このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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2021年5月25日火曜日

私の うどんこ病対策

福岡バラ会のブログ「私たちのばら日記」に掲載された、衛藤さんの投稿「うどんこ病に蚊取り線香」に刺激されて、私も蚊取り線香でうどんこ病退治を試みました。結果は失敗です。でもおかげで、うどんこ病対策を見直すきっかけになりました。衛藤さん、その後の展開はいかがですか?

失敗したテスト結果を公開することに意味があるのか疑問ですが、レポートします。


うどんこ病対策に「蚊取り線香」

5/19 10:00 テスト開始

左:酷いうどんこ病が発生している新苗のベーサルシュート 直径10cmの蚊取り線香 時計 温度計

右:衛藤さんのビニール袋と異なり、私は70Lのポリバケツを被せた。蚊取り線香の殺虫成分ピレスロイド(ピレトリン)は、線香が燃える熱で揮発しバケツの上部に溜まると考えた。ちなみに、蚊取り線香の煙がピレスロイドを含んでいるのではない。

バケツの下部は空気が動くのでピレスロイドの濃度は下がるが、直径10cmの蚊取り線香1巻全部が燃え尽きるまでのおよそ7時間半この状態を保った。開始から2時間後に内部をチェックするため一時的にバケツを取り除いたが(写真:上左)内部の温度は26度C、湿度は49%で、バラには問題はない。

テスト開始時の症状 (画像クリックで拡大表示)

5/19 17:30(7時間半後) 17:00頃、蚊取り線香が燃え尽きたはず(時間は未確認)

期待に反して、この時点ではうどんこ病に対する蚊取り線香の効果は全く認められない。逆に、真上を向いていたステム上部が弱り始めているのか、僅かに左に傾いているのが開始時と比較すればわかる。

5/21 10:00(48時間後)

葉柄に付いたうどんこの量は僅かに減ったように見えるが、葉には多く残っている。何よりも、シュート全体がひどく弱ってしまい、蚊取り線香の真上の位置にあった葉はほとんど枯れてしまった。時間経過からして、いかにも「Na⁺チャネルの機能が壊れて枯れた」という印象(根拠に乏しい推測)。

この結果から、私の方法では蚊取り線香の効果は全くないと結論づけた。


私のうどんこ病対策

蚊取り線香によるうどんこ病対策は早々にギブアップ。今後は発症したうどんこ病菌の「除菌」と「予防」を分けて考えてみようと思う。

除菌

除菌は以前から使っている 「エタノール」の「うどんこ病菌は殺すが葉に薬害を与えない希釈倍率」について目処が立った。最後(21日)の写真の弱った枝葉、これをエタノール30%希釈で除菌したところ、3日後の今では見違えるほどに回復している。しかしエタノール30%希釈液ではコストパフォーマンスが悪いので、剪定鋏の除菌などに使っている「ベンザルコニウム塩化物液」も試してみたい。

ベンザルコニウム塩化物液はそれ自体でも強い殺菌力を持ち、医療機関や食品製造現場で器具の消毒・殺菌に使用されている「陽イオン界面活性剤」で、エタノールと組み合わせることでさらに病原菌の細胞膜を破壊(溶菌)する効果を高めるのではないか。コロナ対策でどこにでもエタノール消毒液が用意されているが、その多くはベンザルコニウムも添加されているーーというのがヒント。

ベンザルコニウムに期待するのは「陽イオン界面活性剤」としての働き。エタノール希釈液をごく細かい霧状で薄く散布するとうどんこ病原菌はそれを弾いてしまう。濡れた葉面を指先で撫でればいいのだが、厄介な作業なので「界面活性剤」にそれをやってもらおうという算段。ベンザルコニウムの濃度はテストで。幸いなことに実験台には事欠かない(笑)。

予防

散々悩まされてきて、うどんこ病対策のキモは「予防」だと痛感する。化学農薬の定期散布以外の方法はないものか。農薬には違いないがせめて 「有機農産物の日本農林規格 別表2に掲げる農薬」で認められた資材=還元澱粉糖化物液剤「エコピタ」+炭酸水素ナトリウム水溶剤「ハーモメイト」+パラフィン系展着剤「アビオンE」を、うどんこ病予防の観点からあらためて見直してみようと考えている。


「有機農産物の日本農林規格 別表2に掲げる農薬」

この表(天然物質由来農薬)の最初に「除虫菊乳剤及びピレトリン乳剤 」が掲載されていますが、蚊取り線香に使われているのは合成ピレスロイドで、除虫菊から抽出したものが農薬として有機農業に使用することが認められているのだそうです。

ピレスロイドは、光や酸素で速やかに分解され残効性が無いので家庭での使用は安全性が高いとされていますが、「殺虫剤の毒性一覧表 | 業務用殺虫剤の基礎知識 | KINCHO」によれば、ピレトリンの急性経口毒性 LD50(㎎/㎏)、急性吸入毒性LC50(㎎/m3)は、スミチオンとほぼ同等の毒性が示されています。


「デービッド丸」再登場

『うどんこ病対策を私はどうしようか。。』とぼんやり考えています。畑には「ツクシイバラ」が30株ほどあって、この時期はうどんこ病の最盛期。でもそのまま放置しても枯れることはなく年々成長し、秋には濃い紅色のローズヒップがたわわに実ります。 それを眺めながら、「うどんこ病に勝つ」必要があるのは私の場合はコンペティション・ローズ(競技バラ)のみ。ガーデンローズやエディブルローズは「うどんこ病と共生」しながらでいい・・のでは?と自問しています。

「いっそコンペティション・ローズ(競技バラ)の栽培をやめようか」とも思いつつ、これまで借り物だった動力噴霧器を返却し、新しく購入しました(笑)。前述の「有機JAS規格 別表2」の資材を使った実証試験を始めます。

これは師匠のデービッドさんから教えてもらった処方("デービッド丸"と呼んでいます)をベースにしたものです。

このブログの10年も前の記事ですが、「デービッド丸」を「うどんこ病の予防」という観点からあらためて見直してみるという目的の動力噴霧器です。



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