このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2012年2月1日水曜日

台木用ノイバラの挿し木

バラの接ぎ木に使うノイバラの台木を、露地(畑の畝)に挿し木で作ります。ノイバラの挿し穂は160本で、同時にスタンダード用台木を作るための母木を挿し、また「芽接ぎ挿し」もテストしました。挿し木が成功するためには、カルスの生成とそれに続くスムースな発根がポイントですが、それに必要な植物ホルモン「オーキシン」とその製品である「オキシベロン」についても触れています。

2013年2月12日追記
このノイバラ台木の挿し木結果は必ずしも上出来とは言えません。活着率は良かったのですが、無肥料栽培にもかかわらず根の生育が極めて旺盛で、切接ぎ用台木としては使いやすいものではありませんでした。挿したのが、ロサ・ムルティフローラではなく、その亜種だったと思われます。
結果は、2013年1月27日に投稿した「バラの接ぎ木 台木の準備」をご覧ください。

1月24日の「バラの栽培品種の挿し木」に続いて、台木用のノイバラ(など)232本の挿し木をしました。

  • 25日 穂木の調整
  • 26日計240本の挿し木
  • 27日トンネル設置

栽培品種の挿し木では寒さに震えながら畑の吹きさらしで穂木の調整をしましたが、今回は納屋に照明と暖房器具を入れての作業だったので、窓の外にちらつく小雪を見ながら、天国でした。

挿し木の準備

挿し木をするときの私の道具類です。オレンジ色のバケツが切り接ぎ用ノイバラ台木の挿し穂160本、手前左がスタンダード用の挿し穂48本、中央の少ない本数のも同じくスタンダード用(枝が若すぎるので別扱い)の8本、白いラベルが付いているのが「芽接ぎ挿し」する16本です。その台木は3品種を比較テストしています。

孫娘の水遊び用のバケツを借りています。この大きさがとっても便利。バケツの底には深さ7cm程度の水が入れてあります。

白いボール(これもおもちゃの台所セットの備品)の中の小ビンは「オキシベロン(液剤)」の2倍希釈液。果物ナイフでマルチを切り挿し穂を差し込む穴を開けて、口細のジョウロで静かに水を注ぎ込んで、いわゆる「水極め」で挿し穂を固定していきます。

畝は空気をより多く鋤き込むことを意識してロータリー耕をしました。畑の畝としては細かく砕土されていると思います。赤玉土の各サイズが混じりあったような状態です。適湿と思えるタイミングでマルチを張りましたので、しっとりしていますが指にはベトつかない程度です。たぶん50%前後だろうと思われますので、気持ち多めに水を差しました。

挿し穂の調整

左:STD台木用の母木を作るための挿し木右:芽接ぎ挿し

過去3年間のこの時期の挿し穂は「4節」を基本にしていた(2011年6月24日の記事「台木用ノイバラの緑枝挿し」)のですが、今年は節数に拘らず挿し穂の長さを20cmにしました。20cmでは、穂木の部位により6〜12節ほどあります。これは、昨年10月のテストで、節数(芽数)が多いほど活着率が高かったからです。挿し木の場合、発根に必要な成長(癒傷)ホルモンの「オーキシン」は、節(芽)付近から分泌されるのではないか?と思っています。蛇足ながら、挿し穂の長さが短くても活着率が高い場合も(もちろん)あります。

挿し穂の長さを20cmにしたのは栽培品種も同様なんですが、品種によっては(FLなど)その長さの挿し穂が調整できなかったものもありました。1枚目の写真に写っているスタンダード用の挿し穂などは基部が未調整なので、やや長めです。

スタンダード用の挿し穂」というのは、これをそのままスタンダード仕立ての台木にするわけではなく、これを8ヶ月間育てて、それから出た2番の枝を100~150cm程度の長さで切って10月に挿し木します。

2014年追記:
スタンダード仕立ての台木にする長尺挿し木の方法は、2014年11月13日「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」の後半で説明しています。また、その様子は2013年2月18日の「バラ 秋の挿し木の鉢上げ」の後半で紹介しています。

挿し木作業

左:挿し木作業中右:畝の奥にSTD台木用

畝はベッド幅100cm、株間20cmの4条です。秋には始末に困るほど枝葉が茂りますが、台木にはそれらは不要で切り捨てますから、この間隔でもだいじょうぶです。ちなみに、T芽接ぎでバラ苗を生産する農家の場合、株間12cmの2条植えです。

挿す深さは挿し穂の1/2の10cmで、基部は「楔型」に調整。「オキシベロン(液剤)」の2倍希釈液の浸漬時間は10秒以下です。昨年10月の「芽接ぎ挿し」の際に試してみたのですが、10秒以上の浸漬時間(例えば30秒とか)は無意味というか、むしろ結果がよくありませんでした。
1本挿すごとに10秒の待ち時間があるので、作業はのんびりとしたペースで進みます。時間はかかりますが、このゆっくりズムが心地よいです。

26日夕刻。これで栽培品種と台木を合わせて480本の挿し木が終了しました。今年は天候にも恵まれ早めに準備をしたのと、4年目で手際も良くなったのか、楽しみながら挿し木作業が進みました。

挿し木畝の右のまだ空いている畝は、2月に接ぎ木する株を大苗に育てるための養生畝です。私はベッド幅100cmで株間は40cm2条の千鳥植えにしますが、バラ苗生産農家では4条で植えるようです。

トンネル設置

トンネルは保温というより防風と保湿が目的です。ハウス用の厚手のビニールではなく、薄い「透明マルチ」を代用しています。理由は、高価なビニールを使い回すより、使い捨ての方が簡単だからです。トンネルのビニールって案外汚れるもんなんです。また春になって気温が上がってくると、適当に穴を開けて換気するのも楽ですし。そうやって徐々に外気に慣らしていきます。

 

栽培品種を挿して今日31日で10日経過。初めて少しだけ潅水しました。効果覿面で、トンネルの中が結露して不透明になりますが、これを見るとなぜか安心します(笑) 「水挿し」というのもあるわけだし、挿し木直後のこの時期は「過湿」はさほど心配しなくてもいいのでは。むしろ乾燥が大敵でしょう。

ノイバラやスタンダード台木は強いからこのままですが、栽培品種のトンネルには遮光ネットをかける予定です。晴天の日には小型のトンネル内は温度が急上昇するのが心配だからです。

畝の一部にまだ挿していない部分がありますが、ここには「切り接ぎ挿し」を試みる予定です。「切り接ぎ」も「挿し木」も最適なこの時期ですから、ならば「切り接ぎ挿し」もいけるのでは?「芽接ぎ挿し」よりも期待できるのかもと思っています。楽しみは尽きることがありません。

"オキシベロン 原液 一瞬"

2013年3月追記:福岡県の田主丸は果樹や庭木の苗生産が盛んな地域です。バラ苗生産農家もあります。この町の園芸農家向けの肥料店にお邪魔したとき、『オキシベロンって効果があるのかどうか、よくわからない。プロはどんな使い方をしてるんでしょう?』という質問をしました。常時オキシベロンを薬品棚に並べているこの肥料店の、寡黙な店主さんが静かに私の眼を覗き込まれるので、『あ、私は2倍希釈で浸漬時間は10秒です』と付け加えると、やや間があってから、

原液に一瞬」。

なるほど。これはいかにもプロらしい(作業時間がかからない)、しかも極秘テクっぽい(オキシベロンの「取り説」にそのような使い方は記載されていない)方法ですね。次の挿し木シーズンにはぜひ試してみようと思っています。

2014年1月追記:植物ホルモン「オーキシン」は、その濃度によって効果が逆になるそうで、最適濃度は植物の部位によって異なるのだそうです。情報源:オーキシン - Wikipedia

2013年6月はオキシベロンを使用せずノイバラ挿し木60本、10月は「原液一瞬」でノイバラ40本、それと栽培品種の挿し穂基部を「250倍液に24時間浸漬」という2パターンで、あわせて3つの方法を試みました。6月と10月のノイバラはいずれも発根率100%で、オキシベロンの効果(あるいは逆効果)はわかりませんでした。10月の栽培品種の挿し木60本はまだ発根率の確認ができておらず、比較対象も無いので、「250倍液に24時間」が効果的なのかどうか、これもまだわかりません。

「原液一瞬」を教えてくれた肥料店がある地域にはバラ苗生産農家が7軒(社)ほどあるのですが、でも考えてみたら、バラ苗生産農家では挿し木作業はほとんどしないはずですね。教えてくれた肥料店の店主さんは私がバラを育てているのをご存知なんですが、もしかしたら「原液一瞬」はバラの場合ではなく、この地域で盛んな果樹や庭木類の挿し木苗生産の場合なのかもしれません。

バラ苗生産ではなく、バラの切り花生産農家は「挿し木」で苗を作る場合も多いのですが、私が訪問した切り花生産農家では『薬剤(オキシベロンやルートンなどの発根促進剤のことか)は何も使用しない。その方が結果が良い』とのお話でした。2012年4月25日の記事「ロックウールを使った バラの挿し木(2)

挿し木におけるオーキシンの必要量(オキシベロンを使って外から与える量)は、挿し穂の状態によって異なるのでしょうね。挿し穂が充実しているなら必要ない、むしろ多過ぎる場合は逆効果ではないかと今は考えています。いずれにしろ台木用ノイバラの挿し木には不要で、栽培品種でもう少しテストを続けてみます。

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