2月24日のレポート:「2022年 デービッド接ぎの経過 ー3 2ヶ月後 台木のカット」のその後の経過です。
このページでは、デービッド接ぎの台木の枝葉を残すか否かを考察します。
レポートが遅れましたが、右側の写真は今日から25日前4月1日の生育状態です。これら25株は4月中旬にオーナーのもとへ移動され、現在はさらに大きくなっているそうです。
預かった台木や穂木、培養土などは31株分でした。5株を失敗し、1株は今もお地蔵さん状態です。成功率は80%と低く、その原因については、私の失敗株と併せて別記事で考察する予定です。
デービッド接ぎ 接木をした日 12月25、26日
1 枝を残さないバージョン
脱線:新苗で "春" に勝負?
これらのHTローズは、今秋のコンテストへの出品を意識した栽培をします。まず、新梢を五枚葉5節でピンチして、花は咲かせず専ら光合成をする「同化枝」にして株の充実を図ります。そして、初夏に出るベーサルシュートをコンテスト用のステムに仕立てていきます。これが「新苗で秋に勝負」です。
でも、秋まで待たなくても「新苗で春に勝負」も可能なんではないか?
出品するには、花首から下のステム長が50㎝以上あるのが好ましく、そこに五枚葉が3節以上(多い方が良い)必要なんですが、脇芽や腋芽、副蕾を掻き取り「一本独鈷」に仕立てれば、その条件は満たすことができます。
出品するためのもう一つの重要なことは、開花をコンテスト当日に合わせることですが、1月中旬に接木し通常のように五枚葉5節でピンチすれば、開花はコンテスト期間よりも1〜3週間ほど遅れます。なので、12月に接ぐか、あるいは五枚葉5節ピンチをしなければ、これもクリアできます。これらの写真はコンテストまで一月以上もある4月1日の撮影なので、これを見ても、開花がコンテストに間に合うかどうかは問題ないことがわかります。
審査員の先生方はなぜかこの「新苗で春に勝負」を嫌われるようです。その理由が分からなかったので、意図的にこの「一本独鈷」を春のコンテストに出品したことがあります。審査員の先生方にもそれとわかるように5号鉢に植えたままで会場に持ち込んで、成株から切り出した花と一緒にして出品し、『どれが新苗の花かわかりますか? どう評価されますか?』と暗に審査員の眼力・見識を私が審査するという、実に生意気な、とんでもない出品者でした。
審査結果は・・。 まぁ、それはここでは書かないでおきましょう。たぶん審査員の方々には「見え見え」だったのだろうと思います。コンテストに出品し始めて間もない頃のことでしたが、「若気の至り」と言うか、私には楽しかった思い出です。
後日、審査員のお一人から聞いたご意見は、『一本独鈷を出品すれば、1本しかないステムが枝元から切られてしまって、その株はもう廃棄するしかない。そんなかわいそうなことをしてはいけない』というものでした。
『若すぎて花に品位がない』というようなご意見が返ってくるんだろうと予想していたので、『かわいそう』という言葉にはちょっと驚きました。
春の "三枚葉地獄" は一本独鈷で回避できる
それ以降コンテストのための「一本独鈷」は作っていませんが、春の「メルヘンケーネギン」や「ミスターコジマ」のように三枚葉地獄を呈する品種は、新苗の一本独鈷で地獄に堕ちるのを回避できるようです。
茎頂分裂組織での三枚葉や五枚葉の原基形成は、新梢(と言うより新芽)がまだ1〜2㎝と短い時点で決まるようだと推測しているのですが、葉原基形成やその後の細胞分裂をコントロールするホメオティック遺伝子などの遺伝子群の働きと、そのときの新芽の生育状態(養分の状態、気温や日照時間などの栽培環境)が、たまたま?うまくマッチするから、きれいな "葉序" になるのでしょう。 言うまでもなくこれは門外漢の推測に過ぎません:p
三枚葉地獄のない春の「メルヘンケーネギン」や「ミスターコジマ」は、株姿のバランスが良く別品種かと思う趣があります。実証栽培が不十分ですが、「新苗で "春" に勝負」には捨てがたい魅力を感じています。ポイントは『かわいそう』を避けることですが、コンテストに出品しないのならステムを切らないので、問題はなさそうです。
脱線が本論より長くなってしまいました:p 本論に戻ります。
2 枝を残すバージョン 左:台木カット直後 2月24日
台木の枝葉を残すバージョンは、切り落とすバージョンと比較して、発芽初期から新梢の伸びはやや遅かったのですが、でも新梢の太さ(逞しさ)はこちらの方がわずかに優っているような気がします。
台木の枝葉を残せば "お地蔵さん" は出ない
記憶が曖昧なんですが、過去の「枝残しバージョン」でお地蔵さんになった事例を思い出せません。過去のお地蔵さんは、たとえば、2017年3月7日「バラの接ぎ木 孫弟子そらの不覚」でも紹介していますが、台木の枝葉を残さないバージョンです。 また、デービッド接ぎを始めた頃は「枝残しバージョン」だけでしたが、その頃は「お地蔵さん」という現象そのものを知りませんでした。つまりお地蔵さんになる株は無かったと思います。
註: "お地蔵さん" 現象については3月15日の記事:「2022年 デービッド接ぎの経過 ー4 A苗 B苗 お地蔵さん」に書いています。
結論 「台木の枝を残すバージョン」は不要
「台木の枝葉を残しておく方が株の、特に "根" の活性が高い」というのは間違っていないと確信しますが、これらの生育具合の比較からわかるように、接木後にハウス内で養生する今の栽培環境では、デービッド接ぎの "台木の枝を残すバージョン" は不要 と結論づけました。
台木の上部をカットするメリット
- 接ぎ穂から出る新芽の伸びが、枝残しバージョンよりも早い
- テーピングが簡単になり、作業時間の短縮と、成功率のアップが期待できる
- 台木上部の枝を気にすることなく、接ぎ穂の芽の向きを自由に選択できる
- 台木をカットした部分で、形成層の左右の合致具合を目視で確認しやすく、この効果は大きい
- 後日に台木をカットする手間が省ける
- 接木後の養生が狭い場所でも可能で、管理も容易
デービッドさんは既に何年も前から台木の枝は残していませんから、私も今後はデービッド接ぎの台木の上部は切除することにします。台木の枝葉を残せばお地蔵さんは出ない ということは魅力的ですが、お地蔵さんを避ける方策は別に考えることにします。
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