
9
1010/15観察
摘葉
スリップス発生か
菌密度を下げるため古葉を除去
10
1110/180.1エタノール20%うどんこ病 発生
芋焼酎で葉面を払拭
11
1210/190アグロケア水和剤バチルス ズブチリス HAI-0404株BM 2アプローチBI 1000倍
スプレー・アジュバント
12
1310/20ホリバー(ブルー)
ヨーグルト
スリップス 粘着トラップ
スリップス 誘引トラップ
13

:「散布前の発生程度」や「散布7日後状況」は、うどんこ病の発症程度の "印象評価" で、客観性はありません。

概況

ハウスAではハイブリッド ティの1〜7年生株を10号鉢で 120鉢 ほど栽培していて、交配した株もこの中にある。8月末までにハウスAのうどんこ病はほぼ根絶したと思われる。

内在性のうどんこ病菌がいれば葉面が歪んだり赤変するのだろうが、疑わしき状態の葉も徐々に少なくなって、ほとんど気にならなくなった。

9月になって「パンチョTF」と「パレード20」を散布したので、菌密度はさらに低下したものと思われる。展開している新葉に虫害も見受けられず、季節的にもとても綺麗なので、嬉しい。うどんこ病が出ないとステムの伸びも良いようだ。これは思い違いではないと思う。9月9日の記事:「バラのうどんこ病についての考察・補遺」で引用した「植物細胞における活性酸素種の発生部位と機能について」を参照。病虫害を受けたバラは防御態勢に入り、成長を自己抑制する。

カウント数は8月末までに累計9。目標は30以下だが、このまま推移したら20以下もあり得る。

備考(表の右端の項目)

  1. ハウスAは8月末までにうどんこ病の菌叢は消えた。しかしどこかに潜んでいるだろう菌を叩くために散布。

  2. 2〜3番花を200輪ほど咲かせ、それを一斉に切って花の中にいるスリップスの生息数を調べた。大量の花弁なので、見逃しも多いと思われる。白花系の花弁に僅かながらも薄茶のシミがあったし、スリップスがいるのは間違いない。調査後に、花殻をビニール袋に入れ家庭用の殺虫剤をスプレーして焼却。成虫の密度はかなり下がったのではないかと思われる。

  3. 「オルトランDX粒剤」の使用目的はスリップス対策。悪評高いネオニコ系なので使用するには抵抗感がある。
    なお、この殺虫剤の有効成分は2種類なので、カウント数は2になる。

  4. うどんこ病菌が菌糸を伸ばす時期ではないので、潜んでいる菌の「息の根を止める」のが目的。「パレード20フロアブル」はSDHI殺菌剤で、これは病原菌の呼吸(ミトコンドリア電子伝達系・複合体IIのコハク酸脱水素酵素の働き)を阻害する。
    このミトコンドリア電子伝達系・複合体IIの機構そのものは病原菌に限られたものではなく、宿主植物やあるいはヒトであっても同じ。しかし、散布後にバラに影響が出たようには見えない。どのような機作で病原菌だけを狙い撃ちできるのだろう。バラとうどんこ病菌では、コハク酸脱水素酵素に微妙な差があるのだろうか?  ・・と、今なおしつこく疑問を持ち続けている:p

  5. 「スピノエース顆粒水和剤」は有効成分が土壌放線菌(サッカロポリスポラ スピノサ)。化学合成殺菌剤ではないので、カウント対象外。使用目的はスリップス類の他にコナガの防除。
    これは害虫に作用する "神経毒" なので、スリップス類やコナガの成虫を確認できない状態での使用は、タイミングを誤ったかもしれない。説明書にも、使用時期は "発生初期" と明記してある。

  6. 「珪酸塩白土 ミリオン」の使用目的は、花の発色をよくする他に、ケイ酸による細胞壁の強化。特に「パピラ」の形成にはケイ酸を必要とするらしい。パピラについては、8月15日の記事:「バラのうどんこ病についての考察・前編」の「Ⅱ章 病原糸状菌と植物の戦い」で紹介している。施用量は1回5㌘/10号鉢を1週間隔で2回だが、これが適量なのか不明。もちろん一般性はない。

  7. スリップスはサナギの状態で鉢土の中にいるのかも?と思われるが、10枚設置した粘着トラップにはまったく姿が見えない。しかし、ハウスの防虫ネットの目合いは1㎜なので、今後「糸目」が見え始める時期に外から侵入してくる可能性がある。0.6㎜目合いなら防げる(ネットが赤色系ならより効果的=スリップスは赤色光が見えないので赤花には被害が出ない。赤色系のネットが張られたハウスは、スリップスには黒に見える)らしいが、0.6㎜目合いでは風も通りにくいので、1年で使用を止めた。

  8. 植物活性エキス「ビタナール」 /メルビー酵素と 植物活性材「鉄力あくあ F10」/愛知製鋼 をアグロケア水和剤と混用。「ビタナール」はバチルス ズブチリス菌の餌になれば…と考え、「鉄力あくあ F10」はクロロシス予防とカルシウム補給が目的。Ca不足になるとチップバーン現象(うどんこ病の初期症状と見分けがつきにくい)が出るので、その予防。

  9. この時期はステムの伸びが速い。新しく展開した葉にはバチルス ズブチリス菌がいない(少ない)と思われるので、追加散布が必要と判断。前回と同様に「ビタナール」と「鉄力あくあ F10」も混用。新葉の展開に合わせて、これを数回繰り返すことになるだろう。
    「ビタナール」は福岡バラ会の星隈会長に教えていただいた資材だが、散布1週間後にはその効果が出ているのか、うどんこ病の根絶と併せて、新葉が例年以上に綺麗 だ。

    10月15日追記:ヤツデ葉 出現
    「ビタナール」は肥料的効果が強いようで、品種によっては伸展し始めた三枚葉 (or 柳葉)が元気が良すぎるのか「ヤツデ葉」になっているものもあり、ヤバイ 状況。

    写真左はその一例で、品種は「魅惑」。画面中央の手前側の葉。このような「ヤツデ葉」ができた株が、栽培中の124株のうち、7品種16株もあった。

    この原因は "肥料過多" だろう。8月の施肥ではビタナールの使用を意識していなかったが、ビタナールを使わなかったとしても、この葉の大きさ(特に右後に見える三枚葉)は明らかにバランスが悪い。

    夏の間はECが650に下がり、剪定前に施肥したのがこの結果に。今から思えば、剪定後の9月28日に「リキダス」を使ったのが悪影響したようだ。「リキダス」の絶大な効果はわかっているので使用濃度は1/2なんだが、どうも私は『栽培のセンスがない』=バラの声を聞き取れていない と改めて思う:p

    写真ではステムが寸詰まりに見えているが、実際はステムの伸びは良く、きれいな五枚葉が8節(40葉)ある。

  10. 10月4日に設置したスリップス用(ブルー)粘着トラップ「ホリバー」に、これまでスリップスは見当たらなかったが、今日になって1シートあたり2〜3頭のスリップス(らしき小さな虫)の残骸が、栽培品種に関係なくハウス内全域で見受けられるようになった。今日の時点で蕾の大きさは(バラツキはあるが)"大豆粒" 程度で、早いものは糸目が見え始めた。開花2週間前のこの時期になって急に出てきたようで、バラもスリップスも自然のリズムに合わせているんだな。

    開花が間近になったこの時期に化学合成農薬は使えない(使いたくない)。「スピノエース顆粒水和剤」を再散布するか、粘着トラップを増設するか、無視するか。

    ハウス内の菌密度を少しでも下げるために、新葉がしっかり展開したステムの変色した下葉(古葉)を除去した。

  11. うどんこ病 発生
    うどんこ病が発生した。120株ほどの中の一葉だが、残念。
    撮影は iPhone 6s。近接撮影はこの程度が限界のようで、7㎜ほどの菌叢は鮮明ではないが、既に菌糸が伸び、分生子も散らばっているように見える。

    応急処置として、芋焼酎(エタノール20%)をカット綿に浸して葉面を拭いた。水拭きでは翌朝には菌糸が再生する。
    芋焼酎はこのような事態に備えてハウスに常備してある:p

    焼酎(エタノール)の作用機作は "溶菌" 。殺菌力の強い「消毒用エタノール」は 76.9~81.4 vol%(日本薬局方)だが、この濃度ではバラの細胞も痛めてしまう(数日後に、斑点状に黒化する/テスト済み)ので、菌叢をサッと拭き取るには 20度(%) の焼酎がちょうどいい。

    この後どうすべきか迷うが、まだ糸目が見えていない硬い蕾も多いので、もう一度「アグロケア水和剤」を明日にでも散布しようかと考えている。
  12. バチルス菌とビタナールの効果を最後まで見届けるために、当初からの予定どおりにアグロケア水和剤(2000倍)+ビタナール(6000倍)+鉄力あくあ F10(4000倍) を散布した。これが開花前の最終散布になるだろう。

  13. スリップス対策
    薬剤の散布は避けて、粘着トラップ「ホリバー」|アリスタ ライフサイエンス㈱と、ヨーグルトを使う誘引トラップで対応することにした。

    「ホリバー」は計20枚を設置。最初の設置は8月1日。8月9月はほとんど捕獲できなかったが、10月になってからは1日1匹程度だが、日増しに増えているような気がする。
    上左:8月1日に設置したホリバー。大きな黒点はハエの類。微かな点がスリップス。画像クリックで拡大表示。

    数日前から、鉢の縁を素早く動き回っている小さな虫が目につくようになった。 これがスリップスかどうかわからない(僅かに大きいような気もする)が、春秋の開花期に毎年出現する。これがスリップスなら羽化直後で、この時期の活動域は蕾がまだ固いステム上部ではなく、鉢土の表面付近なんだろう。これはヨーグルトの誘引トラップで、ある程度は捕獲することができる。


    ヨーグルトを使った誘引トラップは、福岡バラ会の講習会「ドクター古藤の園芸講座」で教えていただいたもの。ドクター古藤は "魔法の黄色いバケツ" を使われる。この黄バケツは、15年ほども前にJA糸島の "アグリ" で購入し野菜栽培の害虫駆除に使っていたが、今は手持ちがないので白の鉢底皿で代用。スリップス以外の害虫も同時に狙うなら、やはり黄色がいいと思う。
    ヨーグルト・トラップの作り方は上記リンクを参照。ヨーグルトの種類は特に限定しないようだが、 "プレーン" が無難かな。ハチミツを混ぜる割合も適当でいいみたい。

2 ハウスB(育種中の当年生実生苗)
散布日散布前
発生程度
殺菌剤散布7日後
状況
作用機作
グループ名/主剤
FRAC
IRAC
展着剤 倍率
種類
カウント数
累計
備考
19/20,5パンチョTF顆粒水和剤0.3フェニルアセトアミド
作用機構不明
U 6まくぴか 5000倍
シリコン系
9
29/16ベニカXガード粒剤ネオニコチノイド系 クロチアニジン
バチルス チューリンゲンシス
(宿主の抵抗性を誘導する細菌)
4A
10
39/210.3パレード20フロアブル0.2 →
0.1
SDHI殺菌剤/ピラジフルミド
病原菌の呼吸を阻害
C 7ドライバー 3000倍
高濡れ性・アジュバント
111
スピノエース顆粒水和剤スピノシン系/スピノサド5
49/28ハウス内整理接木+挿木の当年株90鉢と、実生台木の60鉢、計150鉢をハウス外に移動
ハウス内は去年交配した幼苗の64株のみになり、陽当たりと風通しが改善
510/8珪酸塩白土 ミリオン珪酸(SiO2) 72.96%
細胞壁(パピラ)の強化
610/100.1フルピカ フロアブルpdfファイル根絶AP殺菌剤 メパニピリム
アミノ酸およびタンパク質生合成を阻害
9アプローチBI 1000倍
スプレー・アジュバント
122
アグロケア水和剤バチルス ズブチリス HAI-0404株
複数の作用機構を有する微生物製剤
BM 2
710/17
10/19
観察
廃棄

0
うどんこ病 再発か 3株/64株 発生初期?
この3株を処分した
3
810/19補殺コナカイガラムシ 発生4
90アグロケア水和剤バチルス ズブチリス HAI-0404株BM 2アプローチBI 1000倍
スプレー・アジュバント

概況

ハウスBは育苗用のハウスで、間口5.4m X 奥行き7.5mの、農業用としては小型の部類。この中に接木苗や挿木苗、実生の交配苗や台木苗など、計200株以上を押し込んでいた。6号鉢以下の幼苗とはいえ、これではあまりにも過密で、「うどんこ病が出るのも当然」という状態だった:p

こうなってしまったのは、地植えにするためのテスト畝での生育が芳しくなく、その対策が遅れてしまって苗が行く場を失ったから。現在は、去年交配した実生の幼苗64株だけを残して、他の150株は鉢植えのままハウス外に出した。

外に出した "温室育ち" の幼苗は、強光線、強風、雨にいたぶられているが、うどんこ病はいつの間にか消えてしまった。自然の栽培環境ではうどんこ病なんか出ないのが当然 なんだ。今のところ黒星病も発症しておらず、虫害も出ていない。黒星病の発症は時間の問題かもしれないけど。

ハウス内に残した幼苗64株(すべて交配してできた実生のHT)は、5号ロングスリット鉢で、樹高は40〜120㎝、平均で80㎝、シュート2本。現在、二〜三番花が咲いているが、樹勢(伸び)は良いもののステムが細く、花の重さを支えられないものもあるほど。病原菌への抵抗性も脆弱だろうと思われる。秋になって、ようやく強いシュートが出始めた。

 ハウスB で咲いた育種中の品種 1-02-02 10/20 撮影

備考(表の右端の項目)

  1. 殺菌剤の効果が目視でわかる程度になるまでには、呼吸を阻害され病原菌が死ぬまでの時間にプラスして、死んだ菌糸が葉面から消失するのは(風雨が当たらないハウス内では)意外と時間がかかり、およそ2週間後だった。

  2. ハウスAでは使わなかった「フルピカ フロアブル」を散布したのは、枝や葉柄の付け根に白いワタのような菌叢が出たため。これは「菌核病」(minorasu|basf) のようだ。殺菌剤・フルピカ フロアブル の作用機作は「アミノ酸およびタンパク質生合成の阻害」だが、これが適切な選択だったのか良く効いて、散布数日後には菌叢が消えた。*フルピカはばらの灰色かび病に適用はあっても菌核病はない。

    去年、大切にしていたデルバールの「ラ・ドルチェヴィータ」をこの「菌核病」が原因で枯らしてしまった。殺菌剤の作用機作を理解せず、とりあえず手持ちの殺菌剤を散布するというのでは効果はなく、残念な(悔しい)思いをした。

    殺菌剤は病原菌の生育ステージに見合った選択がポイントのような気がする。例えば盛んに菌糸を伸ばす時期ではないのに「H:細胞壁生合成阻害剤」を使用しても効果は小さいのでは。 FRACコードpdfファイルの "A" から "I" までの区分は、殺菌剤の作用機作が病原菌の生育ステージに合うように、ローテーションが組みやすいように、その順が考慮されている。このコードを作った人たち "FRAC: Fungicide Resistance Action Committee"pdfファイル は賢い。
  3. 実生苗64株のうち3株にうどんこ病の軽微な菌叢を発見。「フルピカ フロアブル」と「アグロケア水和剤」は丁寧に散布したので、ショック。交配してできた実生苗なので、遺伝的にうどんこ病に抵抗性の弱い株が混ざっていても不思議ではないのだが。

    10月19日追記:鉢の配置を変えていたのですぐに気づかなかったが、この3株は以前からうどんこ病に弱い虚弱な株だった。「防除記録 2022 夏」に記録している "一部の株" がこれ。数日間ハウス外に出し、強光線に曝すことで一旦はうどんこが消えたのだが、秋になって再発した。育種家ではなく私のような趣味のレベルでも「農薬を使わないと育たないような品種は作るべきではない」と思うので、廃棄することにした。

  4. コナカイガラムシ 発見

    かなり不気味な姿:p  菌糸のようなものも見え、葉の表面に落ちた排泄物がスス病を誘発している。
    ピンセットで挟みとって(簡単に取れる)、ティッシュに包み焼却処分。葉面のスス汚れは拭った。幼株とはいえこんなに汚れるまで気づかないなんて。。反省
     参照:県内で発生するカイガラムシ類|高知県農業技術センター

この防除記録は秋の終わりまで継続します。「まとめ」はその時期に。