このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

お知らせ

バラの育種 を仲間と共に学びたい初心者を対象にした オンライン勉強会 を計画中です。

オンライン ミーティングシステム "Zoom" を利用して、月2回(年間20回程度)の開催で、 参加費無料の勉強会です。

内容は「ばらの育種オンライン勉強会」 案内ページ をご覧ください。



2022年2月25日金曜日

バラを増やす 接木と挿木

接木に関しては、前の記事「2022年 デービッド接ぎの経過 ー3」の続きになり、今回は私のバラです。これは接木後の経過の記録ですが、生育が良いものを選んで掲載しています。生育不良の株は、その原因の考察とともに、後日掲載する予定です。

後半の「挿木」については、バラのスタンダード仕立てを作ることを目標に、その第一段階として 母木の挿木 を紹介しています。

写真撮影日:2月24日


接木

接木をした日 1月7日8日 7週間後

 春芳
 あけぼの

接木をした日 1月14日 6週間後

 雪まつり
 クイーン・オブ・スエーデン

接木をした日 1月20日 5週間後

 ラジオタイムス
 アンブリッジローズ

これらは順調に生育している株なので特に記すことはない。20日に挿した株の生育が前週のものより遅れているが、理由は不明。たぶん、台木や穂木の充実度がイマイチだったのかも。特にイングリッシュローズは放任されている株から採穂したので、その可能性がある。接木作業終盤の20日は、台木も貧弱な "残り物" だったし。

接木を成功させるには充実した台木や穂木を使うのが重要 というのはわかってはいるんだけど。:p

でも、この可愛いチビちゃんたちが大きくなっていく様子を眺めて楽しめればいい。急いで大きくなる必要はないよ。


挿木

接木作業に並行して、挿木も100本ほどを試みた。その半数は台木の母木を作るためだが、栽培品種もバックアップとテストを兼ねて挿した。挿木の方法 は、2月8日の記事:「バラの 芽接ぎ挿し」の内容とほぼ同じ。

挿し穂の調整 Tips

  • 穂木は前日(枝が短ければ数時間前)に切り出し、雑菌の繁殖を抑制して水揚げを促進する「切り花鮮度保持剤」"クリザール フラワーフード"(または類似品)に漬けて十分に水を吸わせる
  • 挿し穂基部以外の芽やトゲはそのままにしておく
  • 挿し穂は長め(20㎝程度)にして、挿し床は 無菌の用土 を準備
  • 発根を促す植物ホルモン「オーキシン」の製剤「オキシベロン®液剤」の2倍希釈液に、挿し穂基部を10秒ほど浸漬してから、深さ3㎝程度に挿す

今年は バラのスタンダード仕立てを作る 一連の作業を継続的に掲載する予定。

スタンダード仕立ての作り方については「挿し木と芽接ぎで作る バラのスタンダード仕立て」という記事があり、これまでに 45,200回 も閲覧されている。この内容を今一度検証し、より確実にスタンダード仕立てを作れるようにしたい。今回がその1回目で、長尺台木を得るための母木の候補5品種と、長尺枝に接ぐウィーピング(枝垂れ)系のバラ2品種を挿木した。

スタンダード仕立ての "台木" を作る私の方法

  1. 長尺台木にする品種の「挿木苗」を作る
  2. 挿木苗を地植えして「母木」にする
  3. 母木の新芽を伸ばして「主枝」を作る
  4. 主枝に、ピンチとアーチングでサイドシュートを発生させ、それを「長尺枝」に育てる
  5. その長尺枝をポットに挿木して「スタンダード台木」にする

5. の長尺枝の挿木は失敗しがち。活着させるコツは「長尺挿し穂の先端に葉を残す」こと。下はバラ仲間とともに作ったその実例。作り始めた頃なので勝手がわからず、先端の葉の量がやや少ない。詳細はその時期になってから具体的に。

この台木は「ノイバラ」ではない。ノイバラは優れた台木には違いないが、背丈を超える長さで、脇枝を切除した痕跡のない(目立たない)綺麗な長尺枝を得るのはそう簡単なことではない。これも、その時期になったら検討する。

台木については、上記「挿し木と芽接ぎで作る バラのスタンダード仕立て」の「スタンダード台木の条件」に記述。

 10月上旬 仲間と共同作業でサイドシュート50本を挿木
 3ヶ月後 降る雪の中、根付いた長尺台木を仲間のもとへ

スタンダード台木(母木)−1 挿木をした日 1月6日 50日後

これは上記 1. の、スタンダード仕立ての台木になる「長尺枝」を作る母木にするための挿木。今年は5品種を挿木して、その中から長尺台木に最も適したものを選抜する。

1月6日に挿木して、ようやく発根し始めた。左上のポットから細根が1本見えている。水分不足で挿し穂が枯れるのが嫌で「底面給水」をしているが、水分が過剰だと発根が遅れるようだ。左上の挿し穂の先端が黒っぽく見えているのは「枯れ」ではなく、上の枝葉の "影"。

スタンダード台木(母木)−2 挿木をした日 1月6日 50日後

−1と比較すると葉は少ないが 、より太めの根が出ている。薄い液肥をやり始めた。−1よりも節間が長く、トゲがなく樹肌が滑らかなので、スタンダード台木に適しているかも。

栽培品種

写真:下左の手前側2本は、スタンダード仕立てにするウィーピング品種。品種は、細い枝が数多く出る品種がスタンダードにしたときに見栄えが良いようだが、好みで何でもOK。芽接ぎをする10月までに充実した株になるよう育てる。

下右:接木と挿木の生育ぶりを比較する目的も兼ねた FLの「ベルベット・トワイライト」。右の赤い挿し穂が接木苗と同じ品種。接木苗と挿木苗では、その生育は今年は接木苗が優勢だろうが、来年は同じようになり、10年後は・・。

バラ栽培者の多くは挿木よりも接木を選ぶが、私は挿木苗も捨てたもんじゃないと思っている。 その具体例;

特に、生育旺盛なイングリッシュローズは挿木でも立派な株に育つ。下は David Austin の「メアリーローズ」。幾つものイングリッシュローズの交配親にもなった優れた品種。好きな「シャリファ・アスマ」も「ザ・ダークレディ」もそう。

脱線

「ザ・ダークレディ」は「プロスペロー」との交雑だが、それと同じ組み合わせでも「ザ・ダークレディ」が生まれるとは限らないんだそうだ。「メンデルの法則」のエンドウ豆の例のように単純じゃないのは、例えば花色を決める遺伝子はひとつではないし、しかも幾世代にもわたって交雑を繰り返してきたので、ゲノムが細切れになっているからなんだとか。

それゆえに、全ゲノム解読が終わっているバラは、私が知る限り「ロサ・キネンシス」と「ロサ・ムルティフローラ」の2品種だけ。これらはモダンローズに「四季咲き性」と「房咲き性」をもたらすという、極めて重要な働きをした品種。

バラゲノム
品種別名遺伝子数ゲノムサイズ研究者
ロサ・キネンシスオールド ブラッシュ36,3775億1500万塩基対註1
ロサ・ムルティフローラノイバラ67,3807億1000万塩基対註2
ホモ・サピエンスヒト21,30631億塩基対註3
  • 註1:リヨン高等師範学校 モハメド・ベンダマン氏率いる研究チーム
    モダンローズの「四季咲き性」はこれの遺伝子から取り込まれたとされている。和名:庚申バラ。
    これは “Nature” 誌 30 April 2018 に紹介されている。私にはチンプンカンプンだけど、ゲノム解読の "雰囲気" は伝わるような気がする。世界初となるバラ全ゲノム解読の対象にこの品種を選んだチームの慧眼に敬服。研究者の関心はまず「香り」、そして「花色」みたいだ。
  • 註2:(公)かずさDNA研究所+サントリーGIC(株)+名古屋大学
  • 註3:ジョンズ・ホプキンス大学 スティーブン・ザルツバーグ教授ら

(資料作成:2019 by そら)

「庚申バラ」の遺伝子数が「ノイバラ」よりも少なく、ヒトの遺伝子数はバラよりもはるかに少ないことに驚かされる。生命進化の不思議の一つ。ゲノム解読とは直接的な関係はないが、バラの育種の世界はミステリアスで、おもしろそう!

「メアリーローズ」を5本も挿したのは、これを交配親に試すことを密かに目論んでいるのか? 😅

脱線ついでに、「アイスバーグ」もイングリッシュローズの交配親として多くの品種を生み出している。「アイスバーグ」はもちろん挿木で立派に育つし、もしかしたら、接木株より綺麗かもしれない。『花が台木の影響を受けている』(=台木品種の違いによって、花が持つ雰囲気が異なる)という指摘は、熱心な栽培者の間から聞こえてくる。もちろんそれは交雑とは異なって遺伝子レベルの話じゃないけど、でも「接木苗偏重」は、バラ苗販売業界の "策略" かもしれないぞ。 🤭

「メアリーローズ」の挿木

この「メアリーローズ」は12月3日に駄温鉢の周辺に沿って挿木して、80日後の根の状態。厳寒期に挿木する「寒挿し」は、まず発芽し小さな新葉を展開した頃に発根する。現在、幼根がやっと "ルートボール" を形成し始めているが、適期・適作(緑枝挿し・ミスト灌水)なら発根はもっと早いはず。根を伸ばすために底面給水はすでに止めており、発根を確認した今日から規定濃度の倍に薄めた液肥を与え始めた。鉢上げするにはまだ少し早いだろうが、駄温鉢に挿した場合は鉢上げが遅れると根が絡むので油断できない。

「寒挿し」は発根するまでに時間はかかるが、梅雨の時期の「緑枝挿し」にありがちな、雑菌が繁殖して道管を塞ぎ、それで水が揚がらず挿木に失敗というケースは少ない。この「底面給水」も一度も水を交換していないが問題はなかった。ただし、水の腐敗防止に珪酸塩白土の「ソフトシリカ・ミリオン」を20グラムほど投入している。

「底面給水」は、ずっと前にこのブログのコメントで教えていただいた方法。いつ頃のことだったかな、その方のお名前も忘れてしまっていて、ごめんなさい。それ以来挿木は「底面給水」で管理していますよ、ありがとう。もしこれを読まれたら「お久しぶり」のコメントをいただけませんか。

2022年12月9日追記:思い出しました。2014年11月12日の記事「秋にもできるバラの挿し木 栽培品種の秋挿し」に、12月25日にコメントをいただきました ローゼスペコさん です。失礼しました。

鉢の中央の黒っぽい挿し穂は、遅れて挿した「パット・オースチン」。駄温鉢の真ん中に挿すのは好ましくないことや、挿木時期がズレると鉢上げがやりづらくなるのはわかっているのだが、1本のために挿し床を用意するのが面倒で、つい手抜きをしている。:p

鉢上げの時期が近づいたので準備を始めた。挿木苗はまず10X10X12cmのプラ鉢に上げて、計2回の鉢増しを予定。

次の投稿:3月2日の「挿木した台木の鉢上げ」に続く。

2022年2月24日木曜日

2022年 デービッド接ぎの経過 ー3 2ヶ月後 台木のカット

前回2022年2月15日のレポート:「デービッド接ぎの経過 ー2」のその後の経過です。

昨年末の25〜26日にデービッド接ぎをして2ヶ月が経過しました。生育が良いものはぐんぐん伸びて、5枚葉が5節展開しようとしています。来週にでもピンチをすることになるでしょう。

枝を残すバージョンは新梢が5cmほどに伸びました。台木をカットする時期です。

これまでの施肥

Nさんが用意された肥料は「リキダス」「ハイグレードバラ」で、いずれもハイポネックスの製品です。1月中に「リキダス」を2回と「ハイグレードバラ」を1回、いずれも1000倍希釈で施肥しています。

2月は鉢土が乾かず、早々とトンネルを取り外しました。21日に排水のECをチェックし、22日に「ハイグレードバラ」の1000倍希釈(EC=622㎲/㎝ /用水のECが221㎲/㎝だったので実質400㎲/㎝)を全株に与えました。

*註:バラの液肥のECは、ハイポネックスでも住友化学園芸でも、あるいは切りバラ栽培の溶液耕の処方でも、標準倍率の希釈でおよそ400ppmになるよう設計されていて、これは800㎲/㎝に相当します。ここでは標準の倍に薄めて使っています。


デービッド接ぎ 2ヶ月後  接木をした日 12月25、26日

1 枝を残さないバージョン

写真の下の数値は、21日にチェックした排水のECです。
:ECについては2月17日の「鉢植えバラの 土替え−2 pHとEC」で説明しています。

 1074 ㎲/㎝
 1163 ㎲/㎝
 1499 ㎲/㎝
 2020 ㎲/㎝

灌水後に鉢底から流れ出る排水のECを計測して、1200 ㎲/㎝を目安にしています。「グランブルー」の 2020 ㎲/㎝ はかなり高い数値です。同じ管理をしているのにこの差が出る理由はわかりませんが、少しだけ入れてあるという「マグァンプK」が影響しているのかも。

この4株は品種は異なりますが、ECが高い(肥料成分が多い)ほど生育が僅かに遅れ気味 なのは偶然でしょうか。サンプル数も少ないし、『たまたま』に過ぎないだろうとは思いますが、ガイド本では「接木した株は無肥料の土に植え込む」とありますので、ちょっと気になります。
でも逆に、この辺りの数値では2倍の差があっても生育にさほど違いはないと見ることもできます。「施肥」が重要になってくるのはこれからですね。プロのバラ苗生産者も、五枚葉が展開し始めるこのタイミングで肥料を与えるようです。ここは「肥効」が重要で、遅れると貧弱な新梢になります。

5枚葉が5節展開したら新梢の芽をピンチします。

これら枝を残さないバージョンは台木の「胴」が短く接合部が小さいうえに、写真でも見えているように接木テープを巻いた回数が少ないので、接いだ部分を補強するための「支柱」が必要になります。

:ここに掲載した株は生育が優れているものを選んでいます。このブログを読まれて「デービッド接ぎ」を試みている方があれば、生育状態の「比較」はしないでください。生育が早いか遅いかは幾つかの要因に左右され、さほど重要なことではありません。順調にスッと伸びる芽もあれば、ちょっと足踏みしてから伸びる芽もあります。成長が遅れているからといって肥料や活力剤をドンドン与えるのは逆効果です(・・と自分に言い聞かせています):p


2 枝を残すバージョン  右:台木カット後

台木と接ぎ穂の接合した部分はカルスが肥大し、そこからベーサルシュートが出る「クラウン」を形成します。そのために邪魔になる台木はできるだけ短く切りたいのですが、癒合が十分でないこの時期に切るのは接合部にダメージを与えそうな気がするし、台木と接ぎ穂の狭い隙間に剪定鋏が入れにくいので、慎重にならざるを得ません。

台木のカットで接木テープも切れたので、既存のテープの上から追加して巻きました。巻き過ぎのような気もしますが、これらの株は近日中に持ち主のNさんのところ(屋外で栽培)へ移動するので、特に入念に巻きました。


考察 「台木の枝を残すバージョン」は不要か

台木の枝葉を残す理由は、そこから供給される糖(エネルギー・ATPになり、あらゆる植物組織の骨格になる炭素を提供する)や植物ホルモン・オーキシンによって「接木後の活性が高い」ということです。でもハウス内で栽培する場合は、枝を残す理由は無いと思いました。

ただ、これまでの経験では、台木の枝を残すバージョンは台木カット後に新芽が勢いよく伸びます。枝葉があったから根の活性も高く、これまで台木の芽に分散していた養分が、接ぎ穂の芽に集中するからだろうと思います。今後が楽しみです。

2022年2月19日土曜日

バラの交配・9 播種

この記事は2021年9月13日の「バラの交配・7」の続きです。

その後の経過

9月13日のページで紹介している「色づき始めたチビちゃんたち」は、秋が深まるにつれてそれぞれ成熟していきました。逆にダメになっていったものも幾つもありました。収穫のタイミングはよくわからなかったのですが、意図的に遅くしたものも含め11月末までに収穫し、ジップロックに入れて冷蔵保存しました。冷蔵期間は70〜100日になります。

これを播種するために、2月10日に冷蔵庫から取り出してタネの様子を調べました。
タネを丸3日間水洗して、2月14日に播種しました。以下はその記録です。

:写真クリックで拡大表示。撮影時の拡大率がカットごとに異なるので、大きさの比較はできません。


1 採種 2月10日

1 ♀︎ ロージークリスタル ♂︎ コンフィダンス

♀︎ ロージークリスタル ♂︎ コンフィダンス(2)

これは意外な "結果" でした。実は色づいているのに、何が原因なのかタネは成長していません。

2 ♀︎ 雪まつり(自家受粉)

「雪まつり」は高く伸びて純白の花が咲くHTです。この写真ではローズヒップが小さく見えますが、実際はかなり大きくて、中に30粒のタネを持っていました。これも半数以上のタネは生きていると思います。

「自家授粉」とは、開花してもそのまま手をかけず(私の手による交配をせず)結実させたものです。ハウス内での栽培なので花粉を運ぶ昆虫はいないから、他株の花粉による受精の確率はゼロに近いと思います。

3 ♀︎ 雪まつり ♂︎ 衣里佳

「雪まつり」は「種子親」に選んだ品種で、大きな実に多くのタネができるのが確認できて嬉しいです。発芽するかどうかはまだわからないけど、半数は大丈夫なんじゃないかな。自家受粉のタネとは形がかなり異なっているのは気になるけど、花粉親が違うのだから当然のことなのか。

4 ♀︎ ジェミニ ♂︎ 香具山

5 ♀︎ ユートピア ♂︎ C. ディオール

今回結実した中ではこれがいちばん綺麗なローズヒップです。果肉はまだ柔らかく、カッターナイフで容易に切れました。受精していれば(枯れなかったので、受精しているはず)高い確率で芽吹くだろうと期待しています。

「ユートピア」は、今は「プライミニスター・アベ」という名前に変わっています。近畿財務局の赤木俊夫さんの無念さ、権力の卑劣さをを想えば、こんな名前のバラは栽培したくないので廃棄する予定でしたが、「ファーストレディ・アキエ」と同じく、バラ自体には関係のないことなので、種子親にしようかと、無節操にも迷っています :p 
でも、バラ界の一部に見える、このような権力に阿る(おもねる)体質は嫌いです。

6 ♀︎ エレガントレディ ♂︎ ロイヤルハイネス

7 ♀︎ ジェミニ ♂︎ ロイヤルハイネス

これも乾燥して実が硬くなってしまっています。ペンチで潰すと細かく砕けました。でもまだ生きているタネもあるかもしれないと思って全部を播種しました。甘い期待でしょうか :p

8 ♀︎ ロージークリスタル ♂︎ 香具山

実が乾燥して硬くなってしまっている事例です。ナイフでは切り分けられないので、ペンチで潰してタネを取り出しました。 タネの外見から、タネはまだ生きているのでは?と思います。

9 ♀︎ メルヘンケーニギン ♂︎ ホット神崎

最も乾燥して実が硬くなってしまっている事例です。粒の半分が黒化しているタネもあります。野菜や草花のタネなら乾燥して黒くなるものもあるので、これらの中から発芽するものがあるかどうか、興味があるところです。


10 シャリファ・アスマ−1(自家受粉)

採果時期はやや遅い程度かと思います。タネは問題なさそうに見えます。

11 シャリファ・アスマ−2(自家受粉)

採果時期がさらに遅くなった事例です。上と較べると、果肉だけでなくタネの色が濃く黒くなっています。タネの大きさは同じ(写真の拡大率が異なる)ですが、表面の「皺」が増えているようです。たぶんタネの内部の水分が減少しているからでしょう。

12 ウィリアム・アダムス(自家受粉)

「ウィリアム・アダムス」は、福島康宏先生が数年前に交配・育種されたFLの新品種です。1個は自然に落果したので、それに合わせて他も採果しました。タネは実の3個分ですが、大粒のきれいなタネですね。これが発芽しないはずがないと思っていますが、発芽はしても、それに「ウィリアム・アダムス」が咲くとは限りません。

参考:メンデルの法則|遺伝学の歴史|遺伝学電子博物館

福島先生が交配してできたタネが F1 で、それを播種して花を咲かせ選抜したのが「ウィリアム・アダムス」。それを接木で増やしたのが私の手元にある株です。
それを自家受粉させて出来たこのタネは F2 になります。これを播種して開花させるとどんな花が咲くのでしょう。

参考:F1種子って何だろう?|末吉商店

自然交雑の夢

ご存知のように、最初のハイブリッドティーローズ「ラ フランス」は、1867年にフランス人のJean-Baptiste André (fils) Guillotによって作出されました。

当時「人工交配」の技術は確立されていたのだそうですが、ギヨーは交配したい品種を近くに植えて「自然交雑」によって「ラ フランス」を作出したんだそうですね。「マダム・ファルコ」というティーローズの実生なんだとか。

その場合でも、自家授粉を避けるために、種子親は雄蕊を取り去るんでしょうね。授粉者が自分かそれとも花粉媒介昆虫かの違いだけなのかな。授粉はかなりデリケートな作業みたいなので、私のように下手に綿棒で触るよりもマルハナバチに任せるのがいいのかも:p 「自然交雑」ってなんか夢があっていいなぁ。


台木用 原種系ハイブリッド種(F2)

これは私が台木に使っている原種系ハイブリッド品種のローズヒップです。交配親は不明ですが、ノイバラ(ロサ・マルティフローラ)ではなく、入手経路や花から推測して、この地で旺盛に生育する「ツクシイバラ」とクライミング系の交配種ではないかと思っています。母木は F1 ですが、それから採ったこのタネは F2 に相当し、「ツクシイバラ」の形質がより強く出るようで、やや大粒で色艶が綺麗なローズヒップです。「ノイバラ」のローズヒップはこれより小さく、「トゲなしノイバラ」はさらに小さいです。

*註: F2 で間違いないのか自信がありません。F2 だったら、ある割合で違う形質を持ったものが出現するはずですが、このタネから生まれるものはみんな同じ形質です。何かを誤解しているのか、それとも観察が不十分なのか。

過去に、これの発芽テストをしたことがありますが、12月に収穫したものがベストでした。たわわに実った枝先をそのままジップロックに入れ、2月まで冷蔵庫の野菜室で保存します。実を枝から外したり濡れ新聞紙で包んで湿度を保つのは不要で、それをすると冷蔵保存でもカビが生えます。

これは、ここで紹介している他の品種とは異なって果肉が硬くなることはなく、過熟すると柔らかなまま黒くなって発酵(自然の中では落果)していきます。果肉はケチャップみたいな状態で、指にベタベタとくっつきますが、そこには「発芽抑制物質」(具体的な物質名は不詳。ABA=アブシシン酸かも)が含まれているので、時間をかけて丁寧に水洗します。果肉や果皮、繊維などを取り除くので、かなり面倒な作業です。私は3日間ほど水洗(汲み替え水洗と流水の併用)をしています。

ノイバラの場合、知り合いのバラ苗生産農家の方法は、まだ実が硬いうちに収穫し、それを「麺棒」でゴリゴリ押しつぶしてタネを取り出し、水洗してきれいになったタネを冷蔵するのだそうです。デービッドさんも同じく水洗後に冷蔵です。

どちらがベターなのかはテストしていません。たぶん同じような結果だろうと思っていますが、麺棒を使う方法ならベタつく果肉の扱いづらさは軽減され、冷蔵保存中にカビが生えることもないでしょう。発芽抑制(休眠)を打破するためにもその方がいいのかもしれません。・・が、自分のスタイルでいきます。


2 発芽抑制物質の水洗 丸3日間

ローズヒップ(実)から取り出したタネは、品種ごとに台所の流しで使う「水切りネット」に入れ、ラベルをつけて水洗します。水洗は、流水の掛け流しよりも「汲み替え」が効率的で、水の節約にもなります。タネの表面の「発芽抑制物質」を洗い流すだけでなく、今回は乾燥して硬くなったタネ(種皮)に水を含ませ緩める目的もあるので、ぬるま湯で時間をかけて洗いました。

台木品種の場合は「発芽抑制物質」を洗い流すために水洗は必須です(ただし私は実証テストはしていない)が、タネが乾いている栽培品種ではどうなんでしょう? 「発芽抑制物質」が何なのか、その抑制の機序がどうなっているのか、乾燥させて冷蔵保存中にすでに分解されている可能性もあるかもしれません。ちょっと検索してみます;

参考:発芽促進物質について | みんなのひろば | 日本植物生理学会

これによると「発芽抑制物質」は ABA=アブシシン酸 のようです。ABAは種皮に含まれていると考えれば、乾燥したタネはやはり長時間の水洗が必要だろうと思われます。


3 播種 2月14日

台木以外のタネは僅か300粒しかありません。交配してできたタネはさらに少ないので、これを丁寧に播種しました。数が少なく寂しいので、今年は作らないと考えていた台木品種のタネも蒔きました。

培土「タキイ たねまき培土」を使用。これまでも何度も使っていて信頼できる培土だと思っています。

セルトレイはサイズが色々あって選択に迷いましたが「200穴」にしました。1穴のサイズは 22mm X 22mm X 深さ40mm です。ちなみに、セルトレイとはこのようなものです。タキイ 根巻防止ワンウェイ・セルトレイ

私が使った200穴のトレイはホームセンターで売っている安価な製品で、タキイのトレイにそっくりだけど根巻防止の機能はないかも。発根・発芽すれば早めに(根巻きする前に)少し大きなセルトレイに植え替える予定です。

培土をしっかり充填してから、深さ1cmを目処にタネを埋めました。一般的に深さはタネの直径の2〜2.5倍程度なので、1cmはやや深めです。

特に台木用は浅くならないよう気をつけました。バラは「好光性種子」なのだそうで、深く蒔くのは発芽率が落ちると気にはなるけど、できるだけ「胴」の長い台木にしたいからです。必要量の数倍は蒔いたので、発芽率が少々落ちても構いません。

参考:「好光性種子」タネの発芽と光の関係 | 話のタネ | 株式会社トーホク

乾いた培土に播種し鎮圧してから、底面給水と霧吹きで水を与えました。ジョウロでは水流でタネがずれるかもと心配したからです。培土が十分に水を含んでから、バットの水を捨てました。トレイは無加温のハウス内に置いています。昨日の最低気温は0度Cでしたが、たぶん大丈夫と(さしたる根拠もなく)思っています。

これで、栽培品種300粒、台木用260粒の播種ができました。あとはバラの生命力を信じて発芽を待つだけです。


バラの育種には基礎になる栽培技術が二つあります。「実生苗を育てる」と「選抜した株をクローン(挿木や接木)で繁殖させる」こと。まだまだ道半ばですが、これを学ぶのに10年もかかってしまいました。:p

「交配」については、これまであえてガイド本を読まずに進めてきました。わからないことがいっぱいあります。でもこんなに楽しいことを、<誰かの後を追っかけて>やろうとは思いません。発芽するかどうかもわからないけど、ここから私の「バラの育種」がスタートすると思っています。