このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2021年10月25日月曜日

"魅惑" のお尻

24日にばら展会場に来られた宇部ばら会の岡原さん曰く『福島さんの魅惑は、一眼見て脱帽』

この「魅惑」は、23日の九州ばら懇話会主催の「九州ばら祭り」に寄せられた熊本ばら会のHT盛り花の一部。
栽培者は福島康宏氏。

会場で、福島先生が直接手を入れて「ドレッシング」の重要さを解説。

『バラのヒップを見せることがポイントです』

"ヒップ" と言う表現に福島先生を囲む女性メンバーからクスっと笑い声も聞こえたが、なるほど、納得。奥に見える花と比べればその効果の程がわかる。

しかしその場では、岡原さんのように『一眼見て脱帽』というほどには、私はその良さがわからなかった。

  福島先生の "魅惑" 撮影:10/24(生け込み翌日)
 私の "魅惑" 撮影:10/17

写真・上右は10/17に撮影した私の "魅惑"。このように並べて比較すれば違いがわかる。福島先生の奥側の "魅惑" はドレッシングされておらず、その外形は私のものとほぼ同じように見えるが、違いがあるのは;

  1. まず「花芯」。私のはまだ外花弁が降りていないにもかかわらず「芯」がぼやけて崩れ始めているのに対し、福島先生の花は外弁を意図的に拡げて24時間経っても「芯」が崩れていない。

  2. 私の花は「寸胴(ズンドウ)」だが、福島先生のは「高芯」の腰からヒップに至るラインが綺麗。このラインの ”たおやかさ” は上品に艶っぽくて、汚れのない若い肌のような弁質と相まってバラの持つ美しさのひとつだ。これはHTハイブリッド ティ・ローズならではのもの。これがHTをして「バラの女王」と言わしめるのではなかろうか。これを見せるにはドレッシングのテクが必要だが、先生はいとも簡単に。

  3. 福島先生の "魅惑" の葉の、素直に展開した美しさ。

  4. (曖昧な表現だが)花枝に内包されている「生命力」=「命の輝き」が、私のは弱い気がする。

これが私が理解できる範囲だが、このような特徴が岡原さんをして脱帽させる要因なのかな。それを私なりの言葉で言えば「抜けのいい」、あるいは「小股の切れ上がったいい女」のようなバラ。私のは胴の締りがなく野暮ったい。せっかくの薄紅も、なんか「おてもやん」みたいに見える。ごめんね。あ、いや、「おてもやん」は生命力に溢れた女性か。"野暮” とは違うよね。

私の "魅惑" の野暮さは「過肥」または「施肥タイミングの悪さ」が原因だろうと思うが、その具体的な解決策は?

私は鉢植えだが、福島先生も岡原さんも地植え。岡原さんから『なぜ地植えにしないの?』と尋ねられ、さしたる根拠も無いので返答に窮した。

鉢植えは肥料分が流亡するので肥培管理が難しい。しかも、私はどうしても「過肥」になる悪癖がある。もし今後もコンペティション・ローズを栽培するなら地植えにするかも。岡原さんの株は数十本もステムが上がるのだそうだ。 「地植えだから肥培管理が簡単」と言うのではない。たぶん福島先生も岡原さんも、それぞれに工夫された方法があるのだろう。

福島先生は「焼酎粕」を使用されていて、私も勧められて地植えに10袋ほど使用したことはあるが、いい加減なテスト栽培だったし、その効果はよくわからなかった。いや正確に書けば、特に効果があるようには思えなかった。何かを見逃していたか、あるいは「肥効」についての私の認識がずれていたのかもしれない。

「肥料」じゃないよ「葉」だよ

反省的に思うのだが、秋に佳花を咲かせるには開花枝そのものではなく、その下の段、あるいはさらに下の段も含めて、「葉」がポイント。それが落葉したりなんらかの理由で活性が弱いと、秋の剪定後に「肥料」でカバーしようとしても無理。これの失敗実例の記録写真があるので、後日別ページで。

良い葉を確保するための福島先生の方法は「切戻し剪定」。

切戻し剪定

「切戻し剪定」については「boketanの恋華日和」の「新苗で秋に勝負 5・6月」 で詳しく紹介されている。この方法は、唐杉さんなど当時の福岡バラ会の意欲的な栽培者たちが開発した方法なのだそうだが、福島先生も「切戻し剪定」で秋に花を咲かせてあることを、今回あらためて先生から聞いた。

福岡バラ会の会報「ローズ・ふくおか」のアーカイブスにも「切戻し剪定」についての文章が残っている。
「ばら格言 A&O」/大原 万作 このページの「博多仁和加(にわか)」の掛合いがおもしろい。曰く;

古い格言: 「夏ばらの葉一枚は血の一滴!!」

平成の格言:「秋ばらは7月に剪定せよ!!」

なるほど。秋の花の美しいヒップを作るのは「夏ばら(8月)の葉」なんだ。そして「8月の葉」のために7月に「切戻し剪定」をするのか。 ーーと私は理解。
これは、黒点病被害株を救済するための剪定方法なんかではなく、秋の花のための積極的な管理方法なんだ。


福岡バラ会で「切戻し剪定」をしているのは、私の知る範囲ではFさんお一人。私も試みたことはあるが、「切戻し剪定は、黒点病などで6月に葉を落とした株の剪定方法」との先入観があった。今回、黒点病などまず発生することのない福島先生が実行されているのを知り、「眼から鱗」状態。

「ばら格言 A&O」に登場する唐杉さんは、私が福岡バラ会に入会した時は既に会員ではなかったが、今もご活躍なんだそうで、年に1回は個人で「ばら展」を開催されているのだとか(伝聞)。次の機会にはお目にかかってバラを拝見したいし、お話も聞かせていただけたらと願っている。

備考:
唐杉さんが書かれた文章が4編ほど、福岡バラ会の会報 「ローズ・ふくおか」のアーカイブス に掲載されている。
また、2001年の日本ばら会の会報「ばらだより」には「ばらと遊ぶ12ヶ月」という連載があり、唐杉さんの栽培の紹介の他に、福島康宏氏など往時の「九州ばら研究会」の活躍も記されている。



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