私が住んでいる九州北部では、接木の台木と穂木が癒合することを "つがる" と言います。
昨秋「芽接ぎ」した8株の新芽の動きが芳しくありません。旺盛に新芽を伸ばす「デービッド接ぎ」に較べて、どうも うまくつがっていない ようで、8株の中には頼まれて接いだものもあり、心配です。このままではマズイと思い、つがり具合をチェックしました。以下はその記録です。
芽の上にテープが巻かれているのが元の状態。慎重にテープを外して芽の様子を調べ、その後芽の上を避けてテーピングし直しました。
フラゴナール(Delbard)9月26日 4株
4-1
8株の中でこの株だけが芽が赤くなってきたので、1月27日に台木の首を切りました。
この4-1は、台木に対して芽の切片のサイズが他のものより大きく、台木からはみ出しているように見えます。このような大きな芽は接いでいないはず。芽の切片の基部が接木テープを噛み込んでいるので切片が肥大したのではと思われますが、危なっかしいほどアンバランスな感じがします。
同じ穂木を使った他の3株の芽がまだ色づいていないのに、これだけが赤くなり始めている理由もわかりません。他の株は芽の上のテープが二重巻きになっているのに対し、これは一重です。もしかしたらその差なのでしょうか。
左の写真が首を切った1月27日の状態です。今日で6日経ちましたが、芽がやや大きくなってきているように見えるのは気のせい? 脇芽ができているようです。 写真をクリックすると拡大表示されます。
4-2
4-2は、テーピングの際に芽が横方向にズレてしまったようで、芽の切片の台木に対する左右の間隔に差があります。 特に、向かって左側は芽の表皮が台木の表皮に被っています。形成層もズレているはず。でも、何とか踏ん張ってくれているようです。
4-3
これは、芽の切片が台木の切れ込みよりも小さなパターンです。かなり差があるので、台木の形成層と芽の形成層が合致するのか心配になる程ですが、台木の切り込みが浅いので、その分だけ幅広の形成層が出た結果だろうと思います。
4-4
4-2とは逆に、芽の切片が右にズレています。台木の縦の黒い線が形成層の名残。一部だけが芽の形成層と重なっているようです。芽の切片の上部は台木の切り込みよりも長くて、その部分が僅かに黒くなっています。芽の切片の基部が2〜3㎜長すぎました。
これも芽の上に巻いたテープが二重巻きになっています。「デービッド接ぎ」の場合テープが二重巻きになっても新芽はそれを突き破って発芽するのですが、これは明らかに新芽がテープを嫌がっている形になっています。
「デービッド接ぎ」の発芽力と、芽接ぎのそれを同じに見てはいけないのでしょう。一般的な芽接ぎの方法では芽の上にテープを巻きませんが、それはこのような理由なのかも。
ラ・マルセイエーズ(Delbard)10月25日 2株
2-1 失敗
芽が枯死しています。癒合することなく、容易に剥がれました。台木側の組織が変化しているのに対し、芽の組織には変化が見られません。原因はわかりませんが、芽接ぎ後の早い時点で枯れたのでしょう。
上右の写真にはミイラ化している芽の切片が見えていますが、このように台木の切り込みが芽の切片よりも幅広になっているのは初めからではなく、芽が枯れたので台木がそれを嫌がって、避けるように修復しようとしたのではないかと思われます。
この「ラ・マルセイエーズ」2-1 の接ぎ方は他とは異なる部分があります。それは「台木の芽の位置に穂木の芽をあてがう」ということ。失敗したけど、これは悪い着想ではないと思っているので、今後再チャレンジです。
2-2 葉柄の基部を残す
2-1と同じ穂木から芽を採りましたが、この2-2は「葉柄の基部を残す」方法を試しています。この「ラ・マルセイエーズ」は、福岡バラ会の秋のばら展に展示された小林 彰先生のバラです。展示された開花枝なので、当然ながら葉が付いています。
切り残した葉柄は5㎜程度。その上からテープを巻いています。芽接ぎの場合、芽や葉柄の上にはテープを巻かないのが一般的でしょうが、「ニューメデール」を使う場合はどうなのか? というへそ曲がりなテストです。
テープを外すと、枯れた葉柄も一緒に剥がれ取れました。
この2-2は今回の中では上手くいっている例ですが、私のこのような方法では、葉柄を残す意味はわかりませんでした。
台木の切り込みと芽の切片のサイズはこの事例が最適だろうと思います。残した葉柄がテープで押さえつけられていて、それが芽の成長の邪魔になったようにも見えます。もし葉柄を残すのなら(その意味を理解できていませんが)、その上にテープを巻くのはしないほうがいいと思いました。
パパメイアン(Meilland)11月2日 2株
この芽接ぎの経緯は、2021年11月2日の記事:「パパメイアン」の芽接ぎ に書いています。
2-1
台木の切れ込みと芽の切片の左右のサイズがぴったり合った例です。縦方向は芽の方が長すぎます。これは手先が不器用な上に作業時に老眼鏡を忘れたからで、ズレているのに気付いても『ちょっとぐらいなら、ま、いいか』とやり過ごす私の悪癖なんですが、でも、もしこの芽が今後成長したなら、「細かいことにこだわるな」ということになるのかも。今日の時点ではまだ何とも判断できません。
2-2 葉柄の基部を残す
2-1がジャストサイズなのに較べて、これは芽の切片が小さいケースです。意図的にそうしたのではなく、「芽を切り取る幅が狭かったのに、台木を切る幅が広すぎた」という結果です。
これを避けるには;
- まず、サイズの変更ができない「芽の切片」を切り取る
- その幅を意識して、それより広くならないよう台木をカット。切りすぎた台木の修整は無理なので注意。もし台木の切り幅が狭かったり短かったら、二度切りして修整する
という方法が良さそうです。「台木は二度切りが可能」というのがミソです。
これも5㎜程度の葉柄を残し、その上からテープを巻いています。
テープを外しても黒化した葉柄は落ちませんでした。これも「ラ・マルセイエーズ」2-2と同様に、葉柄を残す意味がありません。
そして、接合部にかなり多量の(と感じる)白い物質が付着しているのに驚きました。これは何でしょう?
たぶん樹液に含まれる塩類、特に「硝酸塩」が析出したのではないか?と思うのですが。。
芽の上の黒いシミは気になるものの、残っている葉柄を取り去り、白い物質を拭って、芽が露出した状態になるようテープを「たすき掛け」(後述)に巻き直しました。
現時点での まとめ
芽接ぎに関する今シーズン最初の記事:2021年9月26日「バラの芽接ぎ」の冒頭にも書いていますが、私は芽接ぎに習熟しているわけではありません。なので、現時点でのこのような生育状態をどう評価していいのやら。
元気のいい新芽が伸びている「デービッド接ぎ」と較べると、なんとも心許ない気がします。
このような経験(心配)もまたバラ栽培の楽しみの一つと自分に言い聞かせつつ、この記事を書いています。
芽接ぎと、その台木をカットする、適切な時期
コヘレトの言葉 3 何事にも時があり 天の下の出来事にはすべて定められた時がある。
© 共同訳聖書実行委員会 1987,1988 © 日本聖書協会 1987,1988
1 芽接ぎの時期
この項目は「書きかけ」です。経験と情報が足りず、まとめることができません。今後1年間、できるだけ多く「芽接ぎ」を試してからにしようと思います。すみませんが、それまでは「宿題」とさせてもらいます。
2 台木をカットする時期
① バラ息さん(T芽接ぎ)の場合
ブログ「いぶし銀のバラ屋」「芽接ぎ苗の接がり確認をしています」
この時期の芽の成長程度について、バラ苗を生産しているバラ息さんのこのページに実例写真があります。
バラ息さんは「T芽接ぎ」ですが、2月11日でこの程度の芽の大きさ。これが4月上旬には新苗として出荷されるまでに成長するのだから、私の芽もまだ可能性はありそうと思いたいのですが、どうなんでしょう。
このページでバラ息さんは次のように書いています。一部を引用;
昨年、秋に接いだバラの芽接ぎ苗の接がり具合を確認しています 写真のように、芽が赤ければ接がっている証拠 になります 接がっている芽接ぎ苗を鉢上げしたり、地面に植えたりできます その時、接いだ芽が伸びてきたら、おおもとであるバラの台木の頭を切り落とします そうすると、接いでいた新芽がどんどん生長して、今年の春に花芽をつけるんですよ
② boketanさん(貼り芽接ぎ)の場合
boketanの"恋華日和"「新苗で秋に勝負 1月」から一部を引用;
台木上部をカットするタイミング・・・2009年は接いで1週間後(台芽が動いていない)、2週間後(台芽も接いだ芽も動き始める)、1ヶ月後(台芽を芽カキで制限しつつじっと待機)にそれぞれ台木上部をカットしてみましたが、結果はほとんど変わりませんでした。接ぐと同時に台木をカットするより、ある程度の期間残してやって、台芽を少し伸ばしてやった方が、発根が促進されるようです。いずれにしても、接いだ芽が生きていて1ヶ月経っても枯れないようでしたら、下の写真のように芽の直上でカットしてカルスメイトを塗っておきます。
- なるほど。私の株は「フラゴナール」4-1 以外はまだ芽が黄緑色のまま。芽は秋よりも大きくなっているが、まだ動き始めてはいない。この時点で頭(首)を切るのは時期尚早かも。この後1〜2週間は芽の色を観察しながら、赤みを帯びてきたら台木の首を切ることにする。台木下部の芽は芽カキを続ける。
- 「カルスメイト」を購入。「トップジンMペースト」は持っているけど、殺菌成分は不要、と言うか、これは「液垂れ」しやすく接木した部分に流れると有害で、過去に痛い経験をした。
以前使っていた「バッチレート」も殺菌剤(有機銅塗布剤)なので、これらは剪定痕に使用し、接木に使うことはしない。
テーピング
今回の作業で最も勉強になったのは「テーピング」についてです。
- 接木テープが伸縮性のある「ニューメデール」でも、「芽の上にはテープを巻かない」のが良さそうだということは既に書きました。「デービッド接ぎ」と「芽接ぎ」のテーピングを同列に考えるのは拙く、「芽接ぎ」は接木テープを破って発芽するほどの芽の力は無いように思われます。
- 「ニューメデール」はテープを引き伸ばしながら巻きつけていくのですが、この「引き延ばす」という動作で芽に横方向の力がかかってズレが発生します。芽の切片がズレないようにテープを巻くにはどうすればいいでしょう? 手先の器用な方は難なくできることでしょうが、そうではない私は巻き方を工夫する必要がありそう。テープを引き延ばすタイミングと、その時に芽を抑えている指の位置がポイントのようです。
- 新しくテープを巻いた「フラゴナール」の4-1から4−4はテーピングが下手な事例で、芽の横っ腹が露出していますね。最後に巻いた「パパメイアン」は巻き方が異なり、この巻き方が綺麗で無駄がありません。芽だけをテープから外していますが、これは下から巻き始めて上まで巻いたら、続けて下に向かって「たすき掛け」に巻いて、終端はテープを引きちぎって止めています。
- ある接木職人さんは、(私より)かなり緩く巻いて、上まで巻いたら折り返して斜め下に向かって巻くことを思い出しました。それを見たとき『折り返して二度巻きするのは無駄な動作では?』と思いましたが、「ニューメデール」といえども私のようにキツく(硬く)巻くのは避けた方が良さそうです。テープで締め上げなくても台木と穂が密着する、そのような切り方が好ましく、「やや緩るめに巻いて、最後にたすき掛けする」のがコツなのかも。
- 私の接木テープは25㎜幅ですが、幅が広すぎると思ったので、あらかじめ半幅に切って作業しました。芽接ぎの場合はその方が断然やりやすいですが、幅が狭くなった分テープが伸びやすく、締めつける力は弱くなります。
- 芽接ぎしてから2〜3ヶ月が経過しているので接合部は癒合していると思われ、テープは不要なのかも。でもその部分はとても脆くて、今後新梢が伸びてきたときに強い風に吹かれるとか、ちょっとしたことで剥がれます。なので、その危険性を軽減するためにもテープを巻き直しました。
今後の肥培管理
- 1月27日に、新芽を伸ばし始めた台木の枝先を切除。今後は芽の動き(色)を見ながら、成株の剪定と時期を合わせて(少し遅れて?)、2月中に台木の首を切る予定。
- 芽が生きている7株を、防寒していないハウスからデービッド接ぎの鉢を置いているハウス(無加温)に移動。これによって栽培環境の気温がやや高くはなるが、今夜のような寒さは心配。
- 台木を5号ロングスリット鉢に植え込んだのは1年前のこと。土が老化している(肥料が不足するか、バランスが崩れている)かもしれないので、微量要素を含む液肥を使用。培土が乾かなくても、しばらくの間は積極的に施肥して、新梢が伸びたら早めに(5月下旬?)「鉢増し」をするつもり。鉢植え台木は、接木シーズン前に「鉢替え」を済ませておくべきだったと反省。
2月6日追記
芽接ぎに失敗した「ラ・マルセイエーズ」2-1 をポットから抜いて根の状態を調べました。やはり根が回っています。
これを根鉢を崩さないまま8号鉢に植え替えて、芽接ぎをやり直しました。
本来なら廻った根を切り土替えをした方がいいのでしょうが、今回は芽の取り方と台木の切り込みの具合、そしてテーピングを確認するのが目的なので、この状態のままでリッチェルの8号バラ鉢に鉢増しです。
この作業は2月7日の「バラの芽接ぎ 方法を見直す」に続きます。
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