2015年2月5日木曜日

挿し木と芽接ぎで作る バラのスタンダード仕立て

スタンダード仕立てのバラ

ガーデンに華やかさと変化をもたらすスタンダード仕立てを、挿し木台木に芽接ぎで作る作業記録です。スタンダード仕立ての台木を作る「長尺枝の挿し木」は品種と時期を選べば意外に簡単で成功率も高く、「芽接ぎ」もバラの接ぎ木では簡単な方法です。

バラのスタンダードでは石井強さんが有名ですね。「NHK趣味の園芸」から『名人・石井強に教わるバラのウィーピングスタンダード』という単行本が出ています。石井強さんのバラはため息が出るほど豪華な仕立てです。いつかはこのようなスタンダードを作ってみたいものですが、まずは胸元や目の高さで開花する小型のスタンダード仕立て作りを自己流で試みます。

このページはその主な工程を追記の形式で記録していきます。自分に合った方法を探るのが主な目的で、スタンダード仕立て作りのガイドとして適切ではありませんのでご承知ください。

"レッド カスケード"  スタンダード仕立て:広島バラ園
福岡県 駕与丁公園バラ園にて 2011年5月30日撮影。 (この写真は、ブログの内容とは関係ありません)

小型(全長2メートル以下)のバラのスタンダード仕立てを作るのは、さほど難しいことではありません。今回は芽接ぎと挿し木を同時にする「 芽接ぎ挿し」になりますが、その手順は;

  1. 台木にする長尺枝を準備する
  2. 接ぎ木する穂木を採取する
  3. 台木に「芽接ぎ」(またはデービッド接ぎなど)をする
  4. それを挿し木する
という4段階です。この順序で作業を進めていきます。既に鉢上げしている株や地植えも含めて、10株程度のスタンダード仕立てを作る予定です。

私は厳寒期に屋外での長尺枝の「芽接ぎ挿し」は経験がありません。これまでの方法は秋10月に小型ハウス内で長尺枝を挿し木し、発根後のこの時期に「芽接ぎ」して、そのままハウス内で養生するという方法でした。長尺枝の挿し木も芽接ぎもそれぞれ単独では難しいとは思いませんが、これまでとは異なる今回の試みが成功するかどうかはやってみなければわかりません。

この「芽接ぎ挿し」というのはスタンダード仕立てを作る方法として特別なものではないようで、スタンダード仕立ての生産で有名な◯◯バラ園も◯◯園も「芽接ぎ挿し」と聞いています。ただしそれはここでテストするF芽接ぎではなく、T芽接ぎ(T-budding/T字法芽接ぎ)なんだそうです。◯◯バラ園の生産現場(温室)を訪問した人から、その状況の写真を見せてもらったことはありますが、私自身は残念ながら見たことがありません。

スタンダード仕立ての台木にできるツルバラ「ドクター・ヒューイ」

左の写真は、2015年1月24日に北九州市の「グリーンパークバラ園」で開催されたツルバラ剪定の講座(実習)の際に撮影した「ドクター・ヒューイ」です。

「ドクター・ヒューイ」は、アメリカでは接ぎ木用の台木としても利用される極めて生育の良い品種です。株元や前年枝から出たシュートが素直に長く伸びています。人物と比較すれば長さの見当がつくと思いますが、長い枝は2メートル近くもあります。レンズの画角の関係で細く短く見えますが、実際は多くの枝元は剪定鋏で切れるのかためらうほどの太さで、樹高は3メートルを超えています。

スタンダード仕立ての台木(以下 "STD" と略記)を作る長尺枝をツルバラから採るならば、その品種は私が知るかぎり、この「ドクター・ヒューイ」がもっとも適していると思います。この株なら10本ほどの立派な台木が作れそうですね。

胸元で花が咲くような(比較的小型の)STDならノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)でも作れますし、ドッグローズ(ロサ・カニナ)であれば目の高さに仕立てることも可能です。今回はノイバラの長尺台木への芽接ぎや、ツルバラ "春風" の長尺枝を台木に使った芽接ぎ挿しも試してみます。

ツルバラ ドクターヒューイの花 ツルバラ ドクターヒューイ

グリーンパークのバラフェアの際に撮影した「ドクター・ヒューイ」です。濃いクリムゾンの色合いがきれいですね。5月中旬のこの時期に、前年枝の株元附近から出たシュートは既に2メートルほども伸びています。このシュートは開花しませんから、長尺台木にする場合は真っすぐ上に伸ばします。写真上右も同じ品種ですが、これは剪定時とは別の株です。右側はやや日当りが良くないので開花が遅れていますが、それでもみごとな花つきです。

「ドクター・ヒューイ」は 1914年の登録(Thomas/米)なので PBR(品種育種者の権利)の保護期間は過ぎていますから、挿し木で増やすことが可能です。

スタンダード台木の条件

バラの接ぎ木用の台木は、スタンダードか否かを問わず「ノイバラ」に限定されるわけではありません。幾つかの条件を満たせば台木になり得るので、スタンダード台木の場合を考えてみます。

  1. 接ぎたい栽培品種よりも旺盛に生育する
  2. シュートの伸びがよく、太くて長い枝ができる
  3. 脇枝の発生が少ない
  4. トゲが少ない
  5. 接ぎたい栽培品種との相性が良い(親和性がある)
  6. 耐病性がある(特に "根頭癌腫病" に対して)
  7. 寿命が永い

5. 以降に関しては実際に試してみなければわかりません。バラ苗生産農家はそのあたりのノウハウを持ってあるようですが、『それはいわゆる "企業秘密" ね』と、笑って教えてくれません。当然ですよね。バラ苗生産農家も試行錯誤の中でそれを見つけていったのだそうです。

2015年5月追記:この "企業秘密" の一端?を、ハウステンボス・バラ祭りのセミナー会場でローズスタイリストの大野耕生さんが教えてくれました。台木の条件を追加します。

8.  台芽の発生が少ない(ロサ・カニナは台芽が多く出る)
9.  芽抜きをした跡がきれい(ドクター・ヒューイはきれいではない)

なるほど。ロサ・カニナの台芽には日頃悩まされているのでよくわかります。これのシュートも長く伸びるので捨てがたいのですが、それを回避するための "あっと驚く" 策も教えていただきました。やはり、プロは違いますね。でもそれはヒントだけなので詳細はわかりません。なので、まず実証実験をします。結果は2年後?

ドクター・ヒューイについても思い当たることがあります。でもそれは教えてくれた生産者の "企業秘密" かもしれないので、ここに書けないのがもどかしいです。書いても私たちアマチュアが簡単に真似のできることではないんですが。 要は、ドクター・ヒューイもSTDとして使える可能性があること、そしてプロは私たちからは見えない工夫をしながら栽培してあるということです。「だから素人が手を出すことじゃない」と言うのではありません。真逆です。「アマチュアだからこそ失敗のリスクを恐れず果敢なチャレンジを・・」と思います。

大野耕生さん、貴重なヒントをありがとうございました。お話はスタンダード仕立てだけではなく、デービッド接ぎの特徴をより理解することにもつながりました。それはこの後投稿予定の記事で考えてみます。

これは私の畑の端に植えられている一株です。台木用の秋挿しの挿し穂にしたので既に多くの枝が切ってありますが、今回はこの株から残しておいた枝を採りSTDにします。

  • A:ローズヒップを採るための枝(既に収穫済み)です。10本以上の開花枝にたわわに稔り、その重みで地面に着くほど撓むので支柱を立てています。11月には熟して小鳥たちの格好のエサになっています。この枝は「前年枝」で硬くなっているからSTDには使わず、株元から切り捨てます。
  • B&C:春に株元から出たベーサルシュートです。長さは1.5〜2M程度。これは花がついていません。今回はこの2本をSTDにして「芽接ぎ挿し」を試みます。
  • D:切り残した前年枝から出たサイドシュートです。B&Cと較べればやや細く短いですが、それでもSTDとして使えます。この枝には既に昨年の10月に T芽接ぎ(T-budding)をしているので、今回は挿し木だけの作業になります。
  • E:写真ではよく見えませんが、これは別の株から出たベーサルシュートです。2Mほど直立しその先端で枝分かれしていますが、花は付いていない枝です。

上の写真のDの枝には昨年10月に「T芽接ぎ」をしています。先端付近にまず芽接ぎをして、それがうまくいきそうなら、厳寒期にその長尺枝を切って挿し木するという手順です。

「T芽接ぎ」(T字法芽接ぎ/T-budding)は、台木の表皮に "T" の形の切れ目を入れ、その部分の表皮を捲って形成層を出し、そこに「芽」を差し込む方法です。これは「時期」を選びます。晩秋になると枝が硬くなって表皮と形成層の分離が難しくなり、プロでも成功率が落ちてくるのだそうです。この品種はノイバラよりも1ヶ月ほども早くそれが進みます。

画面中央の赤い小さな芽がT芽接ぎです。芽が黒変していないので、とりあえず良さそう・・・じゃないよ、早く台木の始末(芽抜きと挿し木)をしなきゃ、せっかくの新芽がかわいそう。。

枝を切り離し、不要な芽をもぎ取って、挿し木する準備をしました。写真右は基部の切断面です。木質部の厚みを見ると、十分ではありませんがなんとか使える程度の充実度だろうと思います。しかしT芽接ぎした部分はちょっと細かったようです。理由は、STDとしての "長さ" を稼ぎたくて、できるだけ上の方に接いだからですが。。

2016年追記:この長尺枝は今から思えば「未熟な枝」です。中央の白いスポンジ状の「髄」の部分が大きく、できかけた木質部も柔らかいのが見た目でもわかります。この程度の充実度では長尺挿し木は(不可能ではないにしろ)難しいと思います。事実、この枝のT芽接ぎ挿しは(他の理由もあって)失敗しました。その詳細を、成功のツボは「蒸散」 バラのスタンダード芽接ぎ挿し に書いています。

私が接ぎ木台木として好んで使う母木は純粋なノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)ではありません。ノイバラよりも旺盛に生育し熟期も早いのでノイバラの剪定方法とは少し異なります。ノイバラは品種(幾つかの亜種がある)や栽培状況で枝の伸びが違うから『一概には言えない』という気がしますが、原種系の剪定の基本は「開花後にシュートより上で切る」ことですね。そのシュートを真っすぐ伸ばしてSTDにします。

上掲の「ドクター・ヒューイ」の場合は、春に新しく出たシュート(この枝は開花しない)がそのまま台木として使えます。なるべく長く伸ばすには直立させておくのがよさそうですが、放任しておいても他の枝に支えられて、それなりに伸びます。重要なのは、挿し木するには今年伸びた若い枝を使うことです。

写真右の白い容器に入れた4本が(前述の)B, C, D, E の枝です。黄色のコンテナの3株は、1年半前に挿し木した「ノイバラ」2株と、前年10月に挿し木した「ツクシイバラ」(中央)です。ツクシイバラは10月に挿し木して(無肥料で)4ヶ月後には写真下のような発根状態になりました。

春先に伸びて秋に充実した若い枝が「幼若性」の観点からも挿し木に適しているのは間違いないと思いますが、でも2年生の枝が挿し木に不適なのではありません。2016年の結果では、2年生の長尺枝が挿し木も芽接ぎも好成績でした。より正確に書けば、重要なのは、芽接ぎ挿しする長尺台木には充実した若い枝を使うことです。

そのほかに、2013年秋に挿し木したノイバラが5株あります。長さは1.5M程度で、栽培がヘタなのかこの1年あまりの栽培期間中は、ほとんど長くも太くもなりませんでした。

芽接ぎ作業に備えて枝を整理しています。接ぎ木予定部分から下にある小枝は落とし、上にある枝葉は少し残しています。

支柱は縦には使わず、転倒防止のために横にした支柱に固定(仮止め)しています。

地植えのまま半ば放置されている4年生の株です。株立ちのものは「テリハノイバラ」で、これは枝を編み込んで自立型のスタンダード仕立てを作る予定。もう1本はふつうのノイバラです。このサイズになるとほとんど成長しない(伸びない、太らない)ようですが、肥培管理が悪いのかも。農薬はもちろん肥料をやった記憶もありませんが、「栽培」なんだから少しは面倒を見るべきですよね。ノイバラの台が曲がっているのは『風情があるかも・・』と思っているのですが(笑)。

でも。。2株とも秋にはきれいな実をつけるし、照り葉も秋空に映えてとてもきれいなので、あえて他の品種を接ぐこともないかなぁ。

2014年の接ぎ木シーズンに、どこで間違えたのか、STDに「クイーン・オブ・スウェーデン」を接いでしまいました。穂木の管理は自分では慎重にやっているつもりなんですが、『パット・オースチン に薄いピンクの花が咲いているよ』とバーバラさんに笑われることも。このSTDも花が咲くまで気づきませんでした。

「クイーン・オブ・スウェーデン」は好きなバラなので、すでにたくさん植えています。捨てようかとも思いましたが、旺盛に伸びた枝を躊躇うこと無く切って芽接ぎテスト用の穂木にしました。鉢植えだったので手を入れなければそのうち枯れるだろうと放任していたのですが、この品種は強いですね、枯れることはありませんでした。その強さに敬意を表する意味もあって?今年になって地に降ろしました。高くなるだろうからと地植えの同品種の背後に植えたのですが、現時点(2015年6月)では、ふつうの仕立ての株と同じ高さで咲いています(笑)。

バラ仲間のミドリさんから『スタンダードの作り方を教えてほしい』と頼まれています。何を接ぐか、穂木を採る品種を今から準備する必要があります。ミドリさんの希望は「レオナルド・ダ・ヴィンチ」なんですが、この時期、品質の良い鉢苗(大苗)の入手が難しいとか。接ぐ時期は、T芽接ぎなら10月、その他の方法では厳寒期(1月下旬)ですから、新苗でもだいじょうぶではないでしょうか?

「レオナルド・ダ・ヴィンチ」はステキなバラですね。スタンダード仕立てに似合うと思います。STDに接ぐ品種は作者の好みでいいのでしょうが、私は次のような(欲張りな)条件で選ぼうと思っています。

  1. 中輪か小輪の四季咲き。一季咲きなら秋の葉色がきれいで、ローズピップが撓わに実る
  2. 花持ちがいい。または数多く咲く
  3. たおやかに枝垂れるシュラブ
  4. 枝が伸びすぎることなく、開花枝が多く出る
  5. 花の散り際がきれい(セルフクリーニング性がある)

私は特に 5. のセルフクリーニング性の有無が気になります。私のようなずぼらな栽培者には、花がらが残って見苦しい品種は、スタンダード仕立てには向きません。今年は(この条件にかなう品種が見つけられず/苦笑/とりあえず)「スーパー・エクセルサ」「安曇野」と、イングリッシュローズの「アンブリッジ・ローズ」「ダーシーバッセル」を接ぎました。

福岡県粕屋町 駕与丁公園バラ園のスタンダード

各地のバラ園は品種を選ぶのに良い参考になります。駕与丁公園バラ園にはスタンダードが数多く植えられています。いずれも 広島バラ園(田頭数蔵氏)で仕立てられた株です。
左:「春風」 中:「安曇野」 撮影:2011年5月 (3枚の写真はこの記事の内容とは関係ありません。)

写真上右:スタンダード仕立ての剪定を指導中の広島バラ園・田頭数蔵氏。 撮影:2011年12月
この時期の剪定ですべての枝をこの程度の長さまで切戻します。上の2品種もこれと同様に剪定したはずなんですが。

鹿児島県鹿屋市の「花*薔薇*会」(はなはなかい)徳田さんの今年のスタンダード仕立てです。鉢植えの3年生ノイバラ台木に1月10日頃に接ぎ木され、温室内で養生されている株の一部です。2015年1月30日撮影。

これらの台木には「切接ぎ」と「芽接ぎ」、そして「デービッド接ぎ」の3種類の方法で接ぎ木がしてあります。画像クリックで拡大しますので、その違いがわかります。スタンダード仕立てにはどの方法がいいのか、徳田さんも試してあるのでしょうね、台木の状態に合わせて接ぎ方を変えてあるのがわかります。

左:台木の長さは、開花すればちょうど目の高さになる程度です。ノイバラの長尺枝はこの程度の長さになることが多く、それ以上長い台木は(前述の)「ドクター・ヒューイ」などツルバラ系を使うか、あるいはスタンダード台木用に育種されたハイブリッド種になります。
鉢の上に置かれている白い小さな袋には徳田さんオリジナルの配合肥料が入っています。

中:中央は2芽ある「デービッド接ぎ」(もしかしたら「切接ぎ」かも。違いは接ぎ穂の斜め切りした部分の向きですが、この写真ではよくわかりません)で、2本の枝には「芽接ぎ」がしてあります。

接ぎ木テープは「ニューメデール」が使われていますが、このような変則的な接ぎ方にも柔軟に対応できるこのテープは便利ですね。

右:上は「デービッド接ぎ」です。接ぎ穂の角度が「切接ぎ」とは異なり斜めに出ています。そして「芽接ぎ」が2カ所。これらの芽の中には既に接ぎ木テープを突き抜けているものもありますが、新芽(新梢)が5cmほど伸びてから不要な枝をカットすれば、スタンダード仕立てのできあがりです。

注:スタンダード仕立てにするのに、必ずしもこのように数多くの芽を接ぐ必要はありません。1芽でも接ぎ木に成功すれば多くの枝が出ます。もし1年目からより多くの花をバランス良く咲かせたいなら、『三角接ぎ』にする方法もあります。3個の芽の位置を120度ずらして3カ所(3方向)に接ぐやり方です。

2015年7月追記:この2株の台木には計6カ所の芽接ぎとデービッド接ぎがしてありますが、接いだ部分よりも上に枝が残されているのに注目。

2015年1月29, 30日に、かのやばら園で開催された "Gardening with David" デービッドさんのガーデニングセミナーは「接ぎ木」がテーマでした。

方法は3種類で;

  • デービッド接ぎ "David's side graft"
  • デービッド式 割接ぎ "David's spilt graft"
  • 芽接ぎ "Eye graft"

私はこの芽接ぎ方法を、"T-budding"(T芽接ぎ)と区別するために "F芽接ぎ" と呼んでいます。今回はこの方法でスタンダード仕立てにチャレンジします。

David B. Sanderson さん
(バークレー・ローゼズ)

芽接ぎの「芽」の調整

左手に持った穂木は、自分に近い側が枝先です。枝の上側から下側に向かってナイフを入れます。(T芽接ぎではこれが逆になる)。芽の上側5〜7mm程度に刃をあて、ナイフの背を左手親指で押して切り下げていきます。
このとき、右手はナイフを持っているだけで、右手の力で切るのではありません。

芽の下側(株元側)も7mm程度切り分けます。これは少し長めでもかまいません。この後、切り分けた芽の部分を左手親指で軽く押さえながら、芽の下7mm程度の位置で、斜めにカットします。ナイフの刃の角度に注目。

これで「芽」ができました。乾燥しないように唇ではさみ(芽の数が多い場合は湿らせた布で覆うなど)、つぎに台木のカットをします。

芽接ぎの台木の調整

デービッドさんのセミナーでは、長尺台木ではなく、ふつうのノイバラ台木に芽接ぎをしました。まず台木の芽接ぎをする部分をきれいにします。次に左手で枝の部分をもち、用意した芽よりも少しだけ長めに台木を2mmほどの深さで切り分けます。切り分けた表皮の基部側を数ミリ残してカットして、そこに芽を嵌め込む(貼付ける)ように差し込みます。

説明が解りづらいかもしれませんが、台木の切り分けは芽を取るときと同じやり方です。「芽も台木も同じように切って嵌め込む」という感じです。

3−3 そらの "F芽接ぎ挿し"

台木にする長尺枝と穂木

2015年2月5日。私の「芽接ぎ挿し」の作業記録です。
方法はデービッドさんに教えてもらったそのままです。

台木にする長尺枝は、ツルバラの「春風」です。遅めに出たシュートでやや未熟であるように思われますが、ツルバラを台木にするテストとして、これに芽接ぎをしてみます。

芽を削ぎ取る

まず穂木を選び、トゲを外しながら形や色がきれいな芽が必要な数だけあるか、ベストな芽はどれか、確認します。

デービッドさんと同じ手順で芽を切り出しますが、これはホンのちょっとナイフが深く入りすぎてしまいました。芽を薄く削ぎ取れば芽の「原基」を傷つけそうで、つい刃が深く入ってしまいます。薄いと芽の切片の幅も狭くなるし。

刃がやや深く入って、芽の内側(裏側)に木質部が僅かに残るのは、T芽接ぎとは異なり、さほど問題ではないそうです。

切り分けた部分の芽の下側7mm程度にナイフを斜めに入れて、芽を穂木から切り離します。芽の内側が乾かないように注意しながら、必要な数だけ作っていきます。

芽接ぎ2年目の頃、この芽の切片を、芽と台木の癒合(カルスの生成)に必要な植物ホルモン「オーキシン」の製剤である「オキシベロン」の薄い溶液に浸せば効果的ではないかと思いつき試してみたのですが、全部を完璧に失敗してしまいました。 『悪いアイディアではない。濃度の問題だろ?』と、まだ諦めたわけではありません(笑)。

台木に切り込みを入れる

左手で台木を持って切り込みを入れます。台木の上側から2mmほどの深さで、芽の長さよりわずかに長い程度に、真っすぐナイフを入れます。

ナイフの持ち方や力の入れ方は芽を取るときと同じです。デービッドさんの手元を見てください。そして下側(台木の基部側)を斜めに切ります。その結果、台木の表皮の一部が切り取られる形になります。

切り込みに芽を差し込む

この斜めに切った部分で芽の下部を挟むように差し込みます。「嵌め込む」という感覚でしょうか、芽も台木も下部は斜め切りしてあるので、ピタッと合うはずです。

またこの例では、芽と台木のカットした部分の幅がほぼ同じなので、形成層が合致する部分が多いですね。芽接ぎする部分の上下にある台木の芽は「芽抜き」をしておきます。

ただし、台木が細いので、深く芽抜きをすると枝が折れやすくなります。特に、2芽3芽接ぐ場合は慎重に。

テーピング

接ぎ木テープ「ニューメデール」を巻いていきます。台木の基部側から巻き始め、芽を挟み込んだ部分はしっかりと巻き、芽の上は1回だけ、そして芽抜きした部分にも巻いておきます。テープの巻き終わりは、引きちぎるように引っ張ればピタッと密着するので、結ぶ必要はありません。

台木の接ぎ木部分は芽抜きをしているのですが、それでも台芽が出てきて、接いだ芽なのか台芽なのかわからなくなることがあります。特に、2〜3個の芽を接いだ場合。接いだ芽にはテープの上から赤の油性ペンでマーキングしておけばわかりやすいかも。毎年そう思いながら、今年も『あれっ、接いだ芽はどれだ?』なんてことを繰り返しています。

挿し穂基部の調整

台木(挿し穂)の基部の調整は私は「片クサビ型」に調整します。これは一般的な方法で、斜め切りした部分を逆側からちょっと切り戻すやり方です。挿し穂基部の調整についてはバラサークルのメンバーと様々な方法を試したことがありますが、さほど優劣の差はありませんでしたので、自分流のやり方で良いと思います。

この台木の切断面は、外側から 表皮、形成層、木質部、髄(センターの白い部分)ですが、表皮と木質部の間の形成層がとても薄い層であるのがわかりますね。

"形成層" ってどれ?

芽が台木より小さい場合

用意した芽の幅が、台木の切り分けた部分より狭い場合は芽を片側に寄せ、その部分の形成層をしっかり合わせます。この写真では左側に合わせたつもりですが、ちょっとズレてますね。テーピングのときにもズレやすいので注意しながら(必要なら指で押して修整し)巻いていきます。

ノイバラ台木にノイバラを接いでしまった!

このように、F芽接ぎ の作業は難しいものではありません。ナイフの動く方向に手指はありませんから危険も少ないですね。不要なノイバラの枝を、台木や穂木に見立てて何度でも練習することができます。バラサークルの接ぎ木講習会で、あるメンバーがこの練習用のノイバラの芽を、栽培品種と取り違えて本番用の台木に接いでしまったらしく、後日『芽接ぎが成功したと開花を楽しみにしていたら、ノイバラの花が咲いた』と。ビックリした様子を想像すると爆笑ものですが、私も(前述のように)スタンダード台木に直立性の品種を接いでしまったので、似たようなものです。

いつも可笑しいバーバラさんは、スタンダード台木に芽を天地逆さまに接いでしまったことがありました。それでも発芽はするんですね。下向きに出た芽は、『頑張ってね』というバーバラさんの声が聞こえたのか、伸びて上を向いたのですが、残念ながらそこで力尽きてしまったようでした。芽の向きにはご要心。

三角接ぎ

プロが接いだ(販売されている)スタンダード仕立ては、ほとんどが2芽あるいは3芽接いであるようです。でも1芽だけでも、剪定できれいな形にまとめることができます。

スタンダード仕立てを作り始めた頃は1芽接いでいたのですが、その頃接いだ1株は現在も◯◯園芸店で「非売品」として目立つ場所に展示されています(自慢/笑)。きれいな球形に花が咲きます。なのでムリに多くの芽を接ぐ必要はありません。

三角接ぎを試みる場合は、この写真のように位置と角度をずらして接ぎますが、なんだか台木が(そして芽も)無理しているように見えますね。写真の色が悪いからかな? 三角接ぎをするにはもっと太くて充実した台木が必要なのかもしれません。

鉢植えノイバラの3年生台木に芽接ぎしたとき、『台木はさぞかし硬いんだろうなぁ』と危惧していましたが、ゴツゴツした木肌のわりにはスッとナイフが入ったので、ちょっと驚きました。本格的なスタンダード仕立て作りを目指すなら、まずしっかりした台木を作ることが肝要なんでしょうね。石井強さんは、挿し木した台木を3年ほど育てられるのだそうです。

David's spilt graft(デービッド式 割接ぎ) は「デービッド接ぎ」の応用で、台木の枝を残さない接ぎ方です。

まず、ふつうのデービッド接ぎの要領で穂木と台木を調整します。この例では、2芽ある穂木を使っています。つぎに接いだ部分の少し上で台木を切断し、全体に接ぎ木テープを巻きます。これも比較的簡単な方法ですね。

下はその応用で、2芽ある穂木を2本接いでいます。計4芽ですが、ちょっと欲張り過ぎでしょうか。

2本の接ぎ穂の上側のものは、基部に隙間ができているのがわかります。台木の切りかたも深過ぎるようです。接ぎ木テープで強く巻いても、この表皮の厚さでは隙間は密着しないかも。接ぎ木がうまくいけば、カルスが隙間を埋めてはくれるんですが。

2015年7月追記:この2本の「割接ぎ挿し」は、悔しいことに失敗に終わりました。この割接ぎ挿しをしたとき、まさか2本とも失敗するとは思いませんでした。ショックでしたが、この失敗がいい勉強になりました。その顛末は、成功のツボは「蒸散」 バラのスタンダード芽接ぎ挿し に書いています。

STDを作るこれまでの私の方法は「秋挿し」でした。この時期も基本的に同じだと思います。以下は私の方法ですが、挿し木はどういう方法でもいいと思います。自分に合った方法で試してください。

  1. 採穂後の「水切れ」に注意
  2. 挿し木用土や挿し穂基部の調整は、ふつうの挿し木と同じ
  3. 挿し穂(長尺枝)の先端に葉が残っていればそのままでもいい
  4. ポットはやや大型のものを使う。私の場合は4号か5号のロング
  5. 空のポットを予定の位置に置き、3本の支柱を "横に" セットする
  6. 挿し穂の基部がポットの上部から1/3程度の位置になるよう、支柱に挿し穂を素早く(3カ所で)固定する
  7. 湿らせておいた挿し木用土をポットに入れ、充分に潅水する
  8. ポットを寒さから守る処置をして根の伸びを促す

2015年4月追記:ただし、2015年の各種接ぎ木の途中経過から判断して、「ほぼ休眠状態の台木に、休眠していない穂木を接ぐ」というのは問題があると考えています(その逆はさほど問題ないと思う)。芽接ぎした長尺挿し木をうまく管理するには、可能なら台木を接ぎ木数週間前から日当りがよく寒風を避けることができる場所に移動しておく=台木を休眠させないのがベターでしょうね。
接いだ芽の活着を促すためには、接ぎ木後もある程度の温度が確保できる場所に置くことが重要だと(今更ながら)気がつきました。

今回使用したポットは5号のロングサイズ(LP-150/深さ30cm)です。排水の穴が小さいと思ったので底面に穴を増やしました。冬の寒さから守るために、ポットには梱包用のプチプチを巻き、それを10号のプラ鉢に入れて、隙間には籾殻燻炭を軽く詰めました。写真下左は、記録写真を撮るためにポットを天地逆さまに置いています。

挿し木用土は、ピートモス、籾殻燻炭、赤玉土、バーミキュライト、パーライトを混ぜました。こんなに混ぜるのは何が良いのか自信が無いからです(笑)。「保水性」と「通気性」の両方、なんか矛盾するような条件を満たすには何がいいのでしょう? 自分の栽培状況に合わせて決めればいいことですが、赤玉土単体でもいいのかも。

ノイバラは挿し木後1ヶ月程度で発根します。それまでの期間(特に挿し木から2〜3週間程度)は過湿とも思える状態が好ましいと考えています。発根後は逆に、根が水分を求めて伸びるように、徐々に水分を減らしていくのがいいと思います。でも、そのような条件を用土の配合で作るのは難しく、これは「水やり」で解決すべきことですね。それはわかっているのですが、毎日バラの世話ができるわけでもないので。。

混ぜ終えたら軽く水をかけて、それがなじむまでの待ち時間に芽接ぎの作業をします。

芽接ぎと 台木(挿し穂)の基部の調整を終えたら、挿し穂の基部がポットの上部から1/3程度の位置になるよう、支柱に挿し穂を素早く(3カ所で)固定します。間をおかず、湿らせておいた挿し木用土を隙間ができないよう軽く押さえながら入れます。終えたらすぐに水を静かにたっぷりと注ぎます。

長尺挿し木のツボ 用土を入れたポットに挿すのではなく、まずポットと枝を固定してから用土を入れます。このさい乾燥した用土を入れるのは禁物。挿し穂基部の水分が土に奪われて導管内に空気が入り、その結果水が上がらなくなって挿し木に失敗します。

写真上右:冷たく強い北西の季節風が直接あたるのを防ぐため、北西面にハウス用ビニールとコンパネを張りました。昨年までは簡易な温室だったのですが。。2011年の例:「ミニバラ用スタンダード台木の挿し木」。屋根が無いので水やりの回数は減るものの、これであのちっちゃな芽が、寒さ(低温もさることながら、冷たく乾いた季節風が恐い)に耐えれるのでしょうか。

15年4月追記:
換気用の穴を開けた大きめのビニール袋を、接ぎ木した部分にルーズに被せるという方法もあったのでしょうね。

どうしてそうしなかったのか自分でもわかりません。ボンヤリしていたのか慢心していたのか。たぶん、それまで使っていた温室のありがたさに気づかず、保温・保湿の重要性をよくわかっていなかったのでしょう。

さて、これでスタンダード台木への接ぎ木作業が終わりました。芽接ぎ挿しやデービッド式割接ぎなど全部で14本です。

その内訳は;

  • 芽接ぎ挿し 4本
  • 割接ぎ挿し 2本
  • ツルバラ台木に芽接ぎ挿し 1本
  • 鉢植えノイバラ長尺台木に芽接ぎ 5本
  • 10月挿し木の長尺台木に芽接ぎ 1本
  • 地植えノイバラ長尺台木に芽接ぎ 1本

この後の経過や結果は、別ページで レポートする予定です。

2015年7月追記:この結果を  成功のツボは「蒸散」 バラのスタンダード芽接ぎ挿し にアップしました。

2015年11月追記:「作業記録:バラのスタンダード 2016」をスタートしました。

2016年2月20日追記:2月に今シーズンの「スタンダード芽接ぎ挿し」をしました。写真左。3人で計18本を試みています。

その様子を 「The happydays of Roses」の2月11日と13日の記事 で簡単に紹介しています。

「芽接ぎ挿し」の方法は基本的に同じですが、2015年の反省から、「底面給水」や「捻枝」などの工夫をしました。結果はまだわかりませんが、詳細は後日紹介する予定です。

3人で計18本挿した中で最も生育の良い「スタンダード芽接ぎ挿し」の4月22日の様子です。2芽を接いで、3メートルほどの高さに蕾ができています。

ただしこれは18本の中で「最も生育の良い」ものです。芽の動きの鈍いものがあり、完全に失敗したものが6本、失敗しそうな気配のものが2本です。

10本ほどは成功すると思いますが、今年の作業から学んだことは後日別記事でレポートする予定です。

2016年の作業結果とそれに関する若干の考察を、2016年12月24日の記事「スタンダード芽接ぎ挿し 8/18」にまとめました。