このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2022年2月8日火曜日

バラの 芽接ぎ挿し

シーズンの最後に「芽接ぎ挿し」を試みます。
今回の「芽接ぎ挿し」はバラを増やすのが目的ではなく、方法を確認しながら、「芽接ぎの作業を楽しむ」というものです。


概要

  • 芽接ぎ挿しの台木にする枝は、元気よく育っているものであれば品種は特に限定されるわけではない。ノイバラがあればもちろんいいし、シュラブやツルバラでもいい。ただしモッコウバラは不適なんだそうで、一度試したことがあるが、失敗。
  • 今回使ったのは、地植えにしている原種系(ツクシイバラ)のハイブリッド種。放任していた株で、枝先には葉が残っていたが良い状態ではなく、既に多くの芽が動き出している。
  • 挿し穂(台木)にする枝は去年伸びたシュートを使う。
    岐阜大学 応用生物科学部 園芸学研究室 福井博一教授の「種苗生産学」の講義内容:「挿し木の基本」によれば、『植物の発根能力は、植物体の齢(若さ)と密接な関係があり、齢が若いほど発根能力が高い』のだそうだ。
  • 接ぐ品種は、イングリッシュローズの「ウォラトン・オールド・ホール」と「ラジオ・タイムス」の2品種。いずれもリッチェルの8号バラ鉢で栽培中の株から、接木作業直前に採穂。
  • 芽接ぎ挿しの他に、比較対象としてデービッド接ぎ(枝あり/無し) も挿木する。

  • 台木にする枝は前日に切り一晩水に入れておく。挿し穂の長さは20cm前後。1節=3cm程を用土に挿す。挿し穂の先端は「片クサビ型」(写真・下左)。
  • 2節目に接木し、接ぎ芽より上の枝と台芽は残す。ただしデービッド接ぎ(枝無し)は例外。
  • 接ぎ芽より下の台芽は「芽抜き」=芽をナイフで削ぎ取る。

  • 用土は「鹿沼土」単体の微塵抜き。
  • ビニールポットのサイズは4X5X深さ8cm。挿し穂の基部先端とポットの底面の間は5cmなので、発根したら早めに鉢上げする。
  • 発根を促す植物ホルモン「オーキシン」の製剤「オキシベロン®液剤」の2倍希釈液に、挿し穂基部を10秒ほど浸漬してから挿す。
  • 「底面給水式」(水を深さ1cm入れたバットにポットを並べる)で、水の腐敗防止に珪酸塩白土の「ソフトシリカ・ミリオン」を混入。
  • この時期、灌水(水やり/水換え)は必要無い。バットの水が徐々に減っていくが、それが挿し穂の根の成長に好都合なので、しばらくは(培土が湿っているはず)補水しない。

  • 最低気温2度C程度の無加温ハウス内で養生。できるなら12〜24度Cの範囲で管理。それが無理でも、乾いた寒風(木枯らし)に吹きさらされることがないよう注意。
  • 挿し穂(=台木)を触らない。根よりも芽が先に伸びる(発芽しても、まだ発根していない)。台芽が伸びても放任。
  • 接ぎ芽から出た新葉が5cmほど伸びてから、接木テープの上で台木をカットし、薄い液肥を与え始める。

内容

F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)の方法は、2月7日の記事:「バラの芽接ぎ 方法を見直す」を参照してください。

写真上左:曲がっている台木の凸面に芽を貼ったので、台木と芽の上部が密着しない。やむをえずテープを二重に折って力で締め付けようとしたけど、「ニューメデール」は伸びるので、その部分だけ4重にすれば良かったのかも。

YouTubeで見た海外のアマチュアの事例ですが、接木テープではなくデンタルフロス(歯間糸)で、芽を台木に縛りつけている人がいました。芽の肥大に対応できるのか気にはなるけど、そのような自由な発想、何より "デンタルフロス" というのがユニークでいいな😁と思います。自分に合った方法で接木を楽しむのがイチバン。

ウォラトン・オールド・ホール Wollerton Old Hall

F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 4本
デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木 1本
デービッド接ぎ(枝残し) で接いで 挿木 1本

これは旺盛に伸びる CL(クライミング)品種なので、実栽培ではあえて接木する必要はありません。「ツルバラをノイバラに接木する」のはヘンな話ですが、でも今回は繁殖が目的ではなく「芽接ぎ挿しのテスト」です。手持ちの他の品種は既に芽が動いていて、穂木にする適当な枝がありませんでした。

ラジオ・タイムス Radio Times

F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 3本
デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木 1本

イングリッシュローズが好きな人は多いけど、これを持っている人は余程の "通" だろうと思っていたら、福岡バラ会の会員には(私が知っている範囲で)お二人もいらっしゃって、ちょっとびっくり。お二人とも素晴らしい栽培者で、さすがです。 ・・って、これは間接的な自慢話になるのか(爆)

考察:挿し穂(台木)は長く

写真上左の接ぎ芽の上の赤い突起は、小枝の切除痕。ここから新しい小さな芽が出始めています。先端の裏側にも芽があります。これが「芽接ぎ挿し」ではなく単なる「挿木」なら不要(無駄)かもしれませんが、この場合はそれらを含む枝を残しておく方がベターと考えています。

その理由は(何度も書いていますが)枝に内包されているエネルギー(糖)の提供と、発根に必要な植物ホルモン・オーキシンの生合成、つまり挿し穂(=台木)全体の活性を維持し、カルスの生成=発根と発芽を促すためです。この「挿し穂は長い方が発根と発芽が良い」というのは、ずっと昔に多くのバラ仲間と一緒に実証試験をしたことがあり、間違いありません。その一例:「バラ 秋の挿し木の鉢上げ」

接木を挿木する

バラの切り花生産者に向けた苗(ミニプランツ)を生産している会社では、5cmほどの長さの台木(例えば、ロサ・オドラータというオールドローズの "枝" が使われる)にシリコンチューブを使って接木し、それを6cm角のロックウール・キューブに挿し木します。

これは、挿木は発根し接木もつがったものの、何らかの理由で生育しなかったミニプランツです。

私はシリコンチューブを使う接木の経験がないのでその方法に興味があり、廃棄されているものをゴミ箱から拾い出して(笑)撮影させてもらいました。

台木は短く、それと比べて長い接ぎ穂が「斜め接ぎ」されチューブで固定されています。接木方法を見るために、チューブは切って取り除いています。

接ぎ穂の枝は最初からあったものでしょう。多くの株を作る必要がある現場ではこんな部分も使うんですね。枝が分岐する部分にはいくつかの潜芽があるので、悪い選択ではないのかも。

でも、これが「芽接ぎ」ではないのはなぜなんでしょう? たぶん、効率化のためにこの接木は機械を使って接いでいるのでしょう。機械接ぎには、芽接ぎはデリケートすぎるのかも。

台木(挿し穂)の長さは1節(5cm程度)です。その主な役割は「根」を作ることなので、それでいいのでしょう。挿木培地のロックウール・キューブには給水パイプが設置されていて、発根に最適な水分になるよう自動灌水されます。

このように、技術と設備があれば台木にする挿し穂は短くてもいいのですが、設備は無いけど「得率」など気にしなくていい私たちは、挿し穂は長い方が好結果につながります。私の「芽接ぎ挿し」がうまくいくかどうかはわかりませんけど。:p


シーズン終了

今シーズンは「接木」と栽培品種や台木(母木)の「挿木」を、それぞれ100本ほどしたことになります。
予定より増えて、保温のためのトンネルに収容しきれません(嬉)。結果はわかりませんが、楽しかった。

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