鹿児島県大隅半島を錦江湾沿いに南下し、鹿屋市を過ぎるとやがて最南端の佐多岬がある南大隅町になります。対岸の薩摩半島の開聞岳を遠望する高台に「花の木農場」があります。そこにイングリッシュローズ約250株(1期工事分)を植える花壇が作られることになりました。デービッド B. サンダーソンさんが担当する新しいプロジェクトです。
同じくデービッドさんが手がけた「かのやばら園」のイングリッシュローズ約1万株とは規模は異なりますが、2日間にわたってこの花壇の植付け作業を手伝いながら、デービッドさんの花壇づくりを学びます。
イングリッシュローズの植付けは、かのやばら園や福岡で何度かデービッドさんと一緒に作業をしたことがあります。今回私が特に関心を持ったのは、バラの栽培技術そのもよりも、「花の木農場」と、そこで一緒に働く仲間たちです。バラの栽培は何を育むのか、南大隅は遠いけど可能なかぎり見続けていこうと思っています。
デービッドさんのバラ花壇プラン
イングリッシュローズの花壇は花の木農場の中心部に数カ所作られます。これはデービッドさんが作成したその中心にある花壇のプランの一部です。プランニング用かプレゼン用なのか、このような図面は何枚も作られていました。
左はデービッドさんが現場で使った実施図面です。
この花壇全体のコンセプトや具体的な植栽プランができるまでの過程は残念がら知りません。どのように花壇がプランニングされていくのか、そこがガーデンづくりを学ぶ上でいちばん肝心な部分と思うのですが、でもそれは花壇全体の成長を見続けていけば、いずれ見えてくることでしょうね。
南大隅 花の木農場
花の木農場を運営する社会福祉法人「白鳩会」と、花の木農場の福祉と農業の取り組みは、「コトノネ Vol.12」に詳しい紹介記事が掲載されています。この記事(pdf.ファイル)はネット上に公開されていますので、ぜひご一読ください。
花の木農場は「障がい者と健常者の共同作業」で、「共汗共育」の理念で働く作業現場は、スタッフも「利用者 *」も区別がつきません。
*「利用者」という言葉は、白鳩会と花の木農場の運営を理解するポイントだろうと思いますが、社会福祉法人側からからの見方という響きがあって私にはしっくりしません。これから共にバラ園を作っていく仲間という意味で、ここでは「利用者」ではなく「仲間」と呼ばせていただきます。
イングリッシュローズの植付け 2015年2月14 ~ 15日
これが今回の1期工事でメインの花壇です。直径10メートルで、通路で区切られています。「丸に十の字」は薩摩島津家の家紋ですが、たぶん地形の関係で偶然そうなったのだろうと思います。
花壇が作られる場所は緩やかな傾斜地で、元はサツキが植えられていました。それを掘り上げて移植し、その場所をデービッドさんが運転するユンボで削って、上下に石垣を積み上げ花壇ができました。今回の1期工事ではこの他にも数カ所のやや小さめの花壇が隣接して作られます。
花壇の向こうは、花の木農場の広大な茶畑を灌漑するための貯水池です。赤い屋根の建物は各作業班の作業場で、左奥には家畜舎の緑色の屋根が少し見えています。
そこで作られた豚糞堆肥がこの花壇でも利用されています。堆肥は前年秋に投入されたそうですが、まだアンモニアガス(臭い)が出ているようで、未熟な感じがしました。土はこの地域特有の「窯土」(かまつち)です。西日本に一般的な「真砂土」に、赤土が混じったような感じの土で、私が住む福岡ではあまり見かけない土です。鹿児島特有の「シラス」は含まれていないように思いました。ちなみに、桜島の噴煙は風向き次第で(特に冬場は)飛来することもあるのだそうです。
2月14日。花の木農場の朝は早く午前8時には作業が始まります。南国鹿児島の、その最南端の南大隅でもこの季節は「寒い」そうで、デービッドさんや仲間のみなさんは『寒い、寒い』と言ってありましたが、福岡から来た私はそうは感じませんでした。
メイン花壇の半分は既に植え穴が掘ってあり「イワミライト」(ゼオライト)が準備されています。通路にある2個の大きなポリバケツは、「裸苗」を植付ける前に水に漬けるためのものです。
「イワミライト」を、植え穴を含む全面に撒布しました。約300平米の花壇にどれだけの量を投入したのか記録していませんが、『かなり多いな』というのが私の最初の印象でした。でも、堆肥からガスが出ている(推測)みたいなので、妥当な量だったのかもしれません。ゼオライトは肥料ではないので、これに神経質になる必要はないと思われます。
前日に到着していた苗が現場に運び込まれ、梱包が解かれます。苗は植付け前に約1時間ほど水に浸漬されます。根頭癌腫病対策の「バクテローズ」は使用されませんでした。
写真上中:イングリッシュローズの苗は、国内で生産されたノイバラ台のもの(上)と、輸入されたラクサ台(下)の2種類があります。
「太根=支持根。細根=吸収根」という思い込みから、私も初めてラクサ台の苗を植えたときは、『太根が多いラクサ台の株は、初期生育が劣るのではないか?』という疑問を持っていました。でも実際に栽培してみるとそれとはっきりわかるほどの差はありません。「太根=支持根。細根=吸収根」という単純な区分は、この場合は間違っていると思います。ラクサ台の太根の表面からも水分や養分の吸収は(当然)できるでしょう。
(脱線しますが)複数の関係者から聞いた話では、デビッド・オースチン・ロージズ社は日本国内での苗の生産を止め、今後は(基本的に)輸入苗になるのだとか。そうだとしたら大胆な変更ですね。
『日本では、気候風土に適したノイバラ台のほうが生育が良い』と言われていますが、デービッドさんの意見では、それは植物検疫時の苗の痛みが主な原因だとか。私は別の理由から『ラクサ台の苗でもいい』と思っています。
さて、植え穴に苗が配られて植付けの準備ができました。まずデービッドさんが「お手本」を示します。
写真上左:植え穴は直径・深さともに約50cmです。まず植え穴の土をほぐします。このときはゼオライトが全面に撒布されているだけで、それ以外の資材や肥料は何も入れません。豚糞堆肥と苦土石灰は昨年秋に投入されています。デービッドさんは土壌分析の機材を持っているので、その結果を踏まえた判断なんでしょう。
写真上中:植え穴の中に小山を作り、植付けの深さを見ながら根を八方に拡げて株を据えます。
写真上右:デービッドさんが手にしているのは長さ50cmの定規です。これを地表面に置き、植付ける深さを確認します。デービッドさんの左親指と人差し指の間が接ぎ木した部分です。
写真下左:高さが決まったら、周囲に盛り上げておいた土を根が隠れる程度まで入れて、軽く押さえて固定します。
写真下右:これで とりあえず 植付けができました。でもこれで完了ではありません。植え穴にまんべんなく水を入れるために意図的に土を被せていません。最終的なレベルは 潅水後に 先程の定規の位置まで土を入れます。
植え穴の周囲には掘りあげた土を置いているので、これがそのまま基準(地表面)になるのではありません。この株の場合、最も長い主枝は20cmほどですが、それが1/3程度は埋まる深さになります。右のタグが付いている枝なら半分は埋まります。
この後私がもう一度デモをして、それから仲間たちが植付け作業に取りかかりました。もちろん私も参加します。みんな作業は丁寧で、初めてにしては上手です。たぶん、バラ班に入る前に他の班で農作業の経験があるのでしょう。
写真下左:植付け作業が進む間に、デービッドさんは次の区画の準備をします。実施図面を(たまに)見ながら、植付け予定箇所に頭を赤く塗った割り箸を挿していきます。この作業時にはメジャーを使ったりはせず、直感的に(?)場所を決めていくように見えます。もちろん直線的な配列などは無いし、かのやばら園に1万株のイングリッシュローズを植えそれを3年間管理した経験から、どの品種はどのような株間が適当か、熟知しているんでしょうね。
写真下右:この割り箸の位置に植え穴を掘ります。かのやばら園では機械堀りでしたが、ここではスコップを使っての手作業です。穴掘りも数が多いと結構な重労働です。この写真の赤いジャンパーはスタッフの女性ですが、腰が入っていて慣れた手つきですね。もの静かで働き者、その笑顔が周囲をほんわりと包み込むかのようでした。
写真下左:デービッドさんが植付けが終わった区画の潅水をデモします。ホースの水を流し込みながら、スネーブルのディギングホークを使って根と土をなじませていきます。この3爪ディギングホークはデービッドさんの愛用品で、宿根草の株分けなどにも活躍します。
写真下右:潅水はクリスさんの担当になりました。1日目の午後から2日目はほぼ終日その作業にかかっていました。植付けた量が多い、仕事が丁寧というほかに、水の引きが遅かったのも時間がかかった理由のようでした。
デービッドさんの愛犬(ともだち)スパーキーが、おりこうさんにして作業の様子を見ています。この辺りにもさらにバラ花壇が予定されているそうです。
潅水が終わった株の周辺をきれいにならします。この作業は主に仲間のMORIさんが担当しました。MORIさんはこのような作業が好きなようで、静かに丁寧に進めていきます。地ならしを終えたら植付け作業そのものは終了です。夕刻までにはメイン花壇の3/4ができました。
Rose List & Layout
- ヒースクリフ
- L.D.ブレスウェイト
- スピリット・オブ・フリーダム
- ジ・アレキサンドラ・ローズ
- ファイティング・テメレア
- ムンステッド・ウッド
- パット・オースチン
- ダーシー・バッセル
- コンテ・ド・シャンパーニュ
- プリンセス・アン
- プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケント
- セプタード・アイル
- グラハム・トーマス
- and more...
中心部の花壇の植付けはこのような配置になりました。冒頭の実施図面とは配置が少し異なる部分があります。それぞれの品種3株から5株、あるいはそれ以上の「まとめ植え」になります。#13の"グラハム・トーマス"だけは1株植えでポールに絡ませて伸ばす配置です。この図は作業しながらの私のメモなので正確ではないかもしれません。図面四半分の右下の一部は未記録です。
今回は全体で約20品種250株(このメイン花壇で約200株)が植付けられました。平均すれば、通路部分を除いて1平米で1株になります。このプランを見て、どのような花壇になるかイメージできますか?
作業に参加して、しかもこれらの品種の半数は自分でも栽培しているのに、私には1年後2年後の様子、例えば花壇の中央に立てば周囲にどのようにバラが咲いているのか、その様子を目に浮かぶように想像することができません。自分などまだまだ(全然)勉強不足と痛感させられます。
植付け作業2日目
メイン花壇の両脇にやや小型の花壇が3カ所あります。その花壇には既に宿根草が植えられていました。ここにもバラ苗を植付けていきます。
ヘッドガーデナーの孤独?
デービッドさんは植付けや潅水のデモはするものの、実際の作業はしません。『みんなで作る花壇だから、デービッドさんも一緒にやれば・・』というのは私の考えで、デービッドさんには彼のやり方や考えがあるんでしょうね。作業の区切りなど手が空いたときはスパーキーの相手をしているのですが、花壇の全責任は彼が負うのだから、ヘッドガーデナーは楽な役割ではなさそうです。
花の木農場からみた夕暮れの開聞岳
錦江湾を挟んで対岸の薩摩半島にある開聞岳や指宿には、旅行や仕事で何度か行ったことがあるんですが、「バラ苗の植付け」でこのような光景を見ることになろうとは。
デービッドさんと初めて出会った日のことを思い出して、『人生って不思議なものだ』と、とりとめもない感慨が。
デービッドさんはどのような思いでこの風景を見ているのでしょう。
南大隅の春 2015年3月13日 植付け1ヶ月後
春になりました。大隅半島・錦江湾沿いの鹿屋市荒平にある小さな岩礁が干潮時には砂州でつながり、そこに天神様が祀られています。「荒平天神」。とても水が澄んでいますね。スキューバ・ダイビングのインストラクターでもあるデービッドさんの活動拠点はこの近くにあります。
芝の緑が増し、植付けたイングリッシュローズがたくましく芽吹いています。この画面でも植付けた深さがわかりますね。地表面に出ている主枝の長さに注目。たぶん20cm程度はあるだろう主枝の長さの半分は土の中です。
それともうひとつ 重要なこと、それは 支柱を立てない ということです。
雑感 バラに支柱は要らない
その理由は、イングリッシュローズの枝は縛られるとストレスを感じて生育が鈍るからです。嘘だと思うなら試してご覧なさい。縛られた枝は1年後には切り捨てることになりますよ。もちろんツル系品種にはある程度の支柱は必要でしょう。でも例えば「グラハム・トーマス」でも、縛られると その枝の生育は鈍ります。
私は北九州市グリーンパークバラ園で開催されているバラ栽培講座に参加していますが、6月の定例講座で講師の小林博司先生が同主旨の話をされたので、ちょっとびっくりしました。支柱がバラの生育を妨げるのは主にイングリッシュローズの場合かと思っていたからです。でもそれは他の品種でも同じ傾向があるのでしょうね。植物(バラ)は鋭敏な "タッチセンサー" を備えているようです。小林先生のお話を聞きながら、支柱はもちろん、枝に結んだラベルやタグも取り外したほうが良さそうだと思いました。
もし苗を支柱無しで植付けたら、株全体が風に揺すられて根が傷みますよね。それを防ぐために「深植え」するわけです。『深植えすればベーサルシュートが出ない。ベーサルシュートを出すには株元に十分な光を当てて、発芽抑制物質ABA(アブシシン酸)を不活性型にしなければいけない』というのが栽培者の常識です。それは「アーチング栽培法」でも実行されているし正しいことなんでしょう。でも、イングリッシュローズは「深植え」してもベーサルシュートは出ます。「株元」というのは「接ぎ木した部分」と同じ意味ではないと思います。地中から出たベーサルシュートは付け根部分を土に守られているから容易に捥げることはありません。もし風に煽られて捥げるシュートがあったなら、『それはもともと不要なものだったんだ』と考えを変えることにしました。
小林先生の話を聞きながら、「支柱を必要とするような枝は、基本的に剪定方法を間違っている」と思い至りました。ずいぶん乱暴な話ですがバーバラさんも同意見で、今(2015年6月)はバーバラさんが支柱を外しながら枝を大胆に(笑)切り捨てています。
深植えするもうひとつのメリットとして、デービッドさんは「接がれた品種の土に埋もれた枝から "Own Root"(自根)が出る」ことを挙げています。私は残念ながらERでは未確認(ランブラー系ではたまに目にする)ですが、挿し木でも容易に発根するイングリッシュローズだから、それは十分あり得ることでしょうね。
風による枝折れ防止策として枝の中間部分を支柱で固定すると、強風が吹けば固定した部分のすぐ上で折れます。柳の枝が風に折れないように、イングリッシュローズも風に揺らしたらいいと思います。揺れるのが程よい刺激になるのか、まさかポンプの役割を果たすのではないだろうけど、固定するより生育が良いのは間違いありません。
注:誤解を招かぬよう書き添えますが、これらはデービッドさんや小林先生のご指摘そのものではありません。
また、イングリッシュローズには「新苗」として販売されているものはありませんが、自分で接いだ苗など新苗の植付けは浅植えにするので支柱が必要な場合もあります。
ラベルを利用した手作りのガイド。花壇の側にはマルチング用の大量のウッドチップが準備されていました。
穏やかな春の日差しの中で、敷石の目地の仕上げをしているのは仲間の安東秀和君です。
「可能性を信じて」 安東秀和
僕は、「セルプおおすみ」という施設に入ってすぐ花班の作業になって、土作り、ポット作り、花植え、草取り、草刈り作業を二年二ヶ月して家の事情で仕事をかわることになり、今度はトマト班になり作業はトマトの収穫、選別、パック詰め、下葉かき、わきめかき、紐張り、誘引の作業をしていて、トマト班の休憩所作りで大工さんの手伝いでサイディング貼り、板打ち付け、天井板貼り、などをしてから、養豚場の解体作業、トマト班の所の側溝作り、チャリティコンサートで使用する長イス作り、ニンニク班で畑の堆肥ふり、耕運作業、肥料ふりをしてザビエルの石づみと整地作業、ブロックつみ、そういう工事の作業をしてからバラ班に入りました。
バラ班での最初の作業は、花を植えてた所の花壇を壊してさつきを抜いて、抜いた所に石づみをして花壇を作り、シュロの木の所に入れる支柱作り、ペンキ塗りをして、土を入れかえてから支柱立て、花壇の通路にする所にテストピースを並べて生コンを打って芝生がはえないようにレンガつみ、シュロの木の回りにもレンガつみをしました。
さつきを別の花壇に植えて剪定、宿根草植え、バラ植えも初めてだったので難しかったです。
僕は生まれてすぐ両親を亡くして祖父母に育てられました。幼い頃からイタズラを繰り返して祖父母にはたくさん迷惑をかけました。祖父が亡くなってからは生活が乱れ・・・(中略)。 僕は、「セルプおおすみ」に入る前は宮崎の更生保護施設に入っていて、仕事はしていましたが、アルコールを飲んだりパチンコに行ったりしていて、『このままじゃいけない、いけない』と思っているときに「セルプおおすみ」の見学に行って農業の作業があると聞いたので、ここの施設に入りました。
入った当時は、◯◯や◯◯など、決まり事を破って過ごしていました。一度、帰宅期間中に親戚にいろいろと言われ、嫌になって10日間ほど逃げました。野宿をしたり漫画喫茶に隠れて、過去の自分に戻っていきそうな恐怖と、誰にも縛られたくない気持ちがありました。
発見されたとき、地元の支援センターの方や「セルプおおすみ」の職員もずっと捜索していたと聞きました。こんな僕にも帰る場所があるんだと感じました。
農作業に取り組み、月額◯万円の工賃をもらっていて、貯金もたまってきました。祖母の頼みで実家のお風呂の改装費を出してあげられたときに、やっと孫らしいことが出来たと嬉しくなり、給料をもらうことの充実感を初めて感じました。施設の職員、支援センター理事長皆様のおかげでかわることが出来て、スピーチコンテストに出て「県知事賞」をとることができたのです。
今年は今まで育ててくれたおばあちゃんとおばさん、おじさんが亡くなりましたが、僕は施設に入っていたので亡くなる前もあうことが出来ませんでした。おばあちゃんが亡くなってすぐは、なにもする気がおきなかったけど、みんなが励ましてくれたので作業をすることが出来ました。今はバラ班の仕事をしながら、工事の仕事、環境整備をしたりしています。
僕にはまだまだ可能性がたくさんあります。いろんな人の協力は必要ですが、裏切り続けた人生から抜け出して、これからはバラ作りを勉強して、ちゃんとしたバラを咲かせられるように頑張りたいです。
安東君とのであい
デービッドさんの仕事は「英国流」とでもいうのか、午前と午後の決められた時間にティータイムがあります。2日間にわたる作業の休憩時間に、仲間と一緒にタバコを吸いながら、安東君が遠慮がちに自分のことを話してくれました。
彼の体験談がスピーチコンテストで県知事賞を取ったというエピソードに私が関心を示したことがきっかけで、安東君がこのブログのために「手記」を寄稿してくれることになりました。
安東君の手記は、このブログには重過ぎる内容も含まれています。公開するかずいぶん迷ったのですが、寄稿してくれた安東君の気持ちを尊重し、一部を省略し伏せ字にすることで公開することにしました。その他はできるだけ原文のままで掲載しています。
南大隅の花の木農場までは私が住む福岡から九州道、東九州道と乗り継いで6時間かかります。たぶん年に数回しか訪問できないだろうし、安東君もこのままずっとバラ班の仕事を続けると決まっているわけではないでしょうから、どこまで継続できるかわかりませんが、
"裏切り続けた人生から抜け出して、これからはバラ作りを勉強して、ちゃんとしたバラを咲かせられるように頑張りたい"という安東君を(少し距離をおいて)見ていたいと思います。これはもしかしたら自分のことでもあるのかもしれないからです。