このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2015年1月26日月曜日

バラの接ぎ木 2015

2022年1月11日 追記 新・デービッド接ぎ

「デービッド接ぎ」に関心を持っていただきありがとうございます。
初出の2013年から9年が経って、「デービッド接ぎ」は新しい方法に修正されています。

最新の情報は、2021年12月30日の「デービッド接ぎを見直す」をご覧ください。


今年2015年のバラの接ぎ木シーズンも、前年と同じように「デービッド接ぎ」をします。時間があるときに数株ずつ接いで現在30本ほどになりました。今年は「デービッド接ぎ」だけではなく「切接ぎ」も再度試みています。より安全な切接ぎをするために、今年は「テーブルバイス」を使うことを思いつきました。

このアイディアは数年前に、廃棄するラクサ台の太根を台木にして接ぎ木をする際に思いついたのですが、その後「デービッド接ぎ」一辺倒だったのでお蔵入りになっていました。今年は「切接ぎ」も真剣に試してみたくなったので、復活した次第です。ラクサ台の太根とは異なり細根が多い挿し木台木で、根を痛めずにバイスに固定できるかちょっと気がかりだったのですが、それは杞憂でした。

近所のホームセンターで購入したテーブルバイスです。価格が安いので工作機械としての精度はイマイチですが、精密さを要求される作業ではなく、台木の形成層を出すために長さ15mm程度を平面にカットする補助道具ですから、この程度の製品でも充分に使えます。

テーブルバイスにセットしたバラの接ぎ木用の台木

バイスの首が動かせる(台木の根の状態に合わせて任意の角度にセットできる)ことと、台木を挟む部分が硬質ゴム製なので、強く締めなくても安定して保持でき、根は締めつけないという 台木に優しい のがミソです。

台木をバイスにセットする時間もさほどかかりません。いや、むしろ作業に要する時間は短縮されました。接ぎ木ナイフを持って戸惑ったり躊躇ったりする「迷い」が無いからでしょう。

テーブルバイスを使うデービッド接ぎ

実際に使ってみて、これは我ながら良いアイディアだと思います。台木が安定しているから正確な台木カットがとても楽にできます。「切接ぎ」が安全にできるだけでなく、「デービッド接ぎ」もこの写真のように、よりきれいに接ぐことができます。接ぎ木テープは不要かと思うほど、ピタッと台木と接ぎ穂がはまっていますね(自画自賛/笑)。

『これで接ぎ木の成功率がアップする』と一瞬思ったのですが、「成功率」などを気にするのはつまらないと思い直しました。そのようなものにはとらわれずに、好きな品種を自分が気に入った方法で自由に楽しもうと思っています。

この1月にはふたつの接ぎ木講習会に参加します。

今シーズンは、秋挿しで100本を超える台木を準備したし、接ぎ木作業にも慣れてきて『今年は気楽に楽しめるかな』と思っていたのですが、そのような思いとは逆に、作業をしながら『ほんとうにこれでいいのか?』という疑問も出てきて、ちょっと戸惑うこともあります。

昨年までの接ぎ木作業は楽しいばかりでしたが、それは私がビギナーだったからでしょうね。『疑問や戸惑いが生じてきたのは成長している証拠かも』と自己肯定しています(笑)。成長しているかどうかはともかく、講習会に参加することで、今一度自分の接ぎ木作業を見直そうと。

写真は今年の接ぎ木で、講習会に先立って1月14日に接いだものです。品種はイングリッシュ・ローズで、手前の青いポットが切接ぎ、奥がデービッド接ぎです。

「切接ぎ」と「デービッド接ぎ」を同じ日にやって、切接ぎ株がいかに小さくて頼りないかということに気づいて、今更ながら驚きました。
もちろん熟練者の手にかかれば、そこから立派なバラ苗が育っていくのですが。。

ひとつの講習会は既に24日に終わりました。会場は北九州市の「グリーンパークバラ園」で、講師は同バラ園技術顧問の小林博司先生です。接ぎ木方法は「切接ぎ」に似ていますが、バラ苗生産農家とは微妙に異なる方法です。先生のご了解を頂いていますので、その手順を記録した写真を近日中に公開したいと思っています。

2015年4月21日追記:小林先生の接ぎ木方法を「バラの接ぎ木 小林流 接ぎ木」のページにアップしました。

講習会では、バラの接ぎ木は初めてという参加者のお手伝いをさせてもらったので、自分のものは1本しか接ぎませんでしたが、3日後の1月27日にテーブルバイスを使って4本ほど切接ぎをしました。

危険を伴う台木の切り分けで、もしナイフが滑ったとしても刃先はバイスの硬質ゴムで止まるので、躊躇することなくナイフが使えます。

左の写真手前中央が小林先生の講習会で接いだものです。「接ぎロウ」は先生が刷毛で塗ってくれました。ロウの色はまるで「蜜ロウ」のようですが、市販品とのこと。

私は「接ぎロウ」を持っていないので、接ぎ木テープ「ニューメデール」を接ぎ穂の先端まで巻きます。

上右:「接ぎロウ」の代用として「エコピタ液剤」の原液にドブ漬けしました。「エコピタ液剤」は有機JAS適合の殺虫・殺菌剤ですが、主成分が「還元澱粉糖化物」で「乾くと固まる」という性質に期待して使ってみました。接ぎ穂の先端の木口には「バッチレート」を塗っています。

小林先生の切接ぎは、独自に工夫された要素があるのだろうと思います。接ぎ木ナイフも初めて見る形状でした。作業を拝見しながら、『形成層を合わせるなどの基本を外さなければ、接ぎ木作業に "こうでなければいけない" というようなものはないんだ』と思いました。自分に合った方法で、自由に楽しく、そして安全にできればいいと思います。今年は「自分の接ぎ木」を探す初めの一歩なのかもしれません。

デービッド接ぎ」の講習会はもちろんデービッドさんが講師で、鹿児島県鹿屋市の「かのやばら園」で今月29日から1泊2日の23時間!講座です。より具体的で詳しい写真を撮らせてもらい、台木の長過ぎる根の処理や、接ぎ木後の管理方法など、気になることについても話を聞きたいと思っています。

2015年4月22日追記:デービッドさんの接ぎ木講習会学んだことを「Grafting Roses バラの接ぎ木」のページにアップしました。

左は、2週間前の1月13日に接いだ「デービッド接ぎ」の1本です。このときに接いだものは、既に接ぎ木テープを突き抜けて新芽が出ています。これはいくらなんでも早すぎるのでは?

理由は温室に入れているからだと思われます。「無加温」で昼夜とも一部が解放された温室らしくない温室(それでも外気温との差は体感できる)なんですが、やはりその効果は大きいようです。でもこんなに早いと「癒合」が間にあわず、やがて枯れるのではと心配になります。

私は温室を利用するのは初めてなので、どうするのが良いのかわかっていません。枯れる危険性はありますが、ジタバタせずにこのまま『ほっとけ』でいこうと思っています。

追記:1月29日のデービッドさんの接ぎ木講習会で、私と同じ1月13日に接ぎ木された株が参考事例として紹介されました。自動的に温度が調整される温室(低温時はボイラーで加温)で育てられていますが、新芽の動きは同じ程度だったで、ちょっと安心しました。

小林先生の講習会では「接ぎ木後は6号程度の鉢に植えて外に置き、自然の気温のままで」というお話でした。

同じく切接ぎをする「花*薔薇*会」の徳田さんは逆で、「根を水苔で包んで株全体をビニール袋に入れ、屋内の最も暖かくて温度変化の少ない場所(台所の天井近く)に、白い新根が見えるようになるまで2〜3週間ほど置く」という方法だそうです。

これは『どちらかが間違い』ということではなく、どちらも 豊かな経験に裏打ちされた、それぞれの環境と手法に合った方法 なのだと思います。真逆なふたつの方法を聞けば戸惑ってしまいますが、自分で、自分に合った方法を見つけることが、バラ栽培の楽しみのひとつなんでしょうね。

下の2枚の写真は徳田さんの接ぎ木株です。1月30日撮影。上記の方法で発根を確認して鉢上げされました。夜間は電熱加温の小型温室に入れてあります。

追記:2月上旬現在、約70株の接ぎ木が終わりました。そのうち12株はスタンダード仕立てです。これで進捗率は6割り程度かな。仕事(本業)に追われて時間が取れず、日に日に膨らんでいく芽を気にしながら焦り気味。

2月20日追記:日中は春のような陽気の中で、今年最後の接ぎ木作業を終えました。今年は「デービッド接ぎ」「切接ぎ」「デービッド式割り接ぎ」の方法で計130本程度です。それとは別にスタンダード台木への芽接ぎなどを10本あまり。

今日接いだ穂木は1月中旬に切って冷蔵保存していた枝です。2月も中旬過ぎになると栽培中の株はいずれも芽が大きくなっていて穂木としては使えません。地元・福岡のバラ苗生産農家は1月の中頃までにはほぼ接ぎ木作業(あるいは穂木の採取)を終えているようです。

昨年は2月22日と23日の接ぎ木作業でしたから、今年は少し早かったのですが、それでも(温室が無くても)1月中に終えるのが良さそうです。

1月13日に接いだ株(発芽が早過ぎるのではと心配した株/写真左)は都合で月末に温室から出したのですが、夜間の寒さにも負けず新芽(新梢)が5cmほどになりました。昨日初めて肥料を与えましたが、数日後には台木カットです。

左はノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)台木です。右は2芽ある穂木を接いでいます。いずれも1月13日のデービッド接ぎですが、この秋挿し台木の新葉は光合成する能力があるのは間違いないでしょうね。右の株は、新梢の伸長に邪魔な位置にある台木の葉を切り落としています。

テーブルバイスを使う接ぎ木やスタンダード台木への接ぎ木、ふたつの接ぎ木講習会で学んだことなどは、この後ある程度の結果が出てから追記や新記事で投稿する予定です。

2015年8月追記:今年の各種接ぎ木の過程と結果は以下のページにまとめています。