4月2日から5日にかけて、来期の接木に使う台木品種の実生苗の「鉢上げ」をしました。2月14日の播種から約45日後です。 播種の詳細は2月19日の記事:「バラの交配・9 播種」に記録しています。
交配してできたタネの発芽とその鉢上げについては、後日別記事で考察する予定です。
ローズヒップは、12月にたわわに実った枝先を切り、そのままジップロックに入れて2月まで冷蔵庫の野菜室で保存しておいたもの。 ハリのある果皮に包まれた果肉は濃いケチャップみたいで、タネも乾燥していないのが特徴。
『水に浮くタネは発芽しない』という常識は あてはまらない
2月10日にタネを取り出し水洗した。この品種や私の方法に限ったことかもしれないけれど、『水に浮くタネは発芽しない』というのは間違い。果皮や果肉、タネを繋ぐ繊維を取り除いてタネだけを水に入れると、その半数程度は浮く。沈んだタネだけを取り出し、それをまた水に入れると、今度もまた半数は浮く。逆に、浮いたタネを再び水に入れると今度は半数は沈む。
10年もこれをやってきて、「タネが水に浮くか沈むかは発芽には関係ない」と分かっているので、浮くかどうかで選別はせず、流水と汲み換えで3日間水洗した。ちなみに、3日後もタネの浮き沈みは一定しないが、沈む割合がわずかに増える。
水洗の目的は、種皮に含まれる発芽抑制物質「アブシシン酸」(ABA/植物ホルモンの一種)の濃度を下げるため。
発根を調節する植物ホルモンには、ABAの他に発根を促進させるために働く「ジベレリン」があり、好光性種子の発芽には「赤色光」(と遠赤色光)が関係し、光受容体タンパク質として「フィトクロム」が重要な働きをする。発芽は、抑制(アブシシン酸)と促進(ジベレリン)が絡まったかなり複雑な "系"(生理システム)で、光受容体「フィトクロム」が得た情報はDNAに伝わり、発芽の抑制と促進に関連する各種タンパクの遺伝子が転写され発現する。発芽はABAとジベレリンの量のバランスでコントロールされ、単に「水洗することでABAの濃度を下げる」ということだけではないようだ。
参考図書:「植物の科学」 放送大学教育振興会
タネに到達する赤色光(600〜650㎚ 発芽を促進させる)と遠赤色光(700~750㎚ 赤色光よりも地中の深い位置に届き、発芽を抑制する)がジベレリンとABAの量を決定するので、どの程度の深さに播種するのが適当なのかが問題になる。浅いと赤色光が届き発芽しやすくはなるが、台木として使うにはできるだけ「胴」の長い苗を作りたい。そう考えて今回は10㎜の深さに播種した。
写真上右:手前と、中の右半分が台木品種。
中の左半分と奥は交配してできたタネを播いたトレーで、現在は僅かに発芽した(60芽/300粒)幼苗の鉢上げが進行中。発芽時期がかなりバラバラで、今頃になってやっと地表に出てきた芽もある。これは後日レポートする予定。
発芽率90%超
台木品種は260粒を播種し、発芽しなかったのは23穴なので、発芽率は90%を超える。発芽時期に前後2週間ほどの差はあったものの、大半はほぼ一斉に発芽したので、10㎜の深さに播種したのは正解だった。ただしこの深さは品種(タネの大きさ)や保存状態によっても異なるのだろう。
「バラ撒き」するなどの過去の発芽率は50%程度だったので、90%には驚いた。このように多く発芽するのなら、より胴長の苗を得るために、さらに深い位置での播種も試せばよかったと(今は)思う。
播種が浅いと発生する「転び苗」や「皮被り」はまったく無かった。交配してできたタネは台木品種より浅く播種したので、種皮をうまく脱げていないものも少数あった。
接木するのは葉が出ている位置(ここが "クラウン" になる)より下の胚軸。 その部分=「胴」ができるだけ長い苗にするために、発芽確認(フックと、閉じた子葉が地表に出てくる)を見計らって籾殻燻炭を被せる予定だったが、10㎜の深さからの発芽ならそれは不要と判断した。『籾殻燻炭を被せると、発芽が遅れているタネに光が届かなくなる』*と考えたのも変更した理由なのだが、これは間違いだと気づいたので、以下に訂正。
4月10日追記:発芽とそのタイミングについて *訂正
- 前述の「植物の科学」(放送大学教育振興会)によれば、明所(赤色光を含む)ではフィトクロムは核の中に移動し "PILタンパク質" を分解する。その結果ジベレリンの合成が進み、逆にABAは作られなくなり、暗所で発芽を抑制していたDELLAタンパク質とABIタンパク質が機能しなくなって、発芽が可能になるーーのだそうだ。
註:これは、植物生理学のモデル植物である "シロイヌナズナ" の場合で、バラの場合は「フィトクロム」「ジベレリン」「ABA」は同じとしても、発芽に関与する各種タンパク質は異なるかもしれない。
この発芽プロセスがスタートするのに要する時間はどの程度なんだろう? もしかしたら、冷蔵庫内で2ヶ月間の休眠の後、3日間の水洗は30°C程度のぬるま湯を使っており、その間に光も浴びて、既に発芽が可能な状態に近くなっているのではないか。 - 発芽が可能になると、幼根が種皮を破って伸び始める。根端分裂組織のコルメラ細胞にはデンプン粒を含むアミロプラストがあり、それが重力を感知して根は重力方向に向く。胚軸の逆側にはシュート頂分裂組織とそれを護るように抱きかかえた子葉があり、下を向く根の動きに伴って必然的に地上部を向く。
- 子葉の付け根の少し下の胚軸は植物ホルモン・エチレンの働きで屈曲して"フック"を形成する。フックは、シュート頂分裂組織や子葉が土との摩擦で傷つくのを防ぐ。
- 5週目に地上に出たフックは、土との摩擦がなくなり、光を受けることでエチレンの合成量が低下して屈曲が消える。子葉(双葉)が展開し、6週目には本葉(三枚葉)が展開する。
このプロセスの 2.と 3.に要するであろう時間から推察して、地中で胚軸が伸びると思われる播種後3〜4週目で籾殻燻炭を被せて赤色光が届かなくなったとしても、その時点では既に発芽のプロセスは進行中で、それは不可逆的で、発芽の阻害にはならないのでは?
例えば、代表的な好光性種子の"ニンジン"は、タネに水を含ませながら明所で管理して、発根を確認してから土の中に播種する。バラの場合も発芽プロセスは不可逆的であることは簡単なテストで確認できるだろう。来季の小さなテーマが見つかった。
過去のドジな失敗
発芽確認前に籾殻燻炭を被せることで「胴」(胚軸)の長い苗を作る試みは、既に何度か試したことはある。これは畑の畝に播種した2016年のドジな失敗例。
左:播種後2週間ほど経過してから畝の表面に厚さ3㎝ほどに籾殻燻炭を被せると、予想通りモヤシみたいに胚軸(胴)の長い苗ができた(無理に引き抜いたので根は切れている)。ところが。。
右:畝には防虫ネットなどを使って簡易な防風設備をしていたのだが、それを上回る強い風が籾殻燻炭を吹き飛ばして、長い胴が剥き出しになってしまった。手直しするのも面倒で放置していたら、このような結果に。:p
「光屈性」で首は持ち上がったが胚軸の基部側は曲がったままで、しかも縊れている。これでは台木に使えそうもない。
バラ苗生産者はこれを避けるために稲藁を敷く。実例:「ノイバラ台木の実生苗作り(プロの場合)」。
万単位の数の苗を作るのならともかく、私のように少量の場合はセルトレーでもOKで、むしろその方が手がかからないことが今回の播種でわかったので、もし10㎜の深さでの播種でも胴の長さが足りなければ、次回は荒風の当たらないハウス内に置いたプラグトレーに籾殻燻炭を被せる方法にしょうと思う。
本葉(三枚葉)が2〜3葉展開したものを鉢上げした。根長は約5cm。播種に使った200穴のプラグトレーは1穴のサイズが 22㎜ X 22㎜ X 深さ40㎜。これが鉢上げの適切なタイミングだろうと判断した。
根鉢の上側10㎜の培土を取り除くと茎の白い部分が見える。それ(写真下左の緑色のライン)を基準にして、「浅植え」になるよう植え込んだ。今回は例年よりも丁寧に播種・鉢上げしたので、「胴長美人」の台木が育つだろうと期待できる。既にその気配がある(ように思う :p)
鉢上げに使用したビニポットは 4X5X8㎝(容量150㎖)の4連。培養土は挿木苗の鉢上げと同じで、住友林業緑化(株) 育苗用培養土 “土太郎”に、タキイ たねまき培土と鹿沼土の細粒(挿し芽用の土)を加えたもの。
鉢上げし、薄い液肥を与えたら勢いよく新葉が展開し始めた。すぐに根も伸びるだろうから、もう一回「鉢増し」をして根域制限で側根の数を増やし、その後「地植え」にする予定。一手間かかるが、あまり若い(細い)苗を地植えすると、風で腰が曲がり美人にはならない。HT品種を接ぐのに使いやすい幹の直径7〜8㎜の台木を作るにはやはり地植えだし、株間15㎝の1条植えにするなら長さ20mの畝が必要になる。挿木で作る台木も予定しているので、準備を急がなくては。
11 件のコメント:
少し前にデービット接ぎでいろいろ質問させてもらったものです。
その後接ぎ木してから3か月たちましたがほぼ失敗のようです。
7本挿し木したのですが、そのうち4本は接ぎ穂が黒くなり明らかに失敗です。
のこり3本は一応芽がでてるのですがちいさいものだと1cm。
大きいものでもせいぜい3~4cmです。
これは活着がうまくいってないのかなとおもうのですが。
穂木は黒くなっていないので、もうしばらく様子は見ようと思っているのですが。
今失敗したものはテープを外して台木だけ植えているので
9月頃芽接ぎに挑戦してみようとおもっているのですが・・・
1月に講習会がコロナで中止になったので見様見真似だったのですが
やはりなかなかむつかしいです。
お地蔵さんにリキダス
デービッド接ぎやF芽接ぎで、接ぎ穂や芽は枯れてはいないが成長が止まってしまっているものを「お地蔵さん」と呼んでいます。なぜ「お地蔵さん」になってしまうのか、原因はいくつかあるようで、私もよくわかりません。
「お地蔵さん」の多くはゆっくりと、数ヶ月後には枯れてしまうのですが、中には目を醒まして大きくなるものもあります。今年は「お地蔵さん」に試しにハイポネックスの活力剤 "リキダス" を与えてみたところ、これまで以上に動き出す芽が増えました。 "リキダス" は標準濃度の倍に薄めたものを使い、数日の間隔を置いて薄い液肥も与えました。培土にもよるのでしょうが『接木した幼苗は肥料に敏感なんだな』というのが実感です。でも、効果がなかったものもあります。
接木に失敗した台木は
芽接ぎに挑戦するのも良いですね。
でも、その台木を「母木」として育て、それから出たシュートを台木にして「接ぎ挿し」をするというのはどうでしょう? その台木を台木に使えば1本だけですが、母木にすれば何本かの「接ぎ挿し」ができるのではないかと目論んでいます。
今日4月25日に、失敗した接木株を片付けました。その作業中、前回のコメントに書いた『失敗した台木から出るシュートを育てて接ぎ挿しの台木を作る』というのは、いい加減な(浅はかな)考えだったと気づきましたので、お詫びして訂正します。
まず、今年のデービッド接ぎ全114株のうち、失敗したのは13株(うち1本は折損事故)でした。他に2株が今もお地蔵さんです。B苗も含めると成功したのは99株で、成功率は86%です。残念ながら今年も90%の目標には届きませんでした。
(ここから本論ですが)失敗した13株から台芽が出たのは1株だけでした。しかも弱い新梢で、先日の風で付け根から捥げるように折れてしまいました。考えてみたら(考えるまでもなく)、接木に失敗した台木からそう簡単に元気の良いシュートが出るはずがありませんよね。接木に失敗した13株は、いずれも根が貧弱で、大半は新根が出た痕跡もありませんでした。そのような台木だからお地蔵さんになったと考えることもできますね。
一緒に接木をしたバラ仲間の一株がお地蔵さんになったので、鉢から抜いて根を調べて見たら、ほとんど新根が出ていなくて驚きました。これは購入台木でしたが、でもその一連の台木がすべて駄目だったわけではありません。培養土も栽培環境も同じだったんですけど、台木の『当たり外れ』なんてあるんでしょうかね。
台木の芽が集中的に出る部分を "Bud Union" と言いますが(日本語では?)、そこは接木した際に切り捨てていますから、それより下側に芽の原基が形成されるにはそれなりの時間もかかるだろうと思います。特にノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)は、ロサ・カニーナなどと比べて台芽が出にくい台木品種とされていますから、なおさらです。
とうふさんの台木は今はどんな状況なんでしょう?
私の今年の接木は台木に問題があるものが多く、お地蔵さんが幾つもできました。でも、前のコメントに書いたように ハイポネックスの「リキダス」と、前回は触れなかった 住友林業園芸の「土太郎」の効果だろうと思うのですが、お地蔵さんの多くが動き出して、今はかなり大きく育っています。バラ仲間の意見では、『ちょっと生育が芳しくない栽培品種の鉢に土太郎を追加すると確かに生育が良くなる』とのこと。「土太郎」に含まれる "デルマ菌" の効果なんでしょうか、私も効果を実感していて、新たに何袋も購入しました。
記事で紹介している「パワフルアミノ」は効果抜群なのを再確認。バラ息さんの苗と比べても遜色のない立派なA苗がいっぱいできました。「土太郎」は「パワフルアミノ」と同じく、福岡県田主丸の園芸農家御用達の専門店「スワ肥料店」から教えてもらったもの。先日バラ仲間と「スワ肥料店」を訪問し、先代が開発されたオリジナル肥料2種類を購入。『特効薬のような肥料なんて無い』と思っていましたが、テストが楽しみです。
返信ありがとうございます。
その後活力剤などをやってみましたが、小さな芽は気温上昇とともにしおれてきて
結局全部失敗という情けない結果になりました。
台木なのですが、台木の芽を落としたものは確かにその後も芽吹く様子がありませんでした。
ただ、早くに失敗がわかったものはまだ台木の芽をカットしてなかったため
そのまま芽がのびつづけすくすく育っております。
中に芽をカットしていないのにその後も芽がでてこない台木があり
それはたしかに根っこもふえておらず、台木自体がだめであったかんじでした。
今回失敗したものを全部テープをはずしてみましたが、どれも活着できてる様子はなく、見よう見まねでやったので接ぎ木のやり方も悪かったでしょうし
穂木の状態もそんなによかったとはおもえないので、
いろいろ失敗した要因はありそうでした。
台木の芽をカットしてなかったノイバラはいま6本ほどあり
庭の隅に地植えして育てています。
パワフルアミノよさそうですね。
ぜひわたしも次にためしてみようとおもいます。
あと、土太郎はそらさんのところでは
近くのお店で売られてますか?
農協とかでしょうか?
とうふさん、こんにちは。
接木職人さんの仕事ぶりを横から拝見すると、けっして豊富とは言えない根量の台木に、あらかじめたくさん切ってある干からびたような接ぎ穂で、いとも簡単に接がれます。それでA苗率90%以上ですから、自分の方法を疑ってしまいます。
アマチュアでも『接木なんて簡単』と言う方もありますが、それはたまたまうまくいった話で、接木を成功させるにはいくつかの重要なことがあるようです。私は今シーズンは「台木の重要性」を痛感しました。・・と言っても、今後どうすれば良いのかは何も見えていないんですけど。
デービッド接ぎの具体的な手順については、わかりにくい部分もあると思われるので、それを説明するYouTube動画を作ってみてはどうかと思いつきましたが、でも私は手先が不器用なので躊躇っています。(笑)
「パワフルアミノ」は昭光通商アグリ(株)の製品ですが、同社のサイトにはその製品の紹介はありません。そのあたりの事情を購入先の「スワ肥料店」さんに尋ねたのですが、詳しいことはわかりませんでした。「パワフルアミノ」は、誰でも知っている大手の食品関連企業がサトウキビを主原料にして開発したものを、製品化した肥料であることは教えてもらいました。
「パワフルアミノ」や「土太郎」など、現在使っているすべての肥料は「スワ肥料店」さんから購入しています。
住所:福岡県 久留米市 田主丸町殖木446-1
09437-2-3624
*ただし通販には対応されていません。
「パワフルアミノ」をバラ息さんのように使う(接木苗の最初の肥料)ならば、1株あたり30g程度ですから1Kgもあれば30本に使えます。もし入手が難しい場合は少量なら個人的に送りますので、お知らせください。
台木の「当たり外れ」はある
今年の接木は、福岡バラ会員のバラ友3名と一緒に私のハウスで作業をしました。台木は同じ生産者から購入したものです。結果はまずまずだったのですが、中にどうしても合点のいかない失敗(お地蔵さんになり、その後気温の上昇とともに枯れていく)が発生。接木して2〜3か月後に失敗した台木を調べてみると、台木から新根がほとんど発生していないことが判明しました。理由はわかりません。培養土、ポット、栽培環境、管理は同じなのに、なぜそうなってしまうのか。
① デービッド接ぎが下手で、そのダメージで株が生育を停止した
② 台木そのものに(気づかない)問題があった
この②に関して印象的な出来事がありました。もう5〜6年も前のことですが、デービッドさんがある地方の台木生産組合から購入した大量の台木で、やはり納得のいかない接木失敗が多発したケースがあります。『台木に問題はないはず』と言う生産組合の説明に簡単には引き下がらないデービッドさんが詳しく調べたところ、「組合員の一部が台木生産圃場の土手に除草剤を散布したことがあった」という事実が判明しました。
これは "極端な例" かもしれませんが、台木に関しては、素性のわからない購入台木ではなく自作でと思います。夏の暑い時期の管理は大変で、つい『購入すればいい』と思いがちですが、「ハズレ」の台木に接いで失敗したバラ友の残念そうな表情を思えば、やはり納得のいく台木を使いたいと思うのです。
挿木台木を作ろう
とうふさんの台木は芽が生きているようなので「挿木台木」を作ることが可能ですね。現在新芽が出ている株をそのまま再び台木として使うのは難しいと思います。と言うのは、その新芽の位置より下に接ぐだけの幹の長さは無いはず?と思うからです。
私も「挿木台木」を作る予定です。良い挿し穂を得るために、その母株は栽培品種なみの管理(うどんこ病やアブラムシなどの病虫害対策と、肥培管理)をした方がいいと思っています。
「穂木」について
接木にチャレンジする人たちはお互いに穂木をやり取りすることがあります。その場合、穂木を切り出すのは冬の本剪定よりも1か月ほど早い時期なので、いわゆる「予備剪定」で切り捨てるような、高い位置の枝を切るのがほとんどです。「本剪定」で活かすような大事な芽を人にやるのはもったいなくて、気軽に切ったりしませんよね。これが問題なんです。そのような高い位置の枝は、穂木に適しているほど充実しているとは言えないのがほとんどです。
今年は頼まれて接木を代行したものもありました。提供された穂木には、予備剪定で切り捨てるような細いものも含まれていて(たぶん母木も古株)、案の定その大部分が「お地蔵さん」になりました。
バラ苗生産者は穂木の確保をどうしているかと言うと、初夏に出たベーサルシュートをピンチしながら伸ばし、秋の花は開花放任。そして1月になったらすべてのベーサルシュートを枝元から切り出して穂木にします。これをするとその株はダメになってしまいますが、それでいい。その穂木で作った新苗を新しい母木にするからです。生産者は「母木は若い株の方が接木の結果が良い」のを経験的に知っているのです。無造作に見えるプロの仕事も、要所はしっかり配慮されているんです。
私の競技用バラのいくつかの品種は、その世界の大御所である福島康宏先生から頂いた穂木から育てた株ですが、先生に穂木をおねだりしたとき(私はまだ初心者だった)、先生は競技用バラが植えてあるハウスに行ってベーサルシュートを惜しげもなく枝元から切られました。それを見て私はビックリ仰天。『そ、そんな大事な枝を、私なんかのために切るなんて!』と、すっかり恐縮してしまいました。先生は、初心者が接木するときの "穂木の重要性" をよくご存じだったんですね。
失敗するとせっかくの接木も楽しくない。台木や穂木を前年のうちから準備しておくのが大事だと再認識しました。
すみません、修正です。
誤:その新芽の位置より下に接ぐだけの幹の長さは無いはず?と思うからです。
もしデービッド接ぎが「枝残しバージョン」だったら、枯れた接ぎ穂を取り除いた逆側に、もう一度接ぐことは可能ですね。何株か新芽が出ているようなので、「枝残しバージョン」だったのでしょうね?
もし「枝を残さないバージョン」だったら、新芽が出る箇所 "バッドユニオン" (Bud Union) も切除されているはずなので、新芽が出るのはほとんど根に近い位置になります。この場合は、台木としての再使用は難しいだろうと思いました。
「土太郎」は、住友林業緑化株式会社が農業生産者向けに開発した高級育苗用培養土です。
情報は同社のサイトにあります。https://www.sumirin-sfl.co.jp/nousan/products/tsuchitaro.html
【楽天市場】や【通販モノタロウ】でも取り扱っているようです。
いろいろとありがとうございました。
穂木はベーサルシュートを根元から、なんとも素人にはもったいなさすぎて
躊躇しますが、それぐらいでないとうまくもいかないのですね。
今回使った穂木は挿し木にはいいぐらいの細さのものでした。
台木はデービット接ぎの枝葉を残したままバージョンのものが
はじめから出ていた芽がそのまま出ている状況です。
カットしたものは芽吹きませんでした。
土太郎はさっそく通信販売でたのみました。
近所に売っていたら一番助かるのですが、なかなかホームセンターぐらいでは
おいてないものがおおいですね。
今度は近所で夏に芽接ぎ講習会があるのですが、それはコロナで中止にならないことを祈ってチャレンジしてみようと思います。
ノイバラも台木の挿し木を作ってみようと思います。
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