このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2021年9月10日金曜日

剪定100株終了 芋焼酎

HTの剪定 3品種17株 累計24品種 100株

  1. メルヘンケーニギン 8株
  2. コンフィダンス 6株
  3. 雪まつり 3株

今年は「マンガン欠乏症」が発生してそれに気づくのが遅れ、特にメルヘンケーニギンはその被害が酷くて多くの葉が黄変してしまった。
急遽マンガンを多く含む微量要素肥料「FTE」を施用し、その後に出たベーサルシュートは被害がないものの、多くの枝を「捻枝」せざるを得なかった。

「マンガン欠乏症」になった原因は、これまでマンガンの供給源だった「セルカ」を今年は使わなかったこと。以前「FTE」を多用し「マンガン過剰障害」が出たことも遠因。


バラの葉に黒カビ

今夏は雨の日が多くハウス内の湿度が高いからか、例年ほとんど気にならなかった「黒カビ」が発生。

この黒カビは、葉の表面にくっついているだけで、葉肉細胞から侵略的に養分を奪い取っているのではないようだ。その証拠に、枝に着けたプラスチック・ラベルにも量は少ないけど付着している。それでも光合成の邪魔になっているだろうし、何より気持ち悪いし、胞子が飛散すれば健康にも良くないだろう。

こいつはうどんこ病菌と同じ真菌類なので、うどんこ病原菌の除菌に使う「エタノール」で処理した。

アルコールと殺菌の話

花王株式会社 安全性評価研究センター グループリーダー 人見 潤 氏 花王㈱「サイエンスプラザ」から一部引用;

微生物に対するエタノールの作用メカニズム
エタノール濃度 主なメカニズム 死減時間
1~8% 細胞内外のH+イオン濃度勾配、トランスポート系酵素阻害、ATP,RNAの合成阻害 静菌作用
8~20% 細胞膜が傷つき菌体内成分が漏出、トランスポート系酵素阻害などで菌が餓死 30分~48時間
20~40% カタラーゼが失活し、過酸化水素が生成し、菌体内構造物が酸化変性し、死滅する。細胞膜が傷つき菌体内蛋白、RNAなどが漏出する 10~30分
40~80% 細胞膜、蛋白構造などが急速に変性、破壊する 5分以内
48~99% 細胞膜、蛋白構造などの変性、破壊が40~80%よりも少し遅くなる 10~30分
 参考文献 山下勝:アルコール類の微生物に対する作用,防菌防黴 24:195-219, 1996.

アルコール類の殺菌メカニズム

中低濃度アルコールの場合:細胞質膜に変化を生じ、核酸、アミノ酸、リン酸、カリウム、マグネシウムなどの菌体内成分が漏出すると同時に菌体内への栄養成分のとりこみも阻害されることから菌が飢餓状態となり死滅にいたると考えられている。(引用ここまで)


バラの除菌に使うエタノールの最適濃度は、焼酎と同じ

肉眼で見える程度に発生したうどんこ病菌の除菌には、私はエタノールを使っている。発生がごく小規模なら「消毒用エタノール 含浸綿」を使って拭いとるが、少し広がってからではその作業は面倒。ハンドスプレーが手軽でいいが、消毒用エタノールを原液のまま噴霧すると薬害が発生する。

うどんこ病菌を殺菌するがバラの葉肉細胞には深刻な影響(いわゆる薬害)を与えないエタノール濃度をテストしたら、約25%という結果が出た。

そう、25度の焼酎と同じ。下戸な私だが最近はハウスの中に焼酎が常備されていて、これは「赤霧島」。「百花爛漫」と謳ってあり、これを使えばハウスの中はとてもいい香りが広がる。

「消毒用エタノール」は、エタノール76.9~81.4vol% なので、エタノール:水=1:2にすればおおよそ25%(度)になる。「エタノール濃度自動計算フォーム

焼酎でも消毒用エタノールでも方法は同じ。カット綿をガーゼでサンドイッチして、25%エタノールをたっぷり含ませ拭い取る。葉の表面を濡らしたエタノールは1〜2分で乾いて消える。もし数分間も乾かない量なら、葉の細胞膜を傷つける危険性がある。*注:ハンドスプレーを使う場合は、液が葉のくぼみに溜まらないよう注意。

ハウス栽培は葉が雨に洗われることがないからなのか、黒カビが見えていなくてもかなりガーゼが汚れる(それだけ葉の表面が汚れている)のに驚く。でも、原因は砂埃だけではなさそうだ。

参考:「葉圏微生物」出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)から引用;

葉圏には細菌や酵母、糸状菌、真菌、植物ウイルス、古細菌、粘菌、緑藻類、コケ、地衣類、シダ、原生動物などが生息する。葉圏微生物で最もバイオマス量が大きいのは細菌である。その存在量は、培養可能な細菌だけでも一般的な植物の葉の表面積1㎠当たり10⁶-10⁷cells(百万〜千万匹)に及ぶ。

カビ(真菌類)もバラの葉も、細胞は基本的に同じ構造

*注:エタノールをバラの除菌に使用する場合は「自己責任」で。

今回の黒カビ(見た目による俗称)や、あるいはうどんこ病菌(ウドンコカビ科に属する子嚢菌)にエタノールを含浸させたガーゼを使って物理的に除菌するのは効果が大きい。しかし、エタノールの殺菌作用メカニズムは「溶菌であり、これは病原菌だけを狙い撃ちしているのではなく、植物細胞も(例えば、細胞膜の機能の一部を)壊す危険性がある。したがって、エタノールの 濃度と量 および「経過観察」が重要。

バラの場合、「薬害」発生の有無は "数日" のような短期間では判断できない(判断してはいけない)。エタノール除菌による薬害は、少なくとも3ヶ月の時間をかけて、慎重に見極める必要があると思う。



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