このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2016年1月3日日曜日

"三ツ矢サイダー" でスタンダード芽接ぎ挿し

私が写真撮影を担当している草月流の華道家から、『生け花の水揚げに最も効果があるのは、切り花延命剤などよりも 三ツ矢サイダー』というお話を聞き、それを試してみることにしました。テストに使うのは、5日前に採った2メートルほどの長尺枝です。そのままバケツの中に放置していました。

サイダーと捻枝でショック

この長尺枝は付け根の部分に食害痕があったらしく、手入れ中に簡単にもげてしまいました。長さも太さもスタンダード仕立ての台木としての条件を備えていたのでもったいないと思い、基部を「水切り」してバケツの中に入れておきました。そのまま45日間も放置してしまったのは、スタンダード仕立てを養生する場が準備できていないからです。でも、それ(ビニールハウス)が完成するのはもう少し時間がかかりそうで、 これを使って "三ツ矢サイダー" を試すことにしました。

この枝は5日間程まったく変化を見せませんでした。枯れるのでもないし、でもカルス形成の兆しもなく芽も動かず、完全に「眠り込んでいる」状態です。これは去年の「芽接ぎ挿し」と同じで、失敗につながる拙い兆候です。枝葉が無く「蒸散」が期待できないので、これはなんらかの方法で「叩き起こす」必要があります。

この時期の長尺枝

今回テストする長尺枝はこのように長期間放置していた特殊なケースですが、そうではなくともこの時期の枝葉が無い長尺枝は同様に「眠り込んでいる」(休眠している)状態です。長尺枝の表面はワックスに覆われ枝葉が無いから「蒸散」することはなく、したがって長尺枝内部の水は停滞したままです。

そのような長尺枝を切って挿し木しても内部の水は動かず「休眠状態」が続きます。すぐに枯れることはありませんが、発根していないのでやがて接いだ芽も長尺台木そのものもゆっくり枯れていきます。これが昨年の失敗のパターンでした。これを避けるには、「長尺枝には先端に葉を残し温室内で管理する」という、「蒸散させることで長尺枝内部の水を移動させ活性を維持する」ことが重要なポイントです。

残念ながら今回の長尺枝には葉は1枚もありません。問題はこのような場合はどうするか?ということ。自然の状態なら春になれば芽吹きますが、切り離されているこの長尺枝を挿し木して屋外に置けば、芽吹く可能性は低いと思います。

ではどうするか? そこで思いついた方法が「三ツ矢サイダー」と「捻枝」です。

スタンダード芽接ぎ挿し 三ツ矢サイダーでスタンダード芽接ぎ挿し

写真上左:ゴチャゴチャして見づらい写真でごめんなさい。現在、庭の鉢バラを畑に引っ越し中なんです。今回は1株だけなので、2メートルの長尺台木を支えるのに、使わなくなった古い三脚を利用しました。長尺枝は支柱に固定され、その支柱が三脚に掴まれています。三脚のエレベータを上下させることで、基部がサイダーの液量の変化に対応できる仕組みです。

写真上右:「水挿し」ならぬ「サイダー挿し」です。基部を調整した台木を差し込むと、ビックリするくらい大量の泡が噴出して、内容量の1/4を失いました。

接いだのは「シー フォーム」です。この季節はほのかにピンク色に染まって可愛い花を咲かせています。

あらかじめ「芽抜き」をしておいた台木に2芽接ぎました。いずれもF芽接ぎ(貼り芽接ぎ)です。接いだ芽がすぐ判るように赤の油性ペンでマークしています。この写真の角度では下側の1芽しか見えていません。

芽接ぎした上の部分は「捻枝」しました。これは養分の移動が目的ではなく「台木にショックを与えて覚醒させる」のが目的です。休眠したままの台木では「三ツ矢サイダー」だけではうまくいかないかもと思ったからです。ペンチで枝を潰し、ゆっくり捻ったつもりだったのですが、思った以上に折れてしまいました。

覚醒させるのが目的なので少々手荒なことはかまわないのですが、枯れ枝みたいに折れたのは気になります。この折れた部分に雨水が入るのは拙いので、ビニール袋を被せました。保温の効果はほとんど無いと思われます。この場合、覚醒させる(代謝を活性化させる)のに最も有効なのは「温度」なんでしょうけどね。

華道家にとっては「水揚げ」は重要な基本です。幾つものテクニックがあるようですが、「三ツ矢サイダー」の効果を力説されるのに興味を持ちました。糖類が含まれているのは「切り花延命剤」も同じですが、三ツ矢サイダーの特徴はなにより 炭酸 でしょう。それがどのような効果を生むのかについては話がありませんでした。華展会場での雑談だったのでその根拠を問うのも憚られるし、問うまでもなく自分で試せばいいことだと思いました。なので、これがバラの水挿しにも効果があるのかはまったく不明です。

糖質を多く含んでいるとしても、炭酸水なので雑菌は短期間にはさほど増えないのでは?と思うのですが。サイダーの減り具合を観察し、以降は「炭酸水」か水道水を補充しようと考えています。三脚のエレベータを上下させることで基部の観察も容易なので、しばらく様子を見るつもりです。

1月7日追記:三ツ矢サイダーに挿して4日が経過。長尺枝の基部にも全体にも目立つ変化はありません。捻枝して下向きになった枝先の頂芽がホンのわずか大きくなったような気もするのですが、これは期待が大きいゆえの「気のせい」かも。笑。

生け花の花材を水揚げするとき、三ツ矢サイダーに入れるのはたぶん数時間程度だと思われます。この長尺枝の場合、内部の水分は動きがない状態なのでもう少し時間がかかるだろうと思い4日間そのままで、特に根拠は無いのですが、今日7日「三ツ矢サイダー」を「水道水」に換えました。

ボトルに残ったサイダーを捨てるとき、炭酸の泡は立ちませんでした。既に「砂糖水」になっていたものと思われます。しかもかなり甘い水でしょうね。

オキシベロン

水道水には、発根を促す植物ホルモン「オーキシン」の製剤である「オキシベロン」をごく少量混入しました。
この長尺枝は長期間放置していたので、たぶん流失したものも多いだろうと想像するから(これも根拠無し)です。

強いてその根拠らしきものをあげるとすれば、これまで何度も紹介した岐阜大学 応用生物科学部 園芸学研究室の福井博一教授の「挿し木の基本」です。

入れたままにするので希釈率は5,000倍程度(テキトウ)です。オーキシンは、低濃度では目に見える効果が無く、高濃度では逆効果なんだそうですが、はたしてテキトウで効果があるのか、これまた不明です。

「オキシベロン」についての過去記事:
"オキシベロン 原液 一瞬"

ちなみに、「オキシベロン」の右にあるのは、発芽を促す植物ホルモン「サイトカイニン」と 類似の作用をする「ビーエー液剤」です。今回は(まだ)使っていません。

このようなテストに何か意味があるのでしょうか。適期に挿し木して芽接ぎをすれば「成功してあたりまえ」のことなのに‥と思っていると、『アホだな〜♪』という声が聞こえてきました。どうやら、先月放送された懐かしいTV番組の再構成「学校へ行こう 2015」の「軟式glove」を観た孫娘が マネして歌っているようです。

『そうだよアホだよ ♪』

暖かだった福岡の正月も明日からは「平年並み」の寒さになるという予報。しかたがない。芽接ぎした長尺枝は三脚に取り付けたまま(支柱の全高2.4M)家の中に入れるとするか。

1月10日追記:3日後の10日、「オキシベロン・水道水」をただの「水道水」に換えました。挿し穂(台木)の捻枝した部分から上の芽はわずかに大きくなったと(気のせいではなく)思います。でも、接いだ芽も挿し穂の基部にも変化は見られません。状態を観察するために台木にも幾つか芽を残しておけばよかったんですが、これは後の祭り。

2月10日追記

室内に置いていたこの「水挿しの長尺枝」をハウス内に移動しました。基部にカルスの盛り上がりは無く、でも腐敗したり枯れたような感じもしません。接いだ芽も「黒変」してはいないようです。

「捻枝」した部分よりも上の(枝の先端の)芽は、僅かですが大きくなっています。40日が経過しても枯れていないので「導管」は繋がっているのでしょうね。

芽接ぎ(貼り芽接ぎ)した芽は赤のサインペンでマーキングしています。芽の切片が「黒変」していないのがわかります。

この長尺枝(台木)は今日まで3ヶ月間も水に浸けられていたことになります。水の交換もほとんどしないままだったのに、腐敗もせずに頑張ってきました。

これまでも何度か「水挿し」をしたことがあります。最近では昨年9月にHTの1株から5本の挿し穂を作って「水挿し」しましたが、その内2本が発根し3本はまったくダメでした。同じ条件ですから、発根するか否かは、長い枝のどの部分で作った挿し穂かという違いだけです。

そしてそれには季節的な要因も絡んでくるのだろうと思っています。

今後どうなるか微妙な状態です。接いだ芽はごく僅か動き始めたよう気もするのですが、基部にカルスが生成される兆しが見えないのがなにより気がかりです。

さりとて「失敗」と断定することもできず(廃棄するのは忍びなく)、3ヶ月後の2月11日、水から出してそのまま(何も手を加えず)挿し木用土に挿して、この日作業した「スタンダード芽接ぎ挿し」の8株と並べてハウス内の支柱に固定しました。写真左の右端のポットです。

基部を少し切り戻して新鮮な切り口にすべきか迷ったのですが、先端附近の芽の様子からごく僅かでも水が上がっている気配があること、カルスの生成に必要な養分やオーキシンは、少量でもこの切断面に集まっているのではないか?と考え(期待し)ました。

水から出して土に挿すことが刺激になって(酸素が供給される環境になることで)発根が促されるといいのだけれど。

今シーズンの「スタンダード芽接ぎ挿し」では、水分が保持されることと同時に、酸素が供給されることを意識した方法を(私なりに)工夫しました。この長尺台木もそれと同じものを使っています。



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