このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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2016年12月31日土曜日

バラと宿根草 Roses and Perennials

宿根草アカンサス・モリスの根を掘り出すデービッドさん

鹿児島県大隅半島の花の木農場で開催された "Gardening with David" に参加しました。今回のテーマは「バラと宿根草」です。

デービッドさんと仲間たちが進めている花の木農場の造園作業は、前の記事「南大隅のバラ 2016年」で紹介していますので、ここでは宿根草のことをほとんど知らない私がメモ替わりに撮った写真を並べます。

了解を得てテキストの一部を引用します。日本語訳は丸野里美さんです。

デービッドさんの講座 "Gardening with David" では、いつも丸野里美さんがアシスタントをしてくれます。控えめながらこまやかな心配りで、講座が楽しく進行します。ありがとう。

写真下:講座の会場「花の木農場」の2016年5月。

花の木農場の2016年5月のバラ花壇

Roses and Perennials バラと宿根草

David B. Sanderson
日本語訳:丸野里美

If roses are the King in your garden then Perennials are the Queen. Well I have thought so a couple days ago, in other words, they help each other.

バラがお庭の王様なら宿根草は王妃様です。ということを2〜3日前に考えました。つまりお互いに支えあう存在だということなのです。

This time of year in late October through is a good time to spilt penneials because it's not too cold yet I mean no frost has fallen yet.

一年の中で、10月の終わりもしくは11月の後半ごろまでが宿根草の株分けに適した時期です。寒すぎず、つまり霜が降りていない時期のことです。

To help them get better, you must split them every year.

その宿根草をよりよく育てるために、毎年株分けをしてください。

There are some different types of perennials. I want to show hou to split the perennials which planted close to roses and other perennials.

宿根草にはいくつかの異なる種類があります。今日はみなさんに、このバラや他の宿根草の近くに植えられた各種ことなる宿根草の株分けの方法をお伝えしたいのです。

「球根 塊茎 球茎 塊根 根茎」 そりゃなんだ?

デービッド・サンダーソンさん

The different types are Bulbs, Corms, Tubers, Tuberous Root, and Rhizomes. Most people think that anything that looks like a bulb is a bulb. For e.g. dahlia most people think they are bulbs! But they are not really they are Tuberous root, like potatoes and Satumaimo. They are not bulbs.

異なる種類というのは、球根、塊茎、球茎、塊根そして根茎です。

多くの方々が、球根に似たような形のものを全て球根だと思いがちです。しかし、それは塊茎のこともあるのです。例えばダリアは球根だと思われがちですが、実は塊根です。じゃがいもやさつまいもと同じ種類で、球根ではないのです。

なるほど。では実際の作業を見てみます。

ディギング・ホーク

まず必要な道具は ディギング・フォーク(以下DFと略) です。今日の作業では大小2サイズ計3本のDFを作業内容に応じて使い分けます。

宿根草の株分けには、もうひとつ欠かせないものがあります。それは、根腐れの原因になる病原菌の侵入を防ぐ殺菌剤 硫黄粉剤(有機JAS規格適合) です。

硫黄粉剤

1. アガパンサス

アガパンサスの根茎

アガパンサスは「根茎/RHIZOME」のようです。

手順

  1. 大きめのDFで株を丸ごとすくいあげるように掘り出す
  2. 2本の小さめのDFを根茎の固まりに背中合わせに挿し込む
  3. DFを左右に開くと根茎の固まりが分かれる
  4. 写真下程度の大きさに分け、硫黄粉剤をまぶす

『道具の選択が重要』とデービッドさんは言いますがDFを使えば根が切れることが少なくなります。

デービッドさんはいつも手袋を使いません。
硫黄粉剤も素手で扱います。

ディギング・ホークで根茎を分ける 分割した根茎 硫黄粉剤をまぶす
ペンステモンの花

ペンステモンは上記の分類には含まれないようです。

これも宿根草で、私のところにも以前デービッドさんからもらった株が旺盛に育っていますが、株分けをするとさらに元気良くなります。

手順

  1. DFで株を丸ごとすくいあげるように掘り出す
  2. DFや鋏などではなく、手で分割する
  3. 写真下程度の大きさに分け、硫黄粉剤をまぶす
ペンステモンの株
株をまるごとすくいあげる 株を分割する
5月の花壇のバラと宿根草

王様と王妃様

バラを植えてから1年半。宿根草は約半年です。写真左奥の赤いバラは「ダーシー・バッセル」で、右奥に「ペンステモン」が並んでいます。それと絡むように右に「L.D.ブレスウェイト」が植えられていて、それが少しだけ見えています。

「ダーシー・バッセル」の手前が「キノフォーフィア」、その右が「アカンサス・モリス」です。 撮影時には気づかなかったのですが、キノフォーフィアの色が右手前の「パット・オースチン」と似ていておもしろいと思います。

デービッドさんもそれを意図しているのでしょうか、パット・オースチンの周りに適当な間隔を空けてキノフォーフィアが5〜6株も植えてあります。このページのトップから2枚目の写真にそれが写っていますが、開花期が長いキノフォーフィアに比べ、パット・オースチンは既に春一番花のピークを過ぎています。バラと同時に咲いたり遅れて咲いたり、まさに「王様と王妃様」ですね。

3. キノフォーフィア(トリトマ)

宿根草キノフォーフィア 株を分割する
葉を切る 基のフォーフィアの根茎

キノフォーフィアは「根茎/RHIZOME」ですね。

手順

  1. DFで株ごとすくいあげ、DFを使って分割
  2. 葉を20cmほどに切る詰める
    (アガパンサスの場合は葉を切りませんでした)
  3. 硫黄粉剤をまぶす

4. サルビア・グァラニティカ(メドーセージ)

サルビアの塊茎

花を確認できなかったのですが、サルビア・グァラニティカ(メドーセージ)か、あるいはブルーサルビア(サルビア・ファリナセア)かも。どちらも同じ『シソ科サルビア属』で、これが「塊茎/TUBER」です。

掘り上げた塊茎 サルビアのイモ
硫黄粉剤をまぶす サルビアの挿し穂

ブルーサルビアは挿し木でも増やすことができます。挿し穂は2節で、基部は節で切り、上は葉を少し残して、挿し穂の半分程の深さ(デービッドさんの指の位置)に挿します。

5. アカンサス・モリス

中央の濃緑色で深く切れ込ん葉、長い花穂を伸ばしているのが「アカンサス・モリス」です。
2016年5月 かのやばら園のイングリッシュローズ・ガーデンで撮影。

デービッドさんが植えたものですが、管理は既にデービッドさんの手を離れています。この辺りのバラや宿根草の植付けには私もちょっとだけ参加したのですが、今後どうなるのか気になります。

かのやばら園のアカンサス・モリス
バラとアカンサス・モリス アカンサス・モリスの花径

アカンサス・モリス は「塊根/TUBEROUS ROOT」です。株元から横へ伸びるゴボウみたいな太い根をDFを使って探し、掘り出します。このページ冒頭の写真のように、足で葉を押さえると作業がしやすいようです。

塊根を掘る

株そのものは掘り上げません。根を掘り出すとき折れてもかまいません。根を数cm程度に切り分け、硫黄粉剤をたっぷりまぶします。

塊根を切る

植付けは「根伏せ」(写真:下)です。
地表面に水平に浅く(半分が土に埋まる程度で)植え付けます。芽や新根は切断面から出てくるのだそうです。

硫黄粉剤をまぶす 根伏

番外 デービッドさんの修業時代

デービッドさんは少年時代をアラブ首長国連邦のドバイで過ごし、その後英国に戻ってリーズ市立の園芸学校でガーデニングを学びました。園芸が盛んな英国では各地に園芸学校があり、徒弟制度的な方法で技術を習得するのだそうですが、『この季節は毎日のように宿根草の株分けをやらされていた』と苦笑していました。

オフロードバイクのレースに出場するのが好きだった18歳の青年にとって、「宿根草の株分け」は退屈な作業だったのかも。でも修行の成果でしょうね、さすがに手慣れたものです。
日本人はあまり使わないディギング・フォークの使い方についてもそこで習得したのでしょう。

「硫黄粉剤」は有機JAS規格適合の農薬(殺菌剤)ですが、化学合成農薬の使用が多い日本では、これもなじみのあるものではありません。『例えばボルドー液のように、効果が高くて、しかも安全(有機JAS規格適合)で、安価な農薬があるのに、日本ではなぜ使われないんだろう』と不思議がっていました。



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