新苗でベーサル3本
5月に開催された「福岡バラ会 第138回 春のばら展」での「新苗の植え付けイベント」に準備された苗の残り物を3株購入しました。そのうちの2株「ロージー クリスタル」と「ロイヤル ハイネス」を、私は7号ロングスリット鉢ではなく割竹のスペーサーを噛ませた10号鉢に植え付けました。あとの1株はイベントで提供された7号ロングスリット鉢ですが、それらの用土の量はほぼ同じ程度と思います。
培養土の内容はイベントで提供されたバラ用土に、黒土、籾殻燻炭、軽石、ゼオライトなどを混ぜました。
ロージー クリスタル
購入したとき鉢には「IB化成」が施されていましたが、接ぎ穂から最初に出た枝はか細い徒長苗で頼りなげでした*。上の写真でその状態がわかります。支柱があるのが元枝です。
新芽が出るであろう部分に光がよくあたるよう、また新芽ができるだけ真上向きに出るように苗を傾けて植えました。その結果鉢増し後に特別なことをしなくてもBSが3本出て上向に伸びています。施肥が効果的だったように思います。肥料はイベントで準備されていた「マグァンプK」ではなく、昔から使っている有機配合肥料の「パワフルアミノ」を使用しました。これのNPKは6-3-1と少ないのですが、鉢上げ後の新苗にはその肥効は確かなものがあります。田主丸のバラ苗生産農家さんに教えてもらいました。
「バラ苗生産農家 御用達 パワフルアミノ」 メーカーのサイトに製品情報がないので、個人ブログのちょうど10年前の記事ですがリンクで紹介します。製品は引き続き販売されており、10年前と同じ久留米市田主丸殖木の「スワ肥料店」(tel. 0943-72-3624)から購入しています。
*註:接ぎ穂から最初に出る新梢はこのようにか細いほうが良い場合もあるのでは?と思うようになりました。自作苗は「デービッド接ぎ」ですが、とても元気の良い新梢が1本伸びます。ER(イングリッシュ ローズ)の場合、私は最初に出るステムを来春まで切除せず分枝させるのでそれで良いのですが、BSを3本出したいHT(コンペティション・ローズ)の場合はこれは必ずしも好ましいことではないのかも。その1本に肥料分が集中する傾向があるように思います。
ロイヤル ハイネス
接ぎ穂から最初に出た枝は低い位置で分枝しています。これも特別なことをしなくてもBSが3本出ました。
BSは五枚葉が5節展開した段階でピンチするのが一般的ですが、『それはなぜだろう?』と思っているうちにずいぶん伸びて10節ほどになってしまいました(笑)。でもまだ結蕾はしていません。五枚葉7節付近でカットしました。
株元をよく見てみると、なんと4本目のBSになる(かもしれない)5mm程の芽が見えています。
芽の位置や向きが良いのでそれを伸ばすために、「ロージー クリスタル」のように元枝を切除するのではなく「捻枝」して「同化枝」として働いてもらうことにしました。
元枝と1本目のBSとの間隔が狭くて、捻枝した位置の保護のための接木テープが巻き難かったのですが、捻枝する部分をプライヤーで枝を軽く潰してから、ゆっくり慎重に捻りました。
捻枝した元枝は成長点をピンチし、動かないようにピンで鉢に固定しています。
7号ロングスリット鉢に植え込んだもう1本の「ロイヤル ハイネス」は、肥培管理は10号鉢とほぼ同じですが現時点のBSは1本のみです。それだけで見れば鉢サイズとBS数が比例しているように見えますが、6号ロングスリット鉢の自作苗でBS2本の例もあるので、必ずしもそうなるわけでもなさそうです。
「捻枝」でBS3本
以下の3株は「デービッド接ぎ」した自作苗の一部です。とても元気の良い最初の枝が出たものの、恥ずかしながらうどんこ病になってしまいました。うどんこ病原菌に罹患すると、「エフェクター誘発型免疫」の発現、さらに、感染していない葉にそのシグナルが伝えられ、二次感染に備える「全身獲得抵抗性」が誘導されるのだそうで(出典:愛媛大学「植物病学研究」/2019年7月研究会・稲永レジュメp.16)、幼苗は自己防衛のため一時的に生育がほぼ停止します。うどんこ病原菌はエタノールで除菌したものの、大事な時期に発病したそのようなステムは今後の成長があまり期待できないので、すべて捻枝して早めにBSに切り替えようとしています。
SS(サイドシュート)も捻枝で。 捻枝できない太枝は「鋸・芽出し」
幹に大胆に鋸目を入れて発芽を促すのは、福岡バラ会 星隈研究部長のご指導によるもの。
詳しくは「2021年1月 講習会 薔薇の剪定」を参照。
枝(幹)の高い位置での捻枝によるシュートの発生は容易ですが、「鋸・芽出し」は鋸目を入れる位置の選択が私には難しく、数カ所に試みて芽吹いたのは今のところ上の写真の1株2本のみ。星隈研究部長は鋸目を入れる位置が見えるらしく、『えっ!』と驚くような位置に大胆に、深く鋸目を入れられます。
古株は「ビーエー液剤」で
BSの発生があまり期待できない上右の写真のような古い株は、今年も「ビーエー液剤」で対処しようとJAに発注しました。「ビーエー液剤」は発芽を促す植物ホルモンのサイトカイニンと類似の作用を示す「ベンジルアミノプリン」が主成分です。
固く木質化したクラウンからはBSが出そうな気配はありません。ここに深く鋸目を入れると、傷口を塞ごうとする癒傷ホルモン・オーキシンが作用します。オーキシンは成長を促すホルモンでもあるので、そこに「ビーエー液剤」を加えればどうなるのか? この季節も、私のバラ栽培の小さな楽しみは尽きることがありません。
追記:ほんとうのベーサルシュート
このページの新苗のように、接ぎ穂の主芽の傍から出た芽が伸びたものを「ベーサルシュート」と呼んでいいのか疑問があります。本来の「ベーサルシュート」は台木と穂木の接合部分のカルス(未分化の細胞群)が肥大してできるクラウンから出芽したシュートのことでしょう。例えば最後の写真の茶色のナックル(握り拳)状のクラウンから出芽すれば、それは間違いなくBSです。「ビーエー液剤」はそれを狙っています。
でもこのページではそのような事には拘らず、主芽から伸びたシュート以外はBSと呼んでいます。ただし、主芽が伸びたシュートから出た脇芽は低い位置でもBSではなく、それはSS(サイドシュート)ですね。
そのSSとBSはその後の成長が異なるので、HTローズの場合は区別したほうがいいと私は考えています。