前回2022年2月15日のレポート:「デービッド接ぎの経過 ー2」のその後の経過です。
昨年末の25〜26日にデービッド接ぎをして2ヶ月が経過しました。生育が良いものはぐんぐん伸びて、5枚葉が5節展開しようとしています。来週にでもピンチをすることになるでしょう。
枝を残すバージョンは新梢が5cmほどに伸びました。台木をカットする時期です。
これまでの施肥
Nさんが用意された肥料は「リキダス」と「ハイグレードバラ」で、いずれもハイポネックスの製品です。1月中に「リキダス」を2回と「ハイグレードバラ」を1回、いずれも1000倍希釈で施肥しています。
2月は鉢土が乾かず、早々とトンネルを取り外しました。21日に排水のECをチェックし、22日に「ハイグレードバラ」の1000倍希釈(EC=622㎲/㎝ /用水のECが221㎲/㎝だったので実質400㎲/㎝*)を全株に与えました。
*註:バラの液肥のECは、ハイポネックスでも住友化学園芸でも、あるいは切りバラ栽培の溶液耕の処方でも、標準倍率の希釈でおよそ400ppmになるよう設計されていて、これは800㎲/㎝に相当します。ここでは標準の倍に薄めて使っています。
デービッド接ぎ 2ヶ月後 接木をした日 12月25、26日
1 枝を残さないバージョン
写真の下の数値は、21日にチェックした排水のECです。
註:ECについては2月17日の「鉢植えバラの 土替え−2 pHとEC」で説明しています。
灌水後に鉢底から流れ出る排水のECを計測して、1200 ㎲/㎝を目安にしています。「グランブルー」の 2020 ㎲/㎝ はかなり高い数値です。同じ管理をしているのにこの差が出る理由はわかりませんが、少しだけ入れてあるという「マグァンプK」が影響しているのかも。
この4株は品種は異なりますが、ECが高い(肥料成分が多い)ほど生育が僅かに遅れ気味 なのは偶然でしょうか。サンプル数も少ないし、『たまたま』に過ぎないだろうとは思いますが、ガイド本では「接木した株は無肥料の土に植え込む」とありますので、ちょっと気になります。
でも逆に、この辺りの数値では2倍の差があっても生育にさほど違いはないと見ることもできます。「施肥」が重要になってくるのはこれからですね。プロのバラ苗生産者も、五枚葉が展開し始めるこのタイミングで肥料を与えるようです。ここは「肥効」が重要で、遅れると貧弱な新梢になります。
5枚葉が5節展開したら新梢の芽をピンチします。
これら枝を残さないバージョンは台木の「胴」が短く接合部が小さいうえに、写真でも見えているように接木テープを巻いた回数が少ないので、接いだ部分を補強するための「支柱」が必要になります。
註:ここに掲載した株は生育が優れているものを選んでいます。このブログを読まれて「デービッド接ぎ」を試みている方があれば、生育状態の「比較」はしないでください。生育が早いか遅いかは幾つかの要因に左右され、さほど重要なことではありません。順調にスッと伸びる芽もあれば、ちょっと足踏みしてから伸びる芽もあります。成長が遅れているからといって肥料や活力剤をドンドン与えるのは逆効果です(・・と自分に言い聞かせています):p
2 枝を残すバージョン 右:台木カット後
台木と接ぎ穂の接合した部分はカルスが肥大し、そこからベーサルシュートが出る「クラウン」を形成します。そのために邪魔になる台木はできるだけ短く切りたいのですが、癒合が十分でないこの時期に切るのは接合部にダメージを与えそうな気がするし、台木と接ぎ穂の狭い隙間に剪定鋏が入れにくいので、慎重にならざるを得ません。
台木のカットで接木テープも切れたので、既存のテープの上から追加して巻きました。巻き過ぎのような気もしますが、これらの株は近日中に持ち主のNさんのところ(屋外で栽培)へ移動するので、特に入念に巻きました。
考察 「台木の枝を残すバージョン」は不要か
台木の枝葉を残す理由は、そこから供給される糖(エネルギー・ATPになり、あらゆる植物組織の骨格になる炭素を提供する)や植物ホルモン・オーキシンによって「接木後の活性が高い」ということです。でもハウス内で栽培する場合は、枝を残す理由は無いと思いました。
ただ、これまでの経験では、台木の枝を残すバージョンは台木カット後に新芽が勢いよく伸びます。枝葉があったから根の活性も高く、これまで台木の芽に分散していた養分が、接ぎ穂の芽に集中するからだろうと思います。今後が楽しみです。
0 件のコメント:
コメントを投稿