このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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内容は「ばらの育種オンライン勉強会」 案内ページ をご覧ください。



2015年8月24日月曜日

グリーンパーク・バラ園の8月

2015年8月前半の北部九州は雨が少なくバラにとって、そしてガーデナーにも過酷な夏でした。秋の美しいバラを楽しみに、残暑が厳しいなかでの作業が続きます。

剪定作業中の小林博司先生

美しい夏の空と元気な葉色のバラ。8月度の年間講座は22日に開催され、テーマは「秋の管理について」と、秋の花のための剪定実習でした。

小林先生の首にかけられた純白のタオルが汗に照り返り、真夏の作業らしい写真が撮れました。

秋の花のための剪定時期は「最高気温が25℃〜27℃になる日を目安に」ということです。これを気象庁のデータ(福岡の過去30年間の平年値)で調べてみると、剪定時期は9月下旬から(9月24日 平均気温23.0℃ 最高気温26.9℃)が適期ということになります。ちなみに9月10日の最高気温の平年値は 29.2℃ です。この頃はまだかなり高いですね。

しかしこれは(当然ながら)品種や切る高さなど、幾つもの条件に依るので、GPバラ園の場合は、10月末から始まる「秋のバラフェア」に開花時期を合わせて、9月上旬から、開花までに時間がかかる品種から順に剪定が始まるのだろう(推測)と思います。

秋のバラの美しさを知っていますか

九州北部では秋は多くの品種で2回咲かせることができます。秋の一番花をやや早めの10月上旬に、二番花は12月に咲くように。でも小林先生のお話では、もっとも美しい秋のバラは11月上旬に咲く花。

9月15日に剪定し50日後の11月5日に開花となれば、二番花は12月末になります。秋に2回咲かせたければ、9月5日に剪定し45日後の10月20日に開花というパターンになります。これなら二番の開花も可能ですが、もっとも美しいとされる11月上旬の開花は諦めるしかありません。

どちらを優先するか悩ましいところです。9月5日頃(最高気温の平年値は30.1℃)に切って秋に2回咲かせようと思う私は「秋のバラのほんとうの美しさ」を知らないのかも・・。

今年の秋は、「秋のバラのほんとうの美しさ」を探すことになりそうです。

写真下左は、6月の講座で私たち受講者が挿し木したバラのおよそ2ヶ月後のようすです。右は、GPバラ園のガーデナーさんたちが、実習よりやや先行して挿したものです。品種によるバラツキは当然あるものの、さすがに良好な生育状態ですね。挿し木時に「メネデール」を使ったそうです。

バラの緑枝挿し2ヶ月後

受講者のみなさんの話では、それぞれが自宅で試みた緑枝挿しは失敗したものが多いようでした。その原因は幾つか考えられますが、過去の事例から私が危惧するのは「採穂後の水切れ」です。GPバラ園では採穂したらすぐ水に入れます。そしてあまり間を置かず挿し木作業へと続きます。

受講者は持ち帰って挿し木するまでに時間があり、穂木はその間も盛んに蒸散していますから、穂木の基部を水に入れていないと導管に気泡が入って水の凝集力が切れ、その結果水が上がらなくなって挿し木に失敗します。穂木を持ち帰るみなさんの様子から、そういう事例が多かったのではと思いました。

挿し穂は「地上部2節」が好結果になっていますね。写真上左の中央やや上にある長めの挿し穂や、右の中央部分にあるのがそうです。GPバラ園では4,000株の挿し木苗が必要だそうで、得率80%と見込んで5,000本を挿すそうです。大量に必要な穂木を節約するために「地上部1節」(挿し穂全体で2節)が基本です。でも少量しか挿さない私たちは、この例のように地上部2節(全体で4節)の長い挿し穂が好結果をもたらすのは間違いないです。この場合「メネデール」は必要ありません。

蛇足:この講座は「初心者向けバラの育て方教室」ですから、この挿し木実習は「手持ちのバラを増やそう」というような実用目的ではなく、「挿し木を経験する」ことが重視されたのだろうと思います。「メネデール」の話もなかったし(聞き逃したのかな?)。もちろん活着すればそれに超したことはないのですが、失敗しても「良い経験になった。次回は・・」ということなんでしょうね。

8月4日に投稿した「バラの 夏」に書いたこの時期の肥料に関しての追加情報(確認したことがら)です。

  1. まず有機質肥料を「元肥」として8月中旬頃に施肥。施肥量は成株1株あたり300グラム(株の状態に応じて増減/これは冬の元肥の半量)。株元から離してばら撒き、除草・中耕して潅水
  2. 剪定前(遅くとも1週間前までに)即効性の化成肥料=GPバラ園の場合は「千代田化成472」を与える。施肥量や方法は元肥と同様だが、中耕は既に終えているので不要。剪定後にもう一度化成肥料を施し、いずれも施肥後の潅水が重要
  3. ガーデナーさんの話では、GPバラ園では2週間に1回の頻度で「千代田化成」を与えているので、特に「元肥と組み合わせて」ということではない
  4. そうであれば、「千代田化成」もカリ分は硫酸加里なので、なおさら「過剰」と思える硫酸加里の配合量で、これについての先生のお考えは未確認
  5. 油粕:蒸製骨粉:硫酸カリを1:3:2(N:P:K=3:11:17 )とする配合割合は、以前は 2:3:1と聞いた記憶があり、その成分比は N:P:K= 4.5:11.5:9.1 になるので、こちらが正しいのではないか
  6. カリウムは植物にとって必須の肥料成分でありしかも「過剰障害」は出にくいから、これをさほど気にする必要はないのかもしれない。いずれにしろ一般的な施肥量の数値よりも、実際の生育状態での判断が最優先

それにしても、「2週間に1回 千代田化成を施肥」というガーデナーさんの話には(先生の講義でもそうでしたが、それは鉢バラの場合かと思っていました)、『そんなにも肥料をやるものなのか』と愕然とさせられます。でも同時に、その「」を考慮しないと間違った判断をしかねませんので注意が必要です。また、使われる肥料も「千代田化成」だけではないだろうと思います。

GPバラ園では、化成肥料による「土の疲労」にも対応策がとられているようです。常用すれば土壌が酸性になる(土が荒れる)一般的な化成肥料ではなく、化学的・生理的に中性な「千代田化成」が選ばれているのもそうですし、有機物の投入やバックヤードに集積されている赤玉土などからも、それが 推測 できます。その一例として、2011年11月29日記事:「グリーンパーク・ショックー2」で冬の元肥として投入される有機質肥料を紹介しています。

九州各地のバラ園は、開園から15〜20年が経過して高齢化した株も目立ち、根頭癌腫病の多発など弊害が出てくる難しい時期になっています。化成肥料に頼る栽培を続けてきた某バラ園が直面している現実を見ると、株の植え替えだけではとても対応できないようなので、各地のバラ園が今後どのような推移をたどるのか注目しています。

高度化成肥料の「千代田化成472」(N:P:K=14:17:12)は「リン酸2アンモニウム」を主成分として作られ、すぐ水に溶けて3要素が植物へ速やかに吸収され特にリン酸の肥効が高いという特徴があります。これを活かして「液肥」を作る方法を、園芸研究家の桃崎 皓邦先生のアドバイスを参考に試してみます。

桃崎先生およびリン酸については、前の投稿:「バラの夏休み” 考」で触れています。

最も重要なのは肥料成分の「濃度」ですが、桃崎先生によれば ;

バラにはチッソ成分で 200ppm以下、100~150ppm 程度が好ましい

「千代田化成472」のチッソ含有率は14%ですから、水1リットルに1グラムを溶かせば 140ppm になります。計算式は(と言うほどのものではないけれど、説明が面倒なので)略しますが、「1,000倍にする」と覚えると簡単です。例えば48(ヨンパチ N:P:K=16:16:16 の高度化成肥料)なら16/100の1,000倍で160ppmになり、8:8:8なら 80ppm です。ただし48など水稲用の化成肥料の中には水にすぐには溶けないタイプもあるそうですから、これはあくまでも例です。ペレット状の有機肥料も完全に水に溶かして均質な液肥を作るのは(バーバラさんが試みているものを見ると)上澄み液と固形物が分離して滓が残り、簡単ではなさそうです。

さて、これできわめて安価な液肥(使用液)が簡単にできました。微量要素は含まれていないことに留意して、常用と高濃度は避けるべきでしょうね。さっそく試してしていますが、それとわかる結果が出ればレポートします。

*注意:読んでいただいたように、私はまだこれの使用実績がありません。ご注意ください。


2020年 追記:

2016年以降、即効性の肥料を効かせたいシーンで「千代田化成550」を液肥にして使用しています。

「千代田化成550」の成分料は、N:P:K=15:15:10 です。水1000㏄に1㌘溶かせば、3要素の合計で400ppm(EC換算≑800㎲/㎝)になる計算です。ECメーターで実測すると 0.5㌘で400㎲/㎝=200ppmになります。

具体的には 8㍑ジョウロに千代田化成550を4㌘ です。これの実測値は約 400㎲/㎝=200ppm です。これは3要素の合計値なので百崎先生の推奨値より低いのですが、「低濃度を多数回」でカバーします。



”バラの夏休み” 考

2015年8月20日に福岡市植物園で開催された園芸講座「バラの手入れと管理 ② 」に参加しました。講師は同植物園バラ園技術顧問の園芸研究家・桃崎 皓邦先生で、「油粕・蒸製骨粉・硫酸カリ」を使った肥料(元肥)の話もありました。これはグリーンパーク・バラ園とまったく同じ材料なので、興味津々。

先生の話を聞きながら考えた肥料や農薬のこと、ページ後半では「バラの夏休み」に触れていますが、これらは自分への問題提起です。

園芸研究家・桃崎 皓邦

桃崎先生の配合割合は、油粕:蒸製骨粉:硫酸カリ=2:1.5:全量の5% だそうです。

この成分比を計算してみると、N:P:K=6:10:9 になります。汎用の「元肥」として一般的な数値ですね。

GPバラ園の元肥については「バラの夏」で紹介していますが、その配合割合は 油粕:蒸製骨粉:硫酸カリ=1:3:2(N:P:K=3:11:17)です。

逆の言い方をすれば、桃崎先生の配合割合は市販されている「有機配合肥料」に近いもので、特に "マジック" というようなものはありません。これをGPバラ園と同様に8月に深さ10cm以内に鋤き込み、秋の剪定時に即効性の肥料を施肥するというのも同じです。鉢植えの場合は液肥、地植えの場合は即効性のある有機肥料を使用するそうです。

桃崎先生のこの「即効性のある有機肥料」は、福岡県花卉農業組合が開発したもので(N:P:K=6:8:4)動物性有機物(血液など)で作られ微量要素を多く含んでいるのが特徴だそうですが、市販はされていないとのことでちょっと残念。ちなみに肥効が現れるまでの日数は化成肥料では3日、この有機肥料は1週間だそうです。私は「土の薬膳」の粉体を使用しています。これも即効性のある植物性有機物がメインの有機100%肥料ですが、肥効が現れるまでの日数はもっとかかる(いつから肥効が現れたのかよくわからないが、しっかり効いている)ように思います。

畑作用の肥料を鉢植えに使ってはいけません』というお話も印象的でした。なるほど。思い当たることがあります。福岡県田主丸はバラ苗の生産を含む園芸農家が多い地区ですが、そこにある農家対象の肥料店で「売れ筋」の肥料を訊ねたら、似たような2種類を教えてもらいました。生産者はそれを「好み」で選ぶのかな?と一瞬思いましたがそうではなく、地植え苗と鉢苗で使用する肥料を使い分けるのだそうです。以前紹介したことがある「パワフルアミノ」。これは 鉢苗用 ですね。地植え苗用の肥料と何が違うのか詳しいことはわかりませんが、鉢上げした後の幼苗に与えても肥料焼けせず、しかも即効性があるのがわかります(上記ページからのリンク「いぶし銀のバラ屋」参照)。

硫酸カリの配合割合がGPバラ園とは大きく異なります。チッソ量を基準に比較すれば、GPバラ園のカリ投入量は福岡市植物園バラ園の3倍ほどにもなります。私にはこれが疑問なのですが、このふたつの事例を参考に 自分の環境に合った配合割合と、そして何よりそれに見合った施肥量を自分で見つけるのが肝要なんでしょうね。

・・でも実際どうすりゃいいんだ?
チッソなら葉の大きさや色である程度はわかるけど、カリの場合は?

指標作物」というものがあるそうで、例えばカリの場合はキャベツを植えて、その結球期の葉色を見て過不足を判断するのだそうです。おもしろいアイディアとは思うけれど。。

土壌分析キット

左の写真はデービッドさんが使っている土壌分析キットです。水鉄砲みたいな形をした器具(ここには写っていない)を使って土壌水分を(時間をかけて)直接取り出し、N,P,K,pH それぞれの試薬を混ぜてその結果の色から濃度を比較判定します。この写真は判定時の様子です。

これがあれば、目安になる程度の土壌分析ができ、それに基いて3要素の施肥量を決められます。

比較的安価な「農大式簡易土壌診断キット みどりくん」という簡易分析キットや、「コンパクト カリウムイオンメータ」というものがあるようですが、私は使ったことがありません。

分析を外部に委託する場合は、全農(全国農業協同組合連合会)の「JA全農 全国土壌分析センター」が利用できそうです。費用もさほど高額ではありません。福岡の場合は「JA全農ふくれん土壌診断センター」(0942-77-5214)

ちなみに、デービッドさんによれば、調べた各地のバラ園はどこもリン酸濃度が極端に高いのだそうです。それでもリン酸肥料を与え続けなければなりません。(デービッドさんの口調を真似して)「それはなぜかわかりますか?」私の答えはこの下にあります。

バラ園だけではなく、日本の農耕土壌は水田も畑地もリン酸やカリ肥料が過剰な状態なのだそうです。参照:「全農|適正施肥に向けた考え方」。JA では土壌分析をすることによって「減肥」へ向けた取り組みもあるようですが、多肥栽培をするバラも(デービッドさんのように)土壌分析が必要なのかもしれません。

話を元に戻し、再び「元肥」です。桃崎先生の話では、油粕に米ぬか(リン酸を比較的多く含む)を混ぜるのも良く、またこの肥料と過リン酸石灰や牛糞堆肥、鶏糞を混ぜるのも良いとのことでした。米ぬかを混ぜる場合は発酵熱に注意が必要で、このような有機肥料を自作するときは ボカシ にすると安全です。

ただしこれに「熔成リン肥」は混ぜてはダメとのことで、その理由は(講座の時間切れで未確認ですが)たぶん熔リンの場合はリン酸イオンが土中の金属イオンと結合しやすく、バラが吸収できないキレートになるからだと思います。
「土壌分析したバラ園でリン酸値が高濃度を示すのは、この吸収できないリン酸がいっぱいあるから」ですね?間違っているかもしれませんので、JA全農の資料:「土壌の塩基」や「可給態りん酸」を参照してください。

蒸製骨粉 がリン酸の供給源として優れているのは、骨粉が微生物によって分解され、そこに含まれているリン酸が微生物に(いったん)取り込まれるので、キレート化をある程度は防ぐことができるからです。

苦土石灰 の重要性を強調されるのも先生の特徴です。下の写真の手前左端が苦土石灰を入れた容器で、鉢植えでもこの時期に少量の苦土石灰を与えるのが良いそうです。pH調整という意味合いよりも、苦土(マグネシウム)を与えることの重要性に言及されました。

備考:グリーンパーク・バラ園で使われている「千代田化成472」は「リン酸2アンモニウム」を主成分として作られており、(リン酸の特性を逆手に取って?)リン酸とアンモニア(チッソ)が化学的に結びついているので、リン酸イオンが土中の金属イオンとキレート錯体を作る問題を避けることができます。これを開発した人は賢い! 実際に使ってみると、ふだん有機肥料を使う私はこの肥料の肥効の早さに驚かされます。リン酸のみの肥効はわかりませんが。

8月27日追記:「熔成燐肥を混ぜるのはダメ」という理由を質問したら、①アルカリ分50%を含んでいて高pHである ②熔リンは単独で使用すべき肥料である この2つの答えが返ってきました。これは 全農の熔リンに関する資料とは見解が異なります。先生から「キレート」と言う言葉は出ませんでした。

これらは講座で説明するために先生が持参されたもので、いずれも現場で使用中というリアリティがあります。前回の講座で、「ハウスが小学校のグランドに隣接しているので、クロルピクリン(土壌燻蒸剤=毒ガス類似)の使用時は気を使う」という話がありました(!仰天)。園芸作物(鉢物など)の栽培が業務内容のようです。

バラの農薬

先生は農薬にとても詳しく、例えば「殺菌剤の商品名ロブラールはイプロジオン水和剤で、イプロジオンが主成分。希釈倍率は・・」などと、澱みなく言葉が出てきます。園芸農家はそれほど農薬を使うんでしょうか? 使うようですね。園芸作物は「見た目勝負」ですし、害虫や病気が出たものを出荷することは許されません(市場が受け入れません)。

「農薬に "治療薬" というものは少なく大部分は  "予防薬" である。農薬を使うコツは植物の表面に農薬の薄い膜を作って病原菌から保護すること」

以下2枚の写真は某バラ園で日常的に行われている農薬散布で、
福岡市植物園や桃崎先生とは関係ありません。

バラ園での農薬散布 バラ園での農薬散布(ツルバラ)

先生のお話で印象的だったのは、農薬から自分を守るために細心の注意を払ってあること。必ずマスクをして肌は露出しない、ゴム手袋を着用し、オルトランなど浸透移行性の農薬は素手では絶対に触らない(何度も強調されました)など、その内容は一般的なものなんですが、言葉の端々にそれを強く感じました。

ハウスで働く園芸農家(その家族も含めて)には、呼吸器系などにガンの病気が多いというのは私のバラ仲間の間では半ば常識で、私もそういう事例を幾つか知っていますから、お話にいっそう現実感があります。

左の2枚の写真では、動噴を使っているので農薬の霧が辺りを包んでいますが、マスクもせずに撒布をしています。まず間違いなく「オルトラン水和剤」も使っているでしょう。見かねたバラ仲間が『せめてマスクの着用を』と言ったら、『余計なお世話だ』という反応が返ってきたと呆れていました。作業員もさることながら、管理者の見識を疑いますね。

福岡市植物園・バラ園担当のガーデナーさんに聞いたところ、ここでは原則的に週1回の農薬散布で、病気の発生が心配されたり発生してしまったときは5日間隔だそうです。これはどこのバラ園も似たようなものです。多くのバラ園で、休園日または人気の無い早朝に、このように動噴を使って撒布しています。

『見せるためのバラ園なんだから、病虫害予防のために週1回の定期的な農薬散布は当然だ』

ですが、それほどまで農薬散布をしなければならないとしたら、どこか基本的なところで違うのではないか?と思ってしまいます。「間違っている」ではなく、「違う」と感じるのです。

バラ栽培での農薬使用の是非を議論するのは虚しいです。なぜなら、化学農薬を使うか否かは、単に栽培方法の選択というだけではなく、栽培者の「生き方」だからです。そこに優劣なんぞはなく、「自分はどうするか」を自分で見つけていくしかないと思います。

話が福岡市植物園からも桃崎先生からもどんどん離れてしまいますが、この「違う」に関して。

バラは3,000年にもおよぶ栽培の歴史があります。殺虫剤や殺菌剤などの化学農薬が使われるようになったのは第1次世界大戦で「毒ガス」が使用されたのと軌を同じくしているそうです。つまり、たかだか100年か150年前からのことで、それ以前(の2800年間)はそもそも化学農薬や化学肥料など存在しないから、栽培はオーガニックだったんですね。

ジョゼフィーヌ の時代にも化学農薬はなかったわけで、 ルドゥーテ は実際は病虫害で傷んだバラをモデルに描いたのでしょうか?

その時代(オールドローズ全盛期)はどいうふうにバラを栽培していたのでしょうね。とても興味があるのですが、残念ながらそれに関する文献や資料を知りません。ご存知の方があればぜひ教えてください。

モダンローズの栽培では化学農薬の使用が当然のことならば、交配を重ねるうちに病害虫に対する抵抗性(ファイトアレキシン の生合成に関する遺伝子)を失ったのでしょうか。そうかもしれません。多くのブリーダーが交配親をオールドローズに求めるのもそういう理由もあるのかもしれません。

しかし、農薬に頼る栽培を「違う」と考えるひとも多く存在します。ご存知のように、デビッド・オースチン・ロージズでは交配した品種の選抜は「無農薬栽培」で行われています。「耐病性」は新品種開発の大きなテーマのひとつです。また、国内でも化学農薬を使わないで栽培しているバラ園も皆無ではないでしょう。

講義の後、バラ園に出て剪定実習がありました。福岡市植物園では2名のガーデナーさんがバラ園を担当してあるのだそうで、桃崎先生はその技術顧問的なお立場だとか。バラ園は左右対称のフォーマルガーデンですが、入り口側(この写真)は高低差のあるスクウェア・ガーデンで、それらしい上品な趣があって好感が持てます。

バラ園には8月のこの時期でもいっぱいバラが咲いています。写真手前側はオールドローズなので花はあまり見えませんが、この写真から受ける印象よりはるかに多くのバラが咲いています。管理スタッフの話によれば、『植物園だから、いつも花を咲かせておく』とのことでした。

福岡市植物園バラ園

剪定の講習内容は初心者のための基本的なものでしたが、講習中に先生の口から独り言のようにチラリと漏れた「やたらに切るのはバラのために良くない」という一言に、私は強く興味を持ちました。

「高温多湿の日本の夏は貧弱な花しか咲かないから意図的に花を咲かせず、秋に美しい花を咲かせるために養分を温存させる」という バラの夏休み。 『これは不自然なことでは?』と鋏を手にして迷うことが多くなりました。(「バラの夏休み」の具体的な方法はこのページの最後に触れています)

備考:福岡市植物園の桃崎先生も、グリーンパーク・バラ園の小林先生も「バラの夏休み」という言葉は使われません。

一般的な栽培方法では、夏の花はちょっと小さくて花持ちが悪く、香りも優しいのは「事実」です。でも「小さい花」は咲く価値のない存在なのか、「バラの夏休み」はほんとうにバラのためになるのか?

そう問うのは、もちろん 自分自身に対して です。冬薔薇(ふゆそうび/冬まで咲き残っているバラ)に、えも言われぬ美しさがあることもあるし。大きい花や数多く一斉に咲くことを良しとするような価値観に沿ってバラの生育をコントロールするやり方には、私はどうもなじめません。

なぜそう思うのか。その理由は、そのような価値観のコンテストやバラ園には、「バラのある暮らし」という バラと生活の一体感 が無いからだと考えています。バラが珍しかった昔ならともかく、今はバラの栽培は何か特別なことではなく 生活の一部です("日常"という意味とはちょっと異なります)。前の記事:「夏のしあわせ」のコメントで、「バラを植物図鑑のように植えている バラ園という存在自体が 時代遅れの陳腐なもの」と書いているのは、そういう考えからです。

これに関して、ローズアドバイザー・有島薫さんの新著:「もっと咲かせるバラづくり」p.84 につぎのような考えが書かれています。以下、同書より一部を引用します。

エンドレス剪定のすすめ

 日本では長い間、バラは年に2回の剪定が必要で、秋バラを楽しむためには8月末〜9月初旬に剪定をしなくてはいけないと考えられてきました。ところがヨーロッパのナーセリーで聞くと、秋剪定はやっていないという答えが返ってくるのが普通です。

 私が思うに、日本で秋剪定が定着したのは、かっては秋にコンテストに出す人や、バラ園に関係している人がバラの本を書いていたからではないでしょうか。バラ園で一斉に秋バラを咲かせたり、コンテストの会期に合わせて咲かせるには、逆算して40~50日前に剪定を行う必要があるからです。その習慣が、一般の方にも広まったのではないかと推測しています。

 しかし今はバラ一輪の完成度を目指すより、バラのある風景を楽しみたいという方が増えています。(以下「エンドレス剪定」に続く)

8月27日追記:福岡市植物園バラ園では今日から剪定作業が始まりました。
今年の福岡は梅雨明け後から2週間ほど雨が降らず、どこのバラ園でも水やりがたいへんだったそうです。

『水やり作業に追われて忙しく花がら摘みもままなりませんでした。剪定作業のために除草するのが精一杯』

この区画はフロリバンダやイングリッシュローズ、オールドローズ、修景バラなどが植えられています。株元には草が生えていますが、荒れた感じはありません。深い樹陰が涼しくて、ベンチに腰を下ろしてぼんやり空を眺めるのはいい気持ち。

福岡市植物園バラ園

台風15号が通過して2日後の青空。蝉時雨の中で、桃崎先生も鋏を握って作業が進みます。今日の剪定開始はたぶん他のどのバラ園よりも早いと思います。福岡の今日の最高気温は14時に30.4℃。平年値は31.4℃です。

バラの秋剪定

このバラ園では10月中旬を開花ピークのメドにして、例年この時期から剪定を始めるそうです。5名ほどのガーデナーさんが作業してバラ園奥のHTの花壇から始め、全部終えるのに1週間程かかるとのことでした。

「一斉に開花させる」ということは意図されておらず、早く咲くものも遅いものもいろいろあっていいということから、品種によって作業日を決めるのではなく、ゾーンごとに作業が進んで行きます。

剪定作業は、①まず枯れ枝、老化した枝、弱小枝を切り捨てる ②つぎに樹高の1/3を切り捨てる ③すべての枝先に鋏を入れる というオーソドックスな方法です。「二番の開花枝の中間で切る」ということは意識されていないようで、高さ基準でやや深めの剪定です。

桃崎先生が作業中の株は古い大株で、剪定が終わった部分がその株の右半分。まだ切られていない左側と較べれば、切る高さがわかると思います。先生の左手にあるのが切り捨てられる枝です。

剪定が終わった枝にはあまり葉が残っていません。HTではこうなりがちで、花壇はレイズド・ベッドだし、秋の花を目の高さで咲かせようとすれば、難しいところです。

先生の「やたらに切るのはバラのために良くない」とはどういうことなのか、「弱った株は強剪定しないで摘蕾程度にとどめる」ということなのか、それとも「年間の剪定や切り戻しをできるだけ少ない回数にする」という意味なのか、今はまだよくわかりません。

このHT花壇では花がらが整理されておらず、ほとんどすべての枝先に花がらが残っていました。これは(前述のように)潅水作業に追われて手が廻らなかったからだそうです。『花がら切りをしないと実に養分を奪われてしまうので、良いことではないのですが・・』とガーデナーさんが言ってありました。

ふつうどこのバラ園でも二番の花後に切り戻しをして、そこから出た新梢を夏に切って花を咲かせない「バラの夏休み」期間を作り、さらに9月上旬に秋の花のための剪定をします。8月4日の記事「バラの 夏」で紹介したグリーンパーク・バラ園もそうです。

花がらが残ったHTを見ながら、『HTの春二番の花がらは、むしろこのように切らずに放置するのがいいのでは?』と思いました。花がらが残ったままであれば次の花を咲かせる新梢は出ないし、すべての葉が残って光合成をします。結実すればもちろんそのための養分が使われますが 、養分の消費ということなら切り戻して新梢を出させるのも同じで、この場合は葉も切り捨てられているので、むしろ株全体でみれば養分の消費量は多いかもしれません。何よりも、切り戻しと8月に開花させないための予備剪定という2回の作業が省略できます。

註:受粉し結実してそれが肥大するのは、数ヶ月かけてゆっくり進みます。結実したがゆえに使われる養分は、株全体からみれば、そして秋剪定までという期間を考えれば、ごく僅かに過ぎません。

桃崎先生やガーデナーさんたちの言葉に、『花がら摘みができなかったので拙かった』という響きをさほど感じなかったのも印象的でした。『花がらを残してはいけない』というのは、栽培者の固定観念だろうと思います。夏に咲かせたくないのなら、二番の花後は何もしないで、あるがままに、バラが自ら望むようにさせておくのがバラのためでしょう。それがいちばんムダが無いと思います。「やたらに切るのはバラのために良くない」とはこういうことかもと想像しますが、先生の真意はわかりません。

「剪定はこうであるべき」みたいなこだわりは先生にはなさそうでした。「基本をしっかり学ぶ。そして細部にとらわれず、おおらかにバラの栽培を楽しむ」というのが 桃崎スタイル とお見受けしました。バラの栽培方法は、有島薫さんの指摘のように、栽培者のライフスタイル(価値観)や栽培される品種の変化とともに少しずつ変わってきているように思います。

10月中旬に花を見に来ることを先生に約束して、せせらぎの水音が涼やかな福岡市植物園を後にしました。



2015年8月4日火曜日

夏のしあわせ

2015年夏のスナップです。とりとめもない話題を、追記やコメントで展開していきます。

メアリーローズ カマキリ

イングリッシュ・ローズの「メアリーローズ」が咲きました。これで6〜7分咲き程度で、まだ本来の花型にはなっていません。これは今年デービッド接ぎしたもので、接ぎ木はかなり遅れて3月6日の作業でしたが、穂木の芽の動きが遅かったので、なんとか間にあったようです。4株接ぎ木して、摘蕾し忘れたものが開花しました。

「メアリーローズ」は多くのイングリッシュ・ローズの交配親になった優れた品種です。いつか私も・・というのが夢なんですが。2012年6月30日の記事「バラの交配 初めの一歩」。3年越しでやっと「メアリーローズ」の苗の準備ができました。

ブログのタイトルバックにしているバラ色のほっぺの孫娘(当時3歳)も、明るく元気な7歳になりました。
地域の夏祭りに、ヒップホップ・ダンス・チームのメンバーとして出演。ママはヒップホップ・ダンスの先生で、家の中でも 妹と歌ったり踊ったり、けんかしたりで、にぎやかなこと。

昨秋このこが畑から持ってきたカマキリの卵。虫かごの中で越冬し、春になって産まれたちっちゃなカマキリが、庭に置いている鉢植えのバラに住み着いているようです。この坊や(女の子?)は、写真のメアリーローズにいました。
「もう子どもじゃないぞ」と言わんばかりにこちらを睨んでいます。毎日数匹の虫を捕食してくれているんでしょうね。迂闊に殺虫剤なんぞ使えません。

「夏のしあわせ」という同じタイトルの文章を、2011年7月の「そらのそらごと」に書いています。バラのことが楽しくってしょうがなかった当時の文章を読み返しながら、この4年の間に流れ去ったものをぼんやり意識しています。

気持ちも老け込んできたのでしょうか(笑)。『歳をとるのもわるくないものよ』というターシャ・テューダーさんの言葉が、最近ときどき脳裏をよぎります。

自然のままに、あるがままに。

そんなバラ庭を造りたい、そんな生き方がしたいと(だんだん強く)思うようになりました。

あるところから『バラ園を作ってください』という話を持ちかけられています。近日中にその企画書を出すことになっているのですが(おいおい、マジかよ?)、『自然のままに。あるがままに。』というコンセプトのバラ園を提案してみようかな。

Erik Satie - Gymnopédie が聞こえてくるような、"Natural Rose Garden"
ついでにもうひとつ "Wild" も付け加えて。そのココロは「雑草だらけのバラ園」(爆)。

『自然のままに、あるがままに。』とは違うけど、こんな Piet Oudolf の庭 を歩いてみたい。

Piet Oudolf's Works:  Wisley,   Pensthorpe,   Maximilianpark,   Bonn,   West Cork.

色とりどりの美しいバラが、5月の青空の下で豪華に咲き誇っている。 ・・・そんな暑苦しい、どこにでもあるバラ園なんぞ作りたくはない。それは私がやることじゃないし、それよりも秋の夕暮れにひっそりと咲くバラがいい。

夕闇に透かし見るなり薔薇の花いまだ生れぬ世界のごとく  与謝野 晶子

(バックで  "Gymnopédie" を聴きながらPiet Oudolf の写真を見ています)「バラ園」ではなく、日本の里山の季節の移ろいの中にバラを植えるとしたら、どうすれば周囲の自然と調和させることができるんだろう。
・・いや、調和させる工夫が(わざわざ)必要なら、そんなもの植えなきゃいいんだ。

花いばら古郷の路に似たる哉  与謝 蕪村

Piet Oudolf の庭で私が好きな1枚は、Wisley の Photo No. 04 / 06。
何かはまだわからないけれど、『植栽テクニックよりたいせつなものがあるんだよ』と Piet Oudolf さんが語りかけてくるような気がします。

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バラの 夏

7月25日 北九州市若松区のグリーンパークバラ園で、小林博司先生によるこの時期の剪定(9月の剪定の予備剪定)や有機肥料のつくり方と施肥、ハダニ対策などについて講座(実習)がありました。

バラ 夏の剪定(予備剪定)

秋のバラのための剪定は9月上旬に行います。7月8月は「バラの夏休み」で、秋にきれいなバラを咲かせるため、二番花の花後に伸びた新梢を惜しげも無く切っていきます。

切る位置は茎頂から20〜30cm程度で、予備剪定なので内芽・外芽など関係ありません。それにしても、さすがにグリーンパークバラ園。新梢もみごとに揃っていて、『もったいない』というため息も。

有機肥料作り 中耕作業 ハダニ対策

GPバラ園で実際に使用されているこの有機肥料は生の大豆油粕:蒸製骨粉:硫酸カリ=1:3:2 の割合だそうです。

それが容量比か重量比なのか受講者の間で話題になっていましたが、いずれも20Kg入りの袋詰めで、袋の大きさもほぼ同じだったので比重は同じ。つまり容量比でも重量比でもどっちでもいいということになります。

でも肥料の硫酸カリは「カリウム保証成分 50 % 以上」のはずなので、これをそのまま容量比や重量比とすれば、いくらなんでもカリ分が多すぎると思います。この割合をチッソ:リン酸:カリの「成分比」として考えるなら妥当なのでしょうか? もしそうだとすると、混ぜる量は計算しなければわからないので実用的ではありません。

*註:これはやはり容量比(=重量比)でしょう。そうだとして、チッソの成分量を基準に施肥量を決めれば、カリの過剰障害が起きても不思議ではない比率です。でもこの肥料の他にも使う肥料があるのなら、それと合わせた 合計の施肥量と配合比率 を考える必要があります。例えば、A肥料にカリ分が多くても,B肥料にチッソ分やリン酸分が多ければ、併用することで3要素のバランスがとれます。

今回使用された肥料の1株あたりの投入量は、有機肥料としてはけっして多くないと思いました。たぶん(推測ですが)秋口に、今回の有機肥料に見合うような化成肥料が施肥されるのだろうと思います。一般的な栽培方法では秋口に化成肥料を1回施肥をするだけですが、もしかしてリン酸とカリを早めに投入するのが 小林スタイル?

  • 成分比を計算して有機肥料を自分で混合する場合は、「有機質肥料講座」の資料が参考になります。

    このデータで成分比(%)を計算してみたら、N:P:K=3:11:17 になります。これに、即効性のチッソを多く含む 千代田化成472(即効性の高度化成肥料 N:P:K=14:17:12) などを時期をずらして併用すれば、理想的な肥料になるのでしょう。

    時期をずらす理由は、生の大豆油粕や蒸製骨粉を(化成肥料より)早めに与えることで、「土壌微生物」を活性化する期間を作るためだろうと思います。特に、リン酸を多く含む蒸製骨粉は土壌微生物に分解されることで(熔成リン肥などとは異なり)効果的に利用されます。有機肥料と化成肥料の特徴をうまく利用した施肥プランだと思います。グリーンパーク・バラ園の秋バラの素晴らしさを想えばこの投入時期の時間差は小林スタイルと言うよりむしろ、"小林マジック" ですね。

  • 硫酸カリ=K₂SO₄はもちろん有機物ではありませんから「有機肥料」とは言えませんが、有機JAS栽培に使えるのだそうです。植物におけるカリウムの役割は、日本植物生理学会 | みんなのひろば |植物Q&Aの「カリウム(K)について」が参考になります。
  • もうひとつ蛇足:『日本の土壌にはカリウムが多く含まれているので、わざわざ施肥する必要はない』という話もよく聞きます。永年(10年以上)バラのみを栽培してきた土壌ではどうなんでしょう? それは、どのような肥料や有機物をどの程度の量投入してきたかによっても異なるんでしょう。計測機器を使って土壌分析ができればいいのですが、GPバラ園では小林先生の眼が高性能な分析装置なんでしょうね。

写真上中:この有機肥料を 株間 に撒き、10cm程度の深さまで中耕します。
生の油粕は水を加えると発酵時に悪臭を出しますが、土の中に鋤き込むことでそれを押さえられるんでしょうね。
私はこの有機肥料を10号鉢に「置き肥」のように使ったことがありますが、そのときも臭いなどは出ませんでした。

また、完熟したものではなく生の油粕を使うことには否定的な意見が多い(ふつうはボカシにする)のですが、株元から離して使われる生油粕の量も多くはないし(土壌微生物にエサをやっているという感じ。もちろんそれは分解されて、やがて肥料になる)、何よりここのバラのすばらしい生育を見れば議論の余地はありません。

写真上右:ハダニ対策。ホースの先端をペンチで挟み、高い水圧でハダニを弾き飛ばす方法です。小林先生の首にある黄色のストラップは、ハダニの存在を見るための10倍のルーペです。

写真を見て気づきましたか?絣の腕カバー。手作りなんでしょうか。そしてトレードマークのキャップとゴルフシューズ。機能的で快適そうなシャツとベスト。

私はいつも襤褸(ボロ)を着て作業していますが、大好きなバラの作業なんだから、その日は好きなシャツを着て、ちょっと嬉しい気分で。。と思います。

夏の予備剪定

同じくグリーンパークバラ園の講座で、私たち受講者が6月27日に挿し木したバラの1ヶ月後。写真はその一部で、新葉を展開したものや、まだ芽が動いていないものなど様々です。

9cmポリポットに赤玉土(小粒)単体の用土。挿し穂は2節。挿し穂の葉柄は1本でその葉は2枚、大きな葉は半分に切断するという緑枝挿しでは一般的な方法です。

夏の強光線を避けるため寒冷紗(遮光ネット)を張ってあります。東に面した部分は青色のネット。これはたぶん防風ネットだろうと思いますが、青色光は光合成には有効であり、また、挿し穂が風にゆれるのは禁物なので、これは理にかなった方法ですね。

受講者のみなさんの緑枝挿しはどんな具合でしょう? 挿してから今日(8月4日)で約40日。たぶん多くが既に発芽して、早いものは新葉を展開しているでしょうね。でも本格的な発根はこれからなので、展開した新葉に見合うだけの水分を吸収できるか、今が正念場 でしょう。

2015年8月24日追記:このページに書いた肥料と緑枝挿しのその後を、「グリーンパーク・バラ園の8月」で紹介しています。

挿し木用 底面給水装置

私の今年の緑枝挿しは6本です。今年は「蒸散」をテーマに、わざと葉を多く着けた挿し穂を準備しました。挿し穂は4節で、地上部に2節です。2本の葉柄にはそれぞれ葉を3枚から5枚、合計8枚程度の葉を残しています。これは通常の5倍以上の葉面積です。

「蒸散」については7月13日の記事「成功のツボは蒸散 バラのスタンダード芽接ぎ挿し」に書いていますのでここでは省略しますが、葉面積が大きければ蒸散が進み、挿し穂の水分が奪われて挿し木に失敗します。これを避けるため、ポットの底1cmがいつも水に浸っているようなセットを作ってみました。

これは、2014年11月12日の「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」に、ローゼスペコさんが12月25日に投稿されたコメントにヒントを頂きました。

ドリュやデルバールの新苗(河本バラ園で生産)が植えられている 10cm角X高さ14cm のポットを使いました。用土は赤玉土単体です。これをトレーに並べます。トレーには深さ1cmの水が入れてあり、毛細管現象で挿し穂基部(底面より5〜6cm上)には常に水気がある(だろうという)設定です。水の腐敗を防止するため「珪酸塩白土」が入れてあります。

写真右:ポットの底から2cmの高さのスリットが各面に計4本入れています。これは、発根を促すためには空気が重要という考えからです。この挿し穂は8枚の(濃い緑色の)葉が残してあります。黄緑色が新葉で、これは6本中もっとも生育の良いものですが、スリットや底面の穴からは未だ根を確認できていません。

水やりは、挿し木当日と翌日にポットの土に注ぎましたが、それ以降はまったくしていません。それでもポットの土が乾いたことは一度もなく、トレーの水が減ったらたまに補給するという、手抜きの挿し木セットです。

ただこのセットには欠点があって、それは直射光の下ではトレーの水温が上昇するという問題です。それを避けるために木陰に置きました。ところが・・。梅雨の時期にも重なってあまりにも湿度が高く風も通らない環境だったからか、ベト病?と思われる病気が発生。1日か2日の間に被害が拡大し何枚もの葉を失ってしまいました。手前側の2株にその病痕が残っています。それ以外にも発芽したばかりの新芽にも伝染し、チリチリに枯れてしまいました。

木陰から風通しのいい場所に移し、そして太陽光の直射を避けるために1日2回置場所を替えます。手抜きするために作ったセットなのに(爆)。でも、移動しただけで病気の進行は止まりました。現在展開している新葉はそれ以降に出たものです。殺菌剤を撒布したほうがいいのかもしれませんが、これはテストなので(病気が出たことも貴重なデータ)あえてそのままにしています。

枯れた新芽の後から次の芽が出てきたので、たぶんこれらの挿し木は何とかなるかも? でも今がいちばん難しい時期なので楽観はできません。肝心の緑枝挿しでの「蒸散」の効果については、まだなんとも・・。

8月21日追記:挿し木してから今日で8週間が経過しました。約7週間後に発根を確認して薄い液肥を与え始め、その数日後に底面給水のトレーを外しました。鉢底から出ていた根は自然消滅。それによるダメージはなさそうです。

最も長く伸びている新梢は約30cmです。風が強い中で撮影したので多少葉が捩れていますが、まず満足のいく生育具合です。

上の6週間後の写真と較べると、この2週間で大きく成長したことがわかります。

液肥の効果はてきめんで、グングン新芽を伸ばし、最も早い挿し穂は蕾を着けました(写真下左)。小さいのに蕾を着けるのは良いことではないと思いますが、できちゃったものは。。
液肥を与えた前後では、新葉の葉色がまるで違いますね。いったん発芽したものの病気で新芽がやられた下右も、次の芽が伸び始めました。葉を齧っていた害虫もいつのまにかいなくなったようです。

底面給水トレーはうまく機能したと思います。次はスタンダード台木にする長尺枝をこの方法で挿し木する予定です。