このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙く、論理も雑駁で、誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

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内容は「ばらの育種オンライン勉強会」 案内ページ をご覧ください。



2022年3月27日日曜日

バラの 芽接ぎ挿し 50日後

これは3月15日の「バラの 芽接ぎ挿し 1ヶ月後」の続編です。2月8日に芽接ぎ挿ししてから50日後、その結果が見えてきました。

これらは、バラを増殖することが目的ではなく、「芽接ぎ挿し」のテストです。テストにはイングリッシュローズの「ウォラトン・オールド・ホール」と「ラジオ・タイムス」の2品種を使いました。芽接ぎの方法は、2月8日の記事「バラの 芽接ぎ挿し」に書いています。

比較対象として、デービッド接ぎ(枝残し/無し) で接いで 挿木 というパターンも試しています。


ウォラトン・オールド・ホール Wollerton Old Hall

内容:左から
  1. デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木
  2. デービッド接ぎ(枝残し) で接いで 挿木  台木上部のカット3月15日
  3. F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木  台木上部のカット3月22日
  4. 同上
  5. F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木  台木上部のカット3月15日
  6. 同上
 2 デービッド接ぎ(枝残し) で接いで 挿木
台木上部のカット3月15日
 6 F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木
台木上部のカット3月15日 基部の発根無し
 3 F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木
維管束をカバーしているカルスが見える
 左の挿し穂の逆サイド
芽抜きした痕から多量に発根

考察

  • 「F芽接ぎ挿し」よりも「デービッド接ぎ挿し」が好結果を示した。
  • 「デービッド接ぎ挿し」は、枝残し、枝無しに有意な差はなかった。
  • 根量は、写真の拡大率が異なるので分かりづらいが、6本ともほぼ同じ。
  • F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)は台木上部をカットするタイミングが重要に思える。
  • 挿し穂基部のカルスから発根しているのではないことがわかる。これは岐阜大学 応用生物科学部 福井教授の「挿し木の基本」で指摘されているとおり。私はカルス(未分化の細胞群)から根の組織が分化するのかと誤解していた。
  • F芽接ぎはいわゆる「タケノコ芽」が出て、このような芽はこのままでは今後の成長もいささか怪しい。この短い挿し穂(台木)に内包している養分だけでこれだけの量の根を出したのだから肥料不足にもなるだろうと、新葉の展開を待たず、肥料分を含む培養土 に鉢上げした。

ラジオ・タイムス Radio Times

内容:左から
  1. デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木
  2. F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 3本 芽接ぎ挿しに失敗

考察

  • 「デービッド接ぎ挿し」(枝無し)は、発根量は少ないものの成長している。
  • 「F芽接ぎ挿し」は3本ともに失敗。貼り芽が枯れてしまった。
  • 挿し穂基部から不規則に「褐変」が始まっている。 これは、基部の細胞が壊れたことや貼り芽が枯れたことで発生した "ポリフェノール オキシダーゼ"(酸化酵素)の働きでは?と推測している。
  • 発根量はウォラトン・オールド・ホールよりも少ない。これも、挿し穂の基部先端よりむしろ芽抜きした部分から発根している。基部に「縦の割れ目」を入れていないのは拙かった。

失敗の原因

  • この「ラジオ・タイムス」は、「ウォラトン・オールド・ホール」よりも生育が悪い母木だった。
  • 「ウォラトン・オールド・ホール」は台木の枝を3月15日と22日にカットしたが、「ラジオ・タイムス」は意図的に残した。20日頃から台木の新芽が急に伸び始め、それと期を同じくして貼り芽が枯れ始めた。慌てて台木上部をカットしたが、既に後の祭りで、結局この3本はゴミ箱行きとなった。

結果 『芽接ぎは大嫌い』(苦笑)

成功率90%になりそうなデービッド接ぎの好調さと較べて、F芽接ぎの不調がヤケに目立って、今年は心が晴れない「暗い春」だった。失敗の原因を穂木や台木のせいにしているが、私の方法はどこか間違っているのかもしれない。

そもそも、F芽接ぎの芽の成長をデービッド接ぎのそれと同列に比較しているのが間違いなのかも。芽接ぎは初期の生育が切接ぎよりも緩慢なのではないか。思い返しても、F芽接ぎ(主にスタンダード仕立てに使用)の新芽がデービッド接ぎと同じように伸びた記憶がない。いずれもかなり時間が経ってやっと成長し始めるという事例ばかり。「芽」と「接ぎ穂」という構造的な差から、それはあり得ることかと思う。

でも、以下のような例外もある。

成株の stepmom に「あけぼの」を芽接ぎ
 芽接ぎに失敗した台木に 別品種の「手児奈」を芽接ぎ

:台木は「メルヘンケーニギン」の成株で、そのステムに「あけぼの」を芽接ぎした "stepmom 接木" のテスト。同時に別株でデービッド接ぎも試みたが、デービッド接ぎの生育を10とすると、これはそれよりも若干劣る7程度。でもこの新梢は実用の範囲内。

この株には3芽接いだが、他の2芽は生育がやや遅れている。穂木の「あけぼの」に問題はないはずなので、接ぎ方が悪かったのか。バラ友によれば、「拒絶反応が出ているのかも」とのこと。どうなんだろう?

「台木と穂木の "相性" というものがある」というのは、バラ苗生産者から聞いたことはあるけど。その点、ノイバラ(ロサ・マルティフローラ)は多くの栽培品種との親和性が良い優れた台木品種だが、長尺枝を得ることを優先している私の台木はノイバラではないことも気になる事ではある。今回の芽接ぎ挿しに使った台木もノイバラではない。

:これは、2月7日の「バラの芽接ぎ 方法を見直す」で取り上げた芽接ぎのその後。台木は、芽接ぎに失敗した「ラ・マルセイエーズ」の逆面を使用し、それに「手児奈」を芽接ぎした。同じ台木なのに、採穂して4〜5日経過して弱っていた「ラ・マルセイエーズ」は失敗、芽がぷっくりと赤く膨らんでいた「手児奈」は、デービッド接ぎに見劣りしない生育ぶり。芽接ぎしたのがデービッド接ぎより1ヶ月も遅い2月7日だったので、現時点でのこの新梢の大きさは "Good !"

これら(特に上右の事例)がF芽接ぎの正常な発芽と新梢の展開なんだろう。とすると、やはり私の方法はどこかが間違っているのだと思わざるを得ないが、どこに問題があるのだろうか。

 失敗した「ラ・マルセイエーズ」
10月25日芽接ぎ 2月2日の状態
 成功した「手児奈」
2月6日芽接ぎ

芽接ぎ挿し まとめ

  • 接木して挿木する「接ぎ挿し」は、私の方法では 芽接ぎよりもデービッド接ぎが好結果 を示した。
    これは実栽培に利用できそうなので、「挿木」との生育差や、どの季節も「接ぎ挿し」ができるかなど、今後もテストを続ける。
  • 芽接ぎ挿し失敗の原因は、挿木よりも芽接ぎに問題がある。
  • テスト数が少ないが、デービッド接ぎ挿しの「枝残しバージョン」に特に優位性は認められなかった。
    これは「接ぎ挿し」に限ったことではない。デービッド接ぎの「枝残しバージョン」が効果を発揮するのは、接木する前から台木に活性のある葉が付いていて、接木後に厳寒の屋外で株を管理するという条件に合致した場合に限られるようだ。
  • 「芽接ぎ挿し」の場合も、台木(挿し穂)の「枝残しバージョン」がどの程度効果があるのか、テストを重ねる必要がある。6月の「緑枝・接ぎ挿し」では、台木、接ぎ穂(芽)、あるいはその両方に葉を残すバージョンがあり得るので、楽しみ。
  • 「親和性」を考え、畑に放任しているノイバラを台木に利用できるよう、急遽手入れを始めた(笑)
  • 「芽接ぎ挿し」はもちろん「芽接ぎ」は、台木も穂木もより充実した枝を使用することが 特に 重要。

接ぎ挿しだけでなく、デービッド接ぎや芽接ぎを成功させるには、何よりも台木と穂木が充実していることが重要

このことは何回書いただろう、重々承知しているつもりなのに、あいも変わらず同じ失敗を繰り返している阿呆。
『自分は芽接ぎが下手なんだ』と痛感したが、芽接ぎはあの小さな芽の切片を扱うのだからとてもデリケートな接木手法なんだと気づいた。これが今シーズン最大の収穫かな。

2022年3月16日水曜日

挿木した栽培品種の鉢上げ

3月2日の 台木の鉢上げ に続いて、挿木した "栽培品種" 14本の鉢上げをしました。これらは1月中旬に挿木したものです。挿木してから 約60日後です。

挿木の方法は、台木品種の挿木や 芽接ぎ挿し と同様です。

私の挿木方法

『バラの挿木なんて簡単。庭の隅にでも、ちょこっと挿しておけばいい』と言う栽培者は多いです。それを実際に拝見したことも何度かあります。・・が。。 これは私なりの方法(楽しみ方)です。

殺菌

  • 挿木失敗の最大の原因は、挿し穂を腐らせる菌の繁殖と、それによる維管束の閉塞。面倒でも、道具類を "ベンザルコニウム塩化物液 オスバンS" で殺菌し、菌密度を下げる。
     "オスバンS" は殺菌消毒剤(逆性石けん液)で、剪定鋏、接木小刀、ポットなどの洗浄に使用。

挿し穂

  • バラの挿木を成功させるには穂木の選択が重要。生育が悪い母木からの採穂や、古い枝、細い枝(4㎜以下)や太すぎる枝(10㎜以上)も挿木の成功率が落ちる。これは接木の場合の「接ぎ穂」の選択と同じ。
  • 穂木は前日(枝が短ければ数時間前)に切り出し、雑菌の繁殖を抑制して水揚げを促進する「切り花鮮度保持剤」"クリザール フラワーフード"(または類似品)に漬けて、十分に水を吸わせる。
  • 挿し穂の長さは20cm前後。1節=3cm程を用土に挿す。挿し穂の先端は「片クサビ型」で、縦方向に割れ目  を入れる。基部の芽は「芽抜き」=芽をナイフで削ぎ取る。それ以外の芽やトゲはそのままにしておく。

挿し床

  • 挿木用土は、無菌で、保水性と通気性が有るのが重要。今回は「鹿沼土」単体の微塵抜きを使用。
    過去のテストでは、赤玉土、ボラ土(細粒を、洗浄して使用)、バーミキュライト、川砂、あるいはそれらの混合でもOKだった。ただし「底面給水」の場合、例えば鹿沼土でも粒が大きいと間隙がありすぎて「毛管現象」で水が上がる位置が低く、水分不足になりがち。
    これまでの結果から注目している培地は、籾殻燻炭と水苔。今年のスタンダード台木の挿木はそれを使うことを考えている。
  • ビニールポットのサイズは4X5X深さ8cm。挿し穂の基部先端とポットの底面の間は5cm。

発根促進

  • 発根を促す植物ホルモン「オーキシン」の製剤「オキシベロン®液剤」の2倍希釈液に、挿し穂基部を10秒ほど浸漬してから挿す。
    オーキシンの過剰は逆効果なんだそうだが、20~30秒ほど浸漬しても特に問題があるようには思えなかった。

管理

  • 用水は清潔な水(水道水)を使い、「底面給水式」(深さ1㎝に水を入れたバットにポットを並べ、「毛管現象」を利用して水を供給)で、水の腐敗防止に珪酸塩白土の「ソフトシリカ・ミリオン」を混入。量は適当:p
  • この時期、灌水(水やり/水換え)は必要無い。バットの水が徐々に減っていくが、それが挿し穂の根の成長に好都合なので、水の減り具合や培土の湿り具合の観察を怠らない。基本的に補水は不要だが、水分過剰で発根が遅れるよりも、不足で枯死するのが怖いので、私はいつも水分過剰気味に管理している。

  • 最低気温2度C程度の無加温ハウス内で養生。できるなら12〜24度Cの範囲で管理。それが無理でも、乾いた寒風(木枯らし)に吹きさらされることがないよう注意。
  • 挿し穂を触らない。根よりも先に芽が伸びるので、小葉が展開してもまだ発根はしていない。

参考:岐阜大学 応用生物科学部 園芸学研究室 福井博一教授 挿し木の基本

バラに特化されているのではないけれど、示唆に富む内容です。私の方法はすべてがこれと同じではありませんが、精読して、自分の方法を実栽培の中で検証すべきと思っています。挿木だけでなく、接木の参考にもなります。

鉢上げに使用したポットや培養土も "台木の鉢上げ" と同じです。

発根の程度は品種により差がありましたが、未発根でもカルスはしっかりできていたので、かまわず鉢上げしました。

でも、前述の福井教授の「挿し木の基本」に、ちょっと気になる指摘があります。

厳密にはカルス形成と根原基の形成とは無関係であり、カルスは切口の保護のためには必要であるが、発根過程においては必ずしも不可欠とはいえず、過度のカルス形成は発根を阻害することが多い。

ドキッ。・・ま、いいか。"過度のカルス形成" がどの程度のものか、どうコントロールすればいいかもわからないし、できちゃったモノは仕方ない :p それよりも、一部の葉色が「肥料不足」と思われるのが気になる。根が無くても、カルス(未分化の細胞群)の細胞膜からダイレクトに養分を吸収できるはずだよね?

そう考えて、それを確かめる意味もあって "未発根でもカルスはしっかりできている挿し穂" を鉢上げしました。結果は後日レポートします。

 スタンダード仕立て用 ウィーピング2品種
 HT「アンナプルナ」 接木と挿木の比較

「アンナプルナ」は同じ穂木から採った接ぎ穂と挿し穂ですが、そうとは思えないほど差があります。挿木株は内包しているエネルギーで展開した葉。挿木株の1年目の生育が接木株より遅れるのは、このようにスタート時に大きな差があるから。

でも、この挿木株は発根しているので、これからは培養土の養分を吸収して大きく伸びるでしょう。2年目は接木株に追いつき、その後は遜色ない株に育つと思っています。もちろん「品種しだい」なんでしょうけど。

肥培管理

培養土は 台木の鉢上げ で使っているものと同じです。用土にはあらかじめ肥料が添加されているので、1ヶ月間は施肥不要と思われます。3月2日に鉢上げした台木品種はとても良い葉色で成長しています。少量の「パワフルアミノ」をやりたくなる誘惑 には、我慢:p


挿木に失敗

今日までに台木3品種28本と栽培品種21本の計49本を鉢上げしましたが、残念ながら栽培品種の2本を失敗。

葉はまだ完全には枯れていないものの、挿し穂基部から茶褐色に変色が進んでいます。水が揚がらなくなり葉と枝の黄変が始まっています。基部にはカルスがまったく生成されていません。

失敗の原因 はよくわかりませんが、"水不足" ではありません。水不足で枯れる場合は、葉があればまず葉が黄変し、枝は褐変ではなく黄変して、やがて縦皺が出ます。この2本のように "艶のある褐変" は、基部の酸化あるいは雑菌が繁殖したのだろうと考えています。その結果、水が揚がらなくなり黄変が始まっています。"基部の酸化" については、福井教授の「挿し木の基本」に指摘がありますが、その理由を知らないので、対策がわかりません。

「基部の酸化」の原因についての "怪しげな" 推測

褐変が発生するのは、挿木後すぐにではなく、50日程度経過してからのことです。挿し穂が弱ったから褐変するのか、褐変したから弱るのかは "微妙" です。気がつけば、その症状は同時に進行しています。

  1. 増殖する雑菌によって糖が分解され、酸性の物質が生成する
  2. 発芽など、挿し穂の細胞が活動(代謝)することで何らかの「老廃物」、あるいは「根酸」が生成され、それを効果的に排出する経路がなく 挿し穂の基部とその周囲の培土 に蓄積する
  3. 展開したばかりの幼葉での光合成が機能不全で、活性酸素が発生し、細胞が酸化される
  4. ポリフェノール オキシダーゼ(酸化酵素)の働き

褐変は基部から始まることから 3. の「活性酸素」は考えにくく、また、挿木後50日も経過しての褐変なので 4.の可能性は低いと思われ、2. の「老廃物」が主犯ではないかと考えているのですが、どうでしょう?

「挿木用土を含む挿し穂の基部に老廃物が蓄積される」と仮定したら、水の動きが少ない「底面給水方式」一辺倒を見直して、週に一回程度は「掛け流し」をした方が良いのかも。

でも(論旨がブレますが)挿し穂が褐変したのは挿木51本中のこの2本だけ。それが特に弱い挿し穂だったことを考えれば、迂闊に判断することはできません。要するに、何もわかっていないんです:p

反省

  • この2本の挿し穂は、直径が4㎜以下と細い。この枝を見れば分かるように、親株の生育も良くなかった。生育が悪い株から穂木を採ると成功率が落ちるのは、接木の場合と同様。
  • 採穂して直ぐに接木し、残った穂木の枝先側を、クリザールやオキシベロンに浸漬しないで挿木した。
  • 挿し穂の基部は「片楔形」で、縦方向の割れ目  を入れていない。

穂木の残りがもったいないからと、ついでに挿木するのはやめたほうがいい。いい加減にやってもそれなりの結果しか出ないし、楽しくもない。


今後の予定

今シーズンの挿木は100本ほど。まだ鉢上げが終わっていないのは、スタンダード用台木品種と「芽接ぎ挿し」などの一連のテスト。「芽接ぎ挿し」は2月8日の作業なので、鉢上げするのは2週間後か。

鉢上げしたこれらの挿木株は、この後5号ロングスリット鉢に鉢増しして、順調に育てば5月に地植えしたいと考えています。でも、思惑どおりに進むのかな? :p

2022年3月15日火曜日

2022年 デービッド接ぎの経過 ー4 A苗 B苗 お地蔵さん

春が来て、接木苗もグングン育っています。前回のレポートは2月25日でした。これまで生育が良い株を選んで掲載していましたが、『それでは誤解される』というバラ友の忠告に従って、今回は失敗事例もチラリと含めます。:p

「失敗」と判断した接木は、全114株のうち現時点で6株です。これは『まだ可能性はあるかも』という甘々の選択によるもので、「最終的に成功率90%になるかどうか微妙。もしかしたら80%か」という状況です。失敗事例は今後のために貴重なので、後日まとめてレポートする予定です。


バラ苗生産やその流通卸のみなさんは、バラ苗を生育状態によって「A苗」「B苗」に区別します。

    A苗: 順調に生育し、4月までに新苗として出荷できるし、もちろん大苗にも育つ
    B苗: 生育が緩慢で春に出荷できない。これは秋まで育てて大苗として出荷する
    
    お地蔵さん: 新芽は生きているが、なぜか生育が止まってしまっている
    
 HT「あけぼの」9株
 HT「エレガントレディ」6株

「あけぼの」は、多少のバラツキはあるものの、まずまずの生育ぶり。たぶん全株がA苗になる。9株も接いだのは、これが私の今年の「勝負株」だから。コンテストには参加しないが、一人で「新苗で秋に勝負」なのだ。:p

同じく勝負株の「エレガントレディ」。6株のうち1株(後列・左)を失敗し、「お地蔵さん」になっている。原因は「予期せぬ失敗」でレポートしているのと同じ一連の台木を使用したからと考えている。

それが顕著に出たのがHT「イーハトーブの風」。ネームプレートに青いシールを貼っている5株。母株は大手種苗会社から複数購入したのだが、その中の1株が根頭癌腫病になってしまい、急遽バックアップ接木を試みた。好きなバラなので、状態が最も良いと思う台木を使ったのだが、これが「裏目」に出た。

 HT「イーハトーブの風」7株

これら "問題ありの台木" は、元々は1年前に5号ロングスリット鉢に植え込んだものだったが、異常(根詰まり)に気づき、急遽6号に鉢増しをした効果で、なんとか全滅は免れた。青シール5株のうち、A苗2株、B苗1株、お地蔵さん2株。お地蔵さんの2株は、既に接ぎ穂が弱っているのがその色から推測できる。

青シールのない手前左の2株は、台木を接木3週間前に6号ロングスリット鉢に植えこんだもの。左の株は脇芽がブラインドになっているので掻き取った。これはA苗に育つだろう。

 HT「フロージン '82」5株
 HT いろいろ

「お地蔵さん」の原因は?

上左の「フロージン '82」の前列中央が「お地蔵さん」(画像クリックで拡大表示)。未練がましいが、まだ諦めたくない:p でも「お地蔵さん」のほとんどは、暖かくなるにつれてゆっくり枯れていく運命。ごめんなさい。

*註:『新芽が、枯れはしないけど成長もしない』というお地蔵さん。中には、数ヶ月後に動き出すものもある。バラ友・みのるさんの去年のお地蔵さんは半年眠り続けた後に目を覚まし、今は立派な株に成長しているそうだ。

この株は「イーハトーブの風」とは違う台木なので、「お地蔵さん」になった原因は同じではない。一言で言えば『接木が下手だから』なんだけど、それで済ませたら進歩は望めない。接木に失敗する原因は、接木技術の拙さだけでなく、穂木や台木の状態、培養土、温度管理など幾つもある。うまくいくときは簡単に思えるんだけどね。

2023年3月 追記

今年2023年の結果が見えてきたが、その結果から、お地蔵さんになる原因の中で最も疑わしいのは「低温」ではなかろうかと思うようになった。発芽した新芽が1㎝前後の頃に氷点近くの低温に遭遇するとお地蔵さんになりやすいようだ。

これを避けるには;

  1. "動き始めた芽" は接ぎ穂に使用しない
  2. 夜間・早朝の低温を避けるために、加温するなど相応の対策をする
  3. 低温に強いデービッド接ぎの「枝残しバージョン」で接木する
  4. 厳寒期(福岡では1月下旬〜2月中旬)を避け、時期を1ヶ月遅らせて2月中旬頃に接木する

このようなことしか思いつかないが、いずれにしても今シーズンは過ぎた。ハウスを暖房するのは難しいので、来年2024年は「枝残しバージョン」で接木するために、挿木で台木を作ろうと準備を進めている。

 イングリッシュローズ いろいろ
 シュラブなど いろいろ

これらはシーズン終盤(1月下旬)に接いだ諸々。残りものの貧弱な台木だったけど、このところ急に大きくなってきた。3月になって暖かくなったのと、施肥の効果だろう、平均すれば1日に1㎝のペースで伸びている。

 ER アンブリッジローズ 2月25日
 左の約20日後 3月16日

2023年3月 追記:
これらの接木苗は「お地蔵さん」にはならなかった。これが上記 4.の「2月中旬頃に接木する」という案の根拠。

施肥

これまでに使用したのは、五枚葉が展開し始めた頃からリキダス|ハイポネックス と、マイローズばらの液体肥料|住友化学園芸 を、いずれも規定濃度の倍に薄めて灌水時に2回。

それと、五枚葉5節ピンチ時(写真・上右)に、パワフルアミノ|昭光通商アグリ を、置き肥として10㌘。

"パワフルアミノ" は、福岡県田主丸のバラ苗生産農家・バラ息さんに教えてもらった肥料。私はこれをバラ息さんのご近所の「スワ肥料店」09437-2-3624 さんから購入しています。「スワ肥料店」は、園芸が盛んな田主丸地区で果樹・園芸農家を対象にした専門店で、この10年間パワフルアミノはいつも店舗の真ん中の目立つ場所に山積みされており、頻繁に売れているようです。でも、メーカーの 昭光通商アグリ㈱のサイト には、なぜかこの製品の紹介がありません。特定のユーザー向けなんでしょうか?

指定配合肥料
生産業者保証票
肥料の名称 光有機入り粒状肥料ふ631号

保証成分量(%)

  窒素全量        6.0
    内アンモニア性窒素 3.0
  りん酸全量       3.0
    内く溶性りん酸   1.3
    内水溶性りん酸   1.0
  加里全量        1.0

原料の種類
(配合原料)
副産複合肥料、植物油かす類、硫酸アンモニア、骨粉質類<蒸製骨粉>、化成肥料、硫酸加里

備考:1重量割合の大きい順である。
   2<>内は骨粉質類の内容である。
   3蒸製骨粉は豚および鶏に由来するものである。

記載されている説明は、画像クリックで拡大表示されます。

パワフルアミノの肥効

N:P:K=6:3:1 で、バラが好み肥効が早いアンモニア態窒素が3%含有されています。バラ息さんのブログ「いぶし銀のバラ屋」に、これを実際に使用されている写真があり、その肥効に驚かされます。

  • 2月21日 バラの芽接ぎ苗鉢上げ中
    バラ息さんは "T芽接ぎ" です。芽はまだそれほど動いていません。

  • 3月13日 いっぱい食べてばい
    この時の新芽の大きさを見てください。3月中旬に、まだこんなサイズです。
    私のより1月も遅れているじゃないか:p
    バラ息さんはちょうど今の時期に「パワフルアミノ」を与えています。
    施肥量は30〜40㌘/12㎝深ポット はあると思われ、かなり大量です。そして、

  • 3月25日 鉢上げ苗の間隔開け作業
    「パワフルアミノ」に含まれる菌類由来でしょうか、白い菌糸が広がっています。
    新梢はまだ短いですが、"間隔開け" は早めなんですね。

  • 4月08日 いよいよ出荷
    なんと、施肥から1ヶ月も経たないうちに出荷できるサイズにまで育っています。「パワフルアミノ」は全部が溶解したわけではなく、まだその形が見えてます。出荷後まで肥効が続くようにとの配慮なんでしょう。

同じ株を記録したものではないから時期の誤差はある としても、あるいは肥料だけでなく他に要因があるのかもしれないけれど、それにしても素晴らしい生育です。培養土 はシンプルなように見えるんですけどね。

有機質(特にアミノ酸)を含む肥料は、成分量 N:P:K の数値だけでは肥効の判断できないみたいだと思います。

『プロに学ぶ。でもプロの真似はしない』 ・・と、真似したくてもできない自分に言い聞かせる:p


五枚葉5節ピンチ

新梢には、まず三枚葉が2節出て、次に五枚葉が5〜6節展開し、また三枚葉が出て "結蕾" します。株を育てるために、これは開花させません。五枚葉を5節残して、それより上はピンチします。

 なぜか五枚葉が展開しないまま結蕾している
この後ピンチした
 パワフルアミノ 10㌘
量はバラ息さんより少ないが、2〜3回に分けて施肥する予定

この2株は 接ぎ穂の芽が180度逆向き になっています。デービッド接ぎのテストの一環なんですが、結果はどちらでも同じでした。ポイントは、前掲の「アンブリッジローズ」のように、接ぎ穂の芽が上向きになるように接ぐ こと。

この新梢は "同化枝" で、作られた糖はベーサルシュートを出すためのエネルギーを供給すると同時に、新しい細胞を形成するための多種・多様な有機物の骨格の中心になる "炭素" の供給源になります。とても重要な働きをしますが、この枝を秋まで残しても大きく育つことはなく、良い花も咲きません。

HTの場合はベーサルシュートが出揃う7月頃には切除されることになります。シュラブやフロリバンダは残してもいいのですが、その間にベーサルシュートが大きく育つので、来春の剪定では切り落とされることになるでしょう。

花を咲かせることもなく、株のための『自己犠牲』と言うか、健気な役割ですね。それを "強制" している悪いヤツは私ですが:p

バラの 芽接ぎ挿し 1ヶ月後

2022年2月8日「バラの 芽接ぎ挿し」の続編です。芽接ぎ挿しをして1ヶ月が経過しました。この時期、私の環境・方法では発根するまでに約2ヶ月かかります。芽は根よりも先に、挿木後すぐに動き始めています。


ウォラトン・オールド・ホール Wollerton Old Hall

F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 右:4本
デービッド接ぎ(枝残し) で接いで 挿木 左:1本
デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木 左:1本

芽接ぎ挿しを4本。左は比較対象のデービッド接ぎ(枝無し/枝残し)です。左奥の短い挿し穂は別品種。

芽接ぎよりもデービッド接ぎが優勢です。接ぎ穂が内包しているエネルギーの差と考えています。
デービッド接ぎ(枝無し/枝残し)の差は無いか、あるいは枝無しバージョンがわずかに優勢か。

写真撮影後に、芽接ぎ挿しの手前側2本の首を切りました。どのような違いが出るか。


ラジオ・タイムス Radio Times

F芽接ぎ(貼り芽接ぎ)で接いで 挿木 3本
デービッド接ぎ(枝無し) で接いで 挿木 1本

これも芽接ぎよりもデービッド接ぎが優勢です。

台木の葉は、挿木後に展開した新葉です。光合成をするとともに、接いだ部分にオーキシンを提供しているはずですが、デービッド接ぎの枝無しバージョンよりも生育が遅れています。

台木が持っているエネルギーはまず自身の新芽を展開するのに使われるのでしょう。この場合、どの時点で台木の首を切るのが良いのか経験不足で判断できずにいますが、もう少し早く切っても良いのかも?

でも今は発根し始める時期。新葉の光合成によって得られる効果は大きいのでは?

それを確かめるために、1本の首を切りました。その写真はありませんが、結果が出てからレポートします。

2022年3月14日月曜日

Stepmom接木 その後

このページは、2022年2月8日「バラの接木 "Stepmom 接木" を試みる」の続編です。

Stepmom に3つの方法で接木して1ヶ月が経過しました。接いだ芽が動き始めました。


1 デービッド接ぎ 枝残しバージョン stepmom =「メルヘンケーニギン」

"枝残しバージョン" は、このような条件では意味が無いようです。左の枝の先端にある節(ナックル)を取り巻くようにたくさんの新芽が。節の部分にはこんなに芽(潜芽)があるんですね。

接ぎ穂の芽も動き出していますが、あまり大きくはありません。接ぎ穂より上をカットしたので、接ぎ穂に養分が集中しグンと伸びると思います。

接木部分から樹液が滲み出した痕跡があります。根圧が高い株に接木する場合は注意が必要かも。これが原因で接木を数株ほど失敗 しました。


2 デービッド接ぎ 枝無しバージョン stepmom =「クリスチャン・ディオール」

この株の新芽が最も勢いが良いみたいです。新芽のアップは一日後に撮影したものですが、ひとまわり大きくなっています。


3 F芽接ぎ(貼り芽接ぎ) stepmom =「メルヘンケーニギン」

F芽接ぎもいいですね。

昨年秋に試みたいくつかのF芽接ぎが "絶不調" ですっかりしょげ込んでいましたが、これでちょっと安心しました。:p


このStepmom接木の結果については、2022年12月21日の記事:「バラのスタンダード仕立てを作る ③ 接木方法について」の中で、簡単に紹介しています。

2022年3月2日水曜日

挿木した台木の鉢上げ

これは、前の記事「バラを増やす 接木と挿木」の続篇になります。挿木の方法については、2月8日の「バラの 芽接ぎ挿し」で紹介しています。

これらの挿木は「母木」になって、そこから出たシュートを再び挿木することでスタンダード仕立ての長尺台木にするとともに、デービッド接ぎのための台木も作ります。今後1年間その経過を記録していく予定です。


発根と鉢上げ

1月6日に挿木した台木品種の挿し穂を、今日3月2日に鉢上げしました。
この時期の挿木=「寒挿し」は、まず挿し穂が芽吹いて、後から発根します。ビニポットの底穴から白根が見えたので植え替えを実施しました。 挿木してから54日後になります。

挿し床は鹿沼土の単体で、使用したビニポットは 4X5X8㎝(容量150㎖)の4連。底面給水方式で、発根確認まで54日と時間はかかりましたが、まったく手間いらずでした。

発根した挿し穂はできるだけ根鉢を崩さないよう植え込みましたが、基部の状態を見るため1本だけ裸にしてみました。何本も出ている主根からは側根が出ている様子もわかります。

挿し穂の基部は一般的な「片くさび型」ですが、それに加えて剪定鋏で縦方向に割れ目を入れていて、そこから多く発根しています。「芽抜き」をした痕(左上)からも発根しています。

挿し穂は、発根を促す植物ホルモン「オーキシン」の製剤「オキシベロン®液剤」の2倍希釈液に10〜20秒ほど浸漬してから挿しています。「オーキシン」は傷口を塞ぐ「癒傷ホルモン」でもあるので、これらの "傷口" には、新梢で生合成された植物ホルモン・オーキシンが集まります。このように、発根を促すには意図的に傷をつける のも効果的です。

鉢上げに使用するポットは、「ニッポリ プレステラ 120深型」 10X10X13㎝。スリット数8で底穴なし。
容量は約800㎖で、元の4連ビニポットの5倍です。このポットを使うのは1ヶ月間の予定なので、ちょうど良いサイズかと思います。


培養土の配合

育苗用培養土 “土太郎”

用土は、開封して使いきれなかった "残り物"の、住友林業緑化(株)  育苗用培養土 “土太郎”に、タキイ たねまき培土と鹿沼土(挿し芽用の土)を加えて使いました。

下左は、芽接ぎに失敗した株の原因を調べるために5号ロングスリット鉢から抜いた2年生台木ですが、植え込んで1年経過して、スリット部分を避けて根がぎっしり回っています。台木なので放任していたから、この根量にはちょっと驚きました。

スリット鉢の場合、根は根鉢の表面にあまり出てきません。スリット鉢の形状に沿って網目状に展開したこの根張りの良さ(典型的かつ完璧な "根詰まり" とも言える/笑)は、私が作る培養土では見かけることのない状態で、これはこの時に初めて使った「土太郎」の効果だろうと思います。

「土太郎」は、河川土の機能性を活かした“スミリン粒土”と、有用な微生物群 “デルマ菌”という、私には聞き慣れない原料で作ってあるそうです。販売開始から20年以上というロングラン製品なのだそうで定評があるんでしょうね。

“土太郎” の特徴

写真・上左の根詰まりした株は、“土太郎” と 私が作る培養土 を半々に混ぜています。 この一連のものは約20株あり、どれも同じ状態。“土太郎” の袋には3つの特徴が記されています。

  • 苗質安定
    これを使った約20株すべてが、写真上左と同じ。
  • 根張り抜群
    写真のように「根詰まり」するほど。
  • 有用微生物入り
    1年経過した鉢土には、分解されてしまったのか粗大有機物の形が見えない。
    有機物だけでなく赤玉土も微塵になって見えず、わずかに軽石だけが原型を留めている。

培養土の組成

“土太郎” の単用では "重すぎる" (気層が少なすぎる)と思ったので、これを基本に他の土を混ぜて使うことにしました。
"土太郎" と "タキイ たねまき培土" には、あらかじめ肥料が添加されています。

肥料添加量(mg/L)
品名容量NP₂O₅K₂OpH (H₂O 1:5)EC (1:5) μS/cm
育苗用培養土 “土太郎”20㍑1201000506.7900
タキイ たねまき培土10㍑380290340
鹿沼土(挿し芽用の土)5㍑
用土3種類の混合35㍑3496541266.5実測値 1872 → 1457

備考:pH(水素イオン濃度指数)の計測に使った用水は pH6.5 でしたが、用土によるpHの変化はありませんでした。
また、植え込み直後の排水のEC値:1872μS/cm は、水やりを繰り返すことで低下し、現在値:1457μS/cm は私の栽培環境では Good! です。

いずれの用土も肥効は約1ヶ月。これは短期間で植え替えする「育苗用培養土」なのでしょう。1ヶ月後には5号ロングスリット鉢へ鉢増しする予定なので好都合。 それにしても、“土太郎”のリン酸の多さは目立ちます。推測ですが、「土太郎」の真っ黒な土= “スミリン粒土” は「リン酸吸収係数」が高く、このように多量のリン酸の添加を必要とするのかも。ともあれ、同じく肥料分が添加されている「タキイ たねまき培土」と混合するので、追加の施肥などの調整は不要でしょう。

「土太郎」が含む微生物群 “デルマ(derma)菌” というのは、タキイ種苗の “ダルマ菌” と同じものかと思われます。同社の場合は「バイオダルマ」という商品名です。

関連情報


母木を育て、スタンダード(長尺)台木を作る

挿木した「母木」候補のうち、2品種計16本を鉢上げしました。残りはまだ発根が不十分です。
前の記事で触れた「メアリーローズ」5本も鉢上げしました。奥に見えているのがそれです。挿木時期が台木より1ヶ月ほど早い12月3日だったので、しっかりした根でした。

スタンダード仕立てを作る 今後の予定

  • 3月上旬  挿木し発根した母木の鉢上げ 今回の作業(予定の半数を終了)
  • 4月上旬  鉢増し
  • 5月    畝に定植。その後、積極的な肥培管理と主枝のアーチングでサイドシュートの発生を促す
  • 夏     病害虫の防除と支柱立て。葉を落とさない管理と、サイドシュートを直立させるのがポイント

スタンダード仕立てを作る方法はいくつかあり、条件が整えば以下の ① 〜 ⑤ を試みる

  • 10月上旬  ①母木から切り離さないままサイドシュートに芽接ぎ  ②長尺枝の挿木   ③芽接ぎ挿し

     ②の「長尺枝の挿木」の一例:「ミニバラ用スタンダード台木の挿し木」
    ①と③の「芽接ぎ」は、"F芽接ぎ"(貼り芽接ぎ)と "T芽接ぎ" を試みる

  • 来年1月  ①を母木から切り取って挿木  ④10月に挿木した②の長尺枝に芽接ぎ  ⑤芽接ぎ挿し
 2016年2月 芽接ぎ挿し
 2016年12月 秋の花後

1月に挿木した新苗から10月上旬に長尺枝を得るには積極的な肥培管理が必要で、そう簡単なことではありません。これも 『新苗で秋に勝負』なんですが、条件に合った長尺枝ができるか、いささか心配です。今回のように二度も鉢増しをするのは、できるだけ成長を促すための試みで、これまではそんな面倒なことはしたことがありません。:p

本来なら母木はゆっくり育て、その 成株の低い位置から出たサイドシュートを採ればOK です。

土手などに自生しているノイバラをスタンダード台木に使うには、福岡市郊外に在住の私の場合は、10月上旬に長く伸びたシュートを切ります。遅れると挿木の発根量が少なく、その後の接木が少し難しくなります。

庭植えのツルバラを使う場合は上記「今後の予定」の夏以降と同じで、太いワキ枝ができないようにシュートを垂直に誘引し、枝先の葉をできるだけ落とさないように管理します。・・が、冬まで活性のある葉を残すのはツルバラの性質上かなり難しいですね。別の方法(10月に "芽接ぎ挿し" をするとか)を考えた方がいいのかもしれません。

どのような長尺枝、あるいは時期であれ、枝先に健全な葉を残しておくのは、挿木や接木を成功させるためにとても重要なポイントです。葉がなくてもうまくいくこともありますが、成功率はかなり落ちます。これは過去の失敗経験から断言できます。😅


ちょっと「先走り」し過ぎました。:p それぞれの時期に具体的に検証したいと思いますが、ひとつ蛇足。自生しているノイバラを使う場合、5月の開花時期は白い花が遠くからも目立つので、旺盛に育っている株に目星をつけておきます。