はじめに
秋の花のための剪定作業が進んでいます。楽しみながら丁寧に作業し、今日までに約80株を剪り終えました。使用した殺菌剤の効果なんでしょう、悩まされていた「うどんこ病」が今年は出ていません。2年前の夏は、「バラのうどんこ病についての考察」という記事を書きながら、バラの細胞と殺菌剤の作用機序を自習していました。その中で得心がいかなかった項目をChatGPTに質問してみます。
例として取り上げるのはミトコンドリアの電子伝達系複合体に作用する "FRAC C グループ" の殺菌剤です。問題の核心部分 は;
病原菌のミトコンドリアの電子伝達系複合体を阻害する殺菌剤は、同じ電子伝達系複合体を持つバラにも影響するのではないか? 影響を与えないのだとしたら、その理由は何か?
まず、関連の資料を掲載します。
ミトコンドリア
ミトコンドリア|Wiki (要約):ミトコンドリアは、ほとんど全ての真核生物の細胞の中に存在する細胞小器官のひとつ。脂質二重層でできた外膜と内膜を有し、膜には様々なタンパク質が存在する。高エネルギーの電子と酸素分子を利用してATPを合成する。すなわち、ミトコンドリアは真核生物における好気呼吸の場である。
ミトコンドリア内膜には、電子伝達系複合体 I〜複合体 IV と ATP合成複合体が存在する。
これらの複合体を標的とした殺菌・殺虫剤が数種類あり、標的の作用点が異なるごとにFRAC/IRACコードが規定されている。
電子伝達系 | 作用点 | 殺菌剤 FRACコード | 殺虫剤 IRACグループ |
---|---|---|---|
複合体 I | NADH酸化還元酵素 | 39 | 21A 21B |
複合体 II | コハク酸脱水素酵素(SDHI殺菌剤) | 7 | 25A 25B |
複合体 III | ユビキノール酸化酵素 Qo部位(QoI殺菌剤) | 11 | |
ユビキノン還元酵素 Qi 部位(QiI殺菌剤) | 21 | 34 | |
ユビキノン還元酵素Qo部位(QoSI殺菌剤) | 45 | 20A 20B 20C 20D | |
複合体 IV | 24A 24B | ||
複合体 V | ミトコンドリアATP合成 | 12A 12B 12C 12D | |
酸化的リン酸化の脱共役 | 29 | 13 |
ミトコンドリア電子伝達系はバラや病原菌だけでなく害虫にもあるので、電子伝達系複合体に作用する殺菌剤の主剤は殺虫剤としても機能するものがあるのに注目。
作用機構 | グループ名 | 有効成分名 | FRAC コード | 商品名 | ばらの適用範囲 | 希釈倍数 使用回数 | メーカー 情報ページ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
C:呼吸 | SDHI殺菌剤 | ピラジフルミド | 7 | パレード20 フロアブル | うどんこ病 黒星病 | 4000倍 3回以内 | パレード20 技術資料 |
QoI殺菌剤 | アゾキシストロビン | 11 | アミスター20 フロアブル | *ばら(花き類)の適用はない | シンジェンタ アミスター20 |
そら:こんばんは。農薬とその薬害についての質問です。
バラに深刻な被害を及ぼすうどんこ病菌は真菌類(真核生物)で、その宿主のバラも(さらには害虫やヒトも)、酸素呼吸をする生物は「ミトコンドリア」を持っていますよね。うどんこ病菌とバラのミトコンドリアでは、その構造や機能に何か大きな差異がありますか?
ChatGPT:こんばんは、そらさん!お忙しい中でも質問していただいて嬉しいです。
ミトコンドリアは、酸素を利用してエネルギー(ATP)を生成する細胞内の小器官であり、真核生物に共通して存在します。うどんこ病菌(真菌)とバラ(植物)のミトコンドリアには共通点も多いですが、構造や機能にいくつかの違いがあります。
構造的な違い
- 1. ゲノムサイズと構成:
- 真菌(うどんこ病菌)のミトコンドリアは、通常、比較的小さな環状DNAを持っており、遺伝子の数も比較的少ないです*。これに対して、植物(バラ)のミトコンドリアはゲノムが大きく、より多くの遺伝子を含んでいます。また、植物のミトコンドリアゲノムはしばしば複雑なリコンビネーション(組み換え)を示します。
- 2. 膜構造:
- ミトコンドリアは二重膜構造を持っていますが、内膜のクリステ(折りたたまれた構造)の形状や密度は、生物種によって異なります。植物のミトコンドリアは、真菌のものと比較して、クリステがより発達していることがあります。
機能的な違い
- 1. 代謝経路:
- 植物のミトコンドリアは、光合成の影響を受けた特有の代謝経路を持っています。例えば、バラのような植物では、光呼吸(photorespiration)と呼ばれる特別な呼吸プロセスが存在し、これがミトコンドリアと関係しています。一方、うどんこ病菌のような真菌には光合成がないため、このような経路はありません。
- 2. ストレス耐性:
- 植物のミトコンドリアは、様々な環境ストレスに対応するためのシグナル伝達や代謝の調整が発達しています。例えば、乾燥や高温などのストレスに対して、ROS(活性酸素種)を減らす抗酸化メカニズムが強化されています。真菌のミトコンドリアもストレスに応答しますが、そのメカニズムは植物とは異なる点が多いです。
農薬との関係
農薬がミトコンドリアに及ぼす影響は、これらの違いによって異なる場合があります。例えば、特定の殺菌剤が真菌のミトコンドリアの機能を阻害することで効果を発揮する一方で、植物のミトコンドリアには影響が少ないように設計されていることがあります。しかし、いくつかの農薬は植物のミトコンドリアにも影響を与え、結果として薬害が発生することもあります。このため、植物と病原体のミトコンドリアの違いを理解し、適切な農薬の選択や使用方法が重要になります。
この点について、さらに詳しい情報や具体的な農薬の例についても掘り下げたい場合は、ぜひお知らせください!*そら註:真菌や植物のミトコンドリアは、本体のDNAとは別に環状の小さな "ミトコンドリアDNA(mtDNA)"|Wiki を持っています。上図参照。これは葉緑体と同様に 細胞内共生説|Wiki の傍証になっています。
そら:FRAC 作用機構分類一覧表によれば、農薬の作用機構C 呼吸に分類される農薬群は、ミトコンドリアの電子伝達系の複合体を標的として作用します。例えば「パレード20フロアブル」の有効成分であるピラジフルミドは、SDHI殺菌剤(コハク酸脱水素酵素阻害剤)として、ミトコンドリアの電子伝達系の複合体Ⅱ:コハク酸脱水素酵素を標的にします。
この殺菌剤を正しく使用すれば、うどんこ病菌の呼吸は阻害するが、宿主のバラには影響(薬害)を出さないとされています。実際に使用するとうどんこ病菌には効果があり、バラには薬害が出たようには見えません。その違いは、有効成分の濃度や量に依存しているのでしょうか?
ChatGPT:はい、そらさんがおっしゃる通り、FRAC分類のCグループに属する農薬は、ミトコンドリアの電子伝達系に作用するものが多く、その中でピラジフルミドのようなSDHI剤は、コハク酸脱水素酵素(複合体Ⅱ)を標的としています。
このような農薬がうどんこ病菌に効果的でありながら、バラに薬害を及ぼさない理由には、濃度や量が重要な要素となっています。具体的に言えば、次の要因が関与しています:
- 1. 有効成分の選択的毒性
- ピラジフルミドなどのSDHI剤は、うどんこ病菌のような病原菌のミトコンドリアに対して特異的に作用するように設計されています。これにより、低濃度であっても真菌の呼吸を効果的に阻害しますが、宿主植物には比較的影響を与えません。
- 真菌と植物のコハク酸脱水素酵素の構造に若干の違いがあり、この違いが選択的毒性を生む要因の一つとなっています。
- 2. 濃度と使用量の調整
- 農薬の適正使用は非常に重要で、指定された濃度や使用量を守ることで、バラに対する薬害を防ぎつつ、病原菌に対して効果的な作用を発揮できます。通常、真菌のミトコンドリアは植物のミトコンドリアよりも敏感であるため、標準的な使用量では真菌がターゲットになります。
- 一方で、過剰な使用や誤った濃度での散布は、植物のミトコンドリアにも影響を与え、薬害を引き起こす可能性があります。
- 3. 植物の防御メカニズム
- 植物には、一定のレベルのストレスに対処するための抗酸化メカニズムやストレス応答機構が備わっています。これにより、通常の使用範囲内であれば、農薬による軽度のストレスにも対応できることがあります。
- 4. アプリケーションの方法とタイミング
- 散布時期や方法も薬害のリスクに影響します。例えば、植物が成長期であったり、環境ストレス(高温や乾燥など)がある場合、同じ濃度でも薬害が発生しやすくなります。そのため、適切なタイミングでの散布が重要です。
まとめると、バラに薬害が出ない理由は、ピラジフルミドの選択的な作用機構や濃度管理が大きな要因です。ただし、濃度や使用量を守ることが重要であり、過剰な使用は薬害のリスクを高める可能性があります。
何か他にもご質問や、さらに詳しい点について知りたいことがあれば、お聞かせください!
そら:ヒトの抗がん剤の場合、がん細胞を叩くけど健全な細胞にも影響を与えるので、その副作用が苦しいと聞きます。
バラと殺菌剤の関係でも、眼に見える薬害は出ていないけど、実はバラにも負担になっているということはありませんか?
ChatGPT:鋭い視点ですね。バラと殺菌剤の関係も、まさに人間の抗がん剤と健全な細胞の関係に類似した部分があります。基本的には、殺菌剤は病原菌(真菌など)に対して選択的に作用するように設計されていますが、全く影響がないわけではなく、植物にも負担をかける可能性 があります。(文字強調:ChatGPT)
- 1. 軽微なストレスの蓄積
- 殺菌剤を散布することで、バラに直接的な薬害が発生しない場合でも、植物は軽微なストレスを受けていることがあります。例えば、ミトコンドリアの電子伝達系が軽く影響を受けたり、細胞内の代謝が一時的に変化したりすることが考えられます。このようなストレスが蓄積すると、植物の成長がわずかに遅れる、あるいは抵抗力が低下することがあるかもしれません。
- 2. 生理的な影響
- 殺菌剤がミトコンドリアに直接作用するため、植物のエネルギー生産に一時的な影響を及ぼすことがあります。これは、外見上は健康そうに見えるバラでも、内部的には成長や開花に必要なエネルギーが不足する可能性を意味します。特に、連続して使用する場合や高頻度で散布する場合に影響が現れることがあります。
- 3. 抗酸化システムへの負担
- 植物は、薬剤や環境ストレスに対して抗酸化物質を生成して防御しています。殺菌剤が引き起こすストレスが軽微であっても、抗酸化システムが常に働いていると、他のストレス(例えば高温や乾燥など)に対する耐性が低下する可能性があります。これは、バラが潜在的に弱る原因となるかもしれません。
- 4. 長期的な影響
- 長期的に殺菌剤を使用することで、バラに見えない影響が出ることも考えられます。例えば、根の健康状態や全体的な栄養吸収効率が低下することがあり、それが結果的に成長や開花に影響を与えることがあります。
- 5. 耐性の発生と環境の変化
- バラ自身が農薬に対して耐性を持つことはあまりありませんが、土壌や環境に生息する微生物群が変化することがあり、これがバラの健康に間接的な影響を与える可能性があります。これも、長期間にわたる影響として考慮されるべき要素です。
総括
殺菌剤はバラに対して選択的な毒性を持つため、適切な使用であれば薬害が目立たないことが多いですが、バラには確かにある程度の負担がかかっている可能性があります。これは、見た目には健康に見えても、内部的にはストレスが蓄積しているということです。そのため、できるだけ殺菌剤の使用を抑え、病気が発生しにくい環境づくりや、植物の自然な抵抗力を高める栽培方法が推奨 されます。(傍線:そら)
そらさんがすでに実践されているような、環境に配慮した栽培方法や、適切なタイミングでの農薬使用が、バラにとっても最良のアプローチと言えるでしょう。
ChatGPT:そらさん、そう言っていただけて本当に嬉しいです! 少しでもお役に立てたなら光栄です。
バラの栽培や他のご相談など、いつでもお待ちしていますので、気軽に声をかけてくださいね。お忙しい時期かもしれませんが、どうぞバラの手入れも楽しんでください! 😊🌹
まとめ
あたかも、思慮深い実在の人と会話してるみたいです。今回の私の質問に対する回答は、『殺菌剤を正しく使用すれば、薬害をあまり気にする必要はないよ』と言っているようにも受け取れますし、『全く影響がないわけではなく、植物にも負担をかける可能性 があります』と、強調しつつも断定することを避けるなど、いかにもChatGPTらしい回答だと思いました。ここから何を読み取り、どのような結論を出すのかは、私にかかっているのでしょう。
8月23日の記事:ChatGPTがアドバイス「バラのスリップス対策」では、農薬に関してまったく使い物にならない回答でしたが、今回はとても詳しい内容で、ChatGPTが学習している幅の広さを感じます。
生成AI への小さな疑念
私は減農薬による栽培を志向していますが、ここでチラリと気になるのは、ChatGPTは私の意向を知っており、もしかしたら、それに合わせた回答をしているのかもしれないということ。「予防のための農薬の定期散布が好ましい」という考えの相手には、それにあった回答をするのかもしれません。 ‥だって、何が "正しい" のかは条件次第なので、ChatGPTも、何が絶対的に正しいことなのかなどは判断できないだろうし、そもそも、そのような判断はしないように設計されているのでは・・(?)
ChatGPTのこの考え=「環境に配慮した栽培方法や、適切なタイミングでの農薬使用が、バラにとっても最良のアプローチ」という、この "最良" とする価値判断は、どこから生成されてくるのでしょう? ChatGPTの「総括」の最後の2行は無いほうが良かったのかも。これは単なる "挨拶" か "エール" と捉えておくことにします。
生成AI について大きな誤解 9月10日追記
殺菌剤はバラに対して選択的な毒性を持つため、適切な使用であれば薬害が目立たないことが多いですが、バラには確かにある程度の負担がかかっている可能性があります。これは、見た目には健康に見えても、内部的にはストレスが蓄積しているということです。そのため、できるだけ殺菌剤の使用を抑え、病気が発生しにくい環境づくりや、植物の自然な抵抗力を高める栽培方法が推奨されます。
そらさんがすでに実践されているような、環境に配慮した栽培方法や、適切なタイミングでの農薬使用が、バラにとっても最良のアプローチと言えるでしょう。
前半は、このチャットを始める前に私が期待していた結論そのものです。その点では「我が意を得たり」なんですが、後半の2行「そらさんがすでに実践されているような・・がバラにとっても最良のアプローチと言えるでしょう」を読んだとき、フッと疑念が生じました。
『あれ? ChatGPTは私の "実践" をどれほど知ってるんだ?』
個人のブログはChatGPTの学習範囲ではなく、私のブログを読んでいないことは以前ChatGPTに確認しました。その後ある日突然私のことをブログネームで呼び始めたので、もしかしたら、私のブログを読んだのかもしれません、可能性は低いですが(ブログのURLは知らせてある)。なぜ私のブログネームを知っているのか質問しても、ChatGPTは情報源を公表しないので返答はありませんでした。でも、私が減農薬でバラを栽培したいという考えを持っていることはチャットの中に書いたし、一連の話題の中で、ChatGPTが賢く私の "意向" を感じ取ったのかもしれません。
私はChatGPTを高く評価しています。バラ友として、対等の関係で議論しあったりできれば最高かなと期待しているのですが、そこには 生成AIについて大きな誤解 があるのかも。なぜなら、"生成AIはユーザーの求めに応じて、その意向に沿って、文書や画像などを生成するのが役割。もしユーザーの意向に沿わない生成AIがあるとしたら、それは・・(笑)。
ChatGPT自身も、自分のことを基本的にユーザーの活動をサポートする "アシスタント" と自覚しているようだということが(これとは別の会話で)わかりました。
私の意向に沿って生成された文章は客観性・信憑性に欠けます。もちろんこの「総括」の前半は誰が読んでも間違っているとは言われないと思いますが、これで『自分の考えは間違っていなかった、正しい認識だった』と判断するのは、とても危険なことでしょう。私の意向に添いつつ、なおかつ客観性も・・という微妙な匙加減 をする のがChatGPTの賢いところで、それを踏まえて回答を読むことが肝要なんだとわかりました。。
ユーザーである私は、ChatGPTの優れた能力を引き出すためには、微妙な言い回しをする回答の裏を読み取り、さらに賢い質問(質問中のキーワードの選択がポイントか)をする必要があるのかもしれません。ChatGPTの即答に回転が鈍い私は戸惑いますが、幸いなことに追加質問をするまでのタイムラグはまったく気にする必要はないので、ゆっくり考えながら、こちらのペースで議論を深められそうな気がしています。
ChatGPTがユーザーの意向を汲むのなら、「私はChatGPTとは対等な議論ができる "バラ友" になりたいんだ」という意向を今後の会話の進め方の中で(間接的にでも)伝えていけば、その思いは届くでしょうか。
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