このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2022年3月15日火曜日

2022年 デービッド接ぎの経過 ー4 A苗 B苗 お地蔵さん

春が来て、接木苗もグングン育っています。前回のレポートは2月25日でした。これまで生育が良い株を選んで掲載していましたが、『それでは誤解される』というバラ友の忠告に従って、今回は失敗事例もチラリと含めます。:p

「失敗」と判断した接木は、全114株のうち現時点で6株です。これは『まだ可能性はあるかも』という甘々の選択によるもので、「最終的に成功率90%になるかどうか微妙。もしかしたら80%か」という状況です。失敗事例は今後のために貴重なので、後日まとめてレポートする予定です。


バラ苗生産やその流通卸のみなさんは、バラ苗を生育状態によって「A苗」「B苗」に区別します。

    A苗: 順調に生育し、4月までに新苗として出荷できるし、もちろん大苗にも育つ
    B苗: 生育が緩慢で春に出荷できない。これは秋まで育てて大苗として出荷する
    
    お地蔵さん: 新芽は生きているが、なぜか生育が止まってしまっている
    
 HT「あけぼの」9株
 HT「エレガントレディ」6株

「あけぼの」は、多少のバラツキはあるものの、まずまずの生育ぶり。たぶん全株がA苗になる。9株も接いだのは、これが私の今年の「勝負株」だから。コンテストには参加しないが、一人で「新苗で秋に勝負」なのだ。:p

同じく勝負株の「エレガントレディ」。6株のうち1株(後列・左)を失敗し、「お地蔵さん」になっている。原因は「予期せぬ失敗」でレポートしているのと同じ一連の台木を使用したからと考えている。

それが顕著に出たのがHT「イーハトーブの風」。ネームプレートに青いシールを貼っている5株。母株は大手種苗会社から複数購入したのだが、その中の1株が根頭癌腫病になってしまい、急遽バックアップ接木を試みた。好きなバラなので、状態が最も良いと思う台木を使ったのだが、これが「裏目」に出た。

 HT「イーハトーブの風」7株

これら "問題ありの台木" は、元々は1年前に5号ロングスリット鉢に植え込んだものだったが、異常(根詰まり)に気づき、急遽6号に鉢増しをした効果で、なんとか全滅は免れた。青シール5株のうち、A苗2株、B苗1株、お地蔵さん2株。お地蔵さんの2株は、既に接ぎ穂が弱っているのがその色から推測できる。

青シールのない手前左の2株は、台木を接木3週間前に6号ロングスリット鉢に植えこんだもの。左の株は脇芽がブラインドになっているので掻き取った。これはA苗に育つだろう。

 HT「フロージン '82」5株
 HT いろいろ

「お地蔵さん」の原因は?

上左の「フロージン '82」の前列中央が「お地蔵さん」(画像クリックで拡大表示)。未練がましいが、まだ諦めたくない:p でも「お地蔵さん」のほとんどは、暖かくなるにつれてゆっくり枯れていく運命。ごめんなさい。

*註:『新芽が、枯れはしないけど成長もしない』というお地蔵さん。中には、数ヶ月後に動き出すものもある。バラ友・みのるさんの去年のお地蔵さんは半年眠り続けた後に目を覚まし、今は立派な株に成長しているそうだ。

この株は「イーハトーブの風」とは違う台木なので、「お地蔵さん」になった原因は同じではない。一言で言えば『接木が下手だから』なんだけど、それで済ませたら進歩は望めない。接木に失敗する原因は、接木技術の拙さだけでなく、穂木や台木の状態、培養土、温度管理など幾つもある。うまくいくときは簡単に思えるんだけどね。

2023年3月 追記

今年2023年の結果が見えてきたが、その結果から、お地蔵さんになる原因の中で最も疑わしいのは「低温」ではなかろうかと思うようになった。発芽した新芽が1㎝前後の頃に氷点近くの低温に遭遇するとお地蔵さんになりやすいようだ。

これを避けるには;

  1. "動き始めた芽" は接ぎ穂に使用しない
  2. 夜間・早朝の低温を避けるために、加温するなど相応の対策をする
  3. 低温に強いデービッド接ぎの「枝残しバージョン」で接木する
  4. 厳寒期(福岡では1月下旬〜2月中旬)を避け、時期を1ヶ月遅らせて2月中旬頃に接木する

このようなことしか思いつかないが、いずれにしても今シーズンは過ぎた。ハウスを暖房するのは難しいので、来年2024年は「枝残しバージョン」で接木するために、挿木で台木を作ろうと準備を進めている。

 イングリッシュローズ いろいろ
 シュラブなど いろいろ

これらはシーズン終盤(1月下旬)に接いだ諸々。残りものの貧弱な台木だったけど、このところ急に大きくなってきた。3月になって暖かくなったのと、施肥の効果だろう、平均すれば1日に1㎝のペースで伸びている。

 ER アンブリッジローズ 2月25日
 左の約20日後 3月16日

2023年3月 追記:
これらの接木苗は「お地蔵さん」にはならなかった。これが上記 4.の「2月中旬頃に接木する」という案の根拠。

施肥

これまでに使用したのは、五枚葉が展開し始めた頃からリキダス|ハイポネックス と、マイローズばらの液体肥料|住友化学園芸 を、いずれも規定濃度の倍に薄めて灌水時に2回。

それと、五枚葉5節ピンチ時(写真・上右)に、パワフルアミノ|昭光通商アグリ を、置き肥として10㌘。

"パワフルアミノ" は、福岡県田主丸のバラ苗生産農家・バラ息さんに教えてもらった肥料。私はこれをバラ息さんのご近所の「スワ肥料店」09437-2-3624 さんから購入しています。「スワ肥料店」は、園芸が盛んな田主丸地区で果樹・園芸農家を対象にした専門店で、この10年間パワフルアミノはいつも店舗の真ん中の目立つ場所に山積みされており、頻繁に売れているようです。でも、メーカーの 昭光通商アグリ㈱のサイト には、なぜかこの製品の紹介がありません。特定のユーザー向けなんでしょうか?

指定配合肥料
生産業者保証票
肥料の名称 光有機入り粒状肥料ふ631号

保証成分量(%)

  窒素全量        6.0
    内アンモニア性窒素 3.0
  りん酸全量       3.0
    内く溶性りん酸   1.3
    内水溶性りん酸   1.0
  加里全量        1.0

原料の種類
(配合原料)
副産複合肥料、植物油かす類、硫酸アンモニア、骨粉質類<蒸製骨粉>、化成肥料、硫酸加里

備考:1重量割合の大きい順である。
   2<>内は骨粉質類の内容である。
   3蒸製骨粉は豚および鶏に由来するものである。

記載されている説明は、画像クリックで拡大表示されます。

パワフルアミノの肥効

N:P:K=6:3:1 で、バラが好み肥効が早いアンモニア態窒素が3%含有されています。バラ息さんのブログ「いぶし銀のバラ屋」に、これを実際に使用されている写真があり、その肥効に驚かされます。

  • 2月21日 バラの芽接ぎ苗鉢上げ中
    バラ息さんは "T芽接ぎ" です。芽はまだそれほど動いていません。

  • 3月13日 いっぱい食べてばい
    この時の新芽の大きさを見てください。3月中旬に、まだこんなサイズです。
    私のより1月も遅れているじゃないか:p
    バラ息さんはちょうど今の時期に「パワフルアミノ」を与えています。
    施肥量は30〜40㌘/12㎝深ポット はあると思われ、かなり大量です。そして、

  • 3月25日 鉢上げ苗の間隔開け作業
    「パワフルアミノ」に含まれる菌類由来でしょうか、白い菌糸が広がっています。
    新梢はまだ短いですが、"間隔開け" は早めなんですね。

  • 4月08日 いよいよ出荷
    なんと、施肥から1ヶ月も経たないうちに出荷できるサイズにまで育っています。「パワフルアミノ」は全部が溶解したわけではなく、まだその形が見えてます。出荷後まで肥効が続くようにとの配慮なんでしょう。

同じ株を記録したものではないから時期の誤差はある としても、あるいは肥料だけでなく他に要因があるのかもしれないけれど、それにしても素晴らしい生育です。培養土 はシンプルなように見えるんですけどね。

有機質(特にアミノ酸)を含む肥料は、成分量 N:P:K の数値だけでは肥効の判断できないみたいだと思います。

『プロに学ぶ。でもプロの真似はしない』 ・・と、真似したくてもできない自分に言い聞かせる:p


五枚葉5節ピンチ

新梢には、まず三枚葉が2節出て、次に五枚葉が5〜6節展開し、また三枚葉が出て "結蕾" します。株を育てるために、これは開花させません。五枚葉を5節残して、それより上はピンチします。

 なぜか五枚葉が展開しないまま結蕾している
この後ピンチした
 パワフルアミノ 10㌘
量はバラ息さんより少ないが、2〜3回に分けて施肥する予定

この2株は 接ぎ穂の芽が180度逆向き になっています。デービッド接ぎのテストの一環なんですが、結果はどちらでも同じでした。ポイントは、前掲の「アンブリッジローズ」のように、接ぎ穂の芽が上向きになるように接ぐ こと。

この新梢は "同化枝" で、作られた糖はベーサルシュートを出すためのエネルギーを供給すると同時に、新しい細胞を形成するための多種・多様な有機物の骨格の中心になる "炭素" の供給源になります。とても重要な働きをしますが、この枝を秋まで残しても大きく育つことはなく、良い花も咲きません。

HTの場合はベーサルシュートが出揃う7月頃には切除されることになります。シュラブやフロリバンダは残してもいいのですが、その間にベーサルシュートが大きく育つので、来春の剪定では切り落とされることになるでしょう。

花を咲かせることもなく、株のための『自己犠牲』と言うか、健気な役割ですね。それを "強制" している悪いヤツは私ですが:p

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