これは3月15日の「バラの 芽接ぎ挿し 1ヶ月後」の続編です。2月8日に芽接ぎ挿ししてから50日後、その結果が見えてきました。
これらは、バラを増殖することが目的ではなく、「芽接ぎ挿し」のテストです。テストにはイングリッシュローズの「ウォラトン・オールド・ホール」と「ラジオ・タイムス」の2品種を使いました。芽接ぎの方法は、2月8日の記事「バラの 芽接ぎ挿し」に書いています。
比較対象として、デービッド接ぎ(枝残し/無し) で接いで 挿木 というパターンも試しています。
ウォラトン・オールド・ホール Wollerton Old Hall
内容:左から
- デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木
- デービッド接ぎ(枝残し) で接いで 挿木 台木上部のカット3月15日
- F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 台木上部のカット3月22日
- 同上
- F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 台木上部のカット3月15日
- 同上
考察
- 「F芽接ぎ挿し」よりも「デービッド接ぎ挿し」が好結果を示した。
- 「デービッド接ぎ挿し」は、枝残し、枝無しに有意な差はなかった。
- 根量は、写真の拡大率が異なるので分かりづらいが、6本ともほぼ同じ。
- F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)は台木上部をカットするタイミングが重要に思える。
- 挿し穂基部のカルスから発根しているのではないことがわかる。これは岐阜大学 応用生物科学部 福井教授の「挿し木の基本」で指摘されているとおり。私はカルス(未分化の細胞群)から根の組織が分化するのかと誤解していた。
- F芽接ぎはいわゆる「タケノコ芽」が出て、このような芽はこのままでは今後の成長もいささか怪しい。この短い挿し穂(台木)に内包している養分だけでこれだけの量の根を出したのだから肥料不足にもなるだろうと、新葉の展開を待たず、肥料分を含む培養土 に鉢上げした。
ラジオ・タイムス Radio Times
内容:左から
- デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木
- F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 3本 芽接ぎ挿しに失敗
考察
- 「デービッド接ぎ挿し」(枝無し)は、発根量は少ないものの成長している。
- 「F芽接ぎ挿し」は3本ともに失敗。貼り芽が枯れてしまった。
- 挿し穂基部から不規則に「褐変」が始まっている。 これは、基部の細胞が壊れたことや貼り芽が枯れたことで発生した "ポリフェノール オキシダーゼ"(酸化酵素)の働きでは?と推測している。
- 発根量はウォラトン・オールド・ホールよりも少ない。これも、挿し穂の基部先端よりむしろ芽抜きした部分から発根している。基部に「縦の割れ目」を入れていないのは拙かった。
失敗の原因
- この「ラジオ・タイムス」は、「ウォラトン・オールド・ホール」よりも生育が悪い母木だった。
- 「ウォラトン・オールド・ホール」は台木の枝を3月15日と22日にカットしたが、「ラジオ・タイムス」は意図的に残した。20日頃から台木の新芽が急に伸び始め、それと期を同じくして貼り芽が枯れ始めた。慌てて台木上部をカットしたが、既に後の祭りで、結局この3本はゴミ箱行きとなった。
結果 『芽接ぎは大嫌い』(苦笑)
成功率90%になりそうなデービッド接ぎの好調さと較べて、F芽接ぎの不調がヤケに目立って、今年は心が晴れない「暗い春」だった。失敗の原因を穂木や台木のせいにしているが、私の方法はどこか間違っているのかもしれない。
そもそも、F芽接ぎの芽の成長をデービッド接ぎのそれと同列に比較しているのが間違いなのかも。芽接ぎは初期の生育が切接ぎよりも緩慢なのではないか。思い返しても、F芽接ぎ(主にスタンダード仕立てに使用)の新芽がデービッド接ぎと同じように伸びた記憶がない。いずれもかなり時間が経ってやっと成長し始めるという事例ばかり。「芽」と「接ぎ穂」という構造的な差から、それはあり得ることかと思う。
でも、以下のような例外もある。
左:台木は「メルヘンケーニギン」の成株で、そのステムに「あけぼの」を芽接ぎした "stepmom 接木" のテスト。同時に別株でデービッド接ぎも試みたが、デービッド接ぎの生育を10とすると、これはそれよりも若干劣る7程度。でもこの新梢は実用の範囲内。
この株には3芽接いだが、他の2芽は生育がやや遅れている。穂木の「あけぼの」に問題はないはずなので、接ぎ方が悪かったのか。バラ友によれば、「拒絶反応が出ているのかも」とのこと。どうなんだろう?
「台木と穂木の "相性" というものがある」というのは、バラ苗生産者から聞いたことはあるけど。その点、ノイバラ(ロサ・マルティフローラ)は多くの栽培品種との親和性が良い優れた台木品種だが、長尺枝を得ることを優先している私の台木はノイバラではないことも気になる事ではある。今回の芽接ぎ挿しに使った台木もノイバラではない。
右:これは、2月7日の「バラの芽接ぎ 方法を見直す」で取り上げた芽接ぎのその後。台木は、芽接ぎに失敗した「ラ・マルセイエーズ」の逆面を使用し、それに「手児奈」を芽接ぎした。同じ台木なのに、採穂して4〜5日経過して弱っていた「ラ・マルセイエーズ」は失敗、芽がぷっくりと赤く膨らんでいた「手児奈」は、デービッド接ぎに見劣りしない生育ぶり。芽接ぎしたのがデービッド接ぎより1ヶ月も遅い2月7日だったので、現時点でのこの新梢の大きさは "Good !"
これら(特に上右の事例)がF芽接ぎの正常な発芽と新梢の展開なんだろう。とすると、やはり私の方法はどこかが間違っているのだと思わざるを得ないが、どこに問題があるのだろうか。
芽接ぎ挿し まとめ
- 接木して挿木する「接ぎ挿し」は、私の方法では 芽接ぎよりもデービッド接ぎが好結果 を示した。
これは実栽培に利用できそうなので、「挿木」との生育差や、どの季節も「接ぎ挿し」ができるかなど、今後もテストを続ける。 - 芽接ぎ挿し失敗の原因は、挿木よりも芽接ぎに問題がある。
- テスト数が少ないが、デービッド接ぎ挿しの「枝残しバージョン」に特に優位性は認められなかった。
これは「接ぎ挿し」に限ったことではない。デービッド接ぎの「枝残しバージョン」が効果を発揮するのは、接木する前から台木に活性のある葉が付いていて、接木後に厳寒の屋外で株を管理するという条件に合致した場合に限られるようだ。 - 「芽接ぎ挿し」の場合も、台木(挿し穂)の「枝残しバージョン」がどの程度効果があるのか、テストを重ねる必要がある。6月の「緑枝・接ぎ挿し」では、台木、接ぎ穂(芽)、あるいはその両方に葉を残すバージョンがあり得るので、楽しみ。
- 「親和性」を考え、畑に放任しているノイバラを台木に利用できるよう、急遽手入れを始めた(笑)
- 「芽接ぎ挿し」はもちろん「芽接ぎ」は、台木も穂木もより充実した枝を使用することが 特に 重要。
接ぎ挿しだけでなく、デービッド接ぎや芽接ぎを成功させるには、何よりも台木と穂木が充実していることが重要
このことは何回書いただろう、重々承知しているつもりなのに、あいも変わらず同じ失敗を繰り返している阿呆。
『自分は芽接ぎが下手なんだ』と痛感したが、芽接ぎはあの小さな芽の切片を扱うのだからとてもデリケートな接木手法なんだと気づいた。これが今シーズン最大の収穫かな。
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