このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2023年10月7日土曜日

2023年 夏・秋 農薬散布記録

サイドに防虫ネットを張ったハウス栽培なので、黒星病や各種害虫類の被害は少ないが、毎年「うどんこ病」には泣かされる。今年は6月以降その発生がなく、これが秋の開花まで続くといいのだけど。

今日、育苗ハウスの1株に "うどんこ病の予兆" を発見。気温が下がってきて、うどんこ病のシーズン到来か。この後、開花までの散布を記録(この表に追記)していく。

なお、うどんこ病についての自習ノートは、2022年8月15日:「バラのうどんこ病についての考察・前編(Ⅰ章〜Ⅱ章)」などの一連のページにまとめている。

2023年 夏秋 殺菌・殺虫剤の散布記録
散布日 散布前の発生程度
散布目的
殺菌剤
殺虫剤
散布5日後
状況
主剤名
主剤作用機作(阻害)
FRAC
IRAC
展着剤
種類
カウント数
累計
備考
1 5/8 うどんこ病拡大 パンチョTF顆粒水和剤 効果大 フェニルアセトアミド
トリフルミゾール
作用機構不明
FRAC U6 まくぴか
シリコン系
2 1
2 6/7 一部の苗に激発 ミラネシン水溶剤 効果大 ミルディオマイシン
細胞壁生合成
登録失効 アプローチBI
機能性展着剤
3 2
3 6/12 わずか サンヨール乳剤 ほぼ消滅 DBEDC
多作用点接触活性
FRAC M1 4 3
アファーム乳剤 エマメクチン安息香酸塩
神経、筋肉作用
IRAC 6 5
4 6/19 うどんこ病
痕跡程度
アミスター20フロアブル 消滅 アゾキシストロビン
呼吸
FRAC 11 6 4
5 7/30 ベト病?発生 ベンレート水和剤
落葉し消滅 ベノミル
細胞骨格, Mタンパク
FRAC 1 ドライバー
ポリオキシエチレン
7 5
コナガ, ヨトウムシ
殺虫
アファーム乳剤 被害拡大停止 エマメクチン安息香酸塩
神経、筋肉作用
IRAC 6 8
6 8/11 うどんこ病予防 サルバトーレME うどんこ病
視認なし
テトラコナゾール
細胞壁生合成
FRAC 3 9 6
7 8/20 うどんこ病,
ハダニ類予防
ポリオキシンAL水溶剤 ポリオキシン複合体
細胞壁生合成
FRAC 19 まくぴか
シリコン系
7
8 8/31 ポリオキシンAL水溶剤 ポリオキシン複合体
細胞壁生合成
FRAC 19
アザミウマ類,
コナガ予防
スピノエース顆粒水和剤 スピノサド
神経作用
IRAC 5
9 9/10 予防
ハウス内殺菌
ダコニール1000
僅かな薬害
TPN
作用点不明
FRAC M5 10 8
10 9/13 サンヨール乳剤
僅かな薬害
DBEDC
多作用点接触活性
FRAC M1 11
11 9/26 うどんこ病予防 アグロケア水和剤 うどんこ病
視認なし
バチルス ズブチリス
病原菌の胞子を食害
FRAC BM2 まくぴか
シリコン系
9
12 10/5 フルピカフロアブル 育苗ハウス
うどんこ気配
メパニピリム
AP殺菌剤
FRAC 9 12
13 10/10 うどんこ病初期
黒星病わずか
プロパティフロアブル 目立つ変化なし
被害の拡大はない
ピリオフェノン
細胞骨格とMタンパク
FRAC 50 13
14 10/17 うどんこ病初期
黒星病・わずか
パレード20フロアブル 目立つ変化なし
効果は認められず
ピラジフルミド
SDHI殺菌剤(呼吸阻害)
FRAC 7 14
15 10/21 黒星病・わずか
うどんこ病 視認なし
アグロケア水和剤 目立つ変化なし バチルス ズブチリス FRAC BM2 ドライバー
コナガ, ヨトウムシ
殺虫
アファーム乳剤 新たな被害なし エマメクチン安息香酸塩
神経、筋肉作用
IRAC 6 15

FRACコード表日本版(2023年8月)pdfファイル  IRACコード表 国内向け(2021年9月版 Ver10.1)pdfファイル
「特別栽培農産物表示ガイドライン」において節減対象とならない農薬pdfファイル

農薬の定期散布はしない

ハウス栽培なので、うどんこ病対策をメインにすればよく、農薬の定期散布は必要ない。

バラ栽培における農薬散布については、自分がとるべき方法を 2022年6月28日の:「バラのうどんこ病対策」で考察している。ストイックに "無農薬栽培" にこだわることはないが、農薬の使用はできる限り削減すべきと考えている。だからと言って、農薬の定期散布を云々するつもりはない。それは栽培者個々が決めること。

使用する農薬の節減は、FRACコードを参照しながら "うどんこ病菌の生育ステージに合わせた薬剤の選択" がポイントだろうと思うが、メーカーの説明では作用機作がよく理解できない農薬もあって、これの判断が難しい。

農薬の説明文にFRACコードや作用機作を記載せず、『百姓の爺さんが知りたいのは "効くか効かないか" で、主材の作用機作を説明しても意味がない』とのたまう大手農薬メーカーもある。そのような業界体質が「農薬嫌い」を生んでいる一因なのでは? 農薬メーカーは、より詳しく正確な情報を、わかりやすく、積極的に公開してもらいたい。その好例は、パレード20フロアブル | 石原バイオサイエンス㈱ のリーフレットpdfファイル。今回、いくつかのサイトを見直したが、この1年で幾分かは改善されたメーカーもある。

農薬散布カウント数

節減対象農薬の今年のカウント数の累計はできれば 15以下 に抑えたい。開花まであと5週とすれば、ちょっと微妙な状況だ。もちろん、「カウント数よりも発生させないことを優先」する。なお、この表で節減対象から除外される(カウントされない)農薬は、ポリオキシンAL水溶剤、スピノエース顆粒水和剤、アグロケア水和剤 の3種類。

備考(表・右欄の番号)

  1. 一番花後にうどんこ病が発生。交配作業がほぼ終了するのを待って、パンチョTF顆粒水和剤を散布。その効果は大きくうどんこ病が消えた。受粉した雌ずいを薬品から守るため、袋をかけたままで散布。パンチョTF顆粒水和剤の主剤は "シフルフェナミド" と "トリフルミゾール" の2種類なので、これを1回散布すればカウント数は2になる。
  2. 育苗ハウスの一部の株にうどんこ病が激発。発症株だけに、とっておきの専門薬「ミラネシン水溶剤」を散布。これも治療薬として薬効絶大で、うどんこ病がほぼ消滅。散布量は少しだが、量に関係なくカウントされる。この薬剤の登録失効はとても残念。私の "偏見" を「バラのうどんこ病対策」の3章「バラのうどんこ病殺菌剤」に書いている。
  3. 葉にわずかな食害痕があったので殺虫剤を散布。
  4. うどんこ病は(肉眼視できる範囲では)消滅した。季節的な要因もあってか、この後の発生は見受けられない。
  5. 育苗ハウスにベト病発生。幼苗5株ほどの被害株は数日で落葉。被害は拡大せずに被害株の落葉で消えた。
  6. 秋の剪定に備えて、予防散布をスタート。
  7. うどんこ病だけでなく、ハダニ類の予防にも効果があるとされる「ポリオキシンAL水溶剤」を散布。これはカウント対象の農薬ではない。10日間隔で2回続けて使用しているが、「耐性菌などそんなに簡単にはできない」と考えている。
  8. ハウス内の菌密度を下げる目的で、「ダコニール1000」と「サンヨール乳剤」を連用。いずれも高温期の使用を避けるべき薬剤だが、葉がカールして液が溜まった部分に僅かな薬害が出た。
  9. 芽が動き始めたので化学農薬ではなく、うどんこ病の分生子(胞子)を食い殺すバチルス菌製剤を散布。だが、これは無意味な選択:p

うどんこ病の初期症状?

10月9日 気温が下がって、うどんこ病菌が活動し始めたようだ。

 感染した部位の葉縁が捩れて波打つ
 葉裏にもシミのような変色が
 透かして見ると 既にかなりの細胞が損傷

細胞内に菌糸がかなり広がっているように見える。8月9月は予防散布をしたつもりだったが、相手は手強く一枚上のようだ。表在性の菌糸や分生子柄はまだ出ていないようなので、さっそく明日10日に殺菌剤を散布する。

ただし、この症状がうどんこ病菌の侵入によるものかどうかは確認できていない。菌糸や分生子柄が見えないので、糸状菌ではなく微量要素の過不足かもしれないし。でもその場合は葉の捩れ(よじれ)は出ないだろうし、よくわからない。

内部寄生性のうどんこ病?

防除が困難な 内部寄生性のうどんこ病 というのがあるらしい。そういう情報を見たことがあるだけで実物は知らないが、もしかしてこれがそうなのか?と思える病葉(写真・右下)を見つけた。内部寄生性でも、分生子(胞子)は表に出るはずだ。

 これは紛れもなくうどんこ病菌 表在性の菌糸が見える
 菌糸らしきものが少しはあるようだが・・(クリックで拡大表示)

同じような症状の葉が隣り合わせで4枚あった。散布後の状態なので、菌糸や分生子柄がはっきりとは見えず、うどんこ病菌かどうかは判断できない。しかし、うどんこ病でなければ何だろう? 葉の痛み具合や白粉の密度から推測して、発症はかなり前からのようだ。もしこれが内部寄生性のうどんこ病菌の分生子なら、既に飛散したのは物凄い数だろう。恐ろし。

『観察が最も重要』と言いながら、こんなことでは情けない。生命あるものに関わっているという緊張感に欠けている。

「バラにも内部寄生性のうどんこ病があるんじゃないか?」と考えていたので、それに効果があるという プロパティフロアブル | 石原バイオサイエンス㈱ を予め準備しておいた。バラは適用作物の登録にはないが、満を持して?:p テストしてみよう。


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