このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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内容は「ばらの育種オンライン勉強会」 案内ページ をご覧ください。



2014年11月9日日曜日

初心者に優しいバラの接ぎ木 デービッド接ぎ

2023年3月4日 追記 デービッド接ぎ

「デービッド接ぎ」に関心を持っていただきありがとうございます。
初出の2013年から10年が経って、「デービッド接ぎ」は新しい方法に修正されています。

2021年12月30日の記事:「デービッド接ぎを見直す」をご覧ください。

最新の情報 は、2023年3月2日の「デービッド接ぎ」です。デービッドさんによる接木の手順を、YouTube動画と写真で紹介しています。


鋭利な接木小刀を使い危険をともなうバラの接ぎ木作業も、「デービッド接ぎ」ならば初心者にも安全で、接ぎ木した株の活性が高く管理が容易なのも特徴です。ニューメデールを使うデービッド接ぎのテーピングや、接木作業後の管理について、その具体例を写真で紹介します。

粕屋町バラサークルが主催した「オーガニックバラ栽培講座」では、2014年2月の講座として「接ぎ木」をメインテーマに、かのやばら園イングリッシュローズガーデンのヘッドガーデナーであるデービッド・B・サンダーソンさんと、鹿屋市「花*薔薇*会」(はなはなかい)の徳田瑞穂さんを講師に招き、「デービッド接ぎ」と「切接ぎ」の実習を行いました。デービッドさんは今年で3回目、徳田さんは2回目の講座になります。

デービッド接ぎのデモに使用したこの台木は、私が2013年10月に挿した秋挿しのノイバラです。秋挿しノイバラ台木の作り方は、2014年11月13日の記事:「バラの挿し木 台木用ノイバラの秋挿し」をご覧ください。

鹿屋市「花*薔薇*会」徳田さんによる「切接ぎ」

徳田さんの接ぎ木方法は、国内ではオーソドックスなバラの接ぎ木方法である「切接ぎ」です。多くのバラ苗生産者が採用していることからもわかるように、安定した結果が得られる優れた方法なのでしょう。

私は「切接ぎ」の実作業は2シーズンしか経験がありません。プロの作業を現場で間近に見学しアドバイスを受けたことはありますが、デービッド接ぎを知ってからはそれ一辺倒です。なので、切接ぎとデービッド接ぎの比較はできません。

私のデービッド接ぎ

今年(2014年)は2月22日と23日に、デービッド接ぎ13品種43本と、F芽接ぎ11品種26本を接ぎ木しました。

これが私の作業机です。天気の良い日は屋外で作業。『寒うないとね?』と呆れられますが、全然。ひたすら楽しいばかりです。左のバットに台木を、中央には穂木と調整した「接ぎ穂」を入れておきます。

「田主丸型」の接ぎ木ナイフと「秀久」作の剪定鋏。接ぎ木テープは「ニューメデール」です。一般的な「接ぎロウ」は使用せず、バラの接ぎ木のプロに教えてもらった「バッチレート」を使います。写真右上の紺色のスプレーには、小刀や鋏を殺菌消毒する逆性石けん液「オスバンS」が入っています。

今年も昨年と同じ道具類ですが、昨年と変わったことは「台木」の作り方です。この台木の作り方は14年11月9日の記事:「バラの挿し木 台木用ノイバラの緑枝挿し」をご覧ください。

1 台木と接ぎ穂の調整

左の台木は、13年7月7日に挿し木して育てたものです。

デービッド接ぎの接ぎ穂は1芽で調整しますが、今回は2芽あるもの(写真右の下段)も試してみました。

接いだ部分のクローズアップで幾つか気になる点が見えます。

  • 台木のA−Bで切り分けた深さが形成層を超えている(深過ぎる)
  • 台木のAの部分と接ぎ穂のCとの接着面に僅かな隙間ができている
  • この隙間は、台木のAの部分からBに向かって形成層を意識しながらナイフを入れる時、どうしても僅かなカーブが生じるのが原因です。このあたりは一工夫必要な気もしますが、デービッドさんはこれを気にしてる様子は無いし、事実この程度の隙間であれば何の問題も無く癒合するようです。

  • 接ぎ穂のDの部分の表皮の削り方が短い
  • この接ぎ穂は、上の写真の3個の接ぎ穂の真ん中のものを使っています。この程度の削り方では長さが足りません。

台木のEは「芽抜き」をした痕です。これもちょっと深過ぎでしょうね(笑)。ここはやがて切り捨てる部分ですが、台木の枝から極性移動で降りてくるオーキシンを考えれば、これは拙いのではないかと思うのですが、結果から判断すれば、これも特に問題にはならなかったようです。要するに、『 細かいことに神経質になるな』ということでしょう。

2 テーピング

接ぎ木テープ(接木フィルム)は「ニューメデール」を使います。これは結ぶ必要のない優れものです。田主丸型の接ぎ木ナイフとニューメデール、どちらも福岡産まれ。私には関係ないけど、ちょっと誇らしい気分。園芸(バラの切り花や苗の生産も)が盛んなこの地に暮らしていて良かった。

上の写真は2芽ある接ぎ穂のテーピングのヘタな例です。これも台木との間に僅かな隙間があります。テープは台木の下部から巻き始め、接合部分から接ぎ穂の先端部分まで巻いて折り返し、再び接合部分を巻いて台木の上部で終わっています。これではムダですし、仕上がりも汚いですね。

左は幾分マシなテーピングの例です。これも2芽ある接ぎ穂ですが、やはり台木の下部から巻き始め、台木を接合部分のやや上まで巻いてから接ぎ穂に移り、接ぎ穂の先端まで巻いて終わっています。これにはムダな折返しがありません。

先端の木口部分はテープを巻かず、バラの接ぎ木のプロ(バラ苗生産農家)に教えてもらった「バッチレート」を塗っています。

テーピングは、台木と接ぎ穂の「又」の部分と接ぎ穂の先端部分の始末がちょっと難しいのですが、バッチレートを使うことで先端部分は幾分でも時間の短縮になるし、見た目もきれいです。

ちなみに接ぎ木テープ(接木用フィルム)「ニューメデール」には、テープ幅とミシン目の有無で4種類のラインナップがありますが、私は 25mm(幅) のミシン目無しを使っています。デービッド接ぎの場合、接ぎ木1株で使う長さは7〜10cm程度ですが、初めからその長さに切らず、20~30cm程度の長さのテープを用意したほうが効率的です。このページの冒頭にある「デービッドさんによるデービッド接ぎ」の4枚の写真の右下を見てください。

これら一連の写真でもわかるでしょうか、台木と接ぎ穂の接合部分は(テープを引き伸ばし気味に)ややきつめに巻き、接ぎ穂の芽の部分は軽く1回巻きにします。巻き終わりは引きちぎるようにすれば、テープが下のテープやバラの表皮にピタリと密着しますので、結ぶ必要はありません。

接ぎ木が成功し株が大きく育つ頃(1年後)には、テープは黒変し劣化して自然に切れます(自然劣化性)。私は最初の冬の剪定時にこれを取り除くようにしています。テープは伸縮性があるので、慌てて早めに取り除く必要はありませんし、取り忘れても実害があるような問題にはなりません。

先週「ニューメデール」を購入しましたが、パッケージが一新していました。これまでの30M巻きのほかに、大量には接がないアマチュアに便利な「5M巻き」が出ています。テープ自体はたぶん同じものでしょう。

2015年11月追記:より詳しい接ぎ木テープの巻き方の手順を、2015年11月26日の「デービッド接ぎ 補遺」で紹介しています。

プロの「切接ぎ」とテーピング

国内のバラ苗生産の現場では、多くは「切接ぎ」です。「接木ドットコム|接ぎ木情報と接木テープ」にその様子を紹介した動画があります。「バラの切接ぎ方法~穂木の作り方と接木テープの巻き方
地元ですから当然?ですが「田主丸型」の接ぎ木小刀(デービッドさんの小刀と同じもの)と、ニューメデールが使われています。

これはデービッド接ぎではなく一般的な切接ぎで、その方法がわかります。私はこれと同じ仕事とその結果を手に取って見たことがありますが、私のテーピングと比較すればちょっと驚くほどルーズ(緩やか or 大雑把)です。その差は私の神経質な性格も禍いしているのでしょうが(笑)、たぶん「切接ぎ」と「デービッド接ぎ」の接合部分の角度の違いにもよるのでしょう。また、接ぎ木作業後の管理方法の違いもあります。プロの場合は接ぎ木後ハウスに仮植えしますので、接ぎ木部分が癒合するまで風雨に曝されることはありません。私のように露地に植える場合は、巻きが緩やかだと水がしみ込む恐れがありますので、その違いは大きいと思います。

デービッドさんはこの職人さんと私の中間程度の巻き加減です。2013年2月7日の記事「バラの接ぎ木」にその写真があります。

デービッド接ぎで「テーピングが緩すぎて失敗した」という経験はありませんが、同様に「きつく巻きすぎて失敗した」という経験もありません。つまりこの接ぎ木テープの性能が優れているから(台木や接ぎ穂の調整と同じく)かなり適当でいいのでしょうね。私の説明ではわかりづらいと思いますが、実際に巻いてみるとその巻き加減はすぐに体得できると思います。

この動画の接ぎ木職人さんの手の動き=接ぎ木ナイフが動く方向と台木を持っている手の位置を見れば、バラの「切接ぎ」作業が危険な要素を含んでいるのがわかるだろうと思います。作業の危険性を避けることもデービッド接ぎの特徴のひとつです。

海外のアマチュアのテーピング

「ニューメデール」は海外にも進出しているようですが、まだ世界中に普及といったレベルではなく、YouTubeで海外のアマチュアの接ぎ木テーピング(パッチング)を見ると、みなさんいろんな資材を工夫してあり、おもしろいです。たとえば・・
いや、これはご自分で検索してください。 "rose budding grafting" などのキーワードでヒットします。世界中のバラ愛好家がそれぞれに接ぎ木を楽しんでいるんだなぁと、「ハロー」と声をかけたい気分になりました。

「芽接ぎ」とテーピング

デービッドさんからは「芽接ぎ」の方法も教えてもらいました。「芽接ぎ」はスタンダード台木に接ぐ場合にも有効です。

この写真のケースでは、台木と芽の大きさ(形成層が現れている部分の大きさ)が異なるので、両者の形成層を片側だけでも合致させるために、芽を左に寄せてあります。

下はデービッド接ぎと同時に作業した私の芽接ぎの事例です。このケースでは、芽に対して台木がかなり細いので、形成層をなるべく多く残すつもりで台木の表皮を剥がすようにナイフを入れています。

芽接ぎのテーピングは容易です。株元側から巻き始め、芽の上は1回だけにします。台木の左の傷は芽抜きした痕跡ですが、その痕跡も覆っています。

風はイングリッシュローズのゆりかご

話題がズレますが、私の経験では「芽接ぎ」の接着(癒合)部分は特に弱く外れやすいので注意が必要です。強風に煽られて、せっかく伸びた大切な新梢が接いだ部分から外れてしまった苦い経験があります(泣)。したがって(私の環境では)幼株の期間は支柱が必要なんですが、イングリッシュローズなどは枝を支柱で固定するとその枝の成長が停滞するようです。

かのやばら園で1万株を超えるイングリッシュローズを管理しているデービッドさんは支柱を立てません。
私もイングリッシュローズを100株ほど栽培・管理していますが、支柱を立てるのは生育に良くないと実感しています。

ご存知のようにイングリッシュローズには「新苗」は販売されていません。また『バラのハンドブック』にも書かれているように苗は深く植付けますから、支柱は必要ありません。私は何度もデービッドさんと一緒にバラ苗の植付け作業をしましたが、植える深さについては彼はとても厳しくチェックをします。

3 接ぎ木後の管理

「デービッド接ぎ」作業後の管理について、デービッドさんから何か話を聞いた記憶がありません。管理上特別なことは何も無く『露地でもポットでも、好きなように』ということだったかな。接ぎ木後の管理についてまとめてみます。

接ぎ木作業は厳寒期に行われます。私が見学したバラ苗生産農家ではビニールハウスに間仕切りをして石油ストーブを焚き、暖房加湿して作業してありました。接いだ台木はビニールハウス内(無加温)に仮植えされます。

左の写真が「仮植え」の様子です。これは見学させてもらったバラ苗生産農家ではなく、別のバラ園のバックヤードにあるハウスの事例で、撮影は2月中旬です。

バラ苗生産農家の「大苗」の場合は、寒さが峠を越えた2月下旬頃にハウスから出して本圃に定植します。

このページの冒頭で紹介した鹿屋市「花*薔薇*会」の徳田さんの場合は、濡らした水苔で台木の根を包みビニール袋に入れて、室内の暖かいところで1ヶ月程度養生するという方法だそうです。

写真は2012年2月19日(接ぎ木後およそ10日目)に撮影したデービッド接ぎの養生畝です。この年は珍しく二度も大雪が降りました。

中央が接ぎ木畝で手前にデービッド接ぎ、奥の4条植えは切り接ぎです。左には挿し木畝があり、それにはビニールトンネルが設置してあります。

接ぎ木畝にビニールトンネルを設置しなかったのは、その必要性をあまり意識しなかったからです。雪が降ってちょっと慌てたのですが、被害は出なかったとその時は思いました。

でも今になって考えれば、厳寒期に接いだ接ぎ木苗は、寒さが和らぐまではある程度の防寒をした方がいいのではないかと思います。デービッド接ぎは切り接ぎよりも活性が高く、事実このような雪(低温)にも耐えたのですが、防寒(乾いた冷たい季節風に対する風よけ)をすればさらに初期生育が良かったのかもしれません。

2013年も、そしてこれまでのような畝ではなく鉢植えにした今年も、特に防寒はしないままでした。ただし今年は接ぎ木をしたのが2月下旬と遅れたので、もう寒さのピークは過ぎていました。もし1月上旬に接いで小型のプラ鉢で養生する場合は、2月下旬までは何らかの防寒対策をした方がいいのでしょうね。

4 接ぎ木1ヶ月後(2014年3月23日)

接ぎ木作業が終わるまで数日間いったん仮植えした苗は、その後5〜6号のプラ鉢に鉢上げしました。
下の写真は、接ぎ木作業からちょうど1ヶ月後、3月23日の様子です。

左の写真に見える緑色の枝葉は新梢ではなく台木のものです。

この時点ではまだ台木をカットしていないので、台木はさかんに光合成をしますし、それに伴って根の働き(水や養分の吸収)も活発です。それは接ぎ穂にも成長を促す良い効果を与えていると思います。
徳田さんの解説によれば、「切り接ぎ」の場合は接ぎ木後の養生が大切なようですが、「デービッド接ぎ」の場合は「大苗」を植付ける感覚でいいので、この間の管理がとても楽です。

デービッド接ぎはすべての株で接ぎ木テープを突き抜けて発芽し、芽接ぎはかわいい赤い芽が動き出そうとしています。

発芽の力はすごいですね。接ぎ木テープを突き抜けています。画像クリックで拡大しますから、接ぎ木部分を見てください。テープの内部が「結露」しています。これは外から水が入ったのではなく台木から出た水分です。まだ癒合が完全ではない証拠でもありますが、この「結露」は気にする必要はありません。

右は「花*薔薇*会」の徳田さんによる切り接ぎです。「接ぎロウ」が使われています。これは1月に接がれ、徳田さんの手元で1ヶ月大切に養生された後に私の所に来ました。接ぎ木後約2ヶ月が経過しています。さすがにしっかりした接ぎ木苗です。

追記:この株は大きく成長しました。品種は濃赤の花弁数が多い花が咲くHTのはずなんですが、赤花が咲く葉色ではありませんね。咲いたら一重でちょっと驚くほど青みがかった紫色の花色でした。ラベリングの勘違いか「枝変わり」なのか。これを(今後勉強したいバラの交配の)交配親のひとつにしたいと思っています。徳田さん、ありがとう。

5 台木のカット(4月1日/接ぎ木40日後)

庭の満開のサクラの下で、新梢が急速に伸び始めました。上の3月23日の芽の大きさと較べてください(ただし同じ株ではありません)。僅か1週間程度で新梢が5cm以上になりました。接ぎ穂はもう自分で光合成ができますので、台木をカットする時期です。

 

デービッド接ぎ・芽接ぎ共に、切り口には「バッチレート」を塗布しています。

6 台木カットから1週間後(4月8日/接ぎ木から約50日後)

新梢が5cm伸びたのを目処に台木をカットしたのですが、その1週間後には新梢が倍の10cmほどになりました。 ポットの表面には庭のサクラの散った花びらが見えています。この時期のバラの生育は目をみはるものがありますね。

上の4株のうち左は2芽ある接ぎ穂で、下の写真の右もそうです。2芽が有利かどうかはよくわかりませんが、不利なことは無さそうです。1芽でも(生産されてるほとんどの接ぎ木苗は1芽ですね)接ぎ木がうまくいって株に勢いがあればすぐにシュートが出てきます。下の左と中の写真にその様子が見えます(画像クリックで拡大)。左は初めから新梢が2本出ていますし、中はベーサルシュートが見えています。

上の写真の左の茶色の2鉢(6号)は緑枝挿しの台木、右の2鉢(5号)は秋挿し台木です。台木の違いによる差はほとんどわかりませんね。

7 接ぎ木3ヶ月後(5月22日)

接ぎ木作業から90日後、台木のカットから50日後です。既にピンチ(や摘蕾)を終えています。
今年は「パワフルアミノ」を与えたので、まずまずの(私としてはこれまでで最も出来の良い)生育具合です。


これらの苗は、この時期に販売されている「新苗」と比較すれば大きくはありませんが、プロが作る新苗はハウス栽培です。あるところで、同じ時期に接ぎ木した大量の新苗をハウスの内と外で養生してあるのを見たことがありますが、驚くほどの生育差がありました。接ぎ木をする厳寒期から4月にかけてのハウス栽培(無加温)は絶大な効果があります。
負け惜しみを言ってるみたいで悔しいから、私もハウスの建設を準備中。病が嵩じて私もついに泥沼に・・

(閑話休題)私の2014年のデービッド接ぎは、この時点で明らかに失敗と思えるものは13品種43本中1本もありませんでした。F芽接ぎの11品種26本はやや苦戦しています。コンテナの奥の方、まだ小さいのが芽接ぎ株ですが、なかなか大きくならない株があります。これは私の腕が悪いのか、それとも時期の問題なのか。たぶん、『デービッド接ぎのついでに芽接ぎも・・』という、芽接ぎに対する私のいい加減な気持ちも作業に影響しているのでしょうね。

8 接ぎ木 2015年の準備

この秋には台木を「秋挿し」で150本ほど作っています。挿して1ヶ月が経過した挿し穂を調べたら根が5cmほど伸びていました。穂木の芽の状態に合わせた接ぎ木作業ができそうで、この冬は接ぎ木三昧になりそうです(嬉)。
台木が発根したばかりなのに、もう今から「今度はどの品種を増やそうか、どの枝を穂木にしようか』と思案しております。秋の2番花(今年の最後の花)が終わりかけたこの時期に、即効性の肥料をやると穂木が充実するのに効果的かな?・・と思いつつも、まだ施肥していません。『 放っとけ 』という、できるだけ手をかけずに栽培するのが私の理想と、自分の怠慢の言訳にしています。

17 件のコメント:

いないな さんのコメント...

ソラさま


初めて書き込み致します。東京のバラ好きです、横好きですが。

一つ質問があります。去年の夏に挿し木した台木(ナタール・ブライアー)に見真似でデイビッド接ぎを行いました。わずか6本ですが。接ぎ木後の管理に悩んでいます。
当家には趣味のサボテンビニールハウス(二坪)があります。温度計では朝は‐5℃、最高は35℃位になっている様子です。温度計が正確ではないかもしれませんが。日当たりは良好なのですが、果たして接いだバラをここで管理してよいものか?と…。特に、寒さ、厚さのストレスですね。今はポリポットに植えて庭にだしてあり、夜は室内に置いてあります。日に当てたいからです。ビニール袋で覆いはしいていません。ここに入れて管理できれば簡単でいいのですがね。プロの無加温ハウスはどれくらいの温度になっているのでしょうかね?

そら みたか さんのコメント...

「デービッド接ぎ」を試みる方が増えつつあるようで、嬉しく思っています。

先に結論を書きますが、明日と明後日はデービッドさんと一緒に接木をします(接木講座)ので、いないなさんのご質問をデービッドさんに見てもらって、彼のアドバイスをもらおうと思っています。

いないなさんの現在の方法=「昼間は庭に出して、夜は室内(あるいは温室内)に置く」で良いのではないかと私は思います。「デービッド接ぎ」は切接ぎよりも株の活性が高いので低温にも強く、私が住んでいる福岡では、庭に置いたままでも特に問題は感じませんでした。ただし、いないなさんの地域=朝の‐5℃が続くというのは厳しいかもしれませんね。

> プロの無加温ハウスはどれくらいの温度になっているのでしょうかね?

私はプロではありませんが私のハウスでは 0℃〜20℃の範囲を超えないよう管理しています。バラ苗生産者(切接ぎ)のハウスも同じような温度ではないでしょうか。ただし、新苗で出荷する場合は別で、夜間は加温して12℃〜24℃の範囲でコントロールすると聞いています。

「急いで大きくする必要はない。ゆっくり育ってくれればいい」
1月に接木して3ヶ月後の4月には蕾が見える状態にまで育て上げて出荷するバラ苗生産者。私たちアマチュアはその真似をする必要はないですよね。ビニール袋を掛けるなど温度を上げる配慮は無用でしょう。接いだ部分が癒合する前に芽が伸びるのは好ましくありません。

バラは低温には比較的強いです。ただし「乾いた寒風」には弱いような気がするので、そこは配慮する必要があろうかと思います。

デービッドさんのアドバイスは週明けに投稿する予定です。

いないな さんのコメント...

そらさま

お返事感謝いたします。
温度について補足させてください。東京在住ですがTVなどの天気予報の気温よりは2度ほど低いと思っています。なにせ天気予報の観測値は都心であり、温室効果もあるでしょうから。
最低が-5℃と書いたのは多少大袈裟かもしれません。これは庭のパイプハウスにある最高最低温度計がマイナスを示しており多分そんなに正確ではなく、マージンを取って表現させてもらいました。ましてや。-5℃が続くことは稀ですね。多分よっぽどの寒波が来なければ良いトコ-2~3℃程度でしょう。日中は天気が良ければ30℃を少し超える程度だと思います。心配なのは、この温度の差なのです。(人間でも同じですしね。寒暖差のストレス)やはり出し入れするべきでしょうかね?庭ではバラ、レモンなども育っています。霜柱やバケツの水が氷るのも稀ですね。今年は暖冬と聞いてますしね。悩むところですね。強風対策としてもパイプハウスで管理できれば楽ですし、日も当てたいので。冬のこの時期に換気をしてハウス内の温度を下げる事はサボテン達には不憫を掛けます。「なるべく自然が一番」というのが私の信条です、むしろパイプハウスの利用が不自然ですかね?思い切って昼夜ともに外に放置というのが一番良いかもしれませんね?昔の感覚だと、接いだ後は寝巻をしてビニール袋に入れて窓際にぶら下げておくという事をやっていた覚えがあります。デイビッド接ぎの特徴である植物の生長過程を遮らない管理が一番だと思いますので…オモテに放置ですかね?

そら みたか さんのコメント...

デービッドさんは今週は福岡県内の各地で接木の講習会をしています。今日は春日市の会場でした。講習会の参加者数名から、いないなさんと同じ質問が出ました。家庭用の小型ビニールハウスでの管理、その温度に関しての質問です。

> 「なるべく自然が一番」というのが私の信条です

私も全く同感で、それはデービッドさんも同じと確信します。デービッドさんの方法は具体的には、『昼間は外に出して陽にあて、夜は玄関に移動する。暖かいリビングルームに置くのは良くない』というものです。「玄関」というのは、玄関内に置くと言うより、玄関先(軒先)などに移動して「霜にあてない」という意味だと私は受け取りました。小型ビニールハウスは好天時の温度の急上昇、過上昇が良くないとのお話でした。

> 昔の感覚だと、接いだ後は寝巻をしてビニール袋に入れて窓際にぶら下げておくという事をやっていた覚えがあります。

今も一般的な「切接ぎ」の講習会ではそのように説明されることが多いようですね。その方法ではポットサイズに合わせて根も切りますが、デービッド接ぎでは根を切りません。ここが重要なポイントです。枝葉や根を切られた切接ぎの台木は、例えて言えば「息絶え絶え」の状態なので手厚い保護が必要なんでしょう。根、特にその先端部分(根端分裂組織とそれに近い部分の細胞群)は、水分や養分、温度などのセンサーでもあると私は考えています。それらのセンサーを失ったら植物は・・?

温度に関して細かいことを言えば、配慮すべきは根(培養土)の温度で、接木した部分(地上部)は極端な低温にあわせなければさほど心配する必要はない(むしろ温度を上げないほうが良い)のですが、さて、ポットだけを寒さから守るためにはどうすれば良いでしょう? 

確実なのは(そう私が思うのは)「地植え」することです。地中は(表土はさておき)有機物とそれを分解する土壌微生物の活動によって意外と暖かいようですよ。大苗生産農家はそれを利用して、接木後に無加温のハウス内に地植え(春まで仮植え)します。もしポット植えを地中に埋めると排水(過湿)が心配なのでその配慮は必要でしょうが。。

> デイビッド接ぎの特徴である植物の生長過程を遮らない管理が一番だと思いますので…オモテに放置ですかね?

デービッド接ぎのことをよく理解してくださっているようで、ありがとうございます。
そうですね。充実した台木と穂木であれば、極端な低温が続かない限りへこたれたりしません。経験的にそう思いますが、もし何かいないなさんなりの良い方法が見つかれば教えてください。

デービッドさんは明日は福岡県久留米市で接木講座です。追加情報があれば週明けに書き込みます。

いないな さんのコメント...

そらさま

ご無沙汰しております。実は1月10日頃にデービッド接ぎで5本接ぎました。4月8日現在で穂木から芽吹いたのは1株だけです。しかし穂木は今でも緑色で目が赤く膨らんでいます。台木からは目が出て葉が展開しております。これは・・・ 
多分接ぎ方が不完全で形成層が非常に小面積でしか合っていないのでしょうかね?

台木は去年7月に挿し木をしたナタリーブレイアーです。穂木は庭の成長の良い木から取っています。

根も良く伸びています。今後の大切に見て行きますが、展開した葉、芽と減らして穂木に力が回るように仕向けた方がいいでしょうか?

おおかた失敗の部類だと勉強させてもらっています。
ご意見、ご指南下さい。

そら みたか さんのコメント...

COVID-19の感染が、私が住んでいる福岡でも急速に拡大していて、この春のバラ関連イベントが軒並みにキャンセルされている状況です。

さて、私は今年はおよそ100本の接木をしました。ハウスの中でバラ仲間の接木株と一緒に管理していますが、「成功率90%が当たり前」だったバラの接木が、今年は「成功率40%程度」と極めて不本意な結果になりそうです。このあまりの結果の悪さに驚かれるかもしれませんね(笑)。これは、接木方法に関するいくつかのテストも含めた結果です。負け惜しみではなく『失敗は貴重な経験』でして、仲間と一緒にそれを総括し、次のシーズンに備えようとしています。近日中にまとめ、写真とともにこのブログに掲載する予定です。

バラの接木は、成功率90%の頃(ビギナーズラックと言うか、デービッド接ぎを素直に実践していた頃)には気付かなかった幾つかの要因が大きく影響するようです。いないなさんもお気づきのように「穂木の充実度」もそのひとつですね。

いないなさんのデービッド接ぎですが、今の私は明確に返答することができません。以前の私なら『そうです、形成層が小面積でしか合っていないからでしょう』とでも言ったかもしれませんが、今年の私は『接木はそんなに単純なことではない』と思うようになりました。芽が死んではいないのに動かない状態を「お地蔵さん」と言いますが、私(たち)もお地蔵さんを何株も経験しました。この状態を打破して芽を動かすために幾つか試みましたが、うまく動いてくれません。また、最初に小さな葉が展開しそこで止まってしまう状態の株もあります(これが多い)。ベテランの皆さんでもこのお地蔵さんの原因はよくわからないとのこと。したがってそれを打破する妙案も無いようです。
間違っているかもしれませんが、枯れない(黒化しない)まま動かないお地蔵さんは、もしかしたら「今の状態で居心地が良い(良すぎる)」のかもしれませんね。

> 展開した葉、芽と減らして穂木に力が回るように仕向けた方がいいでしょうか?

そうですね。台木の枝葉の成長が優先され、穂木は眠っているのかもしれません。接木後既に3ヶ月を経過していますから、私なら台木を接木した部分の上7mmあたりで切ります。切ってもすぐには動かないこともありますが、穂木(特にその芽)や台木が黒褐色になっていなければ、いずれ動き出すのではと思います。台木を切ることで癒傷ホルモンのオーキシンが生合成され、オーキシンは同時に発芽を促す成長ホルモンでもあるので、その効果(ショック)で芽が動き始める。私の今年の接木のうちスタンダード仕立ての1本(芽接ぎ)がまさにその状態です。台木を切って3週間後の今、やっとわずかに芽が動き始めたところですが、でも予断を許さない微妙な状況です。


とうふ さんのコメント...

はじめまして。
いままで挿し木しかしたことがないのですが、今年はノイバラの台木を入手できデービッド接ぎに挑戦しようと思っています。
そらさんのサイトが非常に細かく書いてあって助かります。

温度や湿度についての管理が大変そうに書かれているものが多いですが
そらさんが外でそのまま地上管理されて雪の降った写真には驚きました。

わたしは鉢植えの予定なのですが
よく養分のない鹿沼か赤玉に植えると書いてあるのを見ますが
土は何がいいのでしょうか?

そら みたか さんのコメント...

寒い日が続きます。私の今年の接木は大半の株の枝を切り落としたので、この寒さにいささか心配ですが、台木の状態が良かったので、やがて元気いい新芽が伸びてくるだろうと期待しているところです。

さて、台木を植え込む培土ですが、ご指摘のように多くの栽培者は「無肥料の土に植え込む」と言われますし、中には「鹿沼か赤玉の単体に」というのも見受けられますね。

私見ですが、これはプロ(バラ苗生産者)が大苗を作る際に、暖かくなるまでいったんハウス内に仮植えする、その土を見て誤解しているのだと思っています。

鉢植えで接木した苗を育てるなら、私は2021年12月23日の記事「台木の鉢上げ」に書いているように、有機物と無機物が半々の培土に植え込みます。これは師匠のデービッドさんも福島先生も同様ですし、バラ苗生産農家も、鹿沼か赤玉などの単体に植え込む事例は見たことがありません。園芸店で見る新苗のポットの培養土でも、そんなのは無いでしょう?

5月には「鉢増し」をされると思いますが、そのときには「根鉢」を崩しませんよね。つまり最初に植え込んだ土をそのまま使うことになるので、鉢増しするときと同じ土がいいと思っています。

培土は(誤解を恐れずに言えば)「それなりの土なら何でもいい」のですが、優れた栽培者はいろいろ工夫されていて、その分、根量の多い立派な株に育っています。その一例:
「新苗で秋に勝負 3月|鉢増しの方法」

お手軽な方法:信頼できるメーカーの「バラの土」を購入し、それと同量程度の赤玉土を混ぜる。排水が悪そうなポットなら軽石などを混ぜる。

ただし、「肥料」に関しては植え込みの際には私も施用していません。台木の根が養分を吸収し始めるまでは肥料は意味がないと思います。

施肥は、台木の根の状態に合ったタイミングが大事だろうと思います。プロの事例が "バラ息さん" のブログ「いぶし銀のバラ屋」に掲載されています。
バラ息さんは「T芽接ぎ苗」ですが、2月中旬までに鉢上げした苗の新芽が3月中旬には5cmほどに伸び、そのタイミングで「パワフルアミノ」を施肥しています。そしてその1ヶ月後には出荷。恐るべき生育のスピードですね。バラ息さんから教えてもらった「パワフルアミノ」を紹介している私のブログページに、その生育ぶりをが紹介されているページのリンクを掲載しています。

> デービッド接ぎに挑戦しようと
デービッド接ぎは少し方法が変わっています。ぜひ最新記事「デービッド接ぎを見直す - 2021/12/30」と「デービッド接ぎと 田主丸型 接木小刀 - 2022/1/10」をご覧ください。
説明が下手なので、もしわからないことがあればご指摘を。接木が上手くいきますように。「安全」に気をつけて。

そら みたか さんのコメント...


すみません、16日のコメントの、「新苗で秋に勝負 3月|鉢増しの方法」のURLを誤記しています。
正しいリンクはこちらです。「新苗で秋に勝負 3月|鉢増しの方法」

とうふ さんのコメント...

丁寧に返信くださりありがとうございます。
培養土に赤玉を半々にして使用してみようとおもいます。
土はこだわりのある方はほんとうに考えられているのですね
ここまでやるにはなかなか大変ですが。

わたしも以前、接ぎ木講習ではなくバラ栽培講習でデービッドさんの講習会に
参加したことがあるのですが、たしかにゼオライトはたくさん使っておられました。

たびたび質問で申し訳ないのですが
一応、庭の簡易ビニール棚に入れようと思うのですが
接ぎ木を植えた鉢そのものにビニールをかける必要はないでしょうか?
穂木の乾燥を防いだほうが良いようなのですが
初心者でテープの巻き方がどうも下手なようなので蒸散が防げるかどうか
怪しい部分があります。

そら みたか さんのコメント...


とうふ さん wrote;
> わたしも以前、接ぎ木講習ではなくバラ栽培講習でデービッドさんの講習会に
> 参加したことがあるのですが、たしかにゼオライトはたくさん使っておられました。

おお、そうなんですか。v(^^)
たしかにデービッドさんはゼオライトをたくさん使いますよね。彼は今、小豆島に作るバラ園の準備作業中で、間違いなく大量のゼオライトを用意しているはずです。


さて、ご指摘のように「接ぎ穂は "乾いた寒風" には弱い」と思います。

接木テープ「ニューメデール」を使用されるなら、そしてそれを接ぎ穂の頭まで巻くなら、かなり乾燥から守ってくれます。
例えば、台木の枝を残す場合、台木と接ぎ穂の間にできるV字状の谷にテープを巻くとそこに小さな空間ができるのですが、その内部には水滴ができます。つまり、台木は水分を供給していて、「ニューメデール」はその水分を外に逃しません。

テープの巻き方は、これはもう「慣れ」だと思います。要らない枝を台木に見立て、これまたダミーの接ぎ穂でテーピングの練習されたらいいと思います。かく言う私も下手で、巻くときに形成層がズレたりしています。特に、最後に接ぎ穂の頭を巻くときにズレが生じやすいですね。

接木テープ「ニューメデール」:
① このテープは低温時は伸びが悪くなります。寒い環境で接木するときは常時ポケットに入れて保温しておきます。プロの作業場は石油ストーブで暖房してあり、その上のヤカンから湯気も出ています。ヤカンは関係ないか(笑)
② 暗所に保管しても経年劣化します。2年はなんとか使えるみたいですが。なので、テープを節約するよりどんどん使って「慣れる」ほうがいいと思います。


とうふ さんの「簡易ビニール棚」は夜間に結露しますか? 私のビニールトンネルは、夜間から明け方にかけて水滴が滴り落ちるほど結露します。なので、「ニューメデール」と併せ、乾燥防止策は不要なんです。

「簡易ビニール棚」の状況を見て、結露もせず乾燥気味ならビニールをかけるのも良い方法かも。ただし、日差しがある時はこの季節でもかなり高温になります(すぐ30度Cになる)ので注意が必要でしょうね。「24度Cを超えるのは良くない」と聞いています。

とうふ さんのコメント...

ありがとうございます。
簡易ビニール棚は結露しているのでそのまま入れることにしました。
今まで日当たりのいいところに置いていたので
ビニール棚を直射日光の当たらないところに置きなおしました。

なんとか接ぎ木をし、土も赤玉と培養土半々
直射日光の当たらない場所でビニール棚管理です。
あとは数か月後うまくいっていることを祈るのみです。

温度は気を付けてみるようにしてみます。

今回、実生のノイバラ台木が手に入ったのではじめて接ぎ木にチャレンジしたのですが
そらさんはほかにもノイバラの接ぎ木苗にも接ぎ木をされていますが
成長のほどはどうでしょうか?

10年以上前なのですが農場試験場での切り花の実生接ぎ木、
挿し木への接ぎ木、挿し木をロックウールでやった場合の花付きや成長の
観察経過で挿し木への接ぎ木は成長は実生接ぎ木と変わらないものが多いが
5年程度で急に枯れこむものが半数でた、という結果をみました。

これはロックウールを使用した場合だったので土だとまた違うのかなと思うのですが
そらさんが何年もされていて違いがあるようであれば
また教えていただけるとありがたいです。

そら みたか さんのコメント...


接木後の温度管理は気を使いますが、細かくコントロールするのは実際には無理ですね。私は、最高・最低温度が26度C〜0度Cの範囲であればOKとしています。畑にいるときは休憩するごとに温度計を見て、18度C程度になるよう開口具合を調整しています。夕刻に陽が傾くと急速に温度が下がるので、早めにビニールを下げます。

> ビニール棚を直射日光の当たらないところに置きなおしました。
なるほど。陽射しがあれば狭い空間は急に(極端に)温度が上がるので、良い方法かもですね。
別の方法として、陽当たりのいい場所に置き、陽射しがある時は大きく開口するとともに「遮光ネットを展開」というやり方もありかも。

以下(いささか)蛇足。
発芽を促す植物ホルモンは「サイトカイニン」です。これは根で生合成されます。植物は、発芽の条件が整っていないときに無駄に発芽するのを抑制するため「ABA(アブシシン酸)」という別の植物ホルモンを利用します。普段はこのABAが発芽を抑制しています。ABAを不活性型にするためには「光」が必要です。
また、陽射しは培土やバラの体温を上げる効果もあるので、高温になるのを警戒しすぎて光量不足にならぬよう注意する必要があると思います。

「実生台木」と「挿木台木」の違い
おもしろいご指摘ですね。
しかし残念ながら私はこれまでそのような問題意識を持ったことがなく、したがってその差も認識していません。
以前、神奈川県農業技術センターの「バラの台木の違いによる生産性・切り花品質の違い」というレポートがあったのですが、現在はリンク切れになっているようです。このレポートは「台木の品種の違い」を調べたもので、同じ台木品種の「実生」と「挿木」を比較したものではありませんでした。

> 5年程度で急に枯れこむものが半数でた、という結果をみました。

・・そうなんですか。何が原因なんでしょうね?

「T芽接ぎ用ナイフと How to rose budding.」で紹介したオースアトラリアのバラ苗生産者・rotaryhoes(ロータリーホー)さんは挿木で台木を作ります。彼が台木に使うのは、"Fortuniana" と "Dr. Huey" ですが、次のように言っています。

(上記YouTube動画のコメントから引用)
There is many types of rootstock suited to different areas. Fortuniana flourishes in the hot dry conditions we have and will live for at least a hundred years that i know of, maybe forever! It doesn't mind -3 degrees we get here but as it never gets any colder i don't know what would happen from there. The rootstock you see in the pots is dr huey, it grows like a weed. I strikes very well and we get a near on 100% strike, buds easy and grows strong. It doesn't like extreme heat or dry conditions but still performs quite well. After twenty years it seems to start to slow down.

(Google翻訳から関係部分を引用)
さまざまな地域に適した台木には多くの種類があります。
"Fortuniana" は、少なくとも100年間、おそらく永遠に生きます!
"Dr. Huey" は雑草のように育ち、芽が出やすく、強くなります。 極端な暑さや乾燥状態は好きではありませんが、それでも非常にうまく機能します。 20年後、それは樹勢が衰え始めているようです。
(引用ここまで)

「5年程度で急に枯れこむものが半数」とは、どのような条件下での栽培なんでしょうね。私には皆目検討がつかないので、枯れこむ理由を知りたいです。

テーマがズレますが、バラの切り花生産者の場合は、私たちが栽培するいわゆる「ガーデンローズ」とは栽培の目的も方法もまるで異なります。「5年程度で急に枯れこむ」のは全く問題ではないだろうと思います。私はこの6年間「競技バラ」を栽培してきましたが、品種によっては2〜3年の若い株の方が良い結果になる品種も少なくありません。生産性(品質の平均化と採花数の確保)を上げるために親株をどんどん更新するのは当然のことでしょう。

ガーデンローズの場合、繁殖の最良の方法は「接木」ではなく「挿木="Own Root"(自根)」だろうと思っています。
「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」
デービッドさんはイングリッシュローズを「深植え」します。その理由の一つはこの "Own Root" を出させることでもあります。「栽培品種の接木と挿木では生育がどう違うか」は興味あるテーマなので、今年は接木して残った枝を幾つか挿木しています。

私の今年の台木(120株程度)は、ノイバラの実生50%、原種系ハイブリッド種の実生25%、同・挿木25%なので、経過を観察してみようかとも思いますが、比較するには条件を揃えて数年かけることが必要でしょうね。私には最も苦手なこと(苦笑)

そら みたか さんのコメント...

補足です。

切り花生産者の栽培方法に詳しいわけではありませんが、ロックウールを培地にした一般的な栽培方法(アーチング栽培が多い)は、「実生台木」というものは存在しないはずです。なぜなら、実生から台木を作るのに1年かかるので、その期間が無駄だからです。切り花生産者の苗の主な生産方法は以下の2種類。

① 栽培品種を挿木する。 これは、パテント料を支払って、切り花生産者自身が苗を作る。
② 栽培品種の接ぎ穂を、台木にする品種の枝に接木( "ミニプランツ" という、シリコンチューブを使った接木で、私たちの方法とは大きく異なる)し、それを挿木する。これは主に切り花品種専門の苗生産会社の方法。

これは2012年4月25日の記事:「ロックウールを使った バラの挿し木(2)」で紹介していますのでご覧ください。

いずれも「挿木」です。なので、とうふさんがご覧になったレポートは、どのような栽培条件なのか、可能ならもう一度読み直したいですね。
*備考:切り花生産者の栽培方法には「土耕」もあるので、そのような場合は「実生台木」が使われる可能性はあります。

ポイント:
● バラの台木はノイバラ(ロサ・マルティフローラ)に限られるわけではない
● 実生が挿木に優れているとは限らない
● 接木が挿木よりも優れているとは限らない

いずれも「ケースバイケース」です。日本のアマチュア・バラ栽培者は、理由はわかりませんが、妙な固定観念に縛られていて、切り花生産者の方がはるかに先を言っているように私には思えます。

「生産性向上のために親株をどんどん更新する」ということに批判的な意見のアマチュア栽培者もいますが、趣味で栽培するバラとは違いますね。

そら みたか さんのコメント...


誤記の訂正;
誤:切り花生産者の方がはるかに先を言っている
正:切り花生産者の方がはるかに先を行っている


とうふ さんのコメント...

何時も丁寧に返信ありがとうございます。
そらさんは本当によく勉強されてて感服いたします。
切りばなはたくさん花を出荷するという観点からも
園芸とはまた違いますよね。

また春になったら接ぎ木がうまくいったかどうかご報告させてください。

そら みたか さんのコメント...


北国ではまだ春は遠いのでしょうが、福岡は今日は暖かな日和でした。朝、畑に出るのが遅くなり、苗を入れているトンネル内の気温は42度C!まで上がっていました。

接木苗よりも成長が早い挿し木苗は新葉を展開し始めたものがあり、さすがにこの温度ではダメージを受けたみたいです。バラ苗のおチビさんたち、ごめんなさい。


昔、デービッドさんに『バラの栽培で最も嬉しいのはどんなときですか?』と尋ねたことがあります。曰く;

『交配し結実したタネを播き、それが発芽して育つ様子を見るとき』

なるほど。それを眺めるデービッドさんが目に浮かびます。交配とは同列ではないでしょうが、自分で接木した新芽が育っていくのを見るのも嬉しいものです。うまくいかないものがあったとしても、その一喜一憂が「バラ栽培の喜び」なんでしょうね。

よかったら途中経過もお知らせください。楽しみにしています。