このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

お知らせ

バラの育種 を仲間と共に学びたい初心者を対象にした オンライン勉強会 を計画中です。

オンライン ミーティングシステム "Zoom" を利用して、月2回(年間20回程度)の開催で、 参加費無料の勉強会です。

内容は「ばらの育種オンライン勉強会」 案内ページ をご覧ください。
11月23日追記:勉強会で使用するテキストに関して重要な変更をしています。



2012年7月11日水曜日

イラガの幼虫と「デービッド丸」

バラの水挿しの容器を入れているケースの底に害虫のフンらしきモノが。 なんとイラガの幼虫が葉裏に潜んでいました。それも、集団行動をする赤ちゃんではなく、かなり大きく成長したヤツです。刺されなくてよかった。危ない所でした。

イラガの幼虫がいかに恐いか、刺された経験のある人は(私もそうですが)よくご存知ですね。

数日前に作った「デービッド丸 そら型」が噴霧器の底に残っていたので、ハンドスプレーに移して吹きかけてみました。イラガの幼虫にも効果があるのか確認するのが目的です。以下「イラガの幼虫」を単にイラガと略記します。カメラで覗いてその美しい配色に驚きました。

10:02 AM これがバラの葉を喰うイラガです。柔らかい新葉ではなく、水挿しの穂木にしているやや硬くなった葉裏に付いていました。画面左上が食痕で、直線的に齧っています。左が頭部で、頭部と尾部を毒針で武装しています。

今回使用したデービッド丸にはニームオイルが入っていません。重曹、エコピタ、そして神協液肥です。実際に使用する場合と同じような量が降り掛かるように、やや離れた位置からハンドスプレーで2回シュッシュッしました。イラガは驚いて動き始めました。

チュウレンジハバチの場合もそうですが、デービッド丸を吹きかけると急に大きくのたうち始めます。ビックリしているからだけじゃなく、何かをすごく嫌がっているような動作です。でもこれで、見落としがちな幼虫も容易に発見できます。

10:03 AM さて問題は、イラガの全身にあるトゲや体毛が邪魔をしてエコピタが気門を塞げないのではないか?ということです。

しかしこうして写真で見ればそれは心配なかったようですね。エコピタに入っている界面活性剤の効果でしょうか、イラガの全身の表面にかかったように見えます。その量まではわかりませんが。

10:04 AM 葉の表面に付着したデービッド丸が乾き始めました。同時にイラガの動きにも変化が。動く速度が遅くなり、止まって頭を持ち上げる動作が出始めました。

10:15 AM 15分経過。さらに動きが鈍くなり、尾部はほとんど動かなくなりました。体をのけぞらして頭部を左右に激しく振り続けます。口らしきのもが見えています。

かなり苦しんでおり、もはや絶命寸前かのように思えますが、じつはここからイラガの強い生命力を見せつけられました。

頭を振りながらこの状態で1時間が経過。しぶといヤツですね。この日は晴天で、私の方が先にダウンしそうなので室内に持ち込みました。

仕事をしながらも、机の脇に置いているイラガが気になって仕方がありません(笑)。直射光から逃げられたからか、イラガは少し元気を取り戻したかのように見えます。

2:13 PM 4時間経過。気がつくと、イラガは体液を吐き出して力尽きたようにダウンしていました。もはや体をのけぞらせる力は無さそうですが、まだ生きています。回復する可能性は無いと思えたので、この時点で殺しました。

今回使用した「デービッド丸 そら型」には害虫の神経系を壊す毒は入っていません。殺虫効果は、エコピタのデンプンが気門を塞いで窒息させることによると思うのですが、口から体液を吐き出したのにはちょっと驚きました。もしかしたら、それは重曹の水溶液(アルカリ性)の効果なのでしょうか?

ノックダウン効果は無いものの、デービッド丸がイラガの幼虫に対しても有効なのが確認できました。「確認」と言っても僅か一例ではありますが。

7月12日追記
この穂木を採取した株(CLアイスバーグの2年生)をチェックする必要があります。数日前に、この株の混み過ぎたベーサルシュートを整枝したばかりなんですが、迂闊にも異常に気がつきませんでした。

チュウレンジハバチも含めて、これらの幼虫は羽化する前に繭を作ったり蛹(サナギ)になったりするのでしょうか? イラガは蛾ですからそうだろうと思うのですが、それらしきものを見たことがない(知らない)です。

検索してみました。「K's Natural Living ~花のある暮らし~」から「イラガの変身

なるほどね。吐き出した黄色の液体は繭作りの材料だったんですね。悶絶する間際に最後の手段として繭を作ろうとしたのでしょうね。繭を作る「終齢幼虫」になるまではもう1回は脱皮が必要なように見えますが。。そうと知ればなんだか哀れに思えてきます。ナムアミダブツ

チュウレンジハバチも繭を作るのだそうです。情報源:「幼虫図鑑」から「チュウレンジバチ

イラガの繭は見た記憶がありませんが、チュウレンジハバチの繭は見たことがあるような気がします。貴重な情報ありがとうございます。これで2種類の害虫の<>がわかりました。今後は繭退治にも留意します。イラガの繭は見てみたいです。まるで「スズメのたまご」ですね。あの駄菓子の「スズメのたまご」。

2012年7月1日日曜日

バラの 水挿し −3

6月3日に投稿した「バラの 水挿し −2」で書いたように、バラサークルのMさんから預かったHT品種の枝を6月1日に水挿しにしました。それから1ヶ月が経過しました。その様子をレポートします。

バラの水挿しの発根

バラの 水挿し1ヶ月後

左の写真は6月1日に投稿した写真と同じ挿し穂です。

今日7月1日では、どの挿し穂も1枚の葉も枯れることなく(変色すらせず)、カルスの一部が「根」になり始めています。しかし「芽」が動き始めたのは1本の挿し穂のみです。

この他にも幾つかの品種を水挿しにしています。そのほとんどが不要なベーサルシュートなど、未熟な枝を挿し穂にしたものですが、葉が黄変し落ちたものもあります。でも、それでもしっかりカルスができているものもあって、一概に『こうだ』とは言い切れない状況です。

葉の黄変は気にしない

以下は想像ですが、バラ(植物)は賢くて、自分の今の状況(環境や内部に蓄えている養分)を判断して、もし養分が不足すると思ったら積極的に葉の養分を茎に移して、それを発根や発芽の材料やエネルギーにするのではないでしょうか。その結果、葉は黄変して落ちますがカルスの形成は(むしろ)早いような気がします。

中には、葉が黄変して落ちてもカルスができない(同じ品種の)挿し穂もあります。これは、基部の調整ミスや雑菌のせいでなければ、それだけ枝が未熟だったのでしょう。

Mさんの枝のような、私の枝よりも比較的しっかりした挿し穂は、葉の養分までも使う必要はないのだろうと思います。カルスの形成はややスロー(10日遅れて水挿ししたモスローズのカルスはこれより大きい。でも葉は枯れて落ちた)ですが、でもたぶんこれからの成長は早いのではと思います。

成否は穂木の品種と充実度

左の写真2枚目の茎の断面を見ると木質部が未発達ですね。緑枝挿しの場合、成否は穂木の充実度(木質部の有無という意味ではない)にかかっていると思うので、穂木の採取時期とその部位を慎重に選んだ方が良さそうです。

何度も紹介していますが、"The Difference Between Own Root and Grafted Roses" (YouTubeビデオ)の4:20から始まるシーンで、ポールさんは実に簡単に挿し穂を調整しているんですけどね。適切な充実度の穂木なんでしょう。私みたいに「不要なベーサルシュート」ではこうはいかないようです(笑)。

ポールさんの場合は水挿しではありません。挿し穂は2節で調整、残す葉柄は1本、葉は2枚程度のようですね。1ヶ月経過した2つの事例の大きな違いは「根」です。ポールさんの場合はすでにしっかりした "root ball" ができています。やはり水挿しは発根まで時間がかかるのでしょうか。

2013年2月追記
この水挿しのその後の経過は、2013年2月8日の記事「バラの 水挿し −4」をご覧ください。

ミリオンAにも注意

ところで。
今シーズンの全ての水挿しには「 "ミリオンA" を使っていますが、厳寒期とは異なりこの時期は水の腐敗に注意が必要なようです。僅かにでも水の透明度が落ちたら要注意。挿し穂の基部を触って「ヌメッ」としたら雑菌が蔓延っているのでしょう。この場合、そのままにしておくと挿し穂の基部から艶のある黒褐色に変わっていきます。表皮よりも内部の「髄(ずい)」で、より急速に雑菌が繁殖していきます。

「水挿し」なのに水が上がらず枯れる原因は2つあって、ひとつは導管内に空気が入った場合。もうひとつは雑菌が導管内に繁殖して塞いでしまう場合です。これらの場合は茎が黄変して挿し穂がゆっくり枯れていきます。
導管内に空気が入るのを防ぐには、採穂後すぐに水に入れ、「水切り」をします。

挿し穂に雑菌が付いていたり(例えば、切った枝を一時的にでも汚れた水に挿していたり)、土などが入ったりすると水質が悪化しやすいようです。ミリオンAを入れているからと油断できません。ミリオンAは水を浄化する効能はあるものの、殺菌剤ではない(メーカーによれば "静菌作用" )ですからね。水質悪化に気づかず、それで数本枯らしてしまいました。私の環境では1週間から10日ごとに水を交換する(同時にミリオンAを追加投入する)のが良さそうに思えます。

追記:その後の水挿しの経験から「1週間から10日ごとに水を交換する」では交換の頻度が少な過ぎます。ミリオンAの有無にかかわらず、できるだけ頻繁に水を交換する方がベターでしょう。その理由は水の「溶存酸素量」です。具体的なデータを持っていないので推測の域を出ませんが、水挿しの観察から今はそう考えています。

オスバンSも忘れずに

挿し穂の基部ではなく上部から枯れ(腐敗)が進んだものも少しありました。たぶん剪定鋏から雑菌(腐敗菌)が伝染したのでしょう。"オスバンS(逆性せっけん/ベンザルコニュウム塩化物液)" を使っての剪定鋏の消毒はけっこう頻繁にやってるつもりなんですが、こういう肝心なところでドジをします(笑)。
より重要なのは作業全体にわたって「清潔」を保つことですね。

ALGOFLASHも使ってみる

7月4日追記:もし穂木が未熟で葉が落ちるのなら、養分を補給するために「切り花活性剤」を入れてみたらどうなんなんだろう?と思いつき、 "ALGOFLASH" を入れてみました。それには水の腐敗防止の他に養分補給の効能もあります。

ミリオンAとの混用です。ところが15分過ぎても水が白濁したまま。
『あれっ、ALGOFLASHはミリオンAと相性が悪いのかな?』
・・なんとALGOFLASHと液体せっけんを取り違えて入れていました。容器の形状が似ているので、寝ぼけ頭には区別がつきませんでした。ドジ X ドジ。

開花枝を挿し穂に

今後は未熟なベーサルシュートではなく、夏剪定で切るであろう開花枝を挿し穂にして、幾つかの品種を試してみようと考えています。
バラの緑枝挿しはポールさんのようにちょいちょいと簡単にやってのけたいものですが、幾つドジを重ねるとそうなれるでしょうか。