2015年8月前半の北部九州は雨が少なくバラにとって、そしてガーデナーにも過酷な夏でした。秋の美しいバラを楽しみに、残暑が厳しいなかでの作業が続きます。
美しい秋バラを
美しい夏の空と元気な葉色のバラ。8月度の年間講座は22日に開催され、テーマは「秋の管理について」と、秋の花のための剪定実習でした。
小林先生の首にかけられた純白のタオルが汗に照り返り、真夏の作業らしい写真が撮れました。
秋の花のための剪定時期は「最高気温が25℃〜27℃になる日を目安に」ということです。これを気象庁のデータ(福岡の過去30年間の平年値)で調べてみると、剪定時期は9月下旬から(9月24日 平均気温23.0℃ 最高気温26.9℃)が適期ということになります。ちなみに9月10日の最高気温の平年値は 29.2℃ です。この頃はまだかなり高いですね。
しかしこれは(当然ながら)品種や切る高さなど、幾つもの条件に依るので、GPバラ園の場合は、10月末から始まる「秋のバラフェア」に開花時期を合わせて、9月上旬から、開花までに時間がかかる品種から順に剪定が始まるのだろう(推測)と思います。
秋のバラの美しさを知っていますか
九州北部では秋は多くの品種で2回咲かせることができます。秋の一番花をやや早めの10月上旬に、二番花は12月に咲くように。でも小林先生のお話では、もっとも美しい秋のバラは11月上旬に咲く花。
9月15日に剪定し50日後の11月5日に開花となれば、二番花は12月末になります。秋に2回咲かせたければ、9月5日に剪定し45日後の10月20日に開花というパターンになります。これなら二番の開花も可能ですが、もっとも美しいとされる11月上旬の開花は諦めるしかありません。
どちらを優先するか悩ましいところです。9月5日頃(最高気温の平年値は30.1℃)に切って秋に2回咲かせようと思う私は「秋のバラのほんとうの美しさ」を知らないのかも・・。
今年の秋は、「秋のバラのほんとうの美しさ」を探すことになりそうです。
バラの緑枝挿し 2ヶ月後
写真下左は、6月の講座で私たち受講者が挿し木したバラのおよそ2ヶ月後のようすです。右は、GPバラ園のガーデナーさんたちが、実習よりやや先行して挿したものです。品種によるバラツキは当然あるものの、さすがに良好な生育状態ですね。挿し木時に「メネデール」を使ったそうです。
受講者のみなさんの話では、それぞれが自宅で試みた緑枝挿しは失敗したものが多いようでした。その原因は幾つか考えられますが、過去の事例から私が危惧するのは「採穂後の水切れ」です。GPバラ園では採穂したらすぐ水に入れます。そしてあまり間を置かず挿し木作業へと続きます。
受講者は持ち帰って挿し木するまでに時間があり、穂木はその間も盛んに蒸散していますから、穂木の基部を水に入れていないと導管に気泡が入って水の凝集力が切れ、その結果水が上がらなくなって挿し木に失敗します。穂木を持ち帰るみなさんの様子から、そういう事例が多かったのではと思いました。
挿し穂は「地上部2節」が好結果になっていますね。写真上左の中央やや上にある長めの挿し穂や、右の中央部分にあるのがそうです。GPバラ園では4,000株の挿し木苗が必要だそうで、得率80%と見込んで5,000本を挿すそうです。大量に必要な穂木を節約するために「地上部1節」(挿し穂全体で2節)が基本です。でも少量しか挿さない私たちは、この例のように地上部2節(全体で4節)の長い挿し穂が好結果をもたらすのは間違いないです。この場合「メネデール」は必要ありません。
蛇足:この講座は「初心者向けバラの育て方教室」ですから、この挿し木実習は「手持ちのバラを増やそう」というような実用目的ではなく、「挿し木を経験する」ことが重視されたのだろうと思います。「メネデール」の話もなかったし(聞き逃したのかな?)。もちろん活着すればそれに超したことはないのですが、失敗しても「良い経験になった。次回は・・」ということなんでしょうね。
有機肥料と「千代田化成」
8月4日に投稿した「バラの 夏」に書いたこの時期の肥料に関しての追加情報(確認したことがら)です。
- まず有機質肥料を「元肥」として8月中旬頃に施肥。施肥量は成株1株あたり300グラム(株の状態に応じて増減/これは冬の元肥の半量)。株元から離してばら撒き、除草・中耕して潅水
- 剪定前(遅くとも1週間前までに)即効性の化成肥料=GPバラ園の場合は「千代田化成472」を与える。施肥量や方法は元肥と同様だが、中耕は既に終えているので不要。剪定後にもう一度化成肥料を施し、いずれも施肥後の潅水が重要
- ガーデナーさんの話では、GPバラ園では2週間に1回の頻度で「千代田化成」を与えているので、特に「元肥と組み合わせて」ということではない
- そうであれば、「千代田化成」もカリ分は硫酸加里なので、なおさら「過剰」と思える硫酸加里の配合量で、これについての先生のお考えは未確認
- 油粕:蒸製骨粉:硫酸カリを1:3:2(N:P:K=3:11:17 )とする配合割合は、以前は 2:3:1と聞いた記憶があり、その成分比は N:P:K= 4.5:11.5:9.1 になるので、こちらが正しいのではないか
- カリウムは植物にとって必須の肥料成分でありしかも「過剰障害」は出にくいから、これをさほど気にする必要はないのかもしれない。いずれにしろ一般的な施肥量の数値よりも、実際の生育状態での判断が最優先
それにしても、「2週間に1回 千代田化成を施肥」というガーデナーさんの話には(先生の講義でもそうでしたが、それは鉢バラの場合かと思っていました)、『そんなにも肥料をやるものなのか』と愕然とさせられます。でも同時に、その「量」を考慮しないと間違った判断をしかねませんので注意が必要です。また、使われる肥料も「千代田化成」だけではないだろうと思います。
GPバラ園では、化成肥料による「土の疲労」にも対応策がとられているようです。常用すれば土壌が酸性になる(土が荒れる)一般的な化成肥料ではなく、化学的・生理的に中性な「千代田化成」が選ばれているのもそうですし、有機物の投入やバックヤードに集積されている赤玉土などからも、それが 推測 できます。その一例として、2011年11月29日記事:「グリーンパーク・ショックー2」で冬の元肥として投入される有機質肥料を紹介しています。
九州各地のバラ園は、開園から15〜20年が経過して高齢化した株も目立ち、根頭癌腫病の多発など弊害が出てくる難しい時期になっています。化成肥料に頼る栽培を続けてきた某バラ園が直面している現実を見ると、株の植え替えだけではとても対応できないようなので、各地のバラ園が今後どのような推移をたどるのか注目しています。
「千代田化成」で液肥を作る
高度化成肥料の「千代田化成472」(N:P:K=14:17:12)は「リン酸2アンモニウム」を主成分として作られ、すぐ水に溶けて3要素が植物へ速やかに吸収され特にリン酸の肥効が高い*という特徴があります。これを活かして「液肥」を作る方法を、園芸研究家の桃崎 皓邦先生のアドバイスを参考に試してみます。
*桃崎先生およびリン酸については、前の投稿:「バラの夏休み” 考」で触れています。
最も重要なのは肥料成分の「濃度」ですが、桃崎先生によれば ;
バラにはチッソ成分で 200ppm以下、100~150ppm 程度が好ましい
「千代田化成472」のチッソ含有率は14%ですから、水1リットルに1グラムを溶かせば 140ppm になります。計算式は(と言うほどのものではないけれど、説明が面倒なので)略しますが、「1,000倍にする」と覚えると簡単です。例えば48(ヨンパチ N:P:K=16:16:16 の高度化成肥料)なら16/100の1,000倍で160ppmになり、8:8:8なら 80ppm です。ただし48など水稲用の化成肥料の中には水にすぐには溶けないタイプもあるそうですから、これはあくまでも例です。ペレット状の有機肥料も完全に水に溶かして均質な液肥を作るのは(バーバラさんが試みているものを見ると)上澄み液と固形物が分離して滓が残り、簡単ではなさそうです。
さて、これできわめて安価な液肥(使用液)が簡単にできました。微量要素は含まれていないことに留意して、常用と高濃度は避けるべきでしょうね。さっそく試してしていますが、それとわかる結果が出ればレポートします。
*注意:読んでいただいたように、私はまだこれの使用実績がありません。ご注意ください。
2020年 追記:
2016年以降、即効性の肥料を効かせたいシーンで「千代田化成550」を液肥にして使用しています。
「千代田化成550」の成分料は、N:P:K=15:15:10 です。水1000㏄に1㌘溶かせば、3要素の合計で400ppm(EC換算≑800㎲/㎝)になる計算です。ECメーターで実測すると 0.5㌘で400㎲/㎝=200ppmになります。
具体的には 8㍑ジョウロに千代田化成550を4㌘ です。これの実測値は約 400㎲/㎝=200ppm です。これは3要素の合計値なので百崎先生の推奨値より低いのですが、「低濃度を多数回」でカバーします。
4 件のコメント:
我が家の挿し木は枯れるようです。
この講座の時は緑色の新芽が育っていたのですが、今は先から枯れて、枝もしわが寄ってきたので無理みたいです。もともと挿し木は不得手ですけど、やはりショックですね^^;Gパークの元気そうなのを見ると適期ではないからと言い訳もできませんし、、
5,000本挿し木して4,000本が成功(率80%)というのは、台木用のノイバラではなく栽培品種ですから、さすがです。
小林先生には「バラの伝道師」という側面もあって、1株のバラ苗を配布することがきっかけでバラを栽培する人が増えれば、そしてそれが家族や地域の笑顔を増やすことになればと、とても熱心ですよね。バラフェアのときの先生の栽培アドバイスを見るにつけ、頭が下がります。
註:誤解を生じないように書き添えておきますが、GPバラ園で配布している挿し木で作ったバラ苗は、PBR(品種作出者の権利/種苗法)の保護期間が切れた品種です。
Never come out water 挿し穂の管理
「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」に、Paul Zimmerman さんの YouTube動画をインライン表示できるようにしてみました。
Paulさんは元・お笑い芸人(stand-up artist)だったそうで、流暢な口調でとても私の理解できるものではないんですが、ありがたいことに YouTube画面に「字幕」が出るようになったんですね。(いつ頃から?) 再生画面の下に出る「歯車」の左の書類みたいなのをクリックすることで字幕のOn/Offができます。
この字幕はコンピュータが音声を認識して自動生成するものらしく、おもしろい誤変換がいっぱい。
例えば;
doctor huey(アメリカでは一般的な台木品種 日本語はドクターヒューイ) doctor you
semi double(花弁のセミダブル) something devil
two eye cutting(eyeとは芽のことで、2芽=2節の挿し穂) too I cutting
実習と同じ緑枝挿しの挿し穂の調整は、4分20秒からのシーンです。
we use long branches like this that would cut outside this morning they stay in water all the time and never come out water and cook 1 I'm actuary doing this process
このように「穂木を水切れさせない」と言っています。
"and cook 1 I'm ...." は、私には意味不明。わかる方、教えてください。
剪定クズで「水挿し」を始めました。今のところ1本だけですが。 懲りもせず「手抜き」することを優先しています。挿してから今日で7日目。初めて水を換えました。つまりこの1週間は放置したまま。もう少し本数を増やして、成功したらレポートします。
註について。そうかなと思ったのですが、言葉にして聞けて安心しました。
今回私がした挿し木は2本だけなので、このような数で確率は判断できないかもしれませんね。
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