このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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2023年3月29日水曜日

バラのスタンダード仕立てを作る ⑥ 新梢と、台木上部のカット

秋の挿木で作ったスタンダード台木に栽培品種を接木したのは1月15日から16日にかけてです。接木方法はデービッド接ぎの「枝残しバージョン」。その作業記録:「バラのスタンダード仕立てを作る ⑤ 接木

新芽は順調に生育し、その長さは10cmを超えました。接木から約70日後の今日、台木上部の枝葉を切除しました。

接木後の管理

接ぎ穂の発芽は4株とも同時ではなく、早咲きの品種ほど早く伸び始めるようです。接木後は、たまに台木の芽かきをする以外に何もすることはありませんでした。水受け皿が乾いたら1cmほど給水したのが計4回ほど。台木の先端の新芽が勢いよく伸びるので、2月中に1回台木の新芽をもぎ取り、3月になってからは接ぎ穂の新芽の伸びに合わせて、台木の枝葉を少しずつ2回に分けて切除しました。

台木上部のカット

台木は、接ぎ穂の位置から10mm上でカット。殺菌・癒合剤は塗らずに、切断面は接木テープでカバーしました。伸びた新梢が風に煽られて捥げるのを防ぎたいという意図もあります。

根が成長しているのは鉢上げ時に確認済み。肥料入り培養土の10号鉢に植え込んでいるし、もう少し早く、接木2ヶ月後にカットでも問題はなかったと思われます。でも逆に言えば、急いで台木上部をカットする理由もありません。

4段目はデルバールの「ギー・サヴォア」のシュートを台木にしたものですが、接いだ幹の太さが接ぎ穂と極端に違って接ぐのが難しく、まるでミイラみたいにテープをグルグル巻きにしました:p あまりにも見苦しいのでテープを巻き直すか迷いましたが、でも「このままほっとけ」で正解で、これも無事に生育しています。この株だけは接ぎ穂が2本(1芽+2芽)なので、新梢が3本伸びています。これはいずれ 支柱を必要としない自立型のスタンダードにする予定ですが、今の段階ではまだそれに耐えるほど根は充実していないようです。

早すぎる結蕾

写真ではよく見えませんが、3段目の株は五枚葉が3節とまだ枝が短いにもかかわらず「結蕾」しています。このように早く結蕾する枝は、このスタンダード仕立ての株だけでなく、他にもHTの成株や育種中の実生株などに、幾つか見受けられます。良いことではないと思うのですが、原因がわかりません。

たぶん温度管理が不適切なのが主な原因なんでしょう。最初は元肥入りの培養土を疑いましたが、次に紹介する「デービッド接ぎ挿し」でも結蕾しています。これは完全に無肥料なので、肥料過多が原因ではなさそうです。

4月8日追記:これらはすべて3月中に摘蕾しました。副蕾が出ている5枚葉も切り捨てるので、ちょっと心配なほど小さくなってしまいましたが、その後も元気に伸びて、ギー・サヴォア台のウィーピングは新梢が35㎝を超えています。ウィーピングなので新梢が横(水平)に伸びていて、これはテープの厚巻きでなかったら捥げる危険性がありそうです。結果オーライ。


「デービッド接ぎ挿し」の結果

バラ仲間が提供してくれた長尺枝を使って、仲間と3人で4本のツリー仕立て(胸元で咲くような短いスタンダード)を試みました。方法は、まずデービッド接ぎの「枝なしバージョン」で接木し、その長尺枝を挿木する というものです。

詳細は1月17日の記事:「バラのスタンダード仕立てを作る ⑤ 接木」の「デービッド接ぎ挿し も試みる」を参照。

根も葉も無い長尺枝でしたが、3人とも(4本全部が)成功という嬉しい結果に。やはり水苔と底面給水の効果は絶大です。何よりも、充実した枝だったのでしょう。長尺枝を提供してくれたバラ仲間に感謝。


まとめ

「接ぎ挿し」によるスタンダード仕立ては、以前は「芽接ぎ挿し」をしていたのですが、私は芽接ぎと相性が悪いのか下手で、その成功率は安定したものではありませんでした。正確に書けば70〜80%程度は発芽するのですが、発芽と新梢の成長にやたらと時間がかかっていました。もし今後もスタンダード仕立てをお手軽な「接ぎ挿し」で作るならば、「芽接ぎ挿し」よりも「デービッド接ぎ挿し」にするでしょう。

この4本はうまくいきましたが、しかし確実にスタンダード仕立てを作るのなら、やはり秋10月10日(福岡基準)に長尺枝を挿木して、できた台木に1月中旬頃「デービッド接ぎ・枝残しバージョン」で接木。桜が満開になれば台木の枝葉をカットするというのがベターだろうと思います。その理由は、同時期に接木したにもかかわらず見較べるとわかるように(現時点では当然ながら)新梢の勢いが違います。

*註:秋に挿木して鉢上げした台木は根の活動が活発です。したがって「根圧」が高いので、「デービッド接ぎ・枝無しバージョン」で接木すると 水が接いだ部分に集中して、台木と接ぎ穂の癒合の妨げになる ようです。
これは今年の接木、長尺台木ではない普通の接木で、痛いほど思い知らされました。掘り上げられて "根毛 (Wiki) " を消失している台木ならともかく、根が盛んに吸水している鉢植えの台木は「枝残しバージョン」がいい というのが私の結論です。

もちろん、「デービッド接ぎ挿し」したツリー仕立ての4株も、鉢上げすれば充実した枝葉を展開するようになるでしょう。これら8株のうち5株は近々それぞれオーナーのみなさんのところへ引き取られていきます。これをどのような株に仕立てていくか。楽しみというか、みなさんの栽培者としての腕の見せどころはこれからですね。

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